IgA腎症診療マニュアル改訂第3版
エビデンスに基づいた診断と治療
編集 | : 富野康日己 |
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ISBN | : 978-4-524-26314-1 |
発行年月 | : 2011年8月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 252 |
在庫
定価4,950円(本体4,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
2003年に刊行された改訂第2版以降に蓄積されたIgA腎症のエビデンスを盛り込んだ好評書の最新版。発症・進展に関する遺伝因子についての新しい知見や病理におけるわが国の新分類と国際的なOxford分類についても言及。治療ではACE阻害薬、ARBの効果並びに扁桃摘出・ステロイドパルス療法などの最新エビデンスを盛り込んだ。生活・食事指導も具体的に解説したIgA腎症のすべてがわかる一冊。
I.IgA腎症の発症・進展メカニズム
A.発症のメカニズム
1.IgA腎症の発症機序
2.糖鎖異常IgA 1
3.発症の遺伝因子
B.進展のメカニズム
1.進展の遺伝因子
2.免疫学的・非免疫学的因子
II.IgA腎症の臨床
A.疫学
B.臨床検査所見
III.IgA腎症の病理
A.病理所見と予後判定
B.Oxford分類とわが国の新分類
IV.IgA腎症の治療
A.診療指針―第3版―
B.生活指導
C.食事療法
D.薬物療法
1.成人の薬物療法
A.抗血小板・抗凝固・線溶療法
B.Fish oil/EPA
C.ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬
D.副腎皮質ステロイド薬
E.免疫抑制薬
2.小児の薬物療法
E.扁桃摘出・ステロイドパルス療法
索引
時の経つのは実に早いもので、1999年に「IgA腎症診療マニュアル―エビデンスに基づいた診断と治療」初版が刊行され、その後2003年に改訂第2版が刊行されてから8年が経過しました。改訂第2版の刊行以降、IgA腎症の基礎と臨床に関するエビデンスが一層蓄積されました。それは、国内外の基礎研究者と臨床医の精力的な活動によるものです。IgA腎症は、わが国に高頻度に認められ、高率に末期腎不全に進行する―疾患であることから、腎臓病の診療における実践書として初版・改訂第2版を刊行してきました。これまで、皆様から好評をいただき、また新知見が多くみられたことから、今回改訂第3版を刊行することになりました。編者として、大変嬉しく思っております。
この改訂第3版は、全般にわたりアップデートされた内容になっています。IgA腎症の発症・進展メカニズムでは、とくにIgA(IgA 1)の糖鎖異常と発症・進展に関する遺伝因子について、動物モデルでの検討も含めた新知見が記載されています。最近、国内外でIgA腎症の病理について、わが国の新分類と国際的なOxford分類が報告されました。しかし、double standardとなる可能性も懸念され、今後わが国から英文論文を発表する際には、両分類を熟知して記載する必要があります。
IgA腎症の治療では、これまで厚生労働省特定疾患進行性腎障害に関する調査研究班IgA腎症分科会で検討してきた、ACE阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬の効果、並びに扁桃摘出・ステロイドパルス療法の効果について、検討結果がまとまりつつあります。また、「IgA腎症診療指針―第3版―」が刊行され、それらの新しいエビデンスがコンパクトに記載されています。
今回もIgA腎症の基礎と臨床に積極的に取り組んでおられる先生方に執筆をお願いしました。わかりやすく記載するよう努めましたが、腎臓専門医のみならず内科医、一般臨床医(かかりつけ医)、臨床研修医、大学院生、基礎医学研究者の皆様にお読みいただければ、望外の喜びです。しかし、内容の不備な点や過不足もあろうかと思いますので、皆様の忌憚のないご意見とご指導をいただければ幸いです。
2011年薫風 神田川のほとりにて
富野康日己
IgA腎症は日本をはじめアジアで発症頻度の高い慢性糸球体腎炎で、末期腎不全の原因疾患としても依然として重要な疾患である。本マニュアルは、日本におけるIgA腎症の診療・研究の第一線で活躍されている方々が執筆している。編者の富野康日己教授は世界におけるIgA腎症研究の第一人者で、長年、IgA腎症の基礎研究と臨床に情熱をもって打ち込んでこられた先生である。また、厚生労働科学研究「進行性腎障害に関する調査研究」班の研究分担者と研究代表者を長く務められており、文字通り日本における腎臓病学のリーダーのお一人である。
IgA腎症は1968年にフランスのBergerらにより、メサンギウム領域にIgAとIgGの沈着を主体とする糸球体腎炎としてはじめて報告された。当時は、予後のよい疾患とされたが、知見が集積されるに従い末期腎不全になる患者が予想以上に多いことが明らかになってきた。また、その間にさまざまな治療法が提唱されてきた。それらは評価に値しないようなエビデンスレベルの低いものから、一定の評価に耐えるものまでさまざまである。このように多くの治療法が存在する理由は、IgA腎症に関する基礎研究が盛んに行われているにもかかわらず、その成因がいまだに不明であることにある。このようにIgA腎症を巡る情勢はいまだ混沌としているといわざるを得ない。本書は1999年に初版が出されてから12年が経過しているが、その間のIgA腎症の基礎研究および臨床研究の進歩がわかりやすく整理して記載されている。また、現時点でのIgA腎症の治療のスタンダードも要領よくまとめられている。糖鎖異常IgAのIgA腎症発症における役割や遺伝因子の解明がどこまで進んでいるか、など発症進展のメカニズムは興味深い。また、IgA腎症のOxford分類とわが国で提唱されている新しいリスクの層別化との関係は、まさに時宜を得た話題である。また、治療に関しては「IgA腎症診療指針第3版」(平成23年1月)に基づいて、その理論から実際まで噛み砕いて書かれている。
読者は本書を通読することにより、IgA腎症に関する基礎知識を容易に得ることができ、さらにIgA腎症患者の診療にも自信をもって臨むことができるようになる。大変によく考えられた構成である。腎臓専門医のみならず非専門医、研修医などに幅広く推薦できる良書である。
評者● 木村健二郎
臨床雑誌内科109巻4号(2012年4月号)より転載