がん治療の疑問をメーリングリストで解決した件。
薬剤師が知りたいがんの疑問52件をバッチリ解説!
編集 | : 日本臨床腫瘍薬学会 |
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ISBN | : 978-4-524-25965-6 |
発行年月 | : 2016年9月 |
判型 | : 新書 |
ページ数 | : 230 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
日本臨床腫瘍薬学会の会員間で好評の会員限定メーリングリストの内容を書籍化。がん薬物療法の現場で働く薬剤師から寄せられた疑問のなかから、注目度・重要度が高い内容を精選して編集。取り上げられた疑問の回答に関連した基礎知識を確認できる解説やコラムも豊富に掲載。初学者からベテランまでの幅広いニーズに応えた。経口抗がん薬の処方せんを応需する保険薬局薬剤師にも最適なポケットブック。
第I章 抗がん薬の使い方
Q1 ゲフィチニブの薬物相互作用について
Q2 デノスマブとゾレドロン酸水和物の相違点と使い分けについて
Q3 ロンサーフRの調剤・投与方法について
Q4 ティーエスワンRの服用期間について
Q5 FOLFIRINOX療法のイリノテカン塩酸塩水和物投与時間について
Q6 アキシチニブの服用順守率と生存期間の関連について
第II章 副作用とその対策
Q7 『制吐薬適正使用ガイドライン』に掲載されていない抗がん薬の前投薬について(1)
Q8 『制吐薬適正使用ガイドライン』に掲載されていない抗がん薬の前投薬について(2)
Q9 パロノセトロン塩酸塩について
Q10 ステロイド含有レジメン投与時のアプレピタント併用について
Q11 シスプラチン投与時の腎障害対策について
Q12 分子標的治療薬による皮膚障害対策について
Q13 皮膚障害予防のための外用剤の指導について
Q14 ペメトレキセドナトリウム水和物による皮疹対策について
Q15 抗がん薬血管外漏出時の対応について
Q16 リツキシマブ投与によるinfusion reactionの対応について
Q17 シクロホスファミド水和物の出血性膀胱炎予防対策について
Q18 アントラサイクリン系抗がん薬の累積投与量について
Q19 好中球減少時の食事制限について
Q20 抗がん薬による末梢神経障害対策について
Q21 イリノテカン塩酸塩水和物による迷走神経反射対策について
Q22 ベバシズマブによる高血圧対策について
Q23 白金系抗がん薬アレルギーに対する脱感作療法について
Q24 B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化予防対策について
Q25 吃逆(しゃっくり)への対処方法と柿蒂について
Q26 セツキシマブによる低マグネシウム血症への対策について
Q27 脱毛ケアについて
Q28 抗がん薬の重大な副作用の服薬指導について
第III章 がん緩和ケア
Q29 緩和的に行う皮下輸液について,
Q30 麻薬の入院中自己管理について
Q31 がんの皮膚浸潤による悪臭対策について
Q32 高カロリー輸液へのオクトレオチド酢酸塩混注について
第IV章 がんを取り巻く制度
Q33 高額療養費制度について
Q34 病院での外来経口抗がん薬服薬指導について
Q35 病院におけるレジメン審査の組織,手順について
Q36 がん患者の就労支援について
Q37 適応外のレジメン審査について
第V章 抗がん薬を取り巻く制度
Q38 抗がん薬調製環境の清掃について
Q39 抗がん薬曝露防止用品について
Q40 抗がん薬投与後の生理食塩液フラッシュについて
Q41 抗がん薬の粉砕や簡易懸濁について
Q42 閉鎖式薬物移送システムについて
Q43 携帯型ディスポーザブル注入ポンプの取り扱いについて
Q44 抗がん薬の破損時の対処について
Q45 抗がん薬治療中患者の小児との接し方について
Q46 抗がん薬膀胱内注入後の処理方法について
Q47 医師(看護師)による抗がん薬調製実施方法について
第VI章 薬局と在宅
Q48 抗がん薬院外処方時の薬局への情報提供について
Q49 薬局での経口抗がん薬の副作用指導について
Q50 薬局での抗がん薬服薬指導時の配慮について
Q51 麻薬処方せん応需時の疼痛コントロールの状況把握について
第VII章 その他
Q52 注射用抗がん薬の後発品採用について
索引
序文
本書『がん治療の疑問をメーリングリストで解決した件。』上梓にあたり、僭越ながらコメントさせて頂く機会を得ましたので、少しお付き合いください。
本書は日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)の会員が利用できる情報交換用メーリングリスト(以下JASPO ML)で、日々飛び交う疑問とそれに対する返答をまとめた内容となっています。日本臨床腫瘍薬学会会員の皆様の中には、実際にメーリングリストを利用され、その利便性の高さを感じられた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。かくいう私もその一人です。
現在のJASPO MLは2012年の日本臨床腫瘍薬学会発足と同時に始まったものですが、それ以前の2008年4月から、前身のメーリングリストを開設しました。開設当時の参加メンバーは、国立がん研究センター東病院の研修(日本病院薬剤師会がん薬物療法認定薬剤師の実務研修)生と職員54名でした。私は2008年1月から3月まで、5期生として長崎から千葉へ研修に来ていました。慣れない土地でしたので当初は不安もありましたが、多くの方の支えがあって、日々楽しく有意義な研修を行うことができました。当時の東病院の薬剤師職員、薬剤師レジデント(当時はがんセンターのレジデント制度が始まって間もない頃でした)、同期の研修生はもちろんのこと、1〜4期の先輩研修生の残した功績に支えられた部分も大きく、この絆をなんとか形にできないかと、メーリングリストを作ることを思い立ちました。先輩研修生とは当時はお会いしたこともありませんでしたが、メーリングリスト誕生後は気軽に質問や情報交換ができるようになり、その後も研修生が増える度に、また噂を聞きつけた方からのリクエストにも応じ、参加メンバーが次第に増えていきました。その絆は日本臨床腫瘍薬学会創設へと繋がり、今日のJASPO MLへと広がっていきました。
JASPO MLでは設立当初より、日常の業務で遭遇する何気ない疑問が多く飛び交っていますが、この疑問の中には、成書などでは解決できないものも多くあります。薬剤師として仕事をしていく上で、事前にエビデンスを収集し、EBM(evidence based medicine)を実践しようとする姿勢は大変重要ですが、根拠が見つけにくい事柄であれば、エビデンスレベルが低いとされる自験例も貴重な情報となり得ます。各施設や各薬剤師のいわば「生の声」を聞くことができるJASPO MLは、臨床薬学を実践する私達薬剤師にとって大変心強い味方であることを、何より私自身が体感しています。
本書をまとめるにあたっては、上記のようなエビデンスの乏しい、しかし薬剤師が知りたい内容をいかにピックアップするかに苦労しました。JASPO ML 上に投稿された実際の質問と回答を元に、要点の整理やプライバシー保護のため適宜編集を加えています。また理解を高めるための解説とコラムを設け、質問内容の背景などが系統的に学習できるようにしています。いわゆるマニュアル本のように網羅的にまとまった形ではありませんが、メーリングリストのリアリティーをそこから感じ取って頂ければ幸いです。
2016年8月
日本臨床腫瘍薬学会メーリングリスト運営委員会委員長
長崎大学病院薬剤部 山口健太郎