小児心身医学会ガイドライン集改訂第2版
日常診療に活かす5つのガイドライン
編集 | : 日本小児心身医学会 |
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ISBN | : 978-4-524-26165-9 |
発行年月 | : 2015年7月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 306 |
在庫
定価4,950円(本体4,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
初版に収録した「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」、「小児科医のための不登校診療ガイドライン」「小児科医のための摂食障害診療ガイドライン」「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」の改訂に加え、「小児科医のための心身医療ガイドライン」「入院中の神経性やせ症患者のケア」「学校で役立つ摂食障害手引き」を収録。小児医療に携わるすべての者が読んでおきたい一冊。
I 小児科医のための心身医療ガイドライン
はじめに
1.本ガイドラインについて
2.子どもにおける心身症の定義
A.心と身体のつながりと心身症
1.心と身体のつながり
2.心身症における心理社会的因子
B.心身症の治療について
1.心身症の初期対応
2.心身症治療の進め方
3.心身症治療のゴール
C.小児科における心身症診療の実際
1.外来診療における心身症
2.子どもの摂食障害
3.入院治療について
D.専門医へのステップ
II 小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン
本ガイドラインの改訂個所に関する説明
1.改訂の背景
2.改訂個所について
一般小児科で行う起立性調節障害(OD)診療の概要〈本ガイドラインの要旨〉
A.診断の手順
1.OD ガイドライン診断アルゴリズム
2.ODのサブタイプ
3.新起立試験法
4.新起立試験法によるサブタイプ判定
5.身体的重症度の判定
6.「心身症としてのOD」診断チェックリスト
B.治療の進め方
1.重症度に合わせた治療的対応の組み合わせ
2.初診以後の通院について
重症度・心理社会的因子の関与に応じた治療的対応の組み合わせ
1.疾病教育
2.非薬物療法
3.学校への指導や連携
4.薬物療法
5.環境調整(友だち・家庭)
6.心理療法
C.子ども・家族用ガイドQ&A
D.医師用ガイド新起立試験についてのQ&A
E.解説
はじめに
1.診断ガイドライン 解説
2.治療ガイドライン 解説
3.総説 ODの病態生理と治療
III 小児科医のための不登校診療ガイドライン
本ガイドラインについて
1.目的
2.対象と構成
3.エビデンスレベル
A.不登校への対応の基礎
1.小児科医としての不登校への関わり方
2.このガイドラインの内容について
3.不登校に対するおおまかな診療の流れ
B.初診段階での診察手順
1.どのような症状から不登校の存在を疑うか
2.不登校を疑ったときの問診
3.初診時の対応と指示
4.家族の気づきを促す
C.不登校の診療にあたり知っておきたい知識
1.身体症状の治療に有用な心身症の知識
2.薬物の使用について
3.保険診療について
D.当初1ヵ月の経過観察
1.診察と情報収集の要点
2.生活の様子や生育歴についての情報収集
3.合併する疾患の確認
E.1ヵ月を過ぎた後の経過観察
1.長期的な経過観察の基本
2.診療の再評価と専門機関への紹介
3.不登校の状態評価
4.不登校の回復過程
5.毎回の診察の進め方
6.状態に応じた対応の要点
F.学校との関わり
1.学校と連携する目的
2.学校との情報交換の手順
3.学校と連携するときの注意
4.子どもと学校とのつながりをどうするか
初診時の身体症状に関する問診票
学校との情報交換にあたっての同意書の例
不登校診療ガイドライン(要約版)
はじめに
1.どういった症状から不登校の存在を疑うか
2.家族の気づきを促す手順
3.子どもに対する説明
4.考慮が必要な疾患と,その対応
5.フォローアップの要点(治療目標)
6.経過観察のしかた
7.学校・教育機関との連携
IV 小児科医のための摂食障害診療ガイドライン
本ガイドラインについて
1.本ガイドラインの目的
2.本ガイドラインが想定する診療対象
3.本ガイドラインのエビデンスレベル
4.本ガイドラインの限界
A.摂食障害の概要
1.摂食障害とは
2.小児の摂食障害におけるトピックス
3.摂食障害への対応の概要
B.外来治療
はじめに
1.小児科外来における初診時診断
2.小児科外来における治療
3.やせ願望のない摂食障害(非定型摂食障害)への対応
4.発達障害が併存する場合の対応
5.晩期合併症のフォローアップについて
C.入院治療
1.摂食障害における入院治療
2.再栄養療法(refeeding,nutritional rehabilitation)
3.入院治療で気をつけなければならないこと
付録(1)−神経性やせ症(AN)の入院ケア手引き
看護師向けポイント
管理栄養士向けポイント
1.ANにおける入院治療の意義
2.AN入院治療の基本方針
3.ANで入院する子どもの看護
4.栄養指導のポイント
付録(2)−学校で役立つ摂食障害手引き
はじめに
1.摂食障害とは
2.摂食障害−最近の傾向
3.摂食障害の症状
4.摂食障害の背景因子
5.摂食障害の治療
6.摂食障害への学校での対応Q&A
おわりに
V くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン
本ガイドラインについて
1.本ガイドラインの目的と基本的姿勢
2.本ガイドラインが想定する診療対象
3.本ガイドラインのエビデンスレベル
4.本ガイドラインの限界
A.総論編
1.くり返す子どもの痛みへの対応の基礎
2.痛みの発生機序
3.子どもの痛みの評価
4.痛みと精神科的疾患
B.腹痛編
はじめに:腹痛とは
1.腹痛を訴える子どもの基本診察
2.くり返す腹痛のカテゴリー:子どもの機能性腹痛や反復性腹痛,心因性腹痛の考え方
3.機能性消化管障害とRomeIII診断基準
4.くり返す腹痛の子どもの診察の流れ
C.頭痛編
はじめに:診療指針の概要
1.診断
2.治療
3.小児における慢性連日性頭痛
索引
改訂第2版序文
本ガイドライン集の初版は2009年に完成した。発刊直後より好評で、医師のみならず子どもの心身症に関わる多くの方にご愛読いただいた。当時「子どもの心身症への対応が必要な時代である」との認識でガイドラインを作成したが、発刊から6年が経過し、その必要性はさらに高まっている。この6年間で日本の子どもを取り巻く環境にはさまざまな変化があった。大きな自然災害に見舞われ、子どもによる凶悪な事件も発生した。不登校や「子どものこころ」の不調和による疾患も増加している。そのため、小児心身症を専門とする医師だけでなく、プライマリケアである一般小児科外来においても、心身症への対応の必要性を痛感している先生方が少なくない。
日本小児科学会において開催された、ガイドラインに関連したセミナーには、専門医だけでなく多くのプライマリケアに携わる先生方にご参加いただいた。日本小児心身医学会は専門家に対する研修会を開催しているが、今後はプライマリケアに携わる先生方を対象に、小児心身症への理解を深める研修会を開催していく予定である。その研修会のテキストとしてご利用いただくことも意識して、ガイドライン集を改訂した。さらに、小児心身症を専門とする医師の需要も高まっている。本学会は子どもへの全人的医療を提供できる専門医の養成が使命であると考えており、本ガイドライン集は、小児心身症を専門とする医師にとっても基本的なテキストであると考えている。加えて現在、医学界全体で専門医制度の整備が行われている。患者さんのためのわかりやすい専門医制度を確立するために、日本専門医機構が主体となり包括的改革を行っているところである。私たちの分野も、児童精神科領域とともに「子どものこころ専門医」制度を構築するための準備を進めている。そのため、この分野におけるガイドラインの必要性は高く、専門医制度においても活用できるガイドラインとなるよう作成した。
本ガイドライン集が、子どもの心身症の専門医を目指す医師、プライマリケアに携わる先生方、さらに多くの子どもと家族のお役に立てることを願っている。
2015年5月
日本小児心身医学会理事長
村上佳津美
本書は2009年に世に出たガイドライン集の、子ども事情の時代的変化に応じて行われた改訂の結果である。本書は子どもの心身医療の踏まえるべき基本と原則を示した「小児科医のための心身医療ガイドライン」を第I章に置き、以下に「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」、「小児科医のための不登校診療ガイドライン」、「小児科医のための摂食障害診療ガイドライン」、「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」の4つの疾患ないし症候に対する診療ガイドラインを配置するという構成になっている。いずれも小児診療や児童精神科診療において医師が出会うことの多い疾患ないし症候であるにもかかわらず、いわゆる医学的感覚だけでは対処しがたい手強さをもつものばかりである。なればこそ、心身症的諸疾患、諸症候に対する時代に即した治療指針が強く求められたのである。
子どもの心身医療の基本的指針というべき第I章は一般小児科医が心身症を疑う子どもと出会った際の手引きである。この指針のもっとも重要な部分は「心身症であることを疑う」という点にあるのではないだろうか。その判断基準として「症状が変動しやすい」、「通常の治療に反応しない」、「検査で異常がない」、「診療所見と症状が合わない」という4点があげられており、一般小児科医の判断を支援するという点で過不足がない。
これに続く4つの症候・疾患に対するガイドラインのうち、ここでは評者自身が関心をもつ不登校と摂食障害の2つの診療ガイドラインについて述べたい。
「小児科医のための不登校診療ガイドライン」(第III章)は、小児科という専門性から身体症状をもつ不登校が主たる対象であると規定しながら、徐々に心理的治療・支援に向かっていく過程をモデルとして示している。そこでガイドラインが強調するのは「見かけの状態の改善ばかりを追求しないこと」であり、「現状維持イコール前進である」とする視点を親と小児科医自身がともにもつことである。評者もこの観点に共感でき、その困難な作業に精髄することこそ不登校に取り組む医師の診療科を超えた目標であると感じた。ガイドライン中の非常にきめ細かな介入法の提案はこの目標を目指す作業の有力な支えとなることだろう。
「小児科医のための摂食障害診療ガイドライン」(第IV章)は神経性やせ症(AN)と神経性過食症(BN)の診療指針を目指している。子どもの摂食障害の大半を占めるAN診療における外来治療の指針は、身体治療と心理療法をバランスよく提供することを推奨している。入院治療では再栄養法の実施法と注意事項を中心に身体的ケアの詳細な指針を示す一方で、中途半端な心理療法的指針をあげず、付録としてANの診療中に生じるさまざまな事象に対する看護師の対応指針を詳しく示している点に、評者は小児科診療という枠内での臨床指針としての誠意を感じた。
この不登校と摂食障害の診療ガイドラインは、どちらも診療経過のなかで児童精神科との連携や紹介を選択するポイントを、併存精神疾患の存在を中心に、明確にしようと努めている。小児科医の心身症診療のカウンターパートである児童精神科医が、それにどう応えるかという点を真剣に検討していくうえでのたたき台ともなっていることを児童精神科医の一人として真摯に受け止めたいと思う。
臨床雑誌内科117巻4号(2016年4月増大号)より転載
評者●恩賜財団母子愛育会愛育研究所児童福祉・精神保健研究部/同研究所愛育相談所 齊藤万比古