栄養管理でみるみる治る褥瘡治療のコツ
基礎がわかるとこんなに違う
編集 | : 大村健二 |
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ISBN | : 978-4-524-26499-5 |
発行年月 | : 2012年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 168 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
褥瘡の予防・治療には摂取カロリーや蛋白質量などの栄養管理も重要とされ、患者の病態に応じた対応が必要となる。本書では予防・治療における「栄養管理の実際」をテーマに、皮膚の正常構造や創傷の治癒過程など褥瘡を診る上で知っておくべき基礎知識も含め、褥瘡治療の全てがわかる。病態ごとの栄養管理の症例も多数掲載。褥瘡治療に関わる全てのスタッフ必読の書。
I なぜ褥瘡が起こるのか? 皮膚の正常構造と褥瘡好発部位の解剖
1.皮膚の正常の解剖(微細構造)
2.褥瘡ができやすい部位(仙骨部)の肉眼解剖
3.褥瘡の発生メカニズム
II 治るときと治らないときの違いは? 創傷の治癒過程と阻害因子
1.創傷の正常の治癒過程
2.治癒を阻害する因子
III これだけは知っておきたい! 褥瘡管理に必要な栄養学の基礎知識
1.褥瘡と栄養障害
2.褥瘡管理に必要な生化学の知識
3.低栄養に対する栄養管理
4.過栄養に対する栄養管理
IV 褥瘡の予防・管理を知る
1.褥瘡予防のための栄養管理
2.褥瘡の予防とケア
3.褥瘡のアセスメント(DESIGN-P/DESIGN-R)
V 褥瘡治療と栄養管理を知る
1.褥瘡治療の基本
2.褥瘡治癒を促進させる栄養管理
VI 栄養管理の実践
慢性の低栄養症例(合併症を有する場合)
CASE 1 同居家族がまったく関わらない、1人暮らし同然の褥瘡ケアは困難
CASE 2 骨折後に褥瘡が発生した認知症を有する高齢者の栄養管理
CASE 3 アルコール性肝硬変による昏睡状態の患者に生じた褥瘡ケアと栄養管理
CASE 4 糖尿病を有する過体重の患者に発生した褥瘡の栄養管理
CASE 5 在宅で褥瘡を発生したパーキンソン病患者の栄養管理
CASE 6 呼吸困難感・うつ状態による食欲不振のある患者
CASE 7 脳梗塞後遺症で自力体位変換ができないCKD患者
急性の低栄養症例(手術後、重度外傷、クワシオルコルなど)
CASE 8 緊急手術による高度炎症と手術後の高血糖によって発症した重度褥瘡患者
CASE 9 寝たきり患者の巨大褥瘡にアルギニン強化栄養剤が有効であった例
CASE 10 偏った食事により低栄養となった患者の褥瘡管理
VII チーム医療・連携はどうする?
付録 褥瘡治療で使用される栄養補助食品一覧
索引
褥瘡は、糖尿病やバージャー病に併発する皮膚潰瘍などと並んで難治性である。また、pressure ulcerの和名に「創」ではなく「瘡」が使用されるのは、その難治性の背景に全身的な病的状態があると考えられてのことである。病的状態の本態は、実は栄養障害、とりわけ低栄養であったと編者は考えている。
難治性の背景に全身的な病的状態が存在すると考えられていたにもかかわらず、褥瘡の治療では長きにわたって局所的な処置が中心であった。もちろん、これまでに築き上げられた褥瘡の局所療法の有用性について疑問の余地はない。しかし、視野を広げた全身管理が局所の治癒をより円滑にすることは、他の疾患でもしばしば認められることである。
本書ではまず、褥瘡の診療に役立つ基礎的な知識を網羅することに重点を置いた。褥瘡の好発部位であり、かつ解剖学的に複雑である仙骨部の解剖を東京医科歯科大学の佐藤達夫名誉教授に執筆いただいた。さらに皮膚の正常の解剖(微細構造)、創傷の正常の治癒過程、その治癒を阻害する因子については川崎医科大学の稲川喜一教授と森口隆彦名誉教授に詳述いただいた。
これらの基礎知識は、褥瘡の向こうにあるものは何なのかを教えてくれる。また、どのような過程をたどって治っていくべきなのか、目の前の褥瘡で何が起こっているのか、治癒を阻害する因子の除去に怠りはないのかなど、褥瘡の診療に大きな厚みを与えてくれると確信する。編者は日頃より、異常を知るには正常を知らなくてはならないと思っているのである。
また、褥瘡治療のみならず医療に携わるものにとって必要十分な臨床栄養に関する生化学の知識を織り込んだ。栄養を軽視してきたわが国の医療は、多くの分野で見直しがなされ始めた。適切な栄養管理は、一般の医師が考えているほど容易ではない。栄養投与量の許容範囲は、降圧薬や抗菌薬などと比較するときわめて狭いのである。
糖質、脂質および蛋白質の三大栄養素がどのように代謝されるのか、またどの程度の投与が適切なのか。脂質の投与はなぜ必要なのか。微量栄養素のはたらきは何か。これらは、栄養管理に欠かせない知識である。また、高度の低栄養状態にある患者に、必要エネルギー量を算出して安易に投与すると、全身状態の悪化をみることがある。refeeding症候群である。これについても十分に記載した。
褥瘡症例には何らかの栄養学的な問題が存在するが、ほぼすべての症例でその他にも疾病が存在する。後半には、合併疾患に応じた褥瘡症例の栄養管理の実例を挙げていただいた。読者の皆様は、必ず類似の症例を経験されるであろう。
これらの項目を心を込めて執筆いただいたすべての執筆者の方々に心より御礼を申し上げ、謹んで序の言葉とさせていただく。
2012年5月 大村健二