リウマチ診療レベルアップ 関節エコービジュアルレシピ
解剖学的視点とプローブ走査もわかる!
著 | : 大野滋/鈴木毅/小笠原倫大 |
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ISBN | : 978-4-524-26181-9 |
発行年月 | : 2016年3月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 150 |
在庫
定価3,740円(本体3,400円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
「プローブはどこに当てたら良い?」、「プローブはどうやって走査すれば良い?」といった関節エコー検査の基本を、現場ですぐに誰にでもわかるようにコンパクトにまとめた。見開き2頁で、(1)プローブの走査法(プローブの動きを連続写真で提示)、(2)観察対象を同定するコツ(解剖学的視点から視診・触診でどの部分を検査するかを解説)、(3)エコー像の見かた・捉えかた、をビジュアルに解説。これから関節エコー検査をはじめる検査技師やリウマチ診療のレベルアップを目指す医師におすすめの一冊。
第I章 関節エコーの基本知識
1.関節エコーによる病態の定義と重症度分類
2.リウマチ性疾患の診療における関節エコーの位置づけ
3.操作法と注意点
4.検査の手順
第II章 関節エコーの撮像法をおさえる
A 手指
肉眼・触診でランドマークを確認する方法
近位指節間(PIP)関節−背側/縦断像
近位指節間(PIP)関節−背側/横断像
近位指節間(PIP)関節−掌側/縦断像
近位指節間(PIP)関節−掌側/横断像
中手指節(MCP)関節−背側/縦断像
中手指節(MCP)関節−背側/横断像
中手指節(MCP)関節−掌側/縦断像
中手指節(MCP)関節−掌側/横断像
屈筋腱/横断像
屈筋腱/縦断像
おさえておくべき疾患
B 手関節
肉眼・触診でランドマークを確認する方法
手関節(背側)−橈側/縦断像
手関節(背側)−正中/縦断像
手関節(背側)−尺側/縦断像
手関節(背側)−尺側/横断像
伸筋腱/横断像
尺側手根伸筋腱/横断像
尺側手根伸筋腱/縦断像
屈筋腱(手根管)/横断像
おさえておくべき疾患
C 肘関節
肉眼・触診でランドマークを確認する方法
肘関節−屈側(腕橈関節)/縦断像
肘関節−屈側(腕尺関節)/縦断像
肘関節−伸側/縦断像
肘関節−伸側/横断像
おさえておくべき疾患
D 肩関節
肉眼・触診でランドマークを確認する方法
上腕二頭筋腱/横断像
上腕二頭筋腱/縦断像
三角筋下滑液包
肩峰下滑液包
肩甲上腕関節
おさえておくべき疾患
E 股関節
肉眼・触診でランドマークを確認する方法
股関節(前方関節窩)/縦断像
おさえておくべき疾患
F 膝関節
肉眼・触診でランドマークを確認する方法
膝蓋上窩/縦断像
膝蓋上窩(内・外側傍膝蓋窩)/横断像
膝関節−内側/縦断像
膝関節−外側/縦断像
膝関節−屈側/横断像
膝蓋腱/縦断像
おさえておくべき疾患
G 足関節・足趾
肉眼・触診でランドマークを確認する方法
足(距腿)関節/縦断像
距舟関節/縦断像
伸筋腱群/横断像
屈筋腱群/横断像
屈筋腱群/縦断像
長短腓骨筋腱/横断像
長短腓骨筋腱/縦断像
中足趾節(MTP)関節/縦断像
アキレス腱/縦断像
おさえておくべき疾患
索引
序文
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)をはじめとするリウマチ性疾患の診療(リウマチ診療)において、関節超音波検査(関節エコー)の果たす役割はますます重要になっている。関節エコーがその威力をもっとも発揮するのは、聴診器代わりに診察室で使用する「臨床現場即時検査(point of care testing:POCT)」としてである。診察室に機器があれば、関節エコーには「いつでもどこでもすぐに簡単に、誰もが侵襲なく複数の関節を、ときには動的に検査できる」という多くの利点がある。一方で、診察室に機器がある施設は限られ、また多忙な日常診療で医師が関節エコーを多くの患者に行うことには限界もある。このような際には検査技師に検査を依頼することとなる。リウマチ専門医、整形外科医、超音波技師など多岐にわたる医療スタッフが関節エコーを実施するが、学習にあたってそのスタートラインは異なる。整形外科系の専門医と違い、多くの内科系のリウマチ専門医や検査技師にとって、関節の解剖に関する知識の欠如が関節エコーの技術習得の障壁となる。
関節エコーは心臓や消化器のエコーと異なり、観察すべき対象が「見える」あるいは「触れる」という特長がある。画面を眺めながらプローブを動かして観察対象を探すよりも、見て触ったほうが簡単に同定できるケースが多い。各関節には観察対象を同定するための解剖学的ランドマークがある。本書では解剖に関する理解を深めるために、視診、触診によるランドマークの同定のコツを記載するとともに、プローブ動作を連続写真で表現し、これまでの関節エコーの教科書と一線を画す「誰にでもわかる」「親切すぎる」マニュアルを目指した。
本書の最大の特長は、それぞれの観察対象について見開き2頁で、プローブの走査法とともに、エコー像の見方と解剖学的知識までが一目でわかるような構成となっていることである。今すぐにこの本を参考に、関節を見て、触れて、プローブを手にとって観察していただきたい。
最後にあらためて強調したい点がある。関節エコーは、検査を行うこと自体が目的ではなく、RAの疾患活動性を評価するさまざまな手段の一つであるという点である。関節エコーによって得られた情報をリウマチ専門医が正しく理解し、その他の臨床情報とともに総合的に判断し、個々の患者の治療に反映させること、すなわち早期診断と寛解導入に生かすことこそがもっとも重要である。本書を参照することで、より多くの施設で効率よく関節エコーを行っていただき、一人でも多くのRA患者の予後が改善することを執筆者一同、祈念している。
2016年2月
執筆者一同
関節リウマチの治療体系は、最近激変した。いわゆるパラダイム・シフトである。生物学的製剤をはじめとする新薬によって、寛解が現実的な目標になり、早期治療のために、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)と欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism:EULAR)による新しい分類基準(2010年)が発表された。この基準では少なくとも一つの関節に滑膜炎があることが関節リウマチの診断の根幹となっているが、滑膜炎の有無の判断に超音波検査を用いてもよいとされている。
さらに超音波検査は、関節リウマチの疾患活動性の評価法として確立されつつある。EULARからは『リウマチ性疾患超音波検査テキスト』(メディカル・サイエンス・インターナショナル)が、日本リウマチ学会(Japan College of Rheumatology:JCR)からも『リウマチ診療のための関節エコー撮像法ガイドライン』(羊土社)が出版されており、またJCRでは定期的に関節超音波検査の講習会を開いて、検査の標準化を推進している。今、関節リウマチの超音波検査を学ぼうとするリウマチ専門医、整形外科医、超音波技師はたいへん多い。
このような現状の中、実に斬新なガイドブックが出版された。『リウマチ診療レベルアップ関節エコービジュアルレシピ』である。繙いてみると、各セクションのはじめには体表ランドマークの写真と解説がある。その後に、一つ一つの観察対象ごとに見開き2ページの説明が続く。この2ページには、「撮像のコツ・考え方」としてプローブ操作の連続写真と簡潔な解説が、「解剖図」としてわかりやすいシェーマが、そして実画像とワンポイントアドバイスが掲載されている。写真もシェーマも美しく、無駄がなく、快適である。序文にあるように、多くの内科系のリウマチ専門医や検査技師にとってやや苦手な解剖学が理解できることをめざしているガイドブックであるが、局所解剖になじみの深い整形外科医にとっても、頭に沁み入ってくるような説得力がある。まさに題名の『ビジュアルレシピ』にふさわしく、著者らが自負するとおり「誰にでもわかる」、「親切すぎる」マニュアルになっている。
著者の大野滋先生(横浜市立大学附属市民総合医療センター)、鈴木毅先生(日本赤十字社医療センター)、小笠原倫大先生(順天堂大学)は、いずれも内科系のリウマチ専門医として高名であり、超音波を組み入れたリウマチ診療のリーダーであることはいうまでもない。なかでも大野先生は上述のEULARの『リウマチ性疾患超音波検査テキスト』の監訳者でもあり、従来からこの分野の仕事に携わり、深い見識をおもちである。本書を手にすると、3人の先生方の関節超音波検査に対する研究心が、行間に累々と息吹いていることを感じずにはいられない。片手でページをめくることもできるコンパクトなA5判であるが、中に込められた情熱は圧倒的である。超音波装置の横において、検査のたびに開いてみたい一冊である。
臨床雑誌整形外科67巻10号(2016年9月号)より転載
評者●獨協医科大学病院リウマチセンターセンター長 玉井和哉