ナースビギンズ
正しく・うまく・安全に気管吸引・排痰法
著 | : 道又元裕 |
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ISBN | : 978-4-524-26414-8 |
発行年月 | : 2012年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 126 |
在庫
定価2,310円(本体2,100円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
その痰は本当に取らなければいけないの?看護が日々行う業務の中でも最も侵襲的な気管吸引と排痰法。患者にとって本当に安全で正しい手技とは何かを、明確な根拠と豊富なイラスト・写真で丁寧に解説。看護師ビギナーからビギナーを指導するスタッフまで、気管吸引・排痰法に携わるすべての方に読んでほしい、排痰のスペシャリストが送る唯一無二の一冊。
序章 まず考えたい その痰、取るべき?取らなくていい?
第1章 なぜ、どうやって 痰を出すのか
A 痰を出すという行為を整理する
1.排痰援助ってどんなときに必要になる?
2.そもそも痰って何ですか?
Colum 「喀痰を喀出」どこが間違い?
B 痰が出るのはどういうメカニズムか
1.痰を出すために必要なことは?:痰が出てくる3つの条件
C 痰を出すにはどんな方法があるか
1.咳嗽で痰を出す
2.体位ドレナージで痰を移動させる
3.加湿によって痰を固くせずに出しやすくする
4.呼吸理学療法と排痰の関係
D もう一度考える、なぜ、どんなときに吸引・排痰をするのか
1.痰を自力で出せない、痰による影響が大きい
2.排痰援助には危険がいっぱい
Colum 痰を取ると無気肺になる?
第2章 気管吸引 なぜ、いつ、どのように行うか
A 気管吸引とはどんな手技か
B 気管吸引は、なぜ、どんなときに行われるのか
1.気管吸引の目的とは
2.気管吸引の適応とは
C 気管吸引の適応をどうアセスメントするか
1.痰があることをどう見抜く?
2.患者状態への影響を評価する
3.それでも痰はないかもしれない
D 気管吸引の合併症は、なぜ起こるか、どう対応するか
1.これだけある身近な合併症
第3章 写真でみる 気管吸引の手順と根拠
A 気管吸引の方法
1.気管吸引の種類・方法を理解する
Colum 口腔吸引と鼻腔吸引の実際
Evidence 開放式気管吸引と比較した閉鎖式気管吸引のメリットと適応
B 気管吸引を行う前のアセスメントと対応
1.気管吸引の適応を評価する
2.聴診によって痰の貯留部位を確認する
3.気管吸引前に、加湿と体位を再チェック
C 気管吸引前の準備と対応 根拠と臨床の実際
気管吸引前の準備と対応―1 感染対策
Colum むかしは“手袋は操作側の手だけでよい”とされていたけど
Colum 原則に近づける努力をする
気管吸引前の準備と対応―2 開放式気管吸引の吸引カテーテルの選択
Colum トイレッティング
気管吸引前の準備と対応―3 閉鎖式気管吸引の吸引カテーテルの選択
気管吸引前の準備と対応―4 カフ圧の確認とそのほかの垂れ込み防止策
気管吸引前の準備と対応―5 患者への説明
D 開放式気管吸引 写真でみる手順と根拠
開放式気管吸引の手順―1 吸引圧の設定
開放式気管吸引の手順―2 吸引カテーテルの準備と接続
開放式気管吸引の手順―3 酸素化の実施
開放式気管吸引の手順―4 吸引カテーテルの挿入
Evidence 吸引圧と吸引空気量の関係
開放式気管吸引の手順―5 痰の吸引の実施
開放式気管吸引の手順―6 吸引後の対応
E 閉鎖式気管吸引 写真でみる手順と根拠
閉鎖式気管吸引の手順―1 吸引圧の設定と酸素化の実施
閉鎖式気管吸引の手順―2 閉鎖式気管吸引のセッティング
閉鎖式気管吸引の手順―3 吸引カテーテルの挿入
閉鎖式気管吸引の手順―4 痰の吸引の実施
閉鎖式気管吸引の手順―5 吸引カテーテルの洗浄
閉鎖式気管吸引の手順―6 吸引後の対応
F 気管切開口からの吸引 手順と実際
G やってはいけない気管吸引―鼻腔吸引の実態
Evidence 小児の気管吸引
第4章 吸引以外の各排痰法 なぜ、いつ、どのように行うか
A 排痰法と呼吸理学療法の関係を理解する
1.排痰法と呼吸理学療法の関係
2.スクイージングの正体
3.スクイージングを行うことについて考える
B 排痰法の実際(1) 排痰の基本的な考え方
1.では、どうやって排痰法を行うのか
2.安全で根拠ある排痰法は基本の積み重ね
C 排痰法の実際(2) 加湿の具体策
1.再チェック! 適切な加湿の条件とは
2.環境調整における加湿のポイント
3.治療行為に伴う加湿のポイント
4.ネブライザーによる加湿の実際
Evidence ネブライザーによる薬液噴霧のエビデンス
5.それでも効果があるという声をどう考えるか
D 排痰法の実際(3) 体位変換の具体策
1.体位変換はなぜ有効?
2.体位変換を行うときのポイント―角度の検証
3.体位変換を行うときのポイント―排痰体位の実際
4.ほかの排痰法を実施する際も体位変換は必須
5.腹臥位療法とは
Evidence ここがコツ!体位変換の臨床の実際
E 適切な排痰法を行っても、十分な効果が得られない場合
気管吸引は、急性期病院から療養型医療施設、在宅ケア領域と広く行われ、今や多くの医療職や、それ以外の方でも実施が可能となりました。
一般的には、気管吸引という行為は、やり方を少々学べば誰にでもできる手技と理解されていることが少なくありません。ある人にとっては、気管(気道を含む)吸引は日常的な行為になっており、「たかが気管吸引」として扱われているようにも見受けられます。
確かに、気管吸引を数多経験している人にとっては、いとも簡単に行えるスキルであり、また、深く論じ合うようなテクニックでもないと感じるかもしれません。手技・方法は比較的単純で、使用する物品はさほど多くはありません。さらに、複雑な構造の装置もありません。しかし、実際の臨床場面では、この気管吸引の手技によって患者さんの生命にかかわるような事象を生じさせているのが事実です。つまり、気管吸引は「やりように」よっては、極めて高い侵襲となって患者さんに多大な悪影響を与えてしまう行為なのです。
気管吸引は患者さんにとって侵襲的行為であるという大前提の基に、可能な限り安全かつ安心なスキルをもって実践することが大切だと言えます。そこで、「たかが気管吸引」ではなく、実際は「されど気管吸引、侮るなかれ」であることを多くの方にお伝えしたく、本書を企画・執筆しました。
そのコンセプトを支える重要な柱としたのは、可能な限り「科学的根拠」と「経験知」を整理して、実践に結びつくコンテンツを示すことです。この考えに基づき、看護ケアの根拠の曖昧さに向き合い試行錯誤しながら、最良のエビデンスから導いたもの、多くの経験から裏づけられるもの、患者満足度に答えを求めたものなど、「万能は無いことを前提とした現実場面の最善」と言える手法や考え方を記しました。そして、どれだけ気管吸引を経験しても、「今、やろうとしている気管吸引は、患者さんにとって本当に必要ですか?」と自問する姿勢を忘れずにいたい、そんな思いを込めたつもりです。
気管吸引の実践者である読者のみなさんにとって、本書が「本当にその手技が安全と安心を保証し、患者さんの満足につながる妥当なものなのか」という命題を考えるうえでの道しるべとなり、ベストプラクティスな気管吸引を実践するために少しでもお役に立てることを祈っています。
2012年4月
道又元裕