肝オペの美学 [Web動画付]
髙山式肝手術のすべて
編著 | : 髙山忠利 |
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ISBN | : 978-4-524-26254-0 |
発行年月 | : 2022年6月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 280 |
在庫
定価22,000円(本体20,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評

開腹下に行う系統的肝切除18術式・肝移植3術式を,編著者自ら原図を描き下ろしたイラストと一貫した構成で詳述.「トリガー肝静脈枝」の概念のもと,根治性と極少出血を両立して手術を完遂するために必要な理論と技術を体系化して解説している.「出血を最少にした美しい術野を形成すれば,周術期が荒れることは決してない」という手術哲学のもと7,000例以上を執刀し,独自の新術式(高位背方切除)を考案した編著者による肝手術書の金字塔.
0. 肝手術のPrologue
1. 肝手術のAnatomy
A .仏学派vs 米学派
B .エッセンス外科解剖
C .トリガー肝静脈枝
D .外科的肝静脈シミュレーション
E .奥深い! 尾状葉解剖
F .動脈破格に注意!
2. 肝切除のIndication
A .どこまで切れる? 肝細胞癌
B .どこから切れない? 肝内胆管癌
C .どこから切れない? 肝門部胆管癌
D .切れる? 切れない? 転移性肝癌
E .切る? 切らない? 良性肝腫瘍
3. 肝切除のPreparation
A .必須の肝機能&腫瘍条件
B .合併症予防が生命線
C .肝硬変も100%安全に
D .どれほど残る? 残肝容積
E .日大式・肝癌登録票
4. 肝離断のFundamentals
A .髙山式・手術の流儀
B .Big Surgeon, Big Incision
C .髙山式・離断の奥義
D .自分の離断法がベスト
E .系統vs 非系統
F .肝静脈再建肝切除
G .Open vs Laparo
5. 肝切除のA to N ―髙山の軌跡
A .肝オペの第一歩:外側区域切除
B .被膜沿いが安全:腫瘍核出
C .肝切除の試金石:左肝切除
D .登竜門の肝切除:右肝切除
E .こなして肝外科医:S8 切除・S7 切除
1 S8 切除
2 S7 切除
F .区域同定が困難:S5 切除・S6 切除
1 S5 切除
2 S6 切除
G .胆管損傷を回避:内側区域切除
H .Rouviere が肝きも:後区域切除
I .最大の肝離断面:前区域切除
J .仏vs 米の違い:中央二区域切除
K .残存脈管を確保:三区域切除
L .中肝静脈を制御:尾状葉部分切除
M .Makuuchi を深化:尾状葉腹側切除
1 S8+S1 切除
2 S7+S1 切除
3 S4+S1 切除
N .Takayama の神髄:尾状葉単独全切除
6. 肝移植のA B C
A .尾状葉静脈も再建:生体左肝移植
B .大口がものをいう:生体右肝移植
C .ボローニャ大学術式:全肝移植
Index
Profile
今から30 年近く前,あのClaude Couinaud 教授(パリ大学)から突然お手紙をいただいた.私が開発した新しい肝臓手術「高位背方切除High dorsal resection of the liver」の論文がJ Am Coll Surg(アメリカ外科学会雑誌)に掲載された,1994 年秋のことだった.お手紙の中で“Takayamaʼs procedure, fantastique!” と称賛していただき,深く感動した.このとき39 歳,国立がんセンターで幕内雅敏先生(後に東京大学教授)に師事し,肝臓外科医を目指してから11年目であった.肝臓学の世界的権威に祝福していただいたことは,今も鮮明に記憶する生涯の思い出となっている.
手術(Surgery)は,技術(Art)と科学(Science)の学問である.技術を支える基本手技は,日々の鍛錬で反射的に体に覚えさせ,高精度で反復できなければならない.同時に,科学を基盤とした応用手技は,知能を駆使した知的活動である.私は手術の本質は芸術と一緒で,総体的な「美学」にあると考えている.手術の質を保証するのは,手技の的確さ・進行の円滑さ・術野の完成度の3 点である.外科医人生40 年で得た哲学は,「手術は川の水が流れるように一定の規律で進行し,出血を限りなく抑えた美しい術野が完成されれば,患者の周術期が荒れることは決してない」という普遍的事実である.
本書は,前半(4 章まで)の肝臓外科・総論編と,後半(5・6 章)の肝臓外科・手術編の二部から構成されている.肝切除で18 術式,肝移植で生体左肝・右肝移植および全肝移植を取り上げた.症例は基本的にここ数年内の私の執刀例である.通常の手術書では,術式の解説は低難度から高難度へと定番の流れで記載されるが,本書ではあえて私が初めて執刀した術式の個人的な順序にすることで,より実践的に構成した.
イラストの原図・シェーマはすべて私が描いた.このように手術手技を一人が一貫した方針で詳述した肝手術書は他にないものと自負している.奇しくもCouinaud 生誕100 年にあたる本年に,自身の肝臓手術の集大成をまとめる機会を得たことに,不思議なご縁を感じている.
2021年,私は消化器外科主任教授の定年を迎え,以前から決めていたがキッパリとメスを置いた.肝臓外科医人生40 年で7,418 例の肝臓手術を執刀し一定の成果を収めたが,手術を完全に理解するという目標には未だ道半ばである.それほど手術は深淵で雄大である.
本書が若き外科医の手術力向上に貢献し,患者さんが少しでも長く,健やかにすごしていただくことを願ってやまない.
2022年5月
髙山忠利
本書は,国内外を通じて肝臓外科のトップランナーとして疾走してこられた日本大学消化器外科学前主任教授である髙山忠利先生および教室員の方々が肝臓外科領域のすべて,解剖,手術適応,肝切除の基本手技(髙山グループには基本手技であると思われるが,ある一定のレベルに達していなければ理解できない記載多数あり),周術期管理を,また各論ではすべての術式を症例提示のかたちで,その際の工夫,髙山メモ(思い出話)をまとめられた手術手技解説書である.肝臓外科学の最新の知見が幅広く網羅されており,たいへんわかりやすいカラー図が多く掲載されている.各術式の手術手技が術野写真と手書きシェーマによりGlisson 3次分枝まで,どこをどう処理するのかが詳細に記述されている.1ページ1ページ,参考論文までのすべてにおいて髙山先生が記述・監修されていることは間違いないと私はお見受けした.
序文で,「手術(Surgery)は,技術(Art)と科学(Science)の学問である.技術を支える基本手技は,日々の鍛錬で反射的に体に覚えさせ,高精度で反復できなければならない.同時に科学を基盤とした応用手技は,知能を駆使した知的活動である」と書かれている.私自身,この至言,正直100%は理解できず,現在本書を8割程度読み終えた段階である.最後まで読破すれば理解できるのか,やや不安である.
私は数年前,髙山先生の手術に参加させていただいたことがある.驚いたことは手術内容ではない.あの髙山ボスが麻酔科医,器械出し・外回り看護師への気遣い,笑いはないものの一定の気遣いの会話があり,手術メンバーが緊張することなく,皆がリラックス(?)して手術を行っていたことである.独我的な髙山ボスの手術イメージを想像していたが,真逆の光景であった.
私自身が本書において感銘を受けた章は,「Makuuchiを深化:尾状葉腹側切除」,「Takayamaの神髄:尾状葉単独全切除」である.肝胆膵外科専門の医師にはぜひ読んでいただきたい.本書はまさにこの1冊をもっていれば肝臓外科領域高難度手術をカバーできるものと思われる.
最後に,私が格言と認識している髙山先生のメッセージを三つご紹介し,本書の推薦を締めくくりたい.「私たち外科医の第一義は,100%手術であり,いつも手術を考え・悩み・工夫しなければならない」,「手術の本質はその美しさにある.美しさを保証するのは,手技の的確さ・進行の円滑さ・術野の完成度の三つの要素(髙山のトリアス)である」,「出血量を可能な限り抑えた美しい術野が完成されれば,周術期が荒れることは決してない」.
臨床雑誌外科84巻12号(2022年11月号)より転載
評者●関西医科大学肝臓外科教授・海堀昌樹
