感染症専門医テキスト 第I部 解説編改訂第2版
編集 | : 日本感染症学会 |
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ISBN | : 978-4-524-26156-7 |
発行年月 | : 2017年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 1302 |
在庫
定価27,500円(本体25,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
日本感染症学会編集による感染症専門医研修カリキュラムに準拠したテキストの改訂第2版。「敗血症」を2016年の新定義に基づく解説とし、薬剤耐性菌と医薬品適正使用にかかわる記述を増補した。ジカ熱ほか新たな感染症の解説を加え、初版刊行後の進歩を全体に盛り込んでアップデートしている。専門医を目指す医師、専門医取得後の指導医だけではなく、感染症診療に携わる医師は持っておきたい一冊。
総論
I 微生物の概要
A.微生物の分類
B.常在菌
C.病原微生物の病原因子
D.宿主−寄生体関係
II 感染症の病因,病態生理
A.感染様式
B.感染経路
III 診断
A.臨床徴候
1.全身症状(発熱,発疹など)
2.臓器別感染徴候
3.発熱疾患の鑑別診断
4.不明熱
B.画像検査法
1.感染症診断に用いられる画像検査法
2.各領域の感染症における画像診断
C.微生物検査概論−検査の基本
1.検査診断の感度
2.塗沫検査:グラム染色の有用性と限界
3.特殊染色を必要とする病原体と染色法
4.微生物検査のための検査のオーダ方法と注意点
5.一般細菌と真菌の塗沫
6.血流感染の検査診断
7.薬剤耐性検査
8.ウイルス分離
D.微生物検査各論(1)−検査法の原理と応用
1.遺伝子診断
2.抗原検出法
E.微生物検査各論(2)−病原体別検査法
1.ウイルスの検査
2.細菌の検査
3.真菌の検査
4.原虫の検査
5.寄生虫の検査
F.微生物検査各論(3)−迅速診断検査
IV 化学療法
A.化学療法の基礎
1.薬剤の適正使用の原則
2.抗菌スペクトラム
3.抗菌薬の副作用
4.薬剤の代謝
5.耐性機序
6.抗菌薬とエンドトキシンの遊離
B.抗微生物薬の特徴
1.抗ウイルス薬
2.一般抗菌薬
3.抗結核薬
4.抗真菌薬
5.抗寄生虫薬
C.感染症治療薬による薬疹の診断と治療
D.感染症診療の思考プロセスおよび抗菌薬の適正使用
E.多剤耐性菌感染症における化学療法の治療戦略
1.市中感染症
2.医療関連感染症
F.小児感染症への対応
G.高齢者感染症への対応
H.特殊病態下での感染症への対応
1.妊産婦
2.免疫不全患者
3.術後感染症
V 化学療法以外の感染症治療
A.予防接種(ワクチン)
1.ウイルス
2.細菌
B.受動免疫,その他
1.受動免疫の概要
2.治療法各論
C.全身管理と対症療法
VI 感染症関連法規
A.感染症法
B.予防接種法
C.学校保健安全法
D.その他
1.食品衛生法,検疫法
2.WHOにおける国際保健規則
VII 医療関連感染
A.医療関連感染症の定義とわが国における感染制御への取り組み
B.隔離予防策,医療関連感染の主要病原体とその感染予防策
C.多剤耐性菌対策
D.消毒と滅菌
E.職業感染とその対応
1.概説
2.HIV
3.肝炎ウイルス
4.結核
F.医療関連感染の予防とサーベイランス
1.概説
2.人工呼吸器関連肺炎(VAP)
3.尿路感染(UTI)
4.中心ライン関連血流感染(CLABSI)
5.手術部位感染(SSI)
6.公的サーベイランス(JANIS,JHAISなど)
G.医療関連感染アウトブレイク,実地疫学調査
H.分子疫学調査
I.FETP
VIII 旅行感染症
A.海外渡航の現状とワクチン接種
B.海外での受診,帰国後の受診
IX 新興・再興感染症とバイオテロ
A.新興・再興感染症の動向
B.バイオテロ関連感染症の対策
X 医療倫理,医療安全
A.医療倫理
B.医療安全
各論
I 臓器別にみた病態,診断,治療
A.敗血症
B.感染性心内膜炎
1.自己弁心内膜炎
2.人工弁心内膜炎
C.心筋炎と心膜炎
1.心筋炎
2.心膜炎
D.血流感染症
1.中心静脈カテーテル関連血流感染症
2.感染性動脈内膜炎/動脈瘤
3.人工血管感染症
E.中枢神経系感染症
1.成人
2.小児
F.眼感染症
1.外眼部感染症,眼窩感染症
2.結膜感染症
3.角膜感染症
4.その他
G.耳鼻咽喉科感染症
1.中耳炎(急性中耳炎)
2.副鼻腔炎(急性副鼻腔炎)
3.扁桃炎,扁桃周囲炎(扁桃周囲膿瘍)
4.緊急対応を要する感染症(咽後膿瘍,急性喉頭蓋炎,深頸部膿瘍)
H.歯科口腔外科感染症
1.歯性感染症
2.ヘルペスウイルス感染症
3.真菌感染症(口腔カンジダ症)
I.呼吸器感染症
1.かぜ症候群
2.クループ,急性喉頭蓋炎
3.市中肺炎
4.院内肺炎
5.医療・介護関連肺炎(NHCAP)
6.人工呼吸器関連肺炎
7.慢性気道感染症および急性増悪
J.肝・胆道系感染症
1.胆道感染症
2.肝膿瘍
K.腸管感染症
L.腹腔内感染症
M.Clostridium difficile感染症(CDI)
N.尿路感染症
1.概説(膀胱炎,腎盂腎炎)
2.単純性尿路感染症
3.複雑性尿路感染症
4.カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)
O.男性性器感染症
1.前立腺炎
2.精巣上体炎
3.急性精巣炎
P.女性生殖器感染症
Q.性感染症
1.淋菌感染症,性器クラミジア感染症
2.性器ヘルペス,尖圭コンジローマ
R.皮膚軟部組織感染症
1.壊死性軟部組織感染症
2.肛門周囲膿瘍
3.表在性皮膚細菌感染症
4.深在性皮膚細菌感染症
5.全身性細菌感染症(毒素関連性感染症)
6.動物由来の感染症
7.皮膚抗酸菌症
8.皮膚ウイルス感染症
9.皮膚寄生性疾患
10.皮膚真菌症
11.褥瘡と皮膚感染症
S.骨・関節感染症
T.手術部位感染
II 各病原体別にみた病態,診断,治療
A.ウイルス感染症
1.DNAウイルス感染症
2.プラス鎖RNAウイルス感染症
3.マイナス鎖RNAウイルス感染症
4.ウイルス肝炎
5.ウイルス性胃腸炎
6.ウイルス性出血熱
B.クラミジア感染症
C.リケッチア感染症
1.つつが虫病
2.日本紅斑熱とその他の紅斑熱群リケッチア感染症
3.発疹チフス
4.コクシエラ感染症(Q熱)
D.マイコプラズマ感染症
E.一般細菌感染症
1.グラム陽性球菌感染症
2.グラム陽性桿菌感染症
3.グラム陰性球菌感染症
4.グラム陰性桿菌感染症
5.嫌気性菌感染症
F.抗酸菌感染症
1.結核
2.非結核性抗酸菌症
3.Hansen病
G.スピロヘータ感染症
1.梅毒
2.Weil病
3.その他(ライム病,回帰熱など)
H.真菌感染症
1.カンジダ症
2.クリプトコックス症
3.アスペルギルス症
4.ムーコル症
5.ニューモシスチス肺炎
6.トリコスポロン症
7.輸入真菌症
I.原虫疾患
1.赤痢アメーバ感染症
2.マラリア
3.トキソプラズマ症
4.ジアルジア症
5.その他
J.寄生虫疾患
1.線虫症
2.条虫症
3.吸虫症
4.疥癬・シラミ病
K.プリオン病
付録
抗菌薬一覧
抗真菌薬
抗ウイルス薬一覧
日本感染症学会専門医研修カリキュラム-本書対応表
参考文献
索引
第2版 序文
日本感染症学会編集『感染症専門医テキスト第I部解説編』が2011年4月に上梓されて、はや6年が経過しました。この間、感染症専門医は1,074名から2017年1月の時点で1,363名に増えました。本書は、最新の感染症専門医研修カリキュラムに対応しています。本書はこれから感染症専門医を目指す医師向けだけではなく、感染症専門医の資格更新のための自己研鑽にも役立つよう配慮し編集しました。もちろん一般診療における診断・治療の支援ツールとしてもご活用いただけます。
2011年以降も多剤耐性アシネトバクター・バウマニ(MDR-AB)、カルバペネマーゼ耐性腸内細菌科細菌(CRE)、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、中東呼吸器症候群(MERS)、エボラ出血熱、ジカウイルス感染症など、感染症専門医として対応しなければならない様々な感染症が発生し続けています。
感染症の治療に関しては、日本感染症学会/日本化学療法学会(JAID/JSC)共同編集による『JAID/JSC感染症治療ガイド2014』における記載内容と整合性を整えた記載としつつ適宜引用して、両書籍を携えて立体的な感染症診療にあたれるように配慮しました。
第2版では、抗菌薬を適正に使用し治療成績を上げながら耐性菌を抑止するために必要とされる抗菌薬適正使用に関する知見や抗菌薬適正使用支援に役立つ情報を盛り込みました。写真資料や図表を多用し視覚的に理解しやすくする工夫も初版を踏襲しています。「敗血症」については、新定義に基づく全面改訂を図りました。各種迅速診断薬、抗菌薬・抗ウイルス薬をはじめとする各種感染症治療薬も公知申請により承認されたものを含め見直し記載しました。
電子出版物の環境整備が進んだことにより、今版では紙媒体の通常書籍と電子書籍を切り離して個別に提供することになりました。第2版では初版より約100頁分量が増えたため、通常書籍版はさらに荷重が増し、利便性の観点からは少々問題があるかもしれません。一方、電子書籍版は可搬性に優れアプリケーションソフトウエアも充実しておりますので、ぜひ本書とともにご愛読いただけければ幸いです。
2017年3月
日本感染症学会「感染症専門医テキスト」作成委員会委員長 満田年宏
日本では毎年9月になると、感染症専門医試験が行われる。日本感染症学会によって編まれた本書は、今年も多くの受験者によって、試験勉強に利用されたものと思われる。
日本感染症学会専門医研修カリキュラムをみてみると、学ぶべき「病原体」を大量に列挙してある、という印象を受け、やや絶望的な気分になる。これは感染症が「病原体」と「感染臓器」の組み合わせによって評価され、診療されるものである以上、仕方がない面もある。本書はこれらの「病原体」を、疫学や臨床像、治療、予防といった、臨床現場で必要な情報との組み合わせによってより現実味あるものとしており、抵抗なく勉強できる構成となっている。カラーの図版も豊富に含まれており、眺めているだけでも自然に学ぶことができる面もある。
国内には、これほどまとめて感染症の各論を網羅した本はないのではないかと思う。感染症専門医試験受験者のみならず、すでに感染症専門医資格をもっている方の知識のアップデート用に、また単に感染症を勉強してみたいという方にもお勧めしたい一冊である。
臨床雑誌内科121巻3号(2018年3月号)より転載
評者●順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学/総合診療科准教授 上原由紀