指して伝える!外国語診療ブック
問診から生活指導まで症状別に対応
監修 | : 守山敏樹 |
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外国語監修 | : 林田雅至 |
ISBN | : 978-4-524-26283-0 |
発行年月 | : 2014年5月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 432 |
在庫
定価4,400円(本体4,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
外国人患者がやってきた!突然の来院にも慌てずに、適切な医療を提供するための指して伝える会話ブック。該当する症状を指し示してもらうことで、具体的な問診ができるうえ、処置の説明や生活指導のコミュニケーションまでカバー。英語・ポルトガル語・タイ語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国朝鮮語の6言語で、外国人労働者のおよそ6割以上、外国人観光客の8割以上に対応。見やすい大きな紙面で、患者と医療者の意思疎通を支援する。留学生の学習用にもおすすめ。
第1部 患者さんが来たら
1.この本の使い方
2.話せる言語を確認しよう
3.まずやること
4.年齢と性別
5.既往歴・家族歴の確認
6.常備薬・持参薬の確認
7.タバコ・アルコール
8.アレルギー
9.妊娠・授乳
第2部 症状別
A 全身症状
1.発熱
2.疲労・倦怠感
3.食欲異常
4.不眠
5.体重増加・減少
6.めまい
7.浮腫(むくみ)
8.リンパ節の腫れ
B 呼吸器の症状
9.咳・痰
10.呼吸困難・喘鳴
11.喀血
C 眼科領域の症状
12.眼痛
13.視力障害
14.複視
15.充血
D 耳鼻咽喉科領域の症状
16.咽頭痛
17.鼻炎症状
18.耳痛
19.聴力障害
20.耳鳴り
21.鼻出血
22.耳出血
E 消化器の症状
23.腹痛
24.便秘・下痢
25.消化不良
26.嚥下障害
27.腹部膨満
28.悪心・嘔吐
29.吐血・下血
30.黄疸
F 循環器の症状
31.胸痛
32.動悸
G 泌尿生殖器の症状
33.排尿困難
34.頻尿・排尿痛
35.尿量異常
36.尿失禁
37.血尿
38.勃起障害
H 皮膚の症状
39.発疹
40.皮膚の掻痒感(かゆみ)
41.脱毛
I 筋骨格系の症状
42.頸部・肩・上肢痛
43.腰痛
44.下肢痛
J 精神・神経系の症状
45.頭痛
46.不安
47.抑うつ
48.精神異常・行動異常
49.もの忘れ
50.しびれ・知覚異常
51.筋力低下
52.振戦(手のふるえ)
K 婦人科の症状
53.月経障害
54.乳房の異常
55.骨盤痛
56.更年期障害(男性も含む)
57.不正出血・おりもの
第3部 診察・検査・薬について
1.診察の説明
2.検査の説明
3.治療の説明
4.次回外来予約の説明
5.薬の種類・名称・剤形の説明
6.生活指導の説明
用語集
A.体の部位
B.検査・診断・治療
C.症状
D.病名
E.薬剤など
F.指導・手続き・その他
付録
付録1:診察時に注意すべき輸入伝染症について
付録2:国別・宗教別診療時のタブー〜診療時に気をつけること
a.英語圏の患者さん
b.ブラジルの患者さん
c.タイの患者さん
d.中国・台湾の患者さん
e.韓国・朝鮮の患者さん
付録3:外国人と健康保険制度
付録4:主要55ヵ国の大使館連絡先
索引
病気の時のcommunicationを考えよう
communicationの語源にあたるラテン語communicareは、語形成上company(同じ釜の飯を食らう)と同様の形式であり、この場合「munusを分かつ」というのが原義である。中世欧州でmunusは「キリストの血と肉(聖なる贈物)」、もちろん「ブドウ酒とパン(食糧)」を意味し、祝祭の「聖体拝領(Corpus Christi)」を「commune with God(霊的な交わり)」と捉えている。一方で、現代医学用語であるimmunodeficiency(免疫不全症)、acquired immunodeficiency syndrome(後天性免疫不全症、略称AIDS)にもmunusは入っている。欧州中世末期、猛威を振るった黒死病の時代、顕微鏡発明はいまだ遠く可視化されないペスト菌は、「神罰の象徴=矢」として天上から飛来し、人々の肉体を射抜き、そして人々は「munus(神の試練=疫病)に感染する」と考えられた。つまり、munusは正負の両義性を付与されていることになる−
さて、communicationについて、国際コミュニケーション・ツールの代表格、英語は万能であると思われてきた。2004年製造業に非正規雇用を導入し、日本企業のグルーバル化は一気に加速した。さらに、2008年リーマンショック(金融危機)によって、それまで一国市場主義であった「戦後の市場経済の枠組み」が、中国・インドなどの人口を標準とするグローバル市場規模に拡大し、必然的に労働市場における多民族化(多言語・多文化化)が促進された。国際コミュニケーション・ツールとしての「貿易・通商・経済」英語の位置付けにいまだ変化はないものの、人々の生活レベルの多言語化は飛躍的に進んでいる。こうした経緯から、英語だけではLanguage Barrier Free(ことばの壁を越える)をカバーできない状況が生まれ、「外国語=英語」からの脱却をはかる必然性に直面することになった。
それと同時に1990年入管法改正以降のことであるが、日系中南米人にとどまらず、世界中から労働者層が集まり、その外国籍住民の子供たちの「第一使用言語」が日本語になる場合が増えている。わたしたちヒトは、個体差はあっても一般的に11歳頃までに、第一使用言語を母語として確立する時期を迎える。抽象的な思考が可能となり、母語は自己同一化の最大の武器である。
ただし、彼らは日本語を母語とする段階を経ていくわけだが、その過程においては日本語での表現が困難となる場面、たとえば身体の不調を伝える時などは家庭内で話してきた言語のほうがスムーズに伝えられるといったことも予想される。
人は病を得ると気弱になり、外国語でのやりとりにストレスを抱える。体調不良など悪条件の時に、保健室や診察室で母語対応を可能にするツールがあれば、鬼に金棒である。本書はそうしたニーズに応える格好の会話集である。ぜひ多くの方に手にとっていただき、医療現場にとどまらずcommunicationの一環として有効に役立てていただければ幸いである。
2014年3月
林田雅至