ナースビギンズ
急変対応力10倍アップ臨床実践フィジカルアセスメント
編集 | : 佐藤憲明 |
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ISBN | : 978-4-524-26472-8 |
発行年月 | : 2012年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 182 |
在庫
定価2,640円(本体2,400円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
患者急変を最短で見抜くための「実践アセスメントスキル」を網羅した1冊。看護基礎教育で学ぶ「ヘルス・フィジカルアセスメント」が、なぜ臨床現場で生かしにくいのか。その解決策は「一刻を争う場面で、最適な手技をいかに選ぶか」というノウハウにある。実践からしか学び得ないこの臨床知を、150点以上の写真でリアル・ビジュアルに展開。看護学生やビギナー、今まで以上に観察力を磨きたい看護師に最適の書。
第1章 急変をとらえるフィジカルアセスメントの基本
A 第一印象で見抜く患者の異変
1.第一印象(ファーストインプレッション)とは
B 呼吸状態をとらえるフィジカルイグザミネーション
1.呼吸状態の視診
Column そのほかの呼吸の視診
2.呼吸状態の聴診
Column 聴診器の膜型とベル型
3.呼吸状態の触診
Column フレイルチェストとその固定
4.呼吸状態の打診
C 循環動態をとらえるフィジカルイグザミネーション
1.循環動態の視診
2.循環動態の触診
Column 大腿動脈と動脈穿刺
3.循環動態の聴診
Column 心音の基本:I音、II音とは
D 腹部状態をとらえるフィジカルイグザミネーション
1.腹部状態の視診
2.腹部状態の聴診
3.腹部状態の打診
4.腹部状態の触診
E 脳神経系の異常をとらえるフィジカルイグザミネーション
1.意識障害のアセスメント
2.瞳孔の観察
3.硬直、麻痺、しびれなどの観察
Column 身体診察の心構え
第2章 急変対応力10倍アップ!3分で急変を見抜く実践的アセスメント
A 時間軸で動く急変時の実践的アセスメント
1.フィジカルアセスメントの基本を実践でどう活用するか
2.エキスパートの動きに学ぶ
10秒で見つける 患者の異変
1.病室に入り、患者とその周囲を確認する
A 見た目ですぐに異変がわかる場面の例
B ベッド以外で起こりうる異変の例
C 異変が察知できるベッド周りのサイン
D "いつもと違う”"何かおかしい”を感じるサイン
E 寝ている様子からわかること
2.患者に近づき、アセスメントを続ける
F 意識の有無の確認
G 表情から胸元の観察
H 全身の観察
I ベッドサイドですぐわかるエラー、トラブルの確認
J すばやく行える患者状態を把握する手順
Column 「患者がどこにもいない」という場合
30秒で判断する 命が危ない状況かどうか
1.呼吸状態 見て・聴いて・感じて・触って
A 呼吸状態の把握(呼吸不全の有無)
2.循環状態 ショックの5徴候を見逃さずとらえる
B ショックのアセスメント
1分でとらえる 実践でのバイタルとレベル変化
1.バイタルサインを迅速にとる
A 緊急時の「血圧」確認
B 緊急時の「脈拍」測定
C 緊急時の「呼吸」の確認
2.意識レベルを再チェック
D 意識の「よしあし」の評価
3分で確かめる 患者状態の悪化の程度
1.悪化していく状態をとらえる
A 脈圧や心拍数の変化
B 注意したい心電図波形
C 12誘導心電図での評価
D 排液の観察
2.意識レベルの確認をていねいに
E JCSによる意識レベルの判定
F GCSによる意識レベルの判定
Column 痛み刺激時の注意点
第3章 “急変症状別”フィジカルアセスメント
A ショック 急変時の見きわめ方
1.ショックってなに?
2.ショック ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
B 胸痛 急変時の見きわめ方
1.胸痛ってなに?
2.胸痛 ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
C 意識障害 急変時の見きわめ方
1.意識障害ってなに?
2.意識障害 ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
D 頭痛 急変時の見きわめ方
1.頭痛ってなに?
2.頭痛 ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
E腹痛 急変時の見きわめ方
1.腹痛ってなに?
2.腹痛 ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
F 呼吸困難感 急変時の見きわめ方
1.呼吸困難感ってなに?
2.呼吸困難感 ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
G けいれん 急変時の見きわめ方
1.けいれんってなに?
2.けいれん ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
H 麻痺 急変時の見きわめ方
1.麻痺ってなに?
2.麻痺 ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
第4章 場面別”フィジカルアセスメント
A 臥床患者の深部静脈血栓症(DVT)を見抜く
1.深部静脈血栓症とは
2.深部静脈血栓症 ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
B 人工呼吸器装着患者の急変を見抜く
1.人工呼吸管理とは
2.人工呼吸器装着患者 ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
C 血管造影後の異常を見抜く
1.血管造影とその異常とは
2.血管造影後 ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
D 気管挿管後のアセスメント
1.気管挿管とは
2.気管挿管後 ここをアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
E 胃カテーテル挿入後のアセスメント
1.胃カテーテル挿入とは
2.胃管カテーテル挿入後のアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
F 胸腔ドレーン挿入後のアセスメント
1.胸腔ドレーンとは
2.胸腔ドレーン挿入後のアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
G 気管吸引前後のアセスメント
1.気管吸引とは
2.気管吸引の必要性と効果のアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
H 体位変換・移動前後のアセスメント
1.体位変換・移動による影響とは
2.体位変換・移動の前・中・後のアセスメント
3.もっと知りたいアセスメントのワザ
フィジカルアセスメントは、臨床の看護実践で活用すべき技術ですが、その技法を効果的に習得するのが容易ではないことを読者のみなさんも感じられていると思います。看護基礎教育課程でも、ヘルスアセスメントやフィジカルアセスメントを身体診察技法として系統的に学びながらも、臨床看護実践で十分に活用されているとはいえないのが現状です。
看護師がフィジカルアセスメントを実践するにあたっては、人の健康問題を全人的な角度から総合的に情報収集し、病態推論とともに健康問題を診断していきます。しかし、医師に比べて病態生理の学びが浅い看護師は、最終的な病態診断に結びつけることがむずかしく、診断に必要な情報が不足してしまうことがあります。
編者は、長い間、クリティカルケア領域で看護実践を経験してきていますが、これまでに患者の健康問題を診断するにあたり、収集した情報が不十分であったことで、患者の病態変化に気づけずに、幾度か苦い経験をしたことがあります。一般的にクリティカルケア領域では、生体モニタリングとその評価がアセスメントの情報源としてとらえられがちですが、それだけでは患者の身体・健康問題を把握することはできません。何より、モニタが知らせる危険領域のアラームによって異変に気づいても、すでに患者の病態は進行していることが多いからです。つまり、どのような領域であれ、臨床において患者情報を十分に得るためには、実践的なフィジカルアセスメントを繰り返し、その情報を統合していくことが求められてくるのです。
ここで、フィジカルアセスメントと病態生理の関係を再確認すると、まず、フィジカルアセスメントとは身体検査とその評価であり、健康問題を把握するために必要な情報を統合して分析する手段と説明できます。一方、病態の診断とは、医師が患者の主観的かつ客観的情報から症状の原因を特定し、疾病の種類とその状態を判断することです。また、フィジカルイグザミネーションとは、その原因を知るために必要な情報を収集するための手段で、問診・視診・触診・打診・聴診などをさします。
繰り返しになりますが、看護基礎教育課程では、これらフィジカルイグザミネーションの手技や考え方については、学ぶ機会が設けられています。しかし、なぜ臨床では活用されにくいのでしょうか。それは、臨床で出会う患者から発せられるメッセージは、すでに“苦しい”“痛い”など、比較的急を要する訴え、つまり急変からはじまることにあります。
看護師は、その急変への対処を優先すべく、フォーカスの当たった症状に関連した情報だけを、観察という手段に頼り整理する傾向にあることを、編者自身の経験から理解しています。もちろん、これは緊急時の対処における1つの方法ではありますが、本当に必要な患者情報を総合的に評価することは後回しとなり、知り得た情報だけを医師に報告していくだけに終始してしまいがちです。このことが、今そこにある病態とフィジカルアセスメントを結びつけることができない原因といえるでしょう。
そこで本書は、こうした看護師の行動特性をふまえたうえで、フィジカルアセスメントを効果的に身につけ、現場でいかに活用するかを主題としてまとめあげました。1章は基本的ながらも、さまざまな患者状態に対応できるフィジカルイグザミネーション技術を、手技別にわかりやすく示すことに重きをおきました。また、2章では、この知識を実践につなげられるよう、患者の急変事態において、より素早く必要な情報を得てフィジカルアセスメントを行うための過程を時系列で描きました。さらに、3、4章にて臨床で経験することの多い症状やケア場面への応用編を付帯することで、前半のフィジカルアセスメントとつながりをもって学ぶことができるように構成しました。
編者が救急看護領域にいるため、急変対応を軸にしてアセスメントを導く場面もありますが、より実践的であることを意識した結果であり、多くの臨床場面での活きた対応に通ずると考えます。ですから、ぜひ本書は一般病棟、ことに臨床経験の浅い看護師に手にしていただき、看護基礎教育課程で学んだフィジカルアセスメント技術と照らし合わせながら、臨床看護実践能力のさらなる向上に役立つことを切望します。
2012年4月
佐藤憲明