インターベンション医必携 PCI基本ハンドブック
編著 | : 伊苅裕二 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-26130-7 |
発行年月 | : 2017年7月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 318 |
在庫
定価7,920円(本体7,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
“PCI初心者が最初に読む本”として、PCIに必要な基本事項のみをわかりやすく解説。心臓の解剖や病態の理解から、画像の読影、デバイスの種類と特徴、関連する薬剤の知識まで要点が具体的にまとまっているほか、PCIの治療戦略も学べる内容。若手医師・インターベンション医必携の一冊。
I.PCIとは何か
01.PCIについての総論
02.一流のPCI術者になるためには
II.PCI術者のための心臓の解剖
01.イラストで学ぶ心臓と冠動脈の解剖
02.PCI術者に役立つ心臓血管病理
III.知っておくべき病態の知識
01.PCIの適応−総論
02.安定狭心症
03.ST上昇型心筋梗塞(STEMI)
04.不安定狭心症・非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)
05.血液透析患者の特殊性
IV.カテーテル室の基本的理解
01.カテーテル室の設備
02.カテーテル室のスタッフとその役割
03.放射線防護の基本
V.PCIのための画像診断・読影法
01.冠動脈造影(CAG)とその読影
02.定量的冠動脈造影(QCA)
03.心臓CTとその読影
04.心筋シンチグラフィとその読影
05.血管内超音波(IVUS)とその読影
06.光干渉断層撮影(OCT/OFDI)とその読影
07.血管内視鏡(CAS)とその読影
08.冠血流予備量比(FFR)による機能評価
VI.PCIデバイスの種類・特徴・基本手技・デバイス関連合併症
01.シースおよびシースレスシステム
02.0.035インチガイドワイヤー
03.ガイディングカテーテル
04.冠動脈用ガイドワイヤー
05.バルーン
06.ステント(ベアメタルステント,薬剤溶出性ステント)
07.生体吸収性スキャフォールド(BRS)
08.ロータブレーター(PTCRA)
09.血栓吸引デバイス
10.末梢保護機器
11.IVUS
12.OCT/OFDI
13.エキシマレーザー
VII.患者管理・PCI施行時のワークフロー
01.インフォームドコンセント・患者説明
02.PCI施行前の患者管理とチェックポイント
03.TFI(経大腿動脈アプローチ)
04.TRI(経橈骨動脈アプローチ)
05.術中活性化凝固時間(ACT)の測定とその解釈
06.PCI中の合併症
07.PCI施行後24時間以内の合併症
VIII.各病変におけるPCI基本治療戦略とその手技
01.ステントサイズと長さ,ステントポジショニングの考え方
02.ステント拡張のエンドポイント
03.分岐部病変のアプローチ
04.特異的な病変に関する理解
A.左主幹部病変
B.入口部病変
C.石灰化病変
D.血栓性病変
E.慢性完全閉塞病変
F.再狭窄病変
IX.合併症の予防および対策
01.冠動脈穿孔・破裂,心タンポナーデ
02.ガイディングカテーテルによる冠動脈解離
03.造影剤アレルギーとアナフィラキシーショック
04.末梢塞栓・slow flow
05.後腹膜出血
06.造影剤腎症
07.ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
08.脳血管障害
09.カテーテルがねじれて抜けない
10.コレステロール塞栓
11.偽性動脈瘤・動静脈瘻
12.橈骨動脈のスパスム
13.IVUSカテーテルのスタック
X.PCIに関連する薬剤とその使い方
01.ステント血栓症−総論
02.抗血小板薬
索引
序文
このたび「インターベンション医必携 PCI基本ハンドブック」を出版することになりました。
PCI(経皮的冠動脈インターベンション)は、低侵襲で患者さんが楽に受けられる冠動脈疾患の治療法です。使用するデバイスは改良が重ねられ、治療成績も向上してきました。今では、循環器内科領域において特殊な技術ではなく、一般的なものになり、裾野が広がっています。患者さんが享受するメリットも多く、循環器内科医であれば一度は試みていただきたい治療法です。
PCIの領域を扱う本はすでに多数出版されていますが、本書は“PCI初心者が最初に読む本”と位置付けて、必須の基本事項のみをわかりやすく解説するよう心掛けました。初心者に必要なPCIの基本手技・治療戦略はもちろんのこと、心臓の解剖や病態の理解、画像の読影ポイント、デバイスの種類と特徴、関連する薬剤の知識までカバーし、この一冊があれば、初心者が知っておくべきPCIの全体像をひと通り把握できるようにしました。
PCIの優れた術者になるには、PCIの技術を磨くことはもちろん、技術の進歩への対応や、手技中の迅速・的確な判断力、困難な状況でも動揺しないメンタルの強さなど、“総合力”が問われます。本書がこれらを支えるための知識の一部となれば幸いです。
また、PCIは新しいデバイス開発のチャンスがある領域です。私が1990年代に開発したIkariカテーテルも新規デバイスとして評価をいただいています。比較的単純な工夫で新規デバイス開発が可能であり、それが世界を変える可能性もあります。若いドクターには、ぜひデバイス開発にも興味を持っていただきたいと思います。そのためにもPCIに関する全般的な知識を得ることが必要です。
本書が読者の皆様にとってPCI習得の一助となることを祈ります。
2017年7月
伊苅裕二
冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)は身近な手技となった。年間25万件以上がわが国で行われるこの治療法は限られた術者のみのものではなく、多くの施設で広く行われる手技となっている。冠動脈造影を行えるようになったらその次はPCIへ、ということで比較的若い循環器内科医がPCIの助手あるいは術者になることも多い。PCIの手技手法は、循環器治療のほかの分野でも応用可能なものが多く、これに習熟することは重要な意味合いをもつ。PCIの手技自体はある程度標準化されてきたものの、デバイスの進歩も著しく常にアップデートが必要な領域である。
さて、この分野の第一人者であり、わが国のPCIの発展とともに歩み、またみずからもPCIデバイスの開発に携わってきた伊苅裕二先生を編著者として一冊の本がまとめられた。本書は、PCI初心者が最初に読む本という位置づけで書かれた318頁からなる解説書である。PCI総論、解剖、病態の知識、カテーテル室の理解、画像診断の基本、基本手技など基礎的な項目に始まり、患者管理、病変ごとの基本的対処、合併症とその対処やPCI後の薬物療法まで、およそPCIに関わると思われる領域の多くを適度な分量配分で確認できることができる。カラフルなイラストないしは写真が挿入され、初心者にも非常にイメージしやすく、読みやすい内容となっている。さらには、重要な略語あるいは専門用語が多く解説されており、最新の情報のみならず歴史的に重要な臨床試験まで一通り網羅されているのもありがたい。出典も明示されており、クイックレファレンスとしても活用できそうである。各項目の分量も多過ぎずしかも少な過ぎない構成になっているところは、臨床上の問題が何かを常に意識している臨床医である編著者の采配によるものであろうか。
ともすれば複雑病変の治療を中心とした高度な治療手技の技術的な記述などに傾きがちなPCI指南本が多いなか、本書は、術者の心構えに始まり解剖やPCIの適応自体に関しても記述が含まれている。また、みずからがそのような重要な項目を記述していることからも、編著者である伊苅先生自身の本書に対する思い入れ、いやPCIそのものに対する思い入れの深さを知ることができよう。多くの著者によって分担されてはいるものの、本書の本質は編著者が次世代に残したいパーソナルなメッセージであるとみてもよいであろう。序文ではPCI初心者向けの構成であると銘打たれてはいるものの、初心者のみにこのような本を独占させるのは勿体無い。PCIを見学する研修医から実際にPCIを行う上級医まで、またさらには医療スタッフにいたるまで、PCIに関わるスタッフすべてに広く読んでいただきたい一冊である。
臨床雑誌内科120巻5号(2017年11月号)より転載
評者●北里大学医学部循環器内科学教授 阿古潤哉