急変の見方・対応とドクターコール
編集 | : 藤野智子/道又元裕 |
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ISBN | : 978-4-524-26098-0 |
発行年月 | : 2011年6月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 188 |
在庫
定価2,420円(本体2,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
ナースにとっての一大事である患者急変のアセスメントと対応、医師を呼ぶテクニックが実践的に学べる一冊。症状・訴え・場所別の“よくある急変事例”をピックアップし、なぜ起こっているか、どう対応するかをプロの視点で解説。いざという事態を先取りし、患者の不幸な転帰をナースの力で回避するワザが満載。明日から使える急変対応力が読むだけで身につく。
第1章 見逃せない症状・訴えからの急変対応
1.SpO2低下、呼吸症状の急変
(1)「SpO2低下だけ」から急に起こったショック状態
(2)咳嗽が続き、その後、泡沫状の痰が出現し、呼吸困難に
(3)「起きているほうが呼吸が楽」と訴えて坐位になった後、チアノーゼ出現
(4)起坐位でいた患者が臥位で就寝している
(5)治療をしても呼吸困難と喘鳴が治まらない
(6)酸素投与を行っても呼吸困難が改善しない
(7)著明だった喘鳴(異常呼吸音)の急な消失
2.心肺停止、ショックの急変
(1)輸液後に排尿見られず、利尿薬の効果もないまま、経過観察中に心肺停止
(2)原因不明の肩や首の痛みが出現.さらに背部痛の後、急に血圧低下
(3)糖尿病患者に冷汗とめまいが出現.血糖値に変化ないまま、ショック状態に
(4)発熱している患者が寒気を訴え、ふるえが止まらずショック状態に
(5)急に寒気を訴え、顔面蒼白でガタガタふるえている
3.不整脈、頻脈、徐脈の急変
(1)意識障害とともに発作性心房細動(paf)が出現.血圧低下し、心拍数が180回/分に
(2)心室期外収縮(PVC)の散発から突然の意識消失.心電図は心室頻拍(VT)に
(3)失神発作で入院中の患者が心拍数低下から意識障害
(4)心房細動(af)の患者が瞳孔異常、麻痺を伴い意識レベル低下
(5)バイタルサインに変化はないが、心電図はVTを示している
4.腹部症状、嘔吐、吐血、下血の急変
(1)胃部不快感のある入院患者が徐々に状態悪化、ショック状態に
(2)消化器症状の訴えから急に顔面蒼白となり、意識消失
(3)急な腹部膨満から呼吸困難.血圧触知不能に
(4)夜間に急激な嘔気の訴え.大量吐血後に意識消失
(5)吹き出すような吐血があり、そのまま意識消失
(6)腹痛の訴えから発熱.経過観察中に突然、意識消失
5.脳神経、代謝による意識障害からの急変
(1)頭部外傷後に嘔吐し、すぐに意識障害の出現
(2)肝機能が悪化している患者の意識レベルが低下
(3)高血圧患者の脈圧が徐々に拡大し、徐脈出現後に意識消失
第2章 とらえにくい症状・訴えからの急変対応
1.循環器系症状が隠れている急変
(1)循環器疾患の患者からの「不安、もやもやする」という訴え
(2)「いらいら、怒りっぽい」患者がショック状態に
2.脳神経系症状が隠れている急変
(1)「いつもよりよく寝ている」患者が意識消失し急変
(2)「患者の表情がいつもと違って見える」状態から意識障害
(3)「問いかけても反応が鈍い」状態から急なけいれん発作
3.精神症状の悪化が隠れている急変
(1)「抑うつ状態から急に元気になった」患者の自殺企図
第3章 治療・ケア・生活行動からの急変対応
1.トイレと排便の急変
(1)急な便意に続いて起こったショック状態
(2)COPDの患者が安静解除後のトイレ歩行時に呼吸困難
(3)高血圧患者が排便後に意識障害・呼吸困難に
(4)多量の排便後に、突然の意識消失
2.日常生活、移動、トランスファーによる急変
(1)骨折術後、最初の歩行時にショック状態
(2)体位変換後にSpO2低下し、呼吸困難出現
(3)心筋梗塞後の患者の体位変換時にPVCから心室粗動(VF)に
(4)入浴中のめまいから心肺停止に
(5)食事中に現れた胸部苦悶と呼吸困難
3.看護処置、治療による急変
(1)痰の吸引後の呼吸状態悪化
(2)胸腔ドレナージ後のショック
(3)透析後に不整脈出現.意識障害から心肺停止に
(4)気管チューブ挿入患者の急な呼吸困難
(5)スクイージング中に起こった急な血圧低下
(6)造影剤注入後のショック
4.薬物療法、栄養療法に伴う急変
(1)鎮痛解熱薬投与後の血圧低下
(2)抗生物質投与中、喉の痛みから急に呼吸困難出現
(3)がん患者の化学療法中の血圧低下
(4)中心静脈栄養開始直後の呼吸困難
(5)経管栄養開始後の呼吸状態悪化
(6)PEGチューブ交換後の血圧低下
第4章 急変対応に役立つ実践のワザ
1.急変対応 基本のいろは
(1)再チェック・一次心肺蘇生法
(2)二次心肺蘇生法・ナースが行う処置とケア
(3)急変時に行うバイタルチェックとフィジカルアセスメント
2.もっと知りたい急変対応のコツ
(1)急変時の“ショックの5p”の見方・絞り方
(2)頸静脈怒張は何をどう見る?
(3)CVP変化は急変時にどう役立つ?
(4)気づきにくい徐脈性不整脈はどう見つける?
(5)意識障害判定のコツ:「ここがわかりにくい」を解決
(6)見逃しやすい“けいれん”とその見方
(7)急変時の瞳孔の見方・伝え方
(8)救急カート どうそろえる?
3.もっと知りたいドクターコール
(1)バイタルサインが医師指示にはギリギリ当たらない場合の見方とドクターコール
(2)「経過観察」の指示に疑問を感じた場合のドクターコール
(3)DNARのときの動き方とドクターコール
(4)判断はつかないが、どこか心電図がおかしい場合のドクターコール
(5)不整脈別 ドクターコールのコツ
COLUMN
(1)「どこかおかしい」と感じた場合のドクターコール
(2)検査指示を出してもらうためのドクターコール
(3)応援が来ない、誰もコールに出ない場合の動き方
(4)「軽症」「重症」の印象は、どこまで確実か?
(5)来てほしくても、どうしても医師が来てくれない場合の対応
(6)失神を起こす不整脈とそのメカニズム・対応
(7)「眠っている」ように見える患者の急変をどう見抜く?
(8)血圧の「差」のポイントチェック:血圧の左右差、上下肢差、脈圧からわかること
(9)夜間時の急変発生!ほかの患者への配慮は?
(10)面会者の急変、どう対応する?
(11)診療所の外来で急変発生、まずどう動く?
(12)“アドレナリン”の名称
索引
看護師のみなさんの多くが、“患者の急変”に遭遇した経験をお持ちでしょう。急変の一面には、竜巻のような印象があるかもしれません。突然現れ、その場にいる者を慌てさせ、患者に大きな影響を残して通り過ぎていくからです。そして看護師は何もできなかった自分を振り返り、「何かできることはなかったか?」「自分が力不足だった」など、後悔の念を抱くことが多いものです。
しかし、看護師は途方に暮れて終わりにはしません。悔しい思いの先に、「もっとできたことは?」と可能性を探り、次の急変こそ強く立ち向かう方法を模索しているのです。
最近読んだ論文に「急変する患者は、その8時間前に何らかの身体変化を示している」という記述を見つけました。本書を手にとった看護師のみなさんなら、すでにお気づきと思いますが、急変には、“前ぶれサイン”が伴いやすいことを表しています。いかに早く異変に気づいて対処できるか、これが看護師にとっての急変に対する最大の策であり、多くの体験に裏付けられています。
そしてもう1つ、急変にすばやく対応できている看護師には、伝達する力が備わっていると感じます。「何かおかしい」と気づいてドクターコールをしても、ただ「経過観察」という指示が出たり、十分な検査や治療が行われなかったりすることはないでしょうか。「医師が対応してくれなかったから」というのは簡単ですが、伝達するにも、方法と根拠があるのです。
これらの技術は、経験を積み重ねれば、いつか手に入るかもしれません。けれど、明日起こる急変には間に合いません。本書は、そんなときのお助け本としてみなさんの手元においてほしい、そんな思いを込めて編集しました。
コンテンツの基本は、臨床現場で起こりやすく、看護の対応力が生かせる事例を厳選して示し、「急変の前ぶれに気づき」、「的確に対応する」ことを大きな目標とし、病態のメカニズム、アセスメントと対応の根拠を網羅しました。そしてもう1つの軸は、ドクターコールの方法です。事例ごとに具体的な「伝達の言葉」を示し、状況-背景-評価-提案の順にまとめました。
常にベッドサイドで患者に接している看護師が「急変する前に気づき」、「対応し」、「適切にドクターコールする」ことによって、患者の命に大きくかかわる初期対応が十分に磨かれることを願っています。
2011年5月
藤野智子