目指せ!内視鏡診断エキスパート
早期消化管癌の診断Q&A
編集 | : 田尻久雄/斎藤豊 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-26285-4 |
発行年月 | : 2011年1月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 286 |
在庫
定価8,250円(本体7,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 書評
東京慈恵会医科大学と国立がん研究センター中央病院の2施設で日々熱い議論が交わされている内視鏡カンファレンスから、早期消化管癌41症例の厳選された各種内視鏡画像を掲載し、その診断プロセスを「Q&A形式」で解説。内視鏡観察のコツや鑑別診断まで踏み込んだコラムが随所に挿入され、上級医とその場で議論しているような臨場感で学べる。エキスパートを目指す医師必読の一冊。
I 内視鏡検査を始める前に
1.検査の基本事項、診断の進め方
2.内視鏡機器の基礎知識
3.画像強調観察(IEE)の基礎知識
4.ルーチン検査の基本
5.内視鏡検査時の抗血栓療法ガイドラインの注意点
II 咽頭・喉頭
[知っておきたい基礎知識]
1.解剖知識と正常像
2.内視鏡診断
3.内視鏡治療適応
[目指せエキスパート!―症例から学ぶ―]
Case 1
Case 2
Case 3
Case 4
[鑑別疾患]
(1)乳頭腫
(2)咽頭炎
[Side Memo]
1)咽喉頭部観察の注意点
2)観察のコツ(粘液除去):pronase
3)咽喉頭NBI内視鏡撮像のコツ
4)ヨード撒布の注意点
5)内視鏡治療の注意点
III 食道
[知っておきたい基礎知識]
1.解剖知識と正常像
2.範囲診断
3.深達度診断
4.内視鏡治療適応
5.NBI分類
[目指せエキスパート!―症例から学ぶ―]
Case 1
Case 2
Case 3
Case 4
Case 5
Case 6
Case 7
Case 8
Case 9
[鑑別疾患]
(1)GERD
(2)Glycogenic achantosis
(3)SMT(良性;平滑筋腫、顆粒細胞腫)
(4)SMT(悪性;melanoma)
(5)乳頭腫
[Side Memo]
1)色素撒布のコツ
2)NBI内視鏡撮像のコツ
3)血管分類:有馬分類 vs 井上分類
4)食道癌の特殊型
5)EMR/ESDのコツ
6)特殊例(porのM癌)
IV 胃
[知っておきたい基礎知識]
1.解剖知識と正常像
2.範囲診断
3.深達度診断
4.内視鏡治療適応
5.NBI分類
[目指せエキスパート!―症例から学ぶ―]
Case 1
Case 2
Case 3
Case 4
Case 5
Case 6
Case 7
Case 8
Case 9
Case 10
[鑑別疾患]
(1)腺腫
(2)IIc lik advance
(3)O-I、M
(4)O-IIc+IIIとO-IIc
(5)過形成ポリープ
(6)胃炎
(7)境界が不明瞭な早期胃癌
[Side Memo]
1)生検の部位・順番
2)通常観察でどこまで正確な診断が可能か
3)NBI併用拡大内視鏡による観察のコツ
4)経鼻内視鏡のメリット・デメリット
5)背景粘膜による観察のポイント
6)スクリーニングのpit fall
V 十二指腸・小腸
[知っておきたい基礎知識]
1)解剖知識と正常像
2)範囲診断と深達度診断
3)内視鏡治療適応(十二指腸)
4)内視鏡治療適応(小腸)
[目指せエキスパート!―症例から学ぶ―]
Case 1
Case 2
Case 3
Case 4
Case 5
Case 6
Case 7
[鑑別疾患]
(1)回盲部病変
(2)治療方針(局所治療)
(3)IIa型異所性粘膜
(4)FAPに伴う十二指腸腺腫
(5)大きな腺腫
(6)小腸SMT
(7)カルチノイド
VI 大腸
[知っておきたい基礎知識]
1.解剖知識と正常像
2.深達度診断
3.NBI分類
4.内視鏡治療適応
[目指せエキスパート!―症例から学ぶ―]
Case 1
Case 2
Case 3
Case 4
Case 5
Case 6
Case 7
Case 8
Case 9
Case 10
Case 11
[Side Memo]
1)通常内視鏡観察のポイント
2)拡大色素内視鏡のコツ
3)通常EMRのコツ
4)ESD手技のポイントとコツ
索引
卒後2年目に関東逓信病院(現:NTT東日本関東病院)へ研修のため出向したが、そこでいきなり遭遇したのが、元気溌剌の消化器内科部長多賀須幸男先生であった。当時、直視型細径ファイバースコープによる食道から胃・十二指腸までの観察、pan−endoscopyを全国へ普及するため大変に腐心されていたが、先生の吸引力から小生は完全に内視鏡検査の虜になった。いかにしてきれいで説得力のある写真を撮るか、若き青年医師の努力が始まった。
そのころの教科書は多賀須先生が著者に加わった『胃カメラ研修の実際』(中外医学社)(その後、『消化管内視鏡研修の実際』に改題)であり、むさぼるように熟読したが、残念ながら印刷された内視鏡画像は実際のものとは程遠いものであった。小生の内視鏡検査に関する教科書はこれのみであったが、ここで登場するのが、田尻久雄先生と齋藤豊先生の編集による『目指せ!内視鏡診断エキスパート早期消化管癌の診断Q&A』である。
まず驚いたのが、内視鏡画像の鮮明さである。さらに、色調も完璧に実際のものを再現している。南江堂といえば、小生も関係している『カプセル内視鏡―診療ガイド』を2006年に上梓した出版社であるが、その印刷に対するこだわりには定評がある。カプセル内視鏡画像を見事に再現していたが、われわれ内視鏡医のこだわりも同様である。色素内視鏡や画像強調観察像、さらには拡大内視鏡など、その鮮明さと色調が命となる。おそらく著者、編者らの内視鏡画像に関する南江堂への要求は相当高いものがあったと拝察するが、見事にそれに応えていて、写真だけ見ていても楽しくなる。
小生が感じた本書の特徴を列挙すると、(1)編者のお二人がわが国を代表する内視鏡医であり、著者も東京慈恵会医科大学と国立がん研究センターの2施設からのみで、用語や使用機器をはじめ、写真の撮影法や解説内容がよく統一されていて読者が迷わない。(2)I章の「内視鏡検査をはじめる前に」が素晴らしい。検査の適応や機器について、さらにルーチン検査の心構えなど、小生にとっても説得力のある内容である。(3)II章からは2施設におけるカンファランスから重要な症例につき「Q&A」形式に記載されている。あたかもカンファランスへ参加しているようで、臨場感にあふれ、すぐに読み切ってしまえるであろう。(4)症例ごとに、きれいな通常観察像、画像強調観察像、拡大観察像が示され、質問とその回答ののち、切除標本の解説が記載されている。1例ずつが大変に実になる内容である。(5)参考文献とともに鑑別疾患が記載され、さらに本文で示されなかった項目が「Side Memo」として、観察のコツや注意点などについて書かれている。たとえば色素散布のコツや生検の部位・順番など、普段はなかなか聞くことのできないありがたい内容が示されている。
このように本書は内視鏡エキスパートをも納得させる充実した内容であり、ぜひ熟読され明日からの内視鏡診療に役立たせていただきたい。
評者● 高橋信一
臨床雑誌内科108巻2号(2011年8月号)より転載