〜臨床・画像・病理を通して理解できる!〜呼吸器疾患:Clinical-Radiological-Pathologicalアプローチ
編集 | : 藤田次郎/大朏祐治 |
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ISBN | : 978-4-524-25964-9 |
発行年月 | : 2017年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 280 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
呼吸器疾患の臨床所見(Clinical)、画像所見(Radiological)、病理所見(Pathological)の三者の統合(カンファレンス)を切り口としたテキスト。疾患の病態から鑑別診断の考え方、「どんな画像が見られ、病理から何がわかるか、CRPカンファレンスを通した総合的な診断と病態把握まで、実臨床における診断過程に沿った構成でまとめ、知っておくと役立つ治療戦略の考え方も随所に盛り込んだ。X線・CTの画像所見と病理所見を多数供覧しながら総合的な呼吸器診断が学べる若手医師に特におすすめの1冊。
総論 呼吸器疾患におけるCRPの重要性
I 呼吸器疾患の病態の捉え方
II 胸部画像診断の基本的理解
III 肺病理診断の基本的理解
各論 呼吸器疾患のCRPの実践
I章 呼吸不全と呼吸調節障害
1 急性呼吸不全とALI/ARDS
2 慢性呼吸不全
II章 呼吸器感染症
1 マイコプラズマ肺炎
2 クラミジア・ニューモニエ肺炎
3 オウム病
4 Q熱
5 レジオネラ肺炎
6 肺膿瘍
7 肺アスペルギルス症
8 肺クリプトコックス症
9 MRSA肺炎
10 緑膿菌性肺炎
11 肺結核症
12 結核性胸膜炎
13 非結核性抗酸菌症
14 ニューモシスチス肺炎
III章 閉塞性肺疾患・気道系疾患
1 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
2 びまん性汎細気管支炎/副鼻腔気管支症候群
3 気管支拡張症
IV章 間質性肺疾患
1 急性間質性肺炎(AIP)
2 特発性肺線維症(IPF)
3 非特異性間質性肺炎(NSIP)
4 特発性器質化肺炎(COP)
5 Pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)
6 気腫合併肺線維症(CPFE)
7 肺Langerhans細胞組織球症
8 慢性好酸球性肺炎
9 肺胞蛋白症
10 リンパ脈管筋腫症
V章 免疫・アレルギー性肺疾患
1 サルコイドーシス
2 過敏性肺炎
3 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
4 急性好酸球性肺炎
5 ANCA関連肺疾患
6 多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)
7 Goodpasture症候群(肺胞出血)
VI章 肺循環障害
1 慢性血栓塞栓性肺高血圧症
2 肺高血圧症
VII章 全身性疾患による肺病変
1 膠原病の肺病変
2 HIV/AIDSの肺病変
3 悪性リンパ腫の肺病変
VIII章 腫瘍性疾患
1 小細胞肺癌
2 腺癌
3 扁平上皮癌
4 縦隔腫瘍
5 転移性肺腫瘍
6 胸膜中皮腫
IX章 職業性肺疾患
1 珪肺
2 石綿肺
X章 先天性異常・形成不全
1 肺分画症
2 肺動静脈瘻
索引
序文
このたび、呼吸器科医、放射線科医、病理医、および研修医を対象とし、「〜臨床・画像・病理を通して理解できる!〜呼吸器疾患:Clinical-Radiological-Pathological アプローチ」を出版させていただいた。
呼吸器疾患は多岐にわたることから、その診断過程では、問診・身体所見から鑑別診断を挙げ、検査値や画像(X線・CT像)から疾患を絞り込み、最終的には病理診断で病態の詳細を理解する、という流れを経る。このため、呼吸器疾患の診療に際し、症例ごとにCRP(Clinical-Radiological-Pathological)カンファレンスが実施され、診断に携わる多職種の医師は、それぞれの立場でのコメントを述べつつ、疾患の病態の本質を理解することが求められる。ただしCRP カンファレンスを行うためには臨床医、放射線科医、病理医の協力が必要となるが、呼吸器疾患に精通した各科医師が揃う環境にある施設は決して多くはない。このような背景から、本書は、呼吸器疾患のCRPを切り口に実臨床における診断過程に沿った紙面構成とし、画像、病理像を多数供覧しながら、呼吸器疾患診療の本質が学べるように工夫した。
本書の基本構成は「総論」、「各論」の2部構成とし、「総論」においては、「呼吸器疾患の病態の捉え方」、「胸部画像診断の基本的理解」、および「肺病理診断の基本的理解」を取り上げた。また「各論」では、呼吸器疾患のCRPの実践として計51疾患を取り上げた。各論の記載に際し、Clinicalからの視点ではその疾患の基本病態(原因・定義も含める)を解説し、それを把握するための問診の仕方、身体所見のとり方、重要な検査所見について言及した。診断基準や病期分類、重症度分類なども掲載し、鑑別診断として疾患名を挙げて解説した。Radiologicalからの視点では、典型的なX線・CT像を供覧し、病態にひきつけた画像の特徴、判読におけるポイント・注意点を解説した。さらにPathologicalからの視点では、典型的な病理像を供覧し、病態と画像にひきつけた病理像の特徴、判読におけるポイント・注意点を解説した。最後に、CRP カンファレンスとして、病態・画像・病理について総合的に捉えたまとめ的解説を行い、また病態にひきつけた基本的な治療戦略や治療選択の考え方を簡潔にまとめたコラムをできる限り盛り込んだ。
多くの呼吸器疾患を対象に、CRPを基軸において解説した類書は少なく、本書は、呼吸器疾患の診断と治療にあたる呼吸器科医、放射線科医、病理医、および研修医に広く活用されることを期待したい。
2017年4月
琉球大学医学部附属病院長
琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第一内科)教授
藤田次郎
松山市民病院病理診断科
大朏祐治
呼吸器診療にあたる者として日々困惑するのは、その疾患の種類の多さである。発症機序としても感染、腫瘍、アレルギー性などがあり、また不明の機序によるものも多い。侵される部位として気道、肺実質、肺間質、胸膜、肺血管系などがあり、これらを組み合わせての疾患の数は膨大なものとなる。呼吸器専門医が日常診療を行うにあたって知っておかねばならない疾患数は、粗く分類しても50、少し細かく分類すると100ともいわれる。これらの疾患についてそれぞれその概要を知っていないと、患者を前にして診断にたどりつけず、適切な治療もできない。
筆者は、時間を作ってはいろいろな臨床の研究会に参加した。そこではまず病歴から始まり、臨床データの開示を受けた後、提示された画像をシャウカステンの前に集まって熟読し、またそれについて討論が行われ、最後に病理が提示され、総合討論でまとめられる、という進行であった。そうした場を通じて、疾患についての知識を増やし、臨床医としての引き出しを増やしてきた。近年そのような、実際の症例について臨床、画像、病理が切り結ぶような研究会が以前よりは下火になったことは残念でならないが、その渇きを癒やすような書物が現れた。
本書『呼吸器疾患:Clinical-Radiological-Pathologicalアプローチ』を編集されたのは、呼吸器感染症を中心に、総合的な視座からの呼吸器病学の構築を目指し日々精力的な活動を続けておられる琉球大学藤田次郎教授と永年高知大学医学部で病理学教授として活躍されてきた大朏祐治博士である。本書の隅々にまでお二人の考え方が浸透していることが読んでいて感じられ、70名以上の執筆者による分担執筆であるが、症例ごとのスタイルの違いはほとんど感じられない。これは驚くべきことである。
本書の構成は、まず「呼吸器疾患におけるCRPの重要性」と題して、総論が3名の執筆者によって語られる。次いで各論「呼吸器疾患のCRPの実践」として51の疾患が取り上げられている。筆者がその病名は知りながら未だ遭遇していない疾患はわずかで、すなわち、第一線の呼吸器臨床医が必ず知っておかねばならない疾患がほぼ網羅されている。
疾患ごとの組み立てもユニークであり、初めにClinicalとして、概念、病態、検査所見などが語られ、また鑑別診断を進めてゆく考え方が提示される、次にRadiologicalとして、画像所見が示される、ここまでは普通の教科書にもみられるところであるが、Pathologicalとして、病理所見が必ずカラーで示される。これはなかには非常にまれな疾患もあることを考えると驚異的である。病理所見のエッセンスが語られ、またその限界、そして臨床医へのメッセージも随所に読み取られる。最後にCRPカンファレンスとして、総合的なまとめが行われる。文章や表ばかりが多い教科書とは一線を画した素晴らしいスタイルであり、実際にこれを一冊の魅力的な書物として完成させた藤田、大朏両先生および関係者の熱意に深い敬意を捧げる次第である。
臨床雑誌内科121巻3号(2018年3月号)より転載
評者●JCHO東京山手メディカルセンター呼吸器内科 徳田均