臨床糖尿病マニュアル改訂第3版
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編著 | : 小林哲郎 |
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ISBN | : 978-4-524-26375-2 |
発行年月 | : 2012年11月 |
判型 | : B6 |
ページ数 | : 510 |
在庫
定価5,170円(本体4,700円 + 税)
正誤表
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2013年06月12日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
実地臨床に即したわかりやすい記述が大好評の診療マニュアル。糖尿病の診断や緊急処置からはじまり、一連の治療手順を具体的に解説、読み進めることで迅速に対処できる。第3版では内容を一新し、巻頭カラー「糖尿病薬の見分け表」や付録をさらに充実。日常診療ですぐに役立つ情報を満載した、専門医だけでなく一般内科医や研修医の強い味方。
1 糖尿病の診断
A 診断の手順
B インスリン分泌能の評価
C 病歴聴取のポイント
D 糖尿病患者の理学的所見
E 血糖コントロールの指標とその目標
2 糖尿病の緊急処置
A 糖尿病患者の意識障害
B 糖尿病ケトアシドーシスの病態と治療
C 非ケトン性高浸透圧昏睡の病態と治療
D 乳酸アシドーシス
E 低血糖
F 大災害と糖尿病治療
3 食事療法の実際
A 食事療法の目的
B 食事療法の手順
4 運動療法の実際
A 糖尿病における運動療法の適応と禁忌
B 運動療法の手順と実際
5 内服薬療法
A 内服薬(経口血糖降下薬)の適応
B 内服薬の作用
C 内服薬の種類と特徴
D 内服薬療法の実際
6 糖尿病の新規治療薬
A インクレチン関連薬の定義と適応
B DPP-4阻害薬
C GLP-1受容体作働薬
D 今後の展望
7 インスリン療法
A インスリン療法の原理と実際
B 強化インスリン療法
C CSII療法
D 血糖自己測定
E CGMの実際
F 血糖値の変動が激しい糖尿病(不安定型糖尿病)の鑑別と治療
G ステロイド使用時のインスリン療法
H 時差のある飛行機旅行時のインスリン使用法
I インスリン治療中のシックデイの注意(sick day rules)
J 人工膵島
8 糖尿病と眼合併症
A 糖尿病と眼
B 糖尿病網膜症の自然経過
C 糖尿病網膜症の治療と管理
D 白内障、緑内障の治療と糖尿病
9 糖尿病腎症
A 糖尿病腎症と他疾患による腎障害との鑑別
B 糖尿病腎症の病期分類とCKD(慢性腎臓病)のステージ分類
C 糖尿病腎症病期の特徴と検査所見
D 糖尿病腎症の進展と大血管障害の推移・生命予後
E 各病期の治療
F 糖尿病腎症の寛解導入
10 糖尿病神経障害
A 末梢神経障害
B 自律神経障害
C 単神経麻痺
D 糖尿病筋萎縮
11 糖尿病と感染症
A 糖尿病における易感染性のメカニズムと特徴的な感染症
B 呼吸器感染症
C 尿路感染症
D 消化器感染症
E 皮膚軟部感染
F その他の感染症
12 糖尿病足病変と閉塞性血管障害
A 糖尿病足病変の病態と特徴
B 糖尿病足病変の診療の手順
C 糖尿病足病変の予防
D 糖尿病と末梢動脈疾患
E 糖尿病とコレステロール結晶塞栓症
13 糖尿病と脂質異常症
A 脂質異常症の分類と特徴
B 糖尿病に合併する脂質異常症の診断および治療
14 糖尿病と心臓病
A 糖尿病と冠動脈硬化
B 糖尿病患者の心筋梗塞
C 糖尿病と狭心症
D 糖尿病と高血圧
E 糖尿病と心不全
F 糖尿病心筋症
G 糖尿病自律神経障害と心臓
H メタボリックシンドローム
15 外科手術・輸液と糖尿病、スライディングスケールによる血糖管理
A 糖尿病患者の外科手術前後の管理を規定する因子
B 症例別管理プログラム
C スライディングスケールによる血糖コントロール
D 糖尿病患者の糖質輸液
E ICU における血糖管理
16 妊娠と糖尿病
A 妊娠糖尿病
B 糖尿病と妊娠の相互関係
C 糖尿病患者の妊娠管理の実際
17 小児の糖尿病
A 小児の糖尿病の特徴
B 小児の糖尿病の診断
C 小児の1型糖尿病の初期治療
D 小児の1型糖尿病の長期治療
E 小児の2型糖尿病
F 学校検尿などで発見された尿糖陽性例に対する対応
G 新生児糖尿病
18 特殊な糖尿病・他疾患に続発した糖尿病
A 自己免疫性膵炎による糖尿病
B インスリン受容体抗体による糖尿病(type B症候群)
C 膵全摘後糖尿病
D ヘモクロマトーシスによる糖尿病
E 腎移植前後の糖尿病
F 薬剤による耐糖能障害
G 内分泌疾患による糖尿病
19 低血糖症・インスリノーマ・新生児低血糖症
A 低血糖症とその鑑別
B インスリノーマの病態と治療
C 新生児低血糖症
20 米国における糖尿病治療の現状
A 米国における糖尿病の食事療法指導とコメディカルスタッフの治療への参加
B 米国におけるインスリン注射療法:とくにCSII 療法とGCM に関して
C 米国におけるGlucagon Like Peptide-1(GLP-1)アナログ、Dipeptidyl peptidase-4(DPP-4)阻害薬の評価
付録
索引
本書は初版以来糖尿病の臨床に関する普遍的な知識と具体的な方法を簡潔な文章によって表現することを方針としてきた。今回の第3 版の改訂にあたり、特に心がけたのもこの姿勢である。9年ぶりの改訂となったが、糖尿病学の発展には目をみはるものがある。特に、インスリン療法のうちインスリン持続皮下注入法(CSII)や血糖連続測定(CGM)などの臨床普及が著しい。また、インクレチン関連薬の章も加えることとした。また、この間「エビデンス」といわれる臨床治験成績も数多く発表され、いくつかのガイドラインも発表され、より客観的な知識も集積されている。本書では、これら多く知見を基礎としつつ、各著者が自身の臨床活動のコアとしている個人的な経験を踏まえ、新たに改訂をしていただいた。したがって、今回の改訂では、その記載が多くの古典的な知識の上に新たな知見が積み重ねられる構造になっており、参考文献も文中にできるだけ加えた。臨床医学の発展に完成はなく、今後も多くの新しい知見と経験が重ねられ、糖尿病学の進歩が続くことが期待される。日々の臨床の中で本書が臨床活動の一つのよりどころとなれば幸いである。
2012年8月
盛夏の甲府にて
小林哲郎
今回、「糖尿病診療マニュアル」(編著:小林哲郎)の書評を書かせていただくことになった。まことに光栄である。小林先生は、緩徐進行1型糖尿病の提唱者として糖尿病学会賞を受賞するなど日本の糖尿病研究を牽引する世界的な研究者の一人であり、私自身も学会・委員会・研究会などでご一緒させていただくことが多いが、尽きることのない研究への情熱にはいつも驚かされ感化されている。そしてまた、「卓越した医学研究は優れた臨床から生まれる」ことを体現されている先生でもあり、緩徐進行1型糖尿病も大学卒業後に長らく勤務された虎の門病院における注意深い診療のなかで確立されたのであるが、インスリンポンプ療法(CSII療法)をはじめとした1型糖尿病の最新治療のみならず糖尿病および糖尿病合併症全般にわたり、とてもご造詣が深い。
さて、糖尿病患者は多く、ますます増えており、適切な診療マニュアルは必要である。しかし、糖尿病はまことに多様であり、糖尿病診療の進歩は著しく、実際に作成するのは意外と難しい。ともすると、EBMに偏った画一的で無味乾燥の内容になったり、多くの内容を網羅しようとするあまり辞典に近い内容になったりする。そこで、今回の「糖尿病診療マニュアル」をみてみる。私自身は第1版、第2版ともに購入し実際の臨床の場で重宝していたが、改訂第3版はうかつにも買いそびれていた。今回、その最新版を詳しくみて少なからず感嘆した。進化が著しい。
まず、出版社のご努力もあるが、ほどよい大きさの冊子で2色刷の本文は読みやすく仕上がっている。全体によく整理された構成のもとに、従来のエビデンスに最新の知見はもとより(ていねいに文献も引用されている)、著者の個人的な経験も加えた内容が、明快にわかりやすくまとまっている。図表やフローチャートも豊富であり、身体所見や小林先生がお得意の病理所見のカラー写真も随所に提示され、日々の臨床に即戦力として役立つ内容が多い。ますます種類が増えつつある経口血糖降下薬、インスリン製剤、自己血糖測定器のカラー写真が掲載され、本文の薬物療法の解説において具体的な処方例も提示されていることも気が利いている。
すべての内容を具体的に触れる誌面の余裕はないが、1型糖尿病の診断と治療、インスリン療法、CSII療法やCGM(持続血糖値測定)、糖尿病患者の糖質輸液、特殊な糖尿病、低血糖症、米国における糖尿病治療の現状など、類書にはみられることが少ない、熟練の糖尿病専門医もうなる傑出した内容が満載である。一方で、踏み込んだ内容が少ないところも散見されるが、さらに最新の治療薬の追加も含めた今後の改訂に期待したい。
小林先生と共著者の長年にわたる糖尿病診療の神髄が凝縮した本書を、専門臨床家のみならず一般内科医、さらには糖尿病専門医を目指す医師や研修医にも、自信をもって推薦する。ひと味違った糖尿病診療が明日から可能となること、請け合いである。
臨床雑誌内科114巻3号(2014年9月号)より転載
評者●埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科教授 粟田卓也