乳房超音波勘違いケース100
編著 | : 佐久間浩/尾羽根範員 |
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ISBN | : 978-4-524-26352-3 |
発行年月 | : 2011年6月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 210 |
在庫
定価3,740円(本体3,400円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
乳房超音波検査において、「勘違い」や「思い込み」によって乳がんと診断されたり、疾患を見落とされた100症例をとりあげた。それぞれの症例に対して「模範レポート例」を示し、勘違いの原因がどこにあったか、ポイントとなる所見はどこかをエキスパートがわかりやすく解説。「誤診」を未然に防ぎ、正しいレポートを書くための着眼点がわかる一冊!
Case1 乳頭腺管癌?
Case2 充実腺管癌?
Case3 嚢胞集簇像?
Case4 硬癌?
Case5 石灰化を伴う腫瘤?
Case6 乳癌?
Case7 異常なし?
Case8 線維腺腫?
Case9 乳癌?
Case10 脂肪組織?
Case11 硬癌?
Case12 嚢胞?
Case13 粘液癌?
Case14 葉状腫瘍?
Case15 嚢胞内癌?
Case16 硬癌?
Case17 乳癌?
Case18 硬癌?
Case19 粘液癌?
Case20 線維腺腫?
Case21 カテゴリー3?
Case22 硬癌?
Case23 非浸潤性乳管癌?
Case24 硬癌?
Case25 カテゴリー4-5?
Case26 再発?
Case27 乳癌?
Case28 乳腺症?
Case29 乳癌?
Case30 乳癌?
Case31 嚢胞?
Case32 古い嚢胞?
Case33 乳癌?
Case34 カテゴリー3?
Case35 硬癌?
Case36 線維腺腫?
Case37 非浸潤性乳管癌?
Case38 濃縮嚢胞?
Case39 粘液癌?
Case40 乳腺症?
Case41 充実腺管癌?
Case42 線維腺腫?
Case43 線維腺腫?
Case44 嚢胞内癌?
Case45 嚢胞内乳頭腫?
Case46 大胸筋浸潤?
Case47 充実腺管癌?
Case48 線維腺腫?
Case49 乳癌?
Case50 乳頭腺管癌?
Case51 硬癌?
Case52 線維腺腫?
Case53 正常乳腺?
Case54 葉状腫瘍?
Case55 乳腺症?
Case56 乳癌?
Case57 充実腺管癌?
Case58 乳癌?
Case59 線維腺腫?
Case60 乳頭腺管癌?
Case61 非腫瘤性病変?
Case62 線維腺腫?
Case63 乳癌?
Case64 線維腺腫?
Case65 乳管拡張?
Case66 乳癌?
Case67 乳瘤?
Case68 濃縮嚢胞?
Case69 線維腺腫?
Case70 線維腺腫?
Case71 濃縮嚢胞?
Case72 非浸潤性乳管癌?
Case73 嚢胞?
Case74 乳腺炎?
Case75 乳癌?
Case76 嚢胞?
Case77 硬癌?
Case78 乳腺症?
Case79 乳癌?
Case80 異常なし?
Case81 嚢胞内癌?
Case82 粘液癌?
Case83 乳癌?
Case84 粘液癌?
Case85 濃縮嚢胞?
Case86 濃縮嚢胞?
Case87 濃縮嚢胞?
Case88 硬癌?
Case89 硬癌?
Case90 腺症?
Case91 非浸潤性乳管癌?
Case92 乳腺症?
Case93 硬癌?
Case94 線維腺腫?
Case95 葉状腫瘍?
Case96 大きな乳癌?
Case97 線維腺腫?
Case98 乳癌?
Case99 嚢胞内癌?
Case100 腋窩リンパ節転移?
乳房超音波検査を学ぼうと思えば、今は多くの関連書が書店に並んでいる。しかし、画像診断は座学で会得できるものではない。やはり自分自身が実際に経験した症例から学ぶべきことが多い。自分が検査した症例がその後どういう結末を迎えたかを、カルテを調べ、すなわち答え合わせをして反省を重ねることで実力は身についていく。
その実践的学習法に最も近い形で学べる書を作ろうと企画したのが本書である。タイトルの「勘違い」にもあるように、どこかで誰かが一度は間違った症例を題材とした。その症例に対して、それぞれの執筆者が「模範レポート例」を示し、その後、勘違いをした原因がどこにあったのかを解説した。乳腺疾患は、症例によってそれぞれの所見の重みは異なっているものである。したがって疾患を正しく判読するためには、ポイントとなる所見を見抜くことが必要である。レポートは単なる所見の羅列であってはならない。「勘違い」と「模範」それぞれのレポートを対比することで、着眼点の違いを読み取っていただきたい。ただし「模範レポート例」も、必ずしも最終診断と一致するものではない。診療の現場では診断困難例にも多く出くわす。わかりにくい症例は「わかりにくい」という事実を伝えることも正しいレポートの条件であると考えている。
さて、実際に症例を集め始めて、さらに各執筆者から届いた原稿をみて、驚いたことがある。それは、日ごろ自分たちが「この疾患はこういう間違いを犯すことがあるので気をつけましょう」といっている内容をはるかに越えた予想外の勘違いが世の中にはたくさん存在しているという事実であった。本書を世に送り出す意義をいち早く実感した次第である。
本書には注意しなければならない重大なポイントがひとつある。それは、「勘違いレポート」を書いた本人が特定できてはいけないということであった。その多くは、執筆者の同僚であり、また執筆者の施設へ患者さんを紹介してくれた前医の先生方である。その方々の名誉を傷つけることがあってはならない。したがって通常ならば症例ごとに執筆者の氏名が記されるところを、本書では伏せた。6名の施設から症例を集めたことで、本書の構想は実現させることができたのである。
本書は、大まかではあるが、前半から後半に行くにしたがって難易度の高い症例を掲載してある。まずは、画像を眺めてみて、目に留まった症例があったら、本文を読み進めていただきたい。
2011年6月
佐久間浩、尾羽根範員
このたび、佐久間浩、尾羽根範員両先生の編著により本書が刊行された。両先生は乳腺超音波検査のわが国を代表するエキスパートであり、いずれも明快な講演で定評がある。また、ほかの執筆者4名もいずれも第一線で活躍中の乳房超音波検査のエキスパートである。彼らの多くは『乳房超音波診断ガイドライン(第2版)』(南江堂、2008年)作成にもかかわっている。
本書の大きな特徴は、「誰か(多くは執筆者の同僚や前医の先生方)が診断を間違えた症例」を題材にしている点である。したがって、一般の検査実施者が陥りやすい「勘違い」が実際的でリアルであり、編者が序文に記述しているように、想定外の「多様な勘違い」があることを認識したうえで編集されている点が貴重である。それらの「勘違いレポート」を書いた本人の名誉を守るため、本人が特定できないように6名の執筆者の分担範囲の氏名が伏せられている。
本書は、100例の乳腺疾患が提示されており、日常診療で遭遇する乳癌・線維腺腫・乳腺症から特殊型乳癌や葉状腫瘍まで、重要な乳腺疾患が網羅されている。この100例は、前から後にすすむにつれて難易度が高くなるように掲載されており、読者に理解しやすいように工夫されている。そのため同じ疾患が何回も別々に出てくるが、巻末に疾患別に症例ナンバーの一覧表がつけられているので便利である。また、各例は見開き2ページで完結されており、「超音波画像」と「勘違いレポート」、「模範レポート」を対比して簡潔に記述されているので読みやすく、着眼点が理解しやすい。
超音波検査は無害であり、乳腺疾患においてもっとも重要な必須の検査である。本書は実践的で読みやすく、乳房超音波検査の実力を身につける教科書として最適である。本書が超音波検査に携わる医師や技師をはじめ多くの医療者に役立つものと確信し、推薦したい。
評者● 園尾博司
臨床雑誌外科73巻13号(2011年12月号)より転載
前例のない超音波検査の参考書だと思う。閲覧しやすい見開き構成で、左頁に「勘違い」レポートと画像が紹介され、右頁に正しいレポートとその根拠となる画像が示される。乳房超音波検査を実際に行っている読者なら誰でも経験したことがある初歩の間違いから、超音波専門医やベテランの超音波検査士でも間違えそうな難問まで100例、共感して思わず膝を打つような症例をよくこんなに揃えたなというのが最初の印象で、おのおのの症例は演出ではなく全部実例と聞いて二度びっくりする。6施設の著者が集めた100例のケースは、超音波検査時に陥りやすい「勘違い」を取り上げているのみならず、各組織型の乳癌や、糖尿病性乳腺症や炎症性乳癌などの重要な疾患も含まれ、いろいろな乳房疾患をさりげなく紹介していることに気付かされる。超音波検査断面に合わせた病理マクロ像、細胞診、マンモグラムなどが必要に応じて添付されていて、読者の理解を助ける。
日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)が編集した『乳房超音波診断ガイドライン』が2004年に南江堂から刊行されており、現在第2版を数える。このガイドラインは指導的立場におられる超音波専門医や超音波検査士が編集執筆されたものであり、すでに乳房超音波検査のバイブルとなっている。しかし、乳房超音波検査を始めてからまだ経験症例数の少ない医師や技師にとっては、ガイドラインに記載された超音波所見の文章記述を目前の臨床画像に当てはめるのに汲々としてしまい、検査中に超音波画像を素直に眺めて鑑別診断を考えるゆとりがないことが多いのではないかと常々危惧している。「勘違い」レポートと模範レポートがおのおののケースに丁寧に記されているのを読むと、著者らが本書を著した動機は、ガイドラインに記載された文言の一人歩きに対する危惧ではなかろうかと想像される。超音波画像は断層像であるがゆえに、特定の一断面だけをみて思い込み診断を行うことの危うさを本書は教えているのみならず、いつも多方向から観察して病変の周囲の状況も参考にして判断することが正しい診断への道であることを本書の100例が具体的に示しているといえよう。
乳房超音波検査を始めて間もない人はもちろん、ベテランの域に入っている方々にも必ず参考になるケースが見つかると思われるが、むしろベテランの方々には後輩を指導するための参考書としてお勧めしたい。一度読み終えても1-2ヵ月後に再読すると不思議にまた新たな発見がある。
評者● 桑島章
臨床雑誌内科109巻2号(2012年2月号)より転載