高周波カテーテルアブレーション手技マニュアル
攻略法決定版
著 | : 奥村謙/沖重薫 |
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ISBN | : 978-4-524-26392-9 |
発行年月 | : 2015年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 294 |
在庫
定価9,350円(本体8,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
本領域を代表する著者らが実践的な手技をまとめた決定版。アブレーションの基礎知識から、豊富な経験に基づいた疾患別の“攻略法”、合併症や再発時におけるの対策まで、アブレーションを行うすべての医師に必要な知識を網羅。“攻略法”では、オールカラーの3D画像等の実際的な画像とやイラストによりビジュアルに理解できる。高度な技術を合理的かつ安全に行うためのスキルが身につく。
I カテーテルアブレーションの基礎知識
A カテーテルの基本的操作
1 一般的注意事項
2 右房内での操作
3 右室内での操作
4 左室内での操作
5 左房内での操作(経心房中隔アプローチ法)
6 左房内での操作(経左室逆行性アプローチ法)
B 各社アブレーションカテーテル、高周波発生装置の特徴
1 一般的特徴
2 各社の製品の特徴
3 イリゲーションシステム
C 3次元(3D)マッピングの原理と臨床応用
1 CARTOシステム
2 non-contact、contact mapping system(EnSite)について
II 房室結節回帰頻拍の攻略法
A 頻拍の発症機序とアプローチ法
B 解剖学的アプローチ法
1 アブレーションの実際
2 通電時の注意点
3 非通常型房室結節回帰頻拍に対するアブレーション
C 電位を指標としたアプローチ
1 SPの記録部位と特徴
2 アブレーションの実際
3 通電中の観察事項と房室ブロックの予防
4 エンドポイント
5 治療困難例に対するアプローチ
III 心房頻拍の攻略法
1 異所性心房頻拍症
2 洞房結節回帰頻拍
3 心房内回帰頻拍
4 不適切洞頻拍(inappropriate sinus tachycardia)
5 開心術後心房頻拍(incisional atrial tachycardia)
6 上大静脈起源の心房頻拍
IV 心房粗動の攻略法
1 心房粗動の分類と発症機序
2 通常型(下大静脈.三尖弁輪峡部依存性)心房粗動アブレーションの実際
3 非定型的(峡部非依存性)心房粗動に対する3D マッピングを用いた治療戦略
V 心房細動の攻略法
1 総論−心房細動アブレーションの原理・方法・成績・ガイドライン・課題
2 3DイメージングガイドCPVI
3 CARTOSOUNDR
4 コンタクトフォースガイドCPVI
5 VisiTagTM ガイドアブレーション
6 上大静脈隔離術
7 僧帽弁輪峡部の線状アブレーション
VI WPW症候群の攻略法
A 頻拍の発症機序とアプローチ法
B 右側副伝導路アブレーション
1 アプローチ法
2 ロングシースの種類と使用法
3 右前中隔副伝導路アブレーション
4 右側中中隔部副伝導路アブレーション
5 右側後中隔部副伝導路アブレーション
6 右側自由壁副伝導路アブレーション
7 Mahaim線維束のマッピング
8 パーマネント型房室回帰頻拍の攻略法
C 左側副伝導路アブレーション
1 アプローチ法の選択
2 経左室アプローチ法
3 経心房中隔アプローチ法
4 multicomponent副伝導路アブレーション
VII 特発性心室頻拍の攻略法
A 頻拍の発症機序とアプローチ法
1 右室流出路起源心室頻拍
2 右室自由壁起源心室頻拍
B 左室起源心室頻拍アブレーション
VIII 器質的心疾患に合併する心室頻拍の攻略法
1 アブレーション戦略
2 entrainment mappingによる回路内必須緩徐伝導路同定法(戦略1)
3 substrate mappingとpace mappingによる心室頻拍起源同定法(戦略2)
4 非虚血性心筋症に伴う心室頻拍の治療戦略
5 陳旧性心筋梗塞症に合併した心室頻拍に対するアブレーション
6 心外膜アプローチ法によるアブレーション法
IX 心室細動の攻略法
X 合併症とその対策
1 合併症の種類と頻度
2 合併症予防のための対策
XI 再発時の対策
1 注意点
2 房室回帰頻拍再発例
3 心房頻拍再発例
4 心房粗動再発例
5 心房細動再発例
6 心室頻拍再発例
文献
索引
刊行に寄せて
奥村・沖重が『高周波カテーテルアブレーションマニュアル−手技の実際』(初版)を刊行したのは1998年である。2002年に「新版」として改訂したが、初版以来すでに17年が経過した。この間に不整脈の病態解明が進み、さらに3次元マッピングシステムの開発、臨床応用、技術の進歩等もあり、以前は治療困難と考えられていた不整脈も普通にアブレーションの予定表に加えられるようになった。その代表が心房細動と器質的心疾患に伴う心室頻拍で、以前に比べると現在の高周波カテーテルアブレーションは異次元のレベルに到達したといっても過言ではない。
高周波カテーテルアブレーションがわが国に導入されたのは1991年で、治験終了後、全国に急速に普及した。筆者らは直流通電の時代よりアブレーションを手掛けていたが、高周波アブレーションにも治験当初より積極的にかかわってきた。高周波アブレーションの黎明期は、頻拍の機序解明のための電気生理学的考察と電極カテーテルを至適通電部位に誘導するカテーテルテクニックが中心で、初版では筆者らの知識と経験に基づいた「手技」を先生方に提示した。一方、3次元マッピング・イメージングは、より確実かつ安全なカテーテル誘導(ナビゲーション)を可能としたが、古典的な電気生理学的知識だけでは応用困難で、3次元興奮伝播マッピング構築法やアブレーション部位決定法など、新たな課題も生じてきた。筆者らはCARTO システム、EnSite/NavXシステムを市販直後よりカテーテルアブレーションに取り入れ、現在多くのアブレーションで実践的に使用している。ただしアブレーション治療に最も必要なのは電気生理学的な洞察力と熟練したカテーテル操作で、この観点からは高周波カテーテルアブレーションの本質は現在も以前と変わらないともいえる。
本書は改訂第3版ともいえるが、新たに追加した項目が多く、最新版と受けとめていただきたい内容となっている。WPW症候群、発作性上室頻拍、心房頻拍、特発性心室頻拍/期外収縮に対する基本的なアブレーション手技から、非定型的心房粗動/頻拍、心房細動、そして器質的心疾患に伴う心室頻拍、さらには心室細動まで、すべての頻脈性不整脈に対するアブレーション手技を網羅した。これからアブレーションを学ぼうとされる若手の先生方だけでなく、新たなステップに挑もうとされている中堅の先生方にまで参考になるものと確信している。先生方のカテーテルアブレーション手技がさらに向上するとともに、長期持続性心房細動に対するアブレーションや心臓突然死予防に向けてのアブレーションなど、可能性を追い求められ、チャレンジされることを期待したい。
2015年4月
奥村謙
沖重薫
このたび、南江堂から奥村 謙と沖重 薫両医師による『高周波カテーテルアブレーション手技マニュアル』が上梓された。本書は1998年に同社から出版された『高周波カテーテルアブレーションマニュアル−手技の実際』のいわば改訂第3版である。初版はわが国のカテーテルアブレーションの黎明期を形作ってきた2人の先生の経験を読者に伝えるという目的で著された。そこでは、カテーテルアブレーションが成功するために必要な電気生理学とその解釈を、両医師みずからの実践に基づいて読者に伝えており、そこで記述された内容は、今でも通用するものばかりである。
とはいえ著者らが序に述べているように、初版から17年が経過した。この間にこれまで手の出しようがないと考えられていた不整脈、とりわけ心房細動がカテーテルアブレーションの対象となるという画期的なことが加わった。心房細動以外にも、それまで困難であった心筋深層起源の心室頻拍や心外膜起源の心室頻拍も、イリゲーションシステムや心外膜マッピングを用いてアブレーションの有効性が増し、その適応も拡大した。さらに今ではトリガーを有する心室細動もアブレーションの対象になった。当然のことながら、この心房細動のカテーテルアブレーションについても、著者らは積極的に関わり、その普及の推進力になってきたことは、不整脈関連の諸学会や諸研究会からも周知のとおりである。
心房細動がカテーテルアブレーションの対象になると、これまでに増して心臓や肺静脈に関する正確な3Dイメージングが急速に発展し、カテーテルアブレーションでは欠くことのできない方法論になった。これらの最先端の3次元マッピングや3次元イメージングを著者らはいち早く取り入れ、その成績を世の中に問うてきた。とりわけ本書では心房細動のアブレーションと関連した形で、3Dイメージングガイド下のカテーテル操作とアブレーションのコツ、さらにはコンタクトフォースガイドのアブレーションの意義などが、みずからの経験と成績に基づき詳細に述べられている。このなかで、2人の著者のデータの解釈やマッピングの手法について、同一項目のなかでそれぞれの思い入れを述べている箇所もあり、とても参考になる。無論、これまでカテーテルアブレーションの対象となった各種不整脈の攻略についても過不足なく述べられていることはいうまでもない。
本書は、不整脈学者として、不整脈専門医としての第1人者である2人が最近のカテーテルアブレーションを巡る新しい展開を、確実に自分のものにしたうえでその経験と成績を読者に伝えたいとの熱い思いがこもっている。カテーテルアブレーションに携わる者にとって、初心者はもちろん一定レベルに達した者にも得るところの多い好書である。
臨床雑誌内科116巻6号(2015年12月増大号)より転載
評者●新潟大学名誉教授・立川メディカルセンター研究開発部長・前日本不整脈学会理事長 相澤義房