乳房画像診断最前線
超音波診断を中心に
編集 | : 位藤俊一 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-26211-3 |
発行年月 | : 2013年6月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 280 |
在庫
定価9,350円(本体8,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
乳房の画像診断は近年、スクリーニングから精検、化学療法の効果判定など、超音波の活用の場がひろがっている。Bモード画像をはじめ、カラードプラ、組織弾性評価、ソナゾイド造影などの超音波診断を中心に、マンモグラフィやMRI、PET/CTまでマルチモダリティを駆使した乳腺疾患の診断法をまとめた。最新の知見と多様なケースファイルを提示し、乳腺疾患の良悪性診断、治療方針決定の流れを理解できる実践書。
第I章 総論(1):乳房画像診断の新しい流れ
A 乳房超音波画像診断における新しい技術と他のモダリティの位置付け
(1)造影超音波検査
(2)組織弾性映像法(エラストグラフィ)
(3)仮想超音波[real-time virtual sonography(RVS)、volume navigation(V Navi)]
(4)非腫瘤性病変の診断
a.乳腺内低エコー域
b.石灰化病変
c.石灰化病変に対するインターベンション
(5)乳癌の広がり診断
(6)リンパ節診断
(7)遠隔転移診断
(8)薬物治療効果判定
(9)non-surgical ablation効果判定
第II章 総論(2):病理
A 超音波診断のための病理
(1)乳腺腫瘍の組織学的分類
(2)おさえておきたい組織型
a.乳癌
b.乳管内乳頭腫
c.結合織性および上皮性混合腫瘍
d.乳腺症
第III章 超音波検査の従来法と新技術
A Bモード評価の基本
(1)腫瘤と非腫瘤性病変
(2)腫瘤における用語の解説
a.腫瘤の形状
b.境界部
c.内部エコー
d.後方エコー
e.随伴所見
f.縦横比
g.エコーパターン
(3)非腫瘤性病変
a.乳管の拡張を主体とする病変
b.乳腺内低エコー域
c.構築の乱れ
d.その他
B カラードプラ検査
1 腫瘍のドプラ診断
(1)超音波ドプラ法の原理
(2)超音波ドプラ法の調整機構
a.カラーゲイン(色調増幅)
b.パルス繰り返し周波数(PRF)
c.ウォールフィルタ(防壁濾過)
d.サンプルボリューム(SV)
(3)超音波ドプラ法の検査手順
(4)臨床的評価
a.カラードプラ法による乳腺腫瘤のバスキュラリティの評価
(5)治療への応用
2 超音波検査によるリンパ節の診断
(1)正常リンパ節の構造
(2)転移性リンパ節の構造
(3)転移性リンパ節の超音波所見
(4)反応性リンパ節腫大の超音波所見
(5)ドプラスペクトル解析による血管抵抗pulsatility index(PI)、resistance index(RI)の測定
C 組織弾性映像法の原理と評価
1 エラストグラフィ
(1)原理・構成
(2)検査手技
a.関心領域(ROI)の設定
b.圧迫手技
(3)臨床的評価
a.弾性スコア
b.BGR sign
2 ARFIを利用したエラストグラフィと硬度定量測定法
(1)原理・構成
a.ARFIとは
b.Virtual Touch Imaging(VTI)
c.Virtual Touch Quantifi cation(VTQ)
d.Virtual Touch IQ(VTIQ)
(2)検査手技
(3)臨床的評価
3 静的エラストグラフィ
(1)原理・構成
a.概念
b.方法
c.表示
d.エラストグラフィ画像の信頼性の向上
e.硬さの数値化
(2)検査手技
(3)臨床的評価
4 組織ドプラ法を利用したエラストグラフィ
(1)原理・構成
(2)検査手技
(3)臨床的評価
D CAD
(1)原理・構成
(2)検査手技
(3)臨床的評価
(4)治療への活用
E 乳腺領域における3D/4D超音波
(1)冠状断面(C-plane)による診断
a.腫瘤の診断
b.広がり診断における評価
c.領域リンパ節の診断
d.術前薬物療法における治療効果判定
(2)体積算出
(3)インバージョンモード
(4)多断面表示モード(TUI)
(5)インターベンションへの応用
(6)3D/4D超音波による血流評価
a.3D/4D超音波におけるカラー/パワードプラ,B-flow
b.造影超音波3D/4D表示
(7)4Dエラストグラフィ
(8)3D/4D超音波:今後の展望
F 造影超音波検査
1 基礎
(1)第1世代超音波造影剤
(2)第2世代超音波造影剤
(3)薬理学的特性・体内動態
(4)乳腺腫瘍モデルでの造影効果
(5)造影超音波への期待と展望
2 原理
(1)超音波造影剤の音響的特徴
(2)造影超音波法の原理
(3)微細血管の再構成イメージング
(4)注意点
a.ゲイン設定
b.送信条件
3 ソナゾイド造影の現状
(1)最新の文献
G センチネルリンパ節
1 意義・同定法
(1)センチネルリンパ節の意義と同定法の歴史
(2)造影超音波法によるセンチネルリンパ節同定法開発の経緯
a.第2世代超音波造影剤の特徴とセンチネルリンパ節同定への応用
b.ソナゾイド乳輪下注入による造影超音波画像を用いたセンチネルリンパ節同定法
(3)造影超音波法による乳癌センチネルリンパ節同定法の展望
2 生検の現状と展望
(1)適応
(2)同定法
(3)転移検索法
(4)転移症例に対する腋窩郭清
(5)今後の課題
H リアルタイム超音波断層検査
1 Real-time virtual sonography(RVS)
(1)原理・構成
(2)適応・禁忌
a.適応
b.禁忌
(3)検査手技
(4)操作のコツ
(5)臨床的評価
(6)治療への活用
a.MRI-detected lesionの評価
b.乳房温存手術における切除範囲のマーキング、センチネルリンパ節生検
c.術前化学療法後の広がり診断
2 Volume Navigation
(1)原理・構成
a.Volume Navigationの概要
b.システムの構成
(2)検査手技
a.Volume画像の読み込み
b.位置合わせ
c.Fusion表示
d.GPSマーカ
e.臨床使用上の注意点
(3)臨床的評価
(4)治療への活用
第IV章 超音波以外の主な検査法(各モダリティによる評価の基本)
A マンモグラフィ
(1)マンモグラフィの基本と特徴
(2)マンモグラフィ所見用語
a.腫瘤
b.石灰化
c.その他の所見
(3)マンモグラフィの長所・短所
a.画像の客観性
b.Interventionのしやすさ
c.腫瘤の描出力と性状把握
d.石灰化の描出力と性状把握
e.構築の乱れの描出力
B CT
(1)原理・構成
(2)検査手技
(3)臨床評価
a.腫瘤性病変
b.非腫瘤性病変
(4)治療への活用
C PET/CT
(1)PET/CTの撮影
(2)読影方法
(3)部位別の診断
a.原発巣診断
b.リンパ節転移診断
c.遠隔転移診断
(4)治療効果判定
(5)今後のPETの動向
D MRI
(1)乳房MRIの撮像
(2)BI-RADS-MRIの用語
a.ductal enhancement:linear/branching
b.clumped
c.clustered ring enhancement
第V章 ケースファイル
A 悪性疾患
1-1.非浸潤性乳管癌(DCIS)(1)
1-2.非浸潤性乳管癌(DCIS)(2)
1-3.非浸潤性乳管癌(DCIS)(3)
2 硬癌
3-1.乳頭腺管癌(1)
3-2.乳頭腺管癌(2)
4-1.充実腺管癌(1)
4-2.充実腺管癌(2)
5-1.粘液癌(1)
5-2.粘液癌(2)
6-1.浸潤性小葉癌(1)
6-2.浸潤性小葉癌(2)
6-3.浸潤性小葉癌(3)
7 扁平上皮癌
8 髄様癌
9 悪性リンパ腫
10 アポクリン癌
B 良性疾患
1 線維腺腫
2 乳管内乳頭腫
3 乳腺症
4 乳腺線維症
5 過誤腫
6 乳管腺腫
C 特殊な疾患
1 転移性乳腺腫瘍
第VI章 術前画像評価による治療方針の決定
A 治療効果判定
1 化学療法
(1)術前化学療法後の乳房温存療法
(2)化学療法前後の画像評価
(3)サブタイプ別効果予測
(4)術前化学療法早期における画像評価
2 術前内分泌療法による画像評価
(1)術前内分泌療法
a.術前内分泌療法の意義
b.術前内分泌療法の適応
(2)術前内分泌療法を行う上での画像診断の意義
a.画像検査での質的診断
b.画像検査での治療評価
(3)術前内分泌療法での実際の画像評価
(4)今後の術前内分泌療法における画像評価
3 内分泌療法ー実際のデータを中心に
(1)術前内分泌療法の目的
(2)腫瘍縮小効果における術前化学療法との違い
(3)術前内分泌療法の病理学的所見に及ぼす影響
(4)術前内分泌療法後のマンモグラフィと超音波検査所見の特徴
a.マンモグラフィ
b.超音波検査
(5)症例提示
a.典型的なマンモグラフィおよび超音波検査所見を示した症例
b.超音波検査による腫瘍径が過小評価となった症例
c.超音波検査による腫瘍径の評価で留意が必要な症例
d.著明な腫瘍縮小効果が認められた50代の症例
e.著明な腫瘍縮小効果が認められた閉経前症例
(6)術前内分泌療法後の手術
B Non-surgical ablation
1 乳癌に対するラジオ波焼灼療法
(1)RFAの適応
(2)RFAのための画像診断
a.超音波診断
b.造影超音波検査
c.マンモグラフィ
d.MRI、CT
e.リンパ節診断
(3)RFAにおける病理組織学的診断
(4)RFAの実際
a.RFA電極針および焼灼パワー設定
b.画像ガイド下電極針穿刺
(5)RFAによる合併症
(6)RFAの治療効果判定
(7)RFAの将来性
2 RFAにおける病理組織学的評価
(1)RFA後の病理組織学的効果判定
a.RFA直後の病理組織学的所見
b.RFA後、期日をおいた病理組織学的所見
(2)RFA後切除例の病理所見
(3)腫瘍のviabilityの評価
3 凍結療法
(1)凍結療法の原理
(2)凍結療法の実際と特徴
(3)非切除凍結療法の適応と画像診断
(4)非切除後凍結療法の術後画像
C インターベンション
(1)超音波ガイド下FNAC
a.FNACの適応
b.FNACの実際
(2)画像誘導下CNB
a.CNBの適応
b.CNBの実際
(3)超音波ガイド下VAB
a.VABの適応
b.VABの概要と実際
(4)石灰化病変に対するCNBとVABの使い分け
(5)インターベンションの注意点
索引
このたび、『乳房画像診断最前線−超音波診断を中心に−』を出版する運びとなった。本書刊行のきっかけは、数年前に開催された日本乳腺甲状腺超音波診断会議(現日本乳腺甲状腺超音波医学会)に遡る。学会では超音波診断における新技術が多岐にわたり議論されたが、様々な新技術に関するまとまった書物があれば、さらに理解も深まり有益であるとのご意見をいただいたのが始まりであった。本書の構成は大きく2部に分かれ、第I部(第I〜IV章)は各種診断技術の最新知見を各エキスパートの先生方にご執筆いただいた。第II部(第V章)は日常臨床で直面する具体的な症例を提示し、各種診断モダリティを駆使した診断や治療に至るまでの道筋が、わかりやすい形で解説されている。
超音波診断における用語は、現在も各学会の用語・診断基準委員会などで議論が進められているが、いまだ確定に至っていないものもある。また、超音波診断はBモード画像が基本であるため、Bモード法の用語に関しても最新情報が盛り込まれるよう配慮がなされている。
本書には「診断・治療に至るまでの画像診断モダリティの位置付けや適切なインターベンションの選び方・考え方などの勘所」が網羅・解説されている。したがって、本書を通読するだけで自ずから問題点が整理される内容になっており、読み物としても興味深い内容となっている。また、日々の診療において疑問の点が生じたときに辞書的な使い方をしていただくのも有用である。
本書は乳腺診療に携わる乳腺認定医、専門医、超音波検査士や放射線技師などにも広く勧められる良書に仕上がったものと確信する。これもひとえに多忙な日常診療や研究の合間に素晴らしい原稿を仕上げてくださった先生方のお陰であり、心より御礼を申し上げる。
2013年6月
位藤俊一
乳腺疾患に関する画像診断の進歩には目を見張るものがある。乳癌の早期発見、腫瘍の進展範囲の正確な描出、術前薬物療法施行時の腫瘍と乳房の変化、病態、いずれをとっても従来とは比較にならないほどに高精度化し、より正確な診断と病変の把握が可能になっている。その中でも、超音波診断は実地臨床においてもっとも汎用される検査手法であり、重要であるとともに、乳腺診断にかかわる者にとってマスターしておくべき検査法でもある。
本書を通読してみたが、たいへんわかりやすく、かつ斬新で、また最先端でもある。これから乳腺、リンパ節の画像診断、特に超音波診断を始めようとする読者を意識し、同時にベテランの専門家をも納得させるような構成、コンテンツであり、平易でありながら非常にレベルが高い。良質の大判図が多数盛り込まれており、症例の提示においては診断画像、病理組織像が対比できるように細心の配慮がなされており、個々の症例が印象的に記憶に残る。新しい超音波診断技術の基礎、実際の手技、所見なども随所に含まれていて、著者らの本書にかける深い意気込みが伝わってくる。
章立ては、乳房画像診断の新しい流れ、病理、超音波検査の従来法と新技術、超音波以外の主な検査法、ケースファイル、術前画像評価による治療方針の決定よりなり、それぞれの項目は原理、構成、適応、手技、操作のコツ、臨床的評価、治療への応用、今後の課題などの亜小項目に分けて記述されている。全体構成もよく統一されており、心地よくすいすいと読みすすめることができる。読み終えてみると、超音波診断に関する基本的事項と最新の情報を系統的かつ網羅的に知りえたことを実感する。知識を構築していくうえで大いに役に立つ。実地の臨床に基づきながら、診断概念、診断技術の最先端を取り込んだ珠玉の1冊であり、乳房検査、検診、乳癌診断にかかわる方、必携の書と申し上げても過言でないできばえである。
臨床雑誌外科75巻11号(2013年11月号)より転載
評者●京都大学乳腺外科教授 戸井雅和