よくわかる脳の障害とケア
解剖・病態・画像と症状がつながる!
監修 | : 酒井保治郎 |
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著 | : 小宮桂治 |
ISBN | : 978-4-524-26477-3 |
発行年月 | : 2013年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 208 |
在庫
定価2,750円(本体2,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
多種多様な症状をみせる脳機能障害。その症状を予測しケアに役立てる方法を、「脳の解剖」「脳の病態」「脳の画像」「脳の神経心理症状」の観点から解説。本書を手に取り、これらの結びつきを知れば、脳の障害へのケアは劇的に変わる。25年間、さまざまな脳機能障害と向き合ってきた著者が贈る脳機能障害の入門書にして最良の実践書。
序章“脳の障害へのケア”という目的地への旅
第1章 脳の解剖 まずは脳地図の理解から
1 クリームパン2つで大脳を理解しよう
2 まずは外側から見てみよう
a 脳の基本は2つの溝と4つの葉
b 前頭葉
c 側頭葉
d 頭頂葉
e 後頭葉
3 次は内側をのぞいてみよう
a 大脳辺縁系
4 脳の内部は卵とクッキーとチュロスと手とタマネギの複合体
a 脳の内部の全体像
b 視床
c 被殻と尾状核
d 脳幹(中脳・橋・延髄)
e 小脳
5 脳の中には隙間がある
a 脳脊髄液
b 脳室
6 脳を栄養する血管
a 心臓から脳への血管
b 脳の中の血管−3本の血管はウィリス輪で合体
c 脳の血管を模式図にしてみよう
d 最後にクリームパンや手で脳の血管の位置を確認しよう
第2章 脳の病態生理 脳の中で「何がどのように」起こっているのか
1 何が起きているか(1)血管が破れる
a 脳出血
b くも膜下出血
コーヒーブレイク1
2 何が起きているか(2)血管が詰まる
a 脳梗塞
b 一過性脳虚血発作
3 何が起きているか(3)脳に傷がつく
a 急性硬膜下血腫
b 急性硬膜外血腫
c びまん性軸索損傷
d 慢性硬膜下血腫
コーヒーブレイク2
4 何が起きているか(4)脳におできができる
a 脳膿瘍
b 脳腫瘍
コーヒーブレイク3
5 何が起きているか(5)脳が変性する
a パーキンソン病
b 脊髄小脳変性症
c 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
d アルツハイマー病
コーヒーブレイク4
6 何が起きているか(6)脳に水がたまる
a 非交通性水頭症
b 交通性水頭症
第3章 脳の画像 外から見えない障害部位を画像で確認
1 なぜ脳の画像を見るのか?
a 「どこで」がわかればケアが変わる
b 脳の画像を見る際の進め方
2 まず脳の画像のしくみを知ろう
a この9枚の画像の正体は何でしょうか?
b CT画像のしくみ
c 再度9枚の画像を見てみよう
アドバンス1 MRI画像とは
d なぜ何枚も画像があるのか?
e 実際にりんごをスライスしてみよう
3 脳の画像を見るコツをつかもう
a 画像は角度が命
b スライスの位置は星、顔、ザリガニ、ソラマメで把握
c 脳の溝にも注目
4 画像から脳の領域を見極めよう
a 前頭葉の画像のポイント
b 側頭葉の画像のポイント
c 頭頂葉の画像のポイント
d 後頭葉の画像のポイント
e 視床の画像のポイント
f 大脳基底核(1)被殻と淡蒼球の画像のポイント
g 大脳基底核(2)尾状核の画像のポイント
h 小脳の画像のポイント
i 脳幹の画像のポイント
j 画像のまとめ
5 脳の症例画像に挑戦してみよう
a 脳梗塞のCT画像
コーヒーブレイク5
b 脳出血のCT画像
コーヒーブレイク6
c くも膜下出血のCT画像
d 外傷性脳損傷のCT画像
アドバンス2 MRIの症例を見てみよう
第4章 脳の神経症状と神経心理症状 障害部位と病態から症状を予測
A 前頭葉病巣の症状とケア
1 前頭葉病巣の症状の特徴
2 前頭葉病巣で起こる具体的な症状とケア
a 動きや発語がない:無動無言症
b 自発的な行動が少なく、覇気がない:自発性欠如
c モノをつかんで離さない:強制把握
d 同じ行動・言葉を繰り返す:保続
e 目的の言葉が出てこない:ブローカ失語
f 抑揚なく途切れ途切れの発話:発語失行
g 「計画−実行−反省−修正−再実行」ができない:遂行機能障害
h 閉眼・開口・挺舌の維持ができない:運動維持困難
i 記憶を一時的に保持し再利用することができない:作業記憶の障害
j 尿意を感じたと同時に排尿する:尿失禁
k 数分ですべてを忘れる、作り話をする:コルサコフ症状
実践 前頭葉の病巣で起こる運動障害と移動・移乗介助
B 側頭葉病巣の症状とケア
1 側頭葉病巣の症状の特徴
2 側頭葉病巣で起こる具体的な症状とケア
a 体験の記憶力が低下する:健忘症
b 自分・相手の言葉が理解できない、ずれた言葉を話す:ウェルニッケ失語
c 漢字が読めない、書けない:漢字の失読失書
d 病巣と反対側の視野がよくない:同名半盲
e まるで“半分”ないかのように振る舞う:半側空間無視
C 頭頂葉病巣の症状とケア
1 頭頂葉病巣の症状の特徴
2 頭頂葉病巣で起こる具体的な症状とケア
a 動作の順番がわからなくなる:観念失行
b 思っていることをジェスチャーにできない:口腔顔面失行・観念運動失行
c 手が不器用になる:肢節運動失行
d トイレに行けない、部屋に戻れない:地誌的見当識障害
e “物”の名前が出てこない:健忘失語
f まるで“半分”ないかのように振る舞う:半側空間無視
g 麻痺があるのに認めない:病態失認
h 衣類が着られない:着衣失行
i 簡単な模写ができない:構成障害
j 周囲の物が取れない:視覚性運動失調
k 視線が一点に集中して離せない:バリント症候群
D 後頭葉病巣の症状とケア
1 後頭葉病巣の症状の特徴
2 後頭葉病巣で起こる具体的な症状とケア
a 病巣と反対側の視野がよくない:同名半盲
b “物”を見ても何かわからない:物体失認
c 目が見えない、見えると言い張る:皮質盲
d 文字が読めなくなる:純粋失読
e 「色」と「色の名前」が結びつかなくなる:色名呼称障害
f すぐに忘れる:記憶障害
h “顔”を見ても誰かわからない:相貌失認
E 視床を中心とした病巣の症状とケア
1 視床を中心とした病巣の症状の特徴
2 視床を中心とした病巣で起こる具体的な症状とケア
a 眠る状態になる、反応が弱い・ない:意識障害
b 目は開いているが、外界に対する反応がはっきりしない:注意障害
c すぐに忘れる:記憶障害
d まるで“半分”ないかのように振る舞う:半側空間無視
e 良好な復唱と理解力の障害:失語様症状
f 病巣と反対側の手足の障害:運動麻痺と感覚障害
g 言葉の発音が不明瞭になる:構音障害
h 口は動かすが声がかすれる、声が小さい:発声障害
実践 視床の病巣で起こる運動障害と移動・移乗介助
F 被殻を中心とした病巣の症状とケア
1 被殻を中心とした病巣の症状の特徴
2 被殻を中心とした病巣で起こる具体的な症状とケア
a 眠る状態になる、反応が弱い・ない:意識障害
b 物を注視できない、追視できない:注意障害
c 言葉が出ず、言い間違いもあるが、復唱・音読は改善する:皮質下性失語
d まるで“半分”ないかのように振る舞う:半側空間無視
実践 被殻の病巣で起こる運動障害と移動・移乗介助
G 小脳病巣の症状とケア
1 小脳病巣の症状の特徴
2 小脳病巣で起こる具体的な症状とケア
a 声が小さくなったり大きくなったりする:失調性構音障害
b 手足などの運動の調節がうまくいかない:運動失調
c 体のバランスを崩す:平衡機能障害
d 食べ物・飲み物を飲み込めない:嚥下障害
実践 小脳の病巣で起こる運動障害と移動・移乗介助
H 脳幹病巣の症状とケア
1 脳幹病巣の症状の特徴
2 脳幹病巣で起こる具体的な症状とケア
a 言葉の発音が不明瞭になる:構音障害
b 手足などの運動の調節がうまくいかない:運動失調
c 食べ物・飲み物を食べたり飲み込んだりできない:嚥下障害
実践 脳幹の病巣で起こる運動障害とポジショニング
I 脳機能担当ナースがかかわると看護計画はこう変わる
事例その1 くも膜下出血の患者さまをケアする
事例その2 脳梗塞の患者さまをケアする
事例その3 脳出血の患者さまをケアする
付録 脳の障害を知るための神経心理学的検査
本書の目的は、今、脳機能障害をもつ患者さまを目の前にした看護師が、どのような点に注意し具体的にかかわったらよいかについて、思考の枠組みを提供し、看護計画立案によるケアの実践を支援することです。
私は、長年にわたり、看護師と共に臨床を行う中で、力のある看護師が脳機能障害の患者さまにかかわる際に、1)脳の解剖を基礎に、2)脳の疾患を理解した上で、3)病気の場所を脳画像で確認し、4)脳の症状を予測したケアを行うことで、患者さまの症状が改善していく姿をみてきました。
しかしそれは、誰もが簡単にできることではありません。脳機能障害は、一枚一枚ミカンの皮をむきながら最後に実の部分にたどり着くような「除外診断的考え」によって症状を理解するという極めて難しい領域です。
そこで本書は、その理解に必要な知識を順序立ててやさしく解説しました。第1章はクリームパンを使った脳の解剖演習、第2章は基本的な病態生理の理解、第3章はCTを中心に病態別の画像読影演習、第4章は脳の領域別症状の理解とケアのポイント及び看護計画の具体例、巻末付録は最低限必要と思われる神経心理検査、という構成となっています。理解されているページはどんどん飛ばしてください。さらに専門的に勉強される方は、本書を土台に前進してください。本書はあくまでも基礎の基礎です。
臨床看護は、日々多忙を極め、じっくりと時間をかけて学習する余硲はありません。そのような看護師のためにも、本書が脳の障害をもった患者さまに対して、どのように考えたらよいかについての羅針盤を提示し、患者さまの回復に少しでも貢献できるのであれば筆者にとってこの上ない喜びです。
2013年3月
小宮桂治