ここが知りたかった認知症・パーキンソン病スーパー処方
専門医の処方を解析
編集 | : 野元正弘/荒木博陽 |
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ISBN | : 978-4-524-26126-0 |
発行年月 | : 2014年12月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 164 |
在庫
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
認知症・パーキンソン病における薬物療法のエキスパートが、薬物動態・薬理などの基礎から、病態に応じた処方例や現場でよくある質問・悩みなど薬物療法の実際までをわかりやすく解説。全編にわたって実臨床に近い形で対応を示し、専門医の処方に関する考え方を医療スタッフ間で理解・共有できるようにした。薬剤師・看護師はもちろん、非専門医にも有用な情報が満載の現場で役立つ一冊。
I 認知症の薬物治療
1 認知症とは
A.認知症の分類
B.認知症の検査所見
2 認知症の標準治療
A.認知症における薬物治療
B.BPSDに対する薬物治療
C.有害事象
D.認知症の予防と治療薬開発
3 薬効群比較
A.ドネペジル塩酸塩
B.ガランタミン臭化水素酸塩
C.リバスチグミン
D.メマンチン塩酸塩
E.アルツハイマー病治療薬の比較
4 なぜこの処方なのか
A.高度のアルツハイマー型認知症症例
B.腎機能が低下した認知症症例
C.アルツハイマー病に脳梗塞による嚥下障害が合併した症例
D.排尿困難に対して治療中のアルツハイマー型認知症症例
E.アルツハイマー病治療薬の他剤への変更
F.BPSDが出現してきたアルツハイマー型認知症症例
G.BPSDが強いアルツハイマー型認知症症例
H.BPSDに対する漢方薬の使用
I.幻覚・妄想が強いレビー小体型認知症症例
J.前頭側頭型認知症に対する薬物治療
5 周辺症状に対する治療
A.幻視・妄想・興奮に対する治療
B.うつ症状に対する治療
C.睡眠障害に対する治療
6 よく聞かれる悩み・質問
Q1.暴言・暴力を含めて認知症症状が進んできているようです.くすりの増量あるいは他剤に切り替える際のポイントは?
Q2.抗認知症薬とともに抗精神病薬や抗うつ薬が処方されています.何のくすりだと説明するのが適切でしょうか?
Q3.噛み砕いて服薬しているようですが、大丈夫でしょうか?
Q4.一度くすりを増やしたら、元には戻せないのでしょうか?
Q5.以前より沈んだ様子ですが、抗認知症薬の副作用なのか、症状が進んだのか見分けがつきません.どのように考えたらよいでしょうか?
Q6.幻視がありますが、くすりの副作用でしょうか?
Q7.夜中に徘徊しますが、どうしたらよいでしょうか?
Q8.周辺症状に用いているくすり(抗うつ薬、睡眠薬など)で認知症の症状が進行することはありませんか?
Q9.服薬すると口が渇きますが、どうしたらよいでしょうか?
Q10.便がゆるいのですが、どうしてでしょうか?
Q11.食欲不振や嘔気などの副作用が軽度ではありますが軽減する気配がありません.そのような場合、くすりの減量をしたらよいか他剤に切り替えるほうがよいのでしょうか?あるいはそのまま様子をみていてよいのでしょうか?
Q12.あまり認知症の症状がよくなっていないようですが、くすりをやめてもよいでしょうか?
Q13.認知症の4つのくすりの使い分けは、どのようにしたらよいでしょうか?
Q14.認知症は治るのでしょうか?
II パーキンソン病の薬物治療
1 パーキンソン病とは
2 パーキンソン病の標準治療
A.パーキンソン病における薬物治療
B.有害事象
C.パーキンソン病の予後
3 薬効群比較
A.レボドパ
B.ドパ脱炭酸酵素阻害薬(DCI合剤)
C.MAO-B阻害薬
D.COMT阻害薬
E.ドパミンアゴニスト
F.抗コリン薬
G.ドパミン遊離促進薬
H.ノルアドレナリン前駆物質
I.レボドパ賦活薬
J.アデノシン受容体拮抗薬
4 なぜこの処方なのか
A.レボドパ・ベンセラジド合剤とレボドパ・カルビドパ合剤の使い分け
B.レボドパの効果発現に時間がかかる症例
C.ウェアリング・オフ現象とジスキネジアに困っている症例
D.非麦角系ドパミンアゴニストの選択
E.ジスキネジアが日常生活に支障をきたすようになってきた症例
F.ウェアリング・オフ現象とジスキネジアを認め、レボドパ治療域が狭くなっている症例
G.早朝に痛みを伴う足のひきつりがみられる症例
H.食事のときにふるえが増強し、うまく箸が使えない症例
I.パーキンソン病治療中に急速にふるえがひどくなってきた症例
J.消化器の手術のためパーキンソン病治療薬が服用できない症例
K.50歳代初期パーキンソン病患者に対する治療薬選択
L.日中の眠気が強い症例
M.就寝中に大声で叫び、手足をばたつかせる症例
N.ドパミンアゴニスト治療中に腰曲がりがみられた症例
O.オン時にすくみ足がみられる症例
P.抑うつ状態を合併している症例
Q.幻覚・妄想のため日常生活に支障をきたしている症例
R.嚥下機能が低下している症例
5 周辺症状に対する治療
A.うつ症状に対する治療
B.便秘に対する治療
C.立ちくらみに対する治療
D.睡眠障害に対する治療
E.幻視・妄想・興奮に対する治療
6 よく聞かれる悩み・質問
Q1.食事時間が一定しません.レボドパは時間を決めて服用するほうがよいでしょうか?やはり食後に服用するほうがよいですか?
Q2.レボドパを食前に服用する場合の注意点を教えてください.
Q3.手術を受けますが、服薬してもよいでしょうか?
Q4.胃内視鏡検査を受けますが、服薬してもよいでしょうか?
Q5.服用するくすりの数が多く、3回分服では服用しづらい場合、6回分服にしても大丈夫でしょうか?
Q6.服薬を忘れましたが、どうしたらよいでしょうか?
Q7.貼付薬を貼り替え忘れましたが、どうしたらよいでしょうか?分割使用しても臨床上問題ないのでしょうか?また同じ場所に貼付する場合、何日くらいあければ皮膚のトラブルが少なくなりますか?
Q8.一度くすりを増やしたら、もう減らせませんか?
Q9.足がむくみますが、どうしたらよいでしょうか?
Q10.パーキンソン病治療薬を服用していて口の中が黒くなりましたが、くすりの影響でしょうか?
Q11.服薬すると吐き気が出ますが、いつまで続くのでしょうか?
Q12.本当は服薬したくないのですが、死ぬまでやめてはいけないのでしょうか?
Q13.くすりが切れる時間が早くなっていますが、大丈夫でしょうか?
Q14.だんだん症状が悪くなってきています.この先は寝たきりになるのでしょうか?
Q15.寝言が多いのですが、くすりの副作用でしょうか?
Q16.幻視・幻覚がありますが、くすりの副作用でしょうか?
Q17.頻尿がありますが、どうしてでしょうか?
Q18.痛みがありますが、病気と関係していますか?あるいはくすりの影響でしょうか?
Q19.認知症を伴うパーキンソン病の治療のポイントは、どういうところでしょうか?
Q20.抗精神病薬の長期服用でパーキンソン症状が出てきましたが、くすりの影響でしょうか?
Q21.くすりの使い分けがわかりません.教えてください.
Q22.パーキンソン病は治るのでしょうか?
索引
序文
世界で有数の長寿国である日本では,認知症とパーキンソン病が増加している.本書は実地医療におけるこの二大疾患の処方を,薬物治療の専門家である愛媛大学医学部附属病院薬物療法・神経内科の医師と,中枢神経治療薬をテーマとしている同病院薬剤部の専門薬剤師で解説し,執筆したものである.
認知症ではアルツハイマー病とともに,パーキンソニズムを伴うレビー小体型認知症が注目されている.前者では中核症状の記銘力障害に対する治療とともに興奮・妄想などの周辺症状に対する処方が大きな課題となる.後者のレビー小体型認知症はしばしば幻視を伴うが,適切な処方により日常生活動作(ADL)を維持することができる疾患であり,薬物治療が特に重要となる.パーキンソン病に対しては多くの治療薬が開発され,症状に応じた治療薬の選択と調整により業務の継続や独立した生活を送ることも可能であり,平均寿命は日本人全体とほぼ同じとなっている.
認知症やパーキンソン病は,同じ疾患であっても症状や程度が患者の背景によってそれぞれ異なるため,私たちは患者の受診ごとに処方内容の見直しを行っている.本書はそのような,現場で実際に対応した経験を基に編纂されており,最初に疾患と治療薬を総論として解説し,次に治療に工夫を要する症例を提示して処方を解説している.さらに,診療や服薬指導の際によく問われる質問を取り上げて,解答例を記した.疾患そのものや治療薬についての解説書は数多く発行されているが,本書は全編にわたって,実臨床に近い形で対応を示しており,専門医の処方に関する考え方を医療スタッフ間で理解・共有できるという点で類書ではみられない内容となっている.
本書が治療に難渋する認知症・パーキンソン病症例に対する処方のヒントになるとともに,服薬指導や患者説明の参考となることを確信している.
2014年11月
愛媛大学大学院医学系研究科薬物療法・神経内科学 野元正弘
愛媛大学医学部附属病院薬剤部 荒木博陽