気づきと対応がわかる!びまん性肺疾患の診かた 治しかた
編著 | : 喜舎場朝雄 |
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ISBN | : 978-4-524-25972-4 |
発行年月 | : 2016年8月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 166 |
在庫
定価4,620円(本体4,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
専門性が高く、非専門医には難しい疾患というイメージがある“びまん性肺疾患”。若手医師や一般内科医に向けて、日常診療における本疾患を疑うコツから診断の要点、とくに重要となる画像診断・病理診断の知識、治療方針の最新動向までをやさしく解説した。びまん性肺疾患を診た際のフローに沿った構成とし、各項目の冒頭に、ここだけは押さえておきたい「Points」も提示。びまん性肺疾患診療のエッセンスを凝縮した一冊。
I 呼吸器疾患におけるびまん性肺疾患の位置づけ
1 びまん性肺疾患の高齢化社会における認識の必要性
2 どのような場合にびまん性肺疾患を疑うか
3 関連するおもなガイドライン
II 問診のポイント
1 患者背景と受診動機,臨床症状をとらえる
2 病歴を聴取していく
III 重要な身体所見
1 身体診察で注意して診る点
2 異常な身体所見と検査結果との照合
IV 有効な血液検査の提出方法
1 IIPsの診断アルゴリズム
2 一次検査項目
3 二次検査項目
V 胸部単純X線写真とCTの活用法
1 びまん性肺疾患の診断における胸部単純X線写真とCT所見の上手な活用法
2 HRCTによる二次小葉の解剖
3 HRCTによるびまん性粒状結節の鑑別診断
4 肺気腫と関連疾患のHRCT所見
VI 肺機能検査の意義
1 呼吸機能検査
2 動脈血ガス分析
3 6分間歩行試験
VII 気管支鏡の適応と結果の解釈,外科的肺生検について
1 気管支鏡検査
2 SLB
VIII 病理検査の必要性
1 びまん性肺疾患における経気管支肺生検標本および外科的肺生検標本の意義
2 外科的肺生検による病理診断
3 UIP,NSIP,OPの病理診断のポイント
IX 治療総論
1 びまん性肺疾患の治療の目標
2 びまん性肺疾患に対する治療
3 社会資源の活用(難病医療費助成制度,身体障害者手帳,介護保険)
4 患者・家族への説明
X 治療戦略
a 特発性肺線維症の治療
1 治療に関係する基本的な疾患概念
2 ガイドラインにみる治療の変化
3 IPFに推奨される一次治療
4 プレドニゾロン+免疫抑制薬およびN-acetylcysteine(NAC)療法の現在の位置づけ
5 「科学的に有効である」治療とは
6 よりよい治療のために
7 合併症の治療
8 今後の治療薬の方向性について
b 非特異性間質性肺炎の治療
1 NSIPとは
2 治療について
3 二次性NSIPの治療
c 特発性器質化肺炎の治療
1 器質化肺炎とは
2 「線維化」のメカニズムと治療戦略
3 COPの治療について
4 二次性OPの治療
d 薬剤性肺障害の治療
1 薬剤性肺障害とは
2 診断のポイント
3 治療の考え方
e 過敏性肺炎の治療
1 過敏性肺炎とは
2 診断のポイント
3 原因抗原の検索
4 治療の考え方
5 過敏性肺炎の管理−CHPと急性増悪,肺癌−
索引
序文
びまん性肺疾患は呼吸器疾患のなかでも用語が多岐にわたり、略語が多く若手医師や一般内科医にはなじみにくいイメージが強いと思われる。そこで、びまん性肺疾患の疫学やわが国の現状などの情報を適切に伝え、特に若手医師、一般内科医を対象に疾患の全体像・分類・治療方法などに関して噛み砕いて解説した書物を発刊したいというコンセプトのもと本書の企画を立ち上げた。
びまん性肺疾患は、内科医の真価が問われる疾患といえる。主訴に始まり既往歴の聴取はさることながら、医師の処方薬のみならず市販薬の内服状況の把握も必要になる。さらに住居や職場の状況など、呼吸器に関連するあらゆる環境情報の収集も求められる。このように詳細な問診を軸にしながら、鑑別疾患を思い浮かべつつ身体診察においても膠原病などの可能性も常に念頭に置いて患者の全身を診る習慣をつけていくことが重要である。
そこで本書では、前半でまず、びまん性肺疾患の概念や疫学、問診・身体所見などのエッセンスについて触れ、次に血液検査について個々の項目の意義を意識した提出方法を解説した。さらに診断の中心に位置づけられる胸部単純X線写真とCTについては、重要な所見を鑑別疾患との対比も含めて詳述している。治療指針にもなる肺機能検査についての解説、侵襲的な検査となる気管支鏡・外科的肺生検の適応についても、一般内科医にも理解しやすいように記載されている。病理についてはびまん性肺疾患のエキスパートが画像との対比も踏まえた詳細な解説を加えている。このように前半は、びまん性肺疾患に向き合ったときのアルゴリズムに則った構成になっている。
後半は、まずびまん性肺疾患の慢性管理について包括的な治療総論に触れてもらい、びまん性肺疾患を代表する特発性肺線維症の治療に始まり、日常でよく遭遇する疾患である非特異性間質性肺炎、特発性器質化肺炎、薬剤性肺障害、過敏性肺炎について豊富な臨床経験をもつ二人の先生にガイドラインや実臨床を統合して治療方針を明示していただいた。
以上のように、本書は前半を熟読して後半の治療戦略を読んでいくことで理解が定着する構成になっている。若手および一般内科医にびまん性肺疾患に親しんでもらい、またエキスパート医には標準的な診断・管理の確認をしていただけるものと確信している。
2016年7月
喜舎場朝雄
びまん性肺疾患は、その名のとおり両側肺にびまん性に陰影を認める疾患群であり、さまざまな疾患群が含まれる。このなかでも中心的な疾患は間質性肺炎であり、なかでも特発性間質性肺炎は重要な疾患として位置づけされている。しかしながら、びまん性肺疾患の代表選手ともいえる特発性間質性肺炎は一般臨床医や呼吸器内科医にとっても、現状ではその診断へのアプローチが非常に理解しにくい病態であるといっても過言ではない。本書はその殻を打ち破るべく、びまん性肺疾患を専門に活動する中堅の先生方が、実際の診療を通じて得られた経験に加えて論文を裏打ちにしたうえで文章化したものである。
本書の流れは、問診のポイントや身体所見、検査(血液、画像、呼吸機能、生検、病理)、治療となっており、各項目の内容もびまん性肺疾患の入門書としては実臨床に沿ったものである。しかも、診療の参考になる記載が多くあるにもかかわらず、かなりレベルの高い内容であるといっても過言ではない。とくに問診や身体所見については、本書のボリュームに比して詳細な記載がなされており、治療の内容も実際的であり臨床上すぐに役立つ内容である。またQ&Aも一部に取り入れられており、実務的に役立つ内容である。
一方、画像や病理は入門書としてはかなりレベルが高く、ある程度びまん性肺疾患を理解していないと難しく感じる面もあるかと思われるが、一方では、このあたりがびまん性肺疾患の難しさのゆえんであるということかもしれない。
さらに本書は、びまん性肺疾患において中心的な病態である特発性間質性肺炎、なかでも特発性肺線維症についての内容に重きを置いていることも指摘しておきたい。しかし特発性肺線維症の管理ができれば、びまん性肺疾患の診療はすでに合格点をもらったようなものであり、特発性肺線維症を知ることがびまん性肺疾患の診断や管理にもつながるものである。その視点からは、診断のフローチャートの記載やMDDの重要性についての内容が心持ち少ないような感じではあるが、このコンパクトさからすべての内容を十分にとは難しいのかもしれない。
いずれにしろ本書は、コンパクトであるにもかかわらずその内容はかなりハイレベルであり、多くの医師には読み通すだけではその内容の理解が難しい面もあると考えられる。したがって、繰り返しの読み直しも大事であり、臨床現場で手元に置いて参考書的に使用するのに有用性が高いと思われる。本書の内容は、「若手医師から専門医までに届ける」という著者らの熱い思いのこもった一冊であり、幅広く多くの医師に愛読されることを期待したい。
最後に、特発性肺線維症の治療についてはガイドラインも発刊されており、その両者を参考にして診療に役立てればよいかと思われる。
臨床雑誌内科119巻5号(2017年5月号)より転載
評者●天理よろづ相談所病院呼吸器内科部長 田口善夫