基礎からはじめる鎮痛・鎮静管理マスター講座
せん妄予防と早期離床のために
監修 | : 道又元裕 |
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編集 | : 剱持雄二 |
ISBN | : 978-4-524-26167-3 |
発行年月 | : 2015年2月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 168 |
在庫
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
集中治療室で看護師が行っている鎮痛・鎮静管理を平易に解説した、ベッドサイドですぐに活用できる実践書。PADガイドラインやABCDEバンドルといった最新の情報に対応。鎮痛・鎮静における看護をビギナーからベテランまでが理解し実践できるように、難易度別に構成。せん妄の予防や早期離床の考えについても解説しており、クリティカルケア領域の看護師必携の一冊。
PART1 ビギナー編
1 鎮痛・鎮静管理の基本を知ろう
1.鎮痛とは?
2.鎮静とは?
3.不穏とは?せん妄とは?
4.鎮痛と鎮静はどのような関係にある?
5.鎮痛・鎮静管理はどのような流れで行う?
2 評価スケールを使おう
1.痛みの評価スケール
BPS(behavioral pain scale)
CPOT(critical-care pain observation tool)
2.鎮静の評価スケール
RASS(Richmond agitation-sedation scale)
SAS(sedation-agitation scale)
3 くすりを知ろう
1.鎮痛薬には何がある?
フェンタニル
モルヒネ
2.鎮静薬には何がある?
ミダゾラム
プロポフォール
デクスメデトミジン
PART2 ベーシック編
1 鎮静の弊害を知ろう
1.鎮静し過ぎると何がいけない?
2.鎮静による弊害はどうやって防げばよい?
2 抑制について考えよう武内龍伸
1.抑制とは?
2.抑制は患者にどのような影響を与える?
3.抑制に法的な問題はない?
4.ICUで抑制はどのような判断・手続きで行われている?
5.ICUで抑制をなくすにはどうしたらよい?
EXTRA 番外編
せん妄についてくわしく学ぼう
1.せん妄の症状・分類・発症原因を知ろう
2.せん妄はどうやって予防する?発症したらどうする?
3.せん妄の評価はどのように行う?
CAM-ICU(confusion assessment method for the ICU)
ICDSC(intensive care delirium screening checklist)
PART3 アドバンス編
1 早期離床を目指そう
1.早期離床とは?
2.早期離床はどのように行う?
3.早期離床のためにはどのような鎮痛・鎮静管理がよい?
4.早期離床に向けた上手な鎮痛・鎮静管理とは?
2 PADガイドライン・ABCDEバンドルを活用しよう
1.PADガイドライン
2.ABCDEバンドル
PART4 プラクティス編
鎮痛・鎮静管理を実践しよう
1.人工呼吸管理中の患者の鎮痛・鎮静管理
2.NPPV管理中の患者の鎮痛・鎮静管理
3.非人工呼吸管理の患者の鎮痛・鎮静管理
4.病態別の患者の鎮痛・鎮静管理
1)病態や治療によって鎮痛・鎮静管理はどうなるのか?
2)病態・治療別の鎮痛・鎮静管理(1)−急性心不全
3)病態・治療別の鎮痛・鎮静管理(2)−ARDS
4)疾患・治療別の鎮痛・鎮静管理(3)−敗血症
5.術式別にとらえた術後患者の鎮痛・鎮静管理
1)術後になぜ鎮痛・鎮静が必要か
2)術式別の術後の鎮痛・鎮静管理(1)−心臓血管外科手術後
3)術式別の術後の鎮痛・鎮静管理(2)−消化器外科(食道がん)手術後
4)術式別の術後の鎮痛・鎮静管理(3)−呼吸器外科手術後
6.鎮痛・鎮静管理時に注意すべき看護ケア
1)脳低体温療法
2)自己コントロール支援
3)コミュニケーション
4)患者さんの状態に配慮したケア
5)患者家族へのケア・かかわり
索引
はじめに
ICU(集中治療室)などの特殊な環境で医療サービスを受ける急性重症患者は,疾患と病態の特性に加えて,人工呼吸器をはじめとするME機器の装着や病室空間そのものなど非日常的な環境に晒されることによって,身体的にも精神的にも様々な痛みや恒常性の喪失感などのストレスに苛まれることは避けられません.そのストレスに対する様々な生体反応を緩和し,治療や看護が円滑に実践され,そして,患者の安全と安楽を保障するために,種々の鎮痛と鎮静が行われます.その鎮痛・鎮静に関する実践方法は,医師やその医療チームの考え方,施設環境などによって異なるかも知れません.
鎮痛・鎮静の最大の目的は,対象とする患者の苦痛を取り除く,もしくは緩和することで,快適性や安全性を確保するにことにあります.またそれは,他でもなく患者の回復過程に役立つことが大前提にあります.具体的には,人工気道に対する痛み,不快感などから解放するとともに,酸素代謝,エネルギー代謝,循環調節などに正の影響をもたらすことを期待して行います.しかし,それは永久的ではなく,一時的であることが大原則です.
近年,その鎮痛と鎮静の方法と評価について多くの検討が行われてきており,鎮静を浅く保つことや早期に体を動かすこと(早期離床)の重要性が叫ばれています.さらに,プロトコルなどの標準化された方法やガイドラインなどの新たな知見が臨床の場にも少しずつ広まりをみせ,一般化に至りつつあります.また,時代の変遷を経て,鎮痛・鎮静管理に使用される薬剤,その投与方法は,徐々に進歩的変化を遂げてきました.特にICUなどのクリティカルケア領域の臨床現場においては,幾多の議論や検証が盛んに行われ,患者と治療・看護にとって最良の実践が試みられています.
このような趨勢の中,そこで臨床実践を提供する看護師は,鎮痛・鎮静の実践を管理する重要な役割を担うようになってきました.それは,患者の細かな言動や行動を高密度に観察・評価している看護師が,患者にとって有益となる適切な鎮痛や鎮静が実施されるべく,医師へのレコメンデーション(患者にとって有益となる情報の提供と提案)を行ってきたからです.
鎮痛と鎮静に関わる判断は,今や看護師の特化技術の一つと言っても過言ではありません.したがって,鎮痛・鎮静に関する正しい知識を修学することは,それに関わる看護師にとって当然のことであり,それは臨床現場で鎮痛・鎮静下にある患者を担当したなら,新人看護師であっても必須の知識です.そこで,ICUをはじめとするクリティカルケア領域に配属された新人看護師はもちろんのこと,鎮痛・鎮静について基礎から学びなおしたい看護師や,指導する立場の看護師にとっても,時間をかけずに読める鎮痛・鎮静管理の実践書があればと考えて本書を編纂しました.
具体的には,シンプルで,読んだらすぐに理解できて使える実践書として,内容をコンパクトに,図やイラストを多用し,教科書的な配列ではく,難易度も考慮したステップアップで学べる構成としました.
なお,本書は鎮痛・鎮静管理について学ぶ本ですが,基本的知識と必要な範囲で「せん妄」にも触れています.それは,鎮痛・鎮静管理において,せん妄の予防が重要になるからです.また,PAD ガイドラインの活用,ABCDE バンドルの実践についても解説しています.それは,本書に書かれた鎮痛・鎮静管理の内容を理解し実践するとともに,PAD ガイドラインを活用し,ABCDE バンドルを実践することが,せん妄の予防,ひいては早期離床にもつながるからです.
本書は,鎮痛・鎮静について日々の臨床実践を通して真摯に向き合い,学び,患者にとって最も良質な方法を模索しているクリティカルケア領域で活躍する若手のリーダー達に執筆をお願いしました.ベッドサイドで大いに活用して頂けることを期待しています.
2015年2月
道又元裕