糖尿病治療薬 使いこなし術
フクロウ先生がすすめる処方力アップのコツ
監修 | : 寺内康夫 |
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著 | : 金森晃 |
ISBN | : 978-4-524-26139-0 |
発行年月 | : 2015年5月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 190 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
長年糖尿病診療に携わってきた著者が、一般内科医に役立つ薬剤選択のコツを開業医の立場から実践的に解説。目の前の患者とどう向き合い、幅広い選択肢から最適な薬剤をどのように見つけて処方するかといった、治療薬の“使いこなし術”を伝授する。本書を読めば、あなたの糖尿病診療が明日から変わる!
第1章 本当に薬が必要か?〜薬を処方する前に考えたい7つのこと〜
1.食事療法は守られているか
2.運動療法をどのくらいやっているか
3.最近の生活に変化はなかったか
4.この患者さんにこの薬を処方しても大丈夫か
5.患者さんの受け入れは良好か
6.内服を説得することはできるか
7.服薬と薬の管理はきちんとなされているか
第2章 いざ,薬物療法!
1.糖尿病の治療薬にはどのようなものがあるか
2.何をターゲットに治療するかを考える
3.最初に選択すべき薬は何か
4.インスリン療法を行った方がよい場合とは
5.SU薬の新規処方は特殊ケースのみ
6.SU薬はできるだけ増量しない
7.メトホルミンを使いこなそう
8.メトホルミンを増やしてみよう
9.チアゾリジン薬は体重増加に注意
10.グリニド薬の適応は軽症で食後血糖値が高い症例
11.α−GIのターゲットは食後高血糖
12.何でもかんでもDPP−4阻害薬では困る
13.SGLT2阻害薬は副作用に注意して使いこなす
14.高齢者に処方する際の注意点
第3章 処方力アップのコツ
1.どのようなときに薬の増量や追加,変更を考えるか〜増量か?追加か?変更か?〜
2.やみくもに追加や変更をすべきではない
3.単剤で効果が得られない場合〜効果が期待できる併用の組み合わせ〜
1 SU薬がベースにある場合
2 メトホルミンがベースにある場合
3 α−GIやグリニド薬がベースにある場合
4 DPP−4阻害薬がベースにある場合
4.配合錠の活用も工夫の1つ
5.低血糖を起こさないためには先手必勝で
6.どのようなときに,どの薬から減らすか
7.有害事象かもしれないと思ったら
第4章 合併症や随伴疾患にも気配りを
1.経口血糖降下薬の糖尿病合併症への影響
2.糖尿病合併症に対する治療薬はどのように使うか
3.降圧薬の必要なケースとその処方
4.脂質異常症を併発しているときの対応
5.サプリメントや民間療法をやってみたいと言われたら
参考文献
索引
序文
食事や運動などの生活の変化と高齢化に伴い、糖尿病患者さんの数は増加の一途を辿っています。もはや糖尿病専門医だけでは診療しきれません。内科医のみならず、すべての診療科の先生、また多くの医療スタッフに糖尿病診療を担って頂きたい。日々溢れんばかりの糖尿病患者さんを診察している私の切実な思いです。
最近は新薬の登場が相次ぎ、ずいぶん多種類の糖尿病治療薬が使えるようになりました。医師会の会合ではいろいろな診療科の先生にお会いします。話題が糖尿病におよぶと「一番効くのはどの薬?」、「新薬はどんな患者さんに効くの?」、「まずどの薬を出せばいい?」と皆さん薬の質問です。熱心に患者さんを診ておられるからこそ出てくる質問でしょうが、裏を返すと糖尿病治療薬は処方の選択が難しいということです。
生活習慣の改善なしに糖尿病が治る特効薬があれば、それが一番ですが、今のところはまだ夢物語です。薬をうまく使いこなしてよい治療をして頂きたい。そして、患者さんには、元気で楽しく充実した人生を送って頂きたい。そんな思いを込めて本書を執筆しました。
本書の構成は、まず第1章では「処方する前に考えること」を取り上げました。私がもっとも強調したかったことがこの章に集約されています。第2章は各薬剤の特徴、適応、処方の注意点。続いて第3章は薬の増量、追加、変更などおもに併用療法。そして第4章は合併症や随伴疾患への対応について触れています。随所に「ここがポイント!!」や具体的な「処方例」を盛り込んで「できるだけわかりやすく」しかも「単なるハウツー本にならないように」をモットーに工夫を凝らしました。また、患者さんとのやり取りの場面を多く取り入れて、臨場感溢れるような構成にしました。
冒頭から通してお読み頂き、知識の整理に役立てて頂いても結構ですし、処方に迷いや疑問を感じた際に目的のページだけを開いて頂いてもよいと思います。診療の合間に気軽に目を通して、糖尿病診療に役立てて頂ければ幸いです。
末筆ながら、監修を頂いた横浜市立大学の寺内康夫先生に深謝申し上げます。
2015年4月吉日
かなもり内科院長
金森晃
新たな作用メカニズムを有する経口糖尿病薬に加えて、GLP-1受容体作動薬や新たなインスリン製剤の登場により、糖尿病治療の“パラダイムシフト”がもたらされたといえる。長い間、経口糖尿病薬=スルホニル尿素薬という時代が続き、1990年代以降になって新たな作用機序を有する薬剤が登場してきた。本書の著者である金森晃先生は、30年以上にわたって糖尿病診療を続けてこられ、新たな経口糖尿病薬が1剤ずつ増えてきた時代を経験されていることから、1剤1剤の効用を多くの症例で体験され、先生自身の確固たる治療哲学を構築されてきたことと思う。私は、医師として、糖尿病専門医として著者とまったく同じ時代に育ったこともあり、本書中の一言一言に強い共感を覚えた。
いかに薬物療法が進化したといえども、糖尿病治療の基本は食事・運動療法にあることはいうまでもない。そこで第1章の「本当に薬が必要か?」では、薬を処方する前に考えるべきポイントが7つ示されている。多くの薬剤を使えるようになったとはいうものの、安易な使用は避けられるべきであり、私自身も本書を読んで自戒しているところである。
第2章の「いざ薬物療法!」では、各種経口糖尿病薬の特徴が簡潔かつ的確に示されている。薬物を選択する際に何を考えなければいけないかがわかりやすく解説されている。
第3章では、本書のサブタイトルとしても使われている「処方力アップのコツ」として、病態に合わせた薬剤の増量、追加、変更のコツが理論的背景を踏まえ、豊富な処方例とともに示されている。
そして、第4章の「合併症や随伴疾患にも気配りを」では、糖尿病治療の最終目標を達成するために不可欠な合併症と随伴疾患に対する薬物療法にも言及されている。
寝転がっても読めるが単なるテクニック本にはあらず。読み進めるにしたがって、経口糖尿病薬の使い方が「ホーホーわかる」と実感されるのではないであろうか。同時に、本書中の患者さんとのやりとりのなかに、著者の臨床医としてのすばらしい人間性を垣間みることができることであろう。
臨床雑誌内科117巻1号(2016年1月号)より転載
評者●愛知医科大学医学部内科学講座糖尿病内科教授 中村二郎