シンプル循環器学
編集 | : 犀川哲典/小野克重 |
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ISBN | : 978-4-524-26453-7 |
発行年月 | : 2015年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 464 |
在庫
定価4,950円(本体4,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
現代の医学部生のニーズに応え、医師国家試験レベルをシンプルに解説した「循環器学」の教科書。シンプル臨床系シリーズの第3弾。通読性に優れた初学者に優しい一冊となっている。事前に学生が使用し、その結果をもとにした「学生目線」の解説内容が特徴。医学部生のこれからの教科書、国試対策書、また専門的に学ぶ医療系学生にも有用となる一冊。
1章 循環器解剖学
A 心臓の構造
1 心房と心室
2 弁
3 心内膜と心外膜
4 刺激伝導系
B 脈管の構造
1 体循環と肺循環
2 リンパ管
3 冠状動脈
4 血管の構造
2章 心筋電気生理学
A 細胞膜電流とイオンチャネル
1 Na+電流とNa+チャネル
2 Ca2+電流とCa2+チャネル
3 K+電流とK+チャネル
4 その他の膜電流
B 静止膜電位
C 作業心筋の活動電位
D 自動能を有する心筋の活動電位
E 不応期
3章 心筋の収縮と弛緩
A 心筋の微細構造
B 興奮収縮連関(E-Cカプリング)
1 心筋の収縮機序
2 心筋の収縮・弛緩調節
3 病態下の興奮収縮連関
4章 血管生物学
A 血管平滑筋の構造
B 血管平滑筋の電気生理学と収縮機構
1 自動能のある血管
2 脱分極依存性収縮を示す血管
3 脱分極非依存性収縮を示す血管
C 血管の収縮と弛緩
D 血管内皮機能
E 循環調節オータコイドと循環調節ホルモン
1 循環調節オータコイド
2 循環調節ホルモン
5章 循環器診療の基本
A 診察の基本
1 症例
2 主訴
3 現病歴
4 既往歴
5 家族歴
6 生活歴
7 まとめ
B 診察(現症)
1 視診
2 触診
3 打診
4 聴診
5 嗅診
C 脈拍測定
D 血圧測定
6章 循環器疾患の主要徴候
A 胸痛
B 呼吸困難
C 動悸
D 浮腫
E チアノーゼ
F ショック
1 問診
2 検査
7章 心音と心雑音
A 心周期と心機図
B 心 音
1 正常心音
2 過剰心音
C 心雑音
1 収縮期雑音
2 拡張期雑音
3 連続雑音
4 無害性雑音
8章 検査
第一部 放射線学的検査
A 胸部単純X線検査
1 撮像法
2 心陰影の異常
3 肺血管陰影の異常
4 その他の異常
B コンピュータ断層撮影(CT)
1 基本原理
2 ヘリカルCT:多検出器型CT(MDCT)/マルチスライスCT(MSCT)
3 CTの特徴
4 CT検査法
C MRI
1 心臓MRI
2 代表的な心臓MRI検査法
3 MRA
4 MRV
D 核医学検査
1 心筋血流シンチグラフィ
2 心筋交感神経シンチグラフィ
3 心筋脂肪酸代謝シンチグラフィ
4 心筋梗塞シンチグラフィ
5 PET
6 心プールシンチグラフィ
E カテーテル検査
1 心臓カテーテル検査
2 血管造影検査
第二部 生理学的検査
A 標準12誘導心電図
1 標準12誘導心電図記録の基本
2 誘導
3 心電図波形の名称と意義
4 心電図の基本的な読み方
5 電解質異常の心電図変化
B 特殊な心電図検査
1 運動負荷心電図
2 ホルター心電図
3 携帯型イベントレコーダ
4 モニター心電図
C 心臓超音波検査
1 断層法
2 Mモード法
3 ドプラ法
4 左室収縮能の評価法
5 パルスドプラ法による左室拡張能の評価法
6 負荷心エコー図法
7 コントラストエコー図法
8 経食道心エコー法
第三部 循環器疾患に有用な血液検査、バイオマーカー
A 心不全の指標
1 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
2 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
B 急性心筋梗塞の指標
1 クレアチンホスホキナーゼ(CK)
2 心筋トロポニン
3 心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)
C 血栓形成の指標
1 プロトロンビン時間(PT)
2 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
3 Dダイマー
9章 血圧異常
A 高血圧の定義と診断基準
1 概念・定義
2 疫学
B 血圧の制御機構
1 交感神経系の関与
2 レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の関与
3 腎性機序の関与
4 血管作動因子の関与
C 本態性高血圧症
1 成因
2 病態
3 症状
4 診断
5 検査
D 二次性高血圧症
1 腎実質性高血圧
2 腎血管性高血圧
3 内分泌性高血圧
4 血管性高血圧
5 薬剤誘発性高血圧
6 その他
E 高血圧の合併症
F 高血圧の治療
1 降圧目標
2 生活習慣の是正
3 薬物療法
4 高齢者の降圧療法
5 糖尿病合併高血圧の治療
6 冠動脈疾患合併高血圧の治療
7 慢性腎臓病合併高血圧の治療
G 低血圧
1 定義
2 病態・分類
3 症状
4 治療
10章 脂質代謝異常と動脈硬化
A 脂質異常症
1 脂質とは
2 概念・診断基準
3 高脂血症の病型分類
4 脂質異常症と動脈硬化性疾患
B 動脈硬化の成因
1 動脈硬化の概念と分類
2 粥状動脈硬化の病態生理
C 動脈硬化の危険因子
D メタボリックシンドローム
1 メタボリックシンドロームとは
2 メタボリックシンドロームの病態
3 動脈硬化症の危険因子としてのメタボリックシンドローム
E 動脈硬化の治療と予防
1 動脈硬化症の管理のポイント
2 治療法−生活習慣の改善
3 治療法−薬物療法
11章 冠動脈疾患
A 狭心症(AP)
1 概念・定義
2 疫学
3 病態生理
4 分類
5 症状・身体所見
6 検査・診断
7 治療
B 急性冠症候群(ACS)
1 概念・定義
2 疫学
3 病態生理
4 分類
5 症状・身体所見
6 検査・診断
7 治療
8 合併症
9 リハビリテーションと二次予防
C 心筋梗塞における左室リモデリング
1 概念・定義
2 病態生理
3 治療
12章 心膜・心筋疾患
A 特発性心筋症
1 拡張型心筋症(DCM)
2 肥大型心筋症(HCM)
3 拘束型心筋症
4 たこつぼ心筋症
5 左室心筋緻密化障害
6 不整脈原性右室心筋症(ARVC)
B 特定心筋疾患(症)
1 心サルコイドーシス
2 心アミロイドーシス
3 心ファブリ病
4 その他の心筋症
C 心筋炎
1 急性心筋炎
D 感染性心内膜炎
E 急性心膜炎
F 収縮性心膜炎
G 心嚢液貯留と心タンポナーデ
1 心嚢液貯留
2 心タンポナーデ
13章 心臓弁膜症
総論
1 概念・定義
2 病因
3 病態生理
4 症状
5 診断・検査
6 治療
7 予後
8 人工弁
各論
A 大動脈弁狭窄症(AS)
1 病因
2 病態・症状
3 診断・検査所見
4 治療
B 大動脈弁閉鎖不全症(AR)
1 病因
2 病態・症状
3 診断・検査所見
4 治療
C 僧帽弁狭窄症(MS)
1 病因
2 病態・症状
3 診断・検査所見
4 治療
D 僧帽弁閉鎖不全症・僧帽弁逸脱症
1 病因
2 病態・症状
3 診断・検査所見
4 治療
E 三尖弁閉鎖不全症(TR)
1 病因
2 病態・症状
3 診断・検査所見
4 治療
F 連合弁膜症
14章 心臓腫瘍
総論
1 概念・定義
2 症状
3 診断・検査
4 治療・予後
各論
A 心臓粘液腫
1 病因
2 病態・症状
3 診断・検査所見
4 治療
15章 心不全
A 心不全とは
B 心不全の概念の変化
C 心不全の病態生理
1 心筋細胞内カルシウム代謝障害
2 細胞死
3 リモデリング
4 心機能規定因子
5 左室圧-容積曲線
D 心不全の分類
1 急性心不全と慢性心不全
2 収縮不全と拡張不全
3 右心不全と左心不全
E 急性心不全
1 自覚症状
2 身体所見
3 検査
4 治療
F 慢性心不全
1 原因
2 自覚症状
3 身体所見
4 検査所見
5 代償機構
6 増悪因子
7 治療
16章 不整脈
A 総論・不整脈の分類と発生機序
1 総論
2 分類
3 発生機序
B 不整脈の治療法
1 頻脈性不整脈の治療
2 徐脈性不整脈の治療
3 アダムス・ストークス症候群
C 頻脈性不整脈
1 上室不整脈
2 心室性不整脈
D 徐脈性不整脈
1 洞不全症候群
2 房室ブロック
3 徐脈性不整脈の治療
17章 肺性心疾患
A 肺高血圧症
1 概念・定義
2 原因
3 症状・身体所見
4 検査
B 原発性肺高血圧症
1 概念・定義
2 疫学・予後
3 原因
4 症状・身体所見
5 検査
6 治療
C 二次性肺高血圧症
D 肺塞栓症
1 概念・定義
2 疫学
3 原因
4 分類
5 病態生理
6 症状・身体所見
7 検査
8 予後
9 治療
E 慢性血栓塞栓性肺高血圧症
F 肺性心
1 概念・定義
2 原因・分類
3 症状・身体所見
4 治療
18章 血管疾患
第一部 動脈
A 大動脈瘤
1 概念・定義
2 病態生理
3 分類
4 症状
5 診断
6 治療
7 予後
B 大動脈解離
1 概念・定義
2 病態生理
3 分類
4 症状
5 診断
6 治療
7 予後
C 高安病(大動脈炎症候群)
1 概念・定義
2 病態生理
3 分類
4 症状
5 診断
6 治療
7 予後
D 急性動脈閉塞症
1 概念・定義
2 病態生理
3 症状
4 診断
5 治療
6 予後
E 閉塞性動脈硬化症(ASO)
1 概念・疫学
2 臨床症状・分類
3 診断
4 治療
F バージャー病閉塞性血栓血管炎(TAO)
1 概念・疫学
2 臨床症状
3 診断
4 治療
第二部 静脈
A 静脈瘤
1 概念・疫学
2 臨床症状・分類
3 診断
4 治療
B 静脈血栓
1 深部静脈血栓症
2 表在性血栓性静脈炎(STP)
19章 先天性心疾患
A 心血管系の発生
B 胎児循環
C 心房中隔欠損(ASD)
D 心室中隔欠損(VSD)
E 心内膜床欠損(ECD)
F ファロー四徴症(TOF)
G 動脈管開存(PDA)
H その他の先天性心疾患
1 大動脈縮窄
2 完全大血管転位
3 総肺静脈還流異常・部分肺静脈還流異常
4 肺動脈閉鎖
5 三尖弁閉鎖
6 左心低形成症候群
7 エブスタイン奇形
8 両大血管右室起始
9 修正大血管転位
20章 失神
A 失神の定義
B 圧受容体反射
C 失神をきたす疾患
1 反射性(神経調節性)失神
2 起立性低血圧
3 不整脈
4 その他の心疾患
21章 循環器疾患治療薬の作用機序
A 強心薬と心不全治療薬
1 ジギタリス
2 カテコラミン
3 ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬
4 その他
B 降圧薬
1 カルシウム拮抗薬
2 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
3 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
4 利尿薬
5 β遮断薬(αβ遮断薬を含む)
6 α遮断薬
7 その他の降圧薬
C 狭心症治療薬
1 硝酸薬(ニトログリセリンほか)
2 β遮断薬(カルベジロールほか)
3 カルシウム拮抗薬(アムロジピン、ジルチアゼム、ベラパミルほか)
4 ATP感受性K+チャネル開口薬(ニコランジル)
D 血管拡張薬
1 プロスタグランジン(PG)製剤(PGE1、PGI2類似薬ほか)
2 パパベリン系薬
3 ニコチン酸系薬(ヘプロニカート)
4 カルシウム拮抗薬
5 エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタンほか)
6 PDE5阻害薬(シルデナフィルほか)
7 β刺激薬(イソクスプリンほか)
8 α遮断薬(トラゾリンほか)
E 抗不整脈薬
1 I群抗不整脈薬
2 II群抗不整脈薬
3 III群抗不整脈薬
4 IV群抗不整脈薬
5 その他の抗不整脈薬
F 利尿薬
1 サイアザイド系利尿薬(トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジドほか)
2 ループ利尿薬(フロセミド、アゾセミドほか)
3 カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン、エプレレノン、トリアムテレンほか)
4 炭酸脱水酵素阻害薬(アセタゾラミド)
5 浸透圧利尿薬(イソソルビド、D-マンニトールほか)
6 バゾプレシン拮抗薬(トルバプタン)
G 抗血栓薬
H 脂質異常症治療薬
参考図書
和文索引
欧文索引
序文
「シンプル循環器学」の企画が始まってから5年、遂に上梓にこぎ着けることができた。長い道程であった。発端は大分大学医学部の循環器病学の教育のために適切な教科書を作成してはどうかと言う学内講師陣の提案であった。学生達からもプリントではなく、まとまったテキストのようなものが欲しいとの希望があった。両者の考えが合致し、講義を担当している学内諸先生方に協力をお願いして、とりあえずサブノートのようなテキストを目標として企画準備が始まった。その最中、南江堂から『シンプル循環器学』を出版しないかという提案があり企画が前進した。
「シンプル臨床系シリーズ」は本書の他に数冊が発刊されている。どの本も執筆グループの教科書に対する想いが伝わってくる好書である。理想とする医学教育の実践のために理想とする教科書を作成したいという想いを持つ同志がいることを実感する。「シンプル循環器学」は上梓にいたる経過の中で、前段階の予備版を作成した。その中でいかに本書の特徴を強め深化させるかという意見・企画を出し合った。その一つに学生への講義で実際に使用し、彼らの意見を著者にフィードバックしてよりよいものにしていく試みがあった。学生達も様々な意見を寄せてくれ、多くは採用されて次版に活かされた。これは都合3年繰り返され、新しい試みであり成果があったと考える。
本書は循環器領域、すなわち心血管系の解剖、生理、薬理、内科、外科、小児科、臨床検査、放射線科等の各分野を全て包括した成書であり、チュートリアル循環器学教育で最大限の力を発揮するものと自負する。そして、その構成上の理由により分担執筆であり、大分大学医学部内の同僚・関係者に執筆をお願いした。分担執筆本の例に洩れず、本書も記述の幅と深さに多少の濃淡がある。また、ある章は、最新の報告に基づき大変詳細な記述になり、他方では比較的シンプルに記述された章もある。ある程度整えようかとも考えたが、むしろその点を本書の特徴の一つと考えてもらえれば、かえって活用の範囲が広がるかもしれないと思い直した。即ちその点も類書との差違であり、アピールポイントであると。
最近はインターネットで検索すると、簡単・迅速に情報が手に入る。通り一遍の情報であれば、それで間に合うことは多い。しかし学生が学術的な事を知りたい時、極力専門書を参照して欲しいものである。安易に入手できる情報だけで何事も済ませてしまえば教科書やテキストは不要となる。また学生が本を読まなくなってしまって欲しくない、との気持ちもある。本書が幸いにして学生諸君、あるいは医学を志す、医学に興味をもつ皆さんに受け入れられれば、版を重ねていくことが想定される。その際に恐らく、徐々に幅と深さが統一されて、体裁が整うと思われる。それまでは、各章の執筆担当者の自由度も含めて、あまりに制約は課さないことにした。
診療・教育・研究に日々忙しい中で、本書の執筆を担当していただいた同僚諸氏に感謝し、本書がこの領域でそれなりの場所を得て皆さんのお役に立つことを願い、また改訂されていくことを願って序にかえたいと思う。
平成27年3月
犀川哲典
小野克重