書籍

「モニター画像」と「手の感覚」から判断する大腸内視鏡挿入攻略法改訂第2版

: 鈴木康元
ISBN : 978-4-524-26393-6
発行年月 : 2012年7月
判型 : B5
ページ数 : 138

在庫品切れ・重版未定

定価5,500円(本体5,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

大腸内視鏡挿入法の勉強会として有名な「二木会」を主催する著者による好評書。多数の内視鏡像を収載し、「モニター画像」と「手の感覚」による挿入法を部位ごとに順を追って解説する。初版刊行以来、著者が蓄積した最新の挿入テクニックを余すところなく盛り込んだ。「TCSは日々刻々と生まれ変わっている」。尽きることのない著者の探求心が凝縮した渾身の改訂版。

基礎編
 1 TCSの変遷と理想的挿入法
 2 TCSを行う環境
 3 TCS攻略のためのノウハウ
基本操作編
 1 スターティングポジション
 2 右手と左手
 3 アングル操作
 4 管腔(屈曲)の見え方とスコープの押し引き
 5 間合い
 6 ホバリング
 7 リード
 8 管腔(屈曲)の方向―血管の走行を読む
 9 屈曲を12時方向でパスする手順
 10 管腔(屈曲)が見えない状態でスコープを押す際の注意点
 11 用手圧迫
 12 ループ法とホールド法
 13 ターンとツイスト
実践編
 1 直腸から下部S状結腸(LS)にかけての挿入法
 2 中部S状結腸(MS)での挿入法
 3 上部S状結腸(US)での挿入法
 4 S状結腸下行結腸移行部(SDJ)での挿入法
 5 下行結腸での挿入法
 6 左結腸曲での挿入法
 7 左側横行結腸(LT)での挿入法
 8 中部横行結腸(MT)から右側横行結腸(RT)にかけての挿入法
 9 右結腸曲での挿入法
 10 上行結腸から盲腸にかけての挿入法
索引

「誰でもわかるTCSの挿入理論の普及」を目的として2005年8月に発刊した『大腸内視鏡挿入攻略法』は多くのコロノスコピストから支持され、大腸内視鏡挿入法がそれまでの場当たり的かつ試行錯誤的な挿入法からしっかりとした挿入理論に基づく、パターン化された挿入法へと大きく舵を切るようになったのではないかと自負しています。
 しかし、『大腸内視鏡挿入攻略法』も発刊から7年近くが経過し、大腸スコープ市場の大半を占めるオリンパス社製スコープのほとんどが硬度可変式スコープに変わったことや、筆者が現在教えている挿入法も初版時のものと比較すると、さらにわかりやすく、さらに簡単に、さらに多くの症例に有効な挿入法へと変わっていることから、このたび改訂第2版を出版することになりました。
 今版では、本書を読んだだけであたかもTCSが簡単にできるかのような錯覚を覚えられる書を目指しました。まず、初版では基礎編と実践編の2部構成であったものを、新たに基本操作編を設けて3部構成とすることでさらにわかりやすいものにしました。また、大腸内視鏡のモニター画像を初版より大幅に増やすことで、スコープ操作によるモニター画像の変化をさらにわかりやすいものにしました。その結果、コロノスコピストとしては経験の浅い先生からかなりのベテランの先生まで広く参考になるものになっていると思われます。本書を活用され、より質の高い大腸内視鏡検査にお役立てください。
2012年7月
鈴木康元

本書はこれから大腸内視鏡検査を始める、すでに行っているのだがなかなか上手くいかない、とお悩みの医師たちにとって最適な教科書である。本書で述べられているさまざまなポイントの中で、はじめのうちは基本操作における「スコープと腸管壁との間合い」と「ホバーリングの感覚」がとくに重要であり、まずこれらを完璧にマスターしていただきたい。上達に伴って、可能な限りループ法から著者らのホールド法(一般的には軸保持短縮法とされている)での挿入を心掛けていただきたい。ホールド法での挿入率を向上させるためには、本書で繰り返し述べられているPreR(管腔を3時方向にもっていく)操作とライトターン操作をマスターすることが必須である。このテクニックはホールド法での挿入においてもっとも重要かつ必須のテクニックであり、押すのではなくライトターンでスコープの直線化を保ち(スコープは右に捻ると構造上直線化しようとする)ながら、ヒダをかき分け進んでいくイメージでの挿入である。この技術が身に付けば7割近い患者においてホールド法での挿入が可能となり、(セデーションを使用しなくとも)苦痛のない全大腸内視鏡検査(TCF)が可能となるであろう。本書の特徴は実際の内視鏡画像が多用されていることであり、上述したテクニックが身に付きやすく、これに著者が重要としている手の感覚が連動すればほぼ完璧な挿入法の完成となる。そして、本書の技術を駆使すれば最終的には患者一人一人の大腸に対する微調整での対応が可能となる。
 また、教育面においては「挿入法をパターン化する」、「脾彎曲部までの前半と脾彎曲以降の後半とに分けて組み立てる」との著者の考えがユニークである。筆者も自然に無意識で行っていたことではあるが、初心者への指導時にこの点を強く意識させることで、著者が述べているように画一的な指導体制が可能となり、レベルアップを早くすることが可能になると考えられる。さらに、「こんな時どうする?」と「ポイント」を繰り返し熟読し、検査にフィードバックさせることで上達がいっそう早くなることが期待される。
 ただし、著者も述べているように、大腸内視鏡検査において挿入は重要であるが、目的ではない。内視鏡医は「病変をみつけてなんぼ」であり、病変を発見できない内視鏡医はいくら挿入が上手でも検査を行う資格はない。病変が発見できるようになれば、次は診断である。病変を発見する目があれば、診断能力もたちまち向上する。無理をしないこと、途中で退く勇気をもつことも重要である。発見、診断ができるようになれば、最終的には治療が必要となり、治療こそ正確な内視鏡操作を駆使して行うことが必須である。本書は、挿入、すなわち安全な治療技術につながる重要なエッセンスがぎっしりと詰まった1冊であるといえる。
 本書の繰り返しの熟読と、検査へのフィードバックを繰り返して、一日も早く先生方読者が安全、快適、正確で確実なCF world(大腸内視鏡検査の世界)にこられることを願っている。

評者●斉藤裕輔
内科111巻3号(2013年3月号)より転載

大腸疾患の罹患率の増加、特に大腸癌の増加により大腸内視鏡検査の需要は増加の一途をたどっている。しかし、挿入技術の習得は比較的困難であり、患者の苦痛は普及の障害の一因となっている。さらに、多くの症例を経験したからといって必ずしも上達するとは限らないのが現状である。その結果、名手といわれる先生方から毎年のように新しい解説書が出版されているが、必ずしも優れた技術書とはいいがたいものも少なくない。
 本書はすでに2005年に発行されて好評を博した大腸内視鏡挿入法の解説書の改訂第2版であるが、熟達したコロノスコピストであると同時に、研修医の指導に長年腐心してきた著者の経験が活かされた内容となっている。「モニター画像」と「手の感覚」から判断する、と銘打っている点がユニークであるが、決して漠然とした「感覚」を解説しているのではなく、きわめて論理的に、基礎編、基本操作編、実践編と段階的に解説をすすめている。全体として強調されているのが、挿入の上達、安定した挿入に不可欠の「パターン化」の重要性であり、共感を覚える。特によいと思われる点は、記載が簡潔であり、主要部分は一気に読み通せることである。また、ループ法とホールド法(ループをつくらずストレート化を要しない挿入法)を併記して解説をすすめているのもよい。なぜなら、ループをつくらずに挿入することを理想としても、実際の症例によって、あるいは術者の習熟の過程において、ループを形成してしまう場面はままあることであり、両方の場合に対処できるようになることが現実的には必要であるからである。また、「こんな時どうする」という欄で、トラブルシューティングが解説されているのも親切であり、読後すぐに役立つ情報である。
 一方、「ホバリング」、「リード」、「ターン」、「ツイスト」などのあまり耳慣れない用語が飛び出してくる。それぞれの言葉の定義が示された箇所で十分にその意味を理解しておかないと、実際の挿入法のところの解説がわからないという事態に陥りかねないので注意が必要である。
評者● 橋口陽二郎
外科74巻11号(2012年11月号)より転載

9784524263936