グリーンスパン・ベルトラン 整形外科画像診断学原書第6版
著 | : Adam Greenspan, Javier Beltran |
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監訳 | : 遠藤直人 |
ISBN | : 978-4-524-25928-1 |
発行年月 | : 2018年6月 |
判型 | : A4変型 |
ページ数 | : 1244 |
在庫
定価41,800円(本体38,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
整形外科における画像診断の全領域をカバー・解説した定本の最新版。X線像、CT、シンチグラフィ、PET-CT、エコーをはじめとしたあらゆるモダリティを網羅し、約4,000枚の写真・シェーマをふんだんに用いて典型例から鑑別診断まで詳細に解説。基礎〜最新知識まで幅広い記載で、すべてのレベルの整形外科医・放射線科医が対象。今改訂では、特にMRIと術後のモニタリングの記載を増やした。
第I部 整形外科領域の放射線診断学への序説
第1章 整形外科領域を専門とする放射線科医の役割
第2章 整形外科領域におけるイメージングモダリティ
A イメージングモダリティの選択
B 各種画像診断法
第3章 骨形成と成長
第II部 外傷
第4章 外傷におけるX線学的評価
A X線学的画像モダリティ
B 骨折と脱臼
C 疲労骨折
D 軟部組織損傷
E スポーツによる損傷
第5章 上肢I:肩甲帯
A 肩甲帯
第6章 上肢II:肘
A 肘
第7章 上肢III:前腕遠位部,手関節と手
A 前腕遠位部
B 手関節と手
第8章 下肢I:骨盤輪・仙骨および大腿骨近位部
A 骨盤輪
B 大腿近位
第9章 下肢II:膝
A 膝
第10章 下肢III:足関節と足部
A 足関節と足部
第11章 脊椎
A 頚椎
B 胸腰椎
第III部 関節症
第12章 関節症に対するX線学的評価
A X線診断モダリティ
B 関節症
第13章 変性関節疾患
A 変形性関節症
B 脊椎の変性疾患
C 神経病性関節症
第14章 炎症性関節症
A びらん性骨関節炎
B 関節リウマチ
C 血清反応陰性脊椎関節炎
第15章 種々の関節炎・関節疾患
A 結合組織疾患に伴った関節炎
B 代謝性および内分泌性関節炎
C 種々の関節疾患
第IV部 腫瘍と腫瘍類似病変
第16章 腫瘍と腫瘍類似病変のX線学的評価
A 腫瘍と腫瘍類似病変の分類
B X線学的画像モダリティ
C 骨の腫瘍および腫瘍類似病変
D 軟部腫瘍
第17章 良性腫瘍と腫瘍類似病変I:骨形成性病変
A 良性骨形成(骨芽細胞)病変
第18章 良性腫瘍と腫瘍類似病変II:軟骨由来病変
A 良性軟骨芽細胞性病変
第19章 良性腫瘍と腫瘍類似病変III:線維性病変,骨化性線維性病変と線維性組織球性病変
第20章 良性腫瘍と腫瘍類似病変IV:種々の腫瘍
第21章 悪性骨腫瘍I:骨肉腫と軟骨肉腫
A 骨肉腫
B 軟骨肉腫
第22章 悪性骨腫瘍II:種々の腫瘍
A 線維肉腫および悪性線維性組織球腫
B Ewing肉腫
C 悪性リンパ腫
D 骨髄腫
E アダマンチノーマ
F 脊索腫
G 骨原発平滑筋肉腫
H 血管内皮腫,血管肉腫
I 悪性転化の可能性のある良性病変
J 骨転移
第23章 関節の腫瘍と腫瘍類似病変
A 良性疾患
B 悪性腫瘍
第V部 感染症
第24章 筋骨格系の感染に対するX線学的評価
A 筋骨格系の感染症
B 感染症のX線学的評価
C 感染症の治療と合併症の経過観察
第25章 骨髄炎,感染性関節炎,軟部組織感染症
A 骨髄炎
B 感染性関節炎
C 脊椎感染症
D 軟部組織の感染症
第VI部 代謝性および内分泌性障害
第26章 代謝性および内分泌性障害に対するX線学的評価
A 骨の組成と産生
B 代謝性および内分泌性障害に対するX線学的評価
第27章 骨粗鬆症,くる病,骨軟化症
A 骨粗鬆症
B くる病,骨軟化症
第28章 上皮小体機能亢進症
第29章 Paget病
第30章 その他の代謝性および内分泌性障害
A 家族性特発性高ホスファターゼ血症
B 先端巨大症
C Gaucher病
D 腫瘍状石灰沈着症
E 甲状腺機能低下症
F 壊血病
第VII部 先天性骨格異常と発育性骨格異常
第31章 骨格異常に対する放射線学的評価
A 分類
B 画像モダリティ
第32章 上肢および下肢の異常
A 肩甲帯と上肢の異常
B 骨盤帯と股関節の異常
C 下肢の異常
第33章 脊柱側弯症と骨系統疾患
A 脊柱側弯症
B 骨系統疾患
索引
原書第6版 監訳の序
原書初版および第2版は金沢大学教授(当時)富田勝郎先生と教室員の先生方により翻訳され、第3版は千葉大学教授(当時)守屋秀繁先生と教室員の先生方により翻訳されました。いずれも大変ご苦労をされたと思いますが、すばらしい翻訳をされました。翻訳版が出版されたことで、本書は日本国内で多くの先生方に知られるところとなり、日々の診療に大いに役立ち、読者や関係者から高く評価されることとなりました。
この度、第6版の原書の翻訳の依頼をいただきましたことは私共にとりまして大変光栄でした。新潟大学整形外科学教室のメンバー(放射線科医にもご協力をいただきました)が手分けをして、翻訳にあたり、ここに完成にいたりました。金沢大学、千葉大学の先生方が手がけられた文章を読み、読者に理解しやすい翻訳をこころがけてこられたことに思いを馳せつつ、私共としても読者の方に理解しやすい表現を念頭に置いて今回の翻訳を進めてまいりました。
改めて本書を見てみますと、この第6版では共著者としてGreenspan教授に加え、Beltran先生が加わりました。新進気鋭の先生であり、特にMRI領域で幅が広がり、また多くの新しい知見が加わっております。第1章から33章まであり、「第1章 整形外科放射線医の役割」からはじまり、部位別、疾患ごとに、整形外科医が扱う骨関節疾患、脊椎脊髄疾患の全領域が記載されております。
本書の特長は簡潔な文章とともに図表と画像所見(X線、MRIなど)を豊富に取り入れていることです。他の書籍に比してもそれぞれの図表や画像は大きく掲載されており、見やすく、理解しやすいものです。図表、画像を見つつ、本文を読んでいくことで著者が示している特徴を確実に理解できます。類似したこと、鑑別すべきことなども簡潔にまとめて示されており、一つのことを調べていく過程で自然に関連事項も学ぶことができます。さらに各章末にはその章で重要なこと、忘れてはならないことが箇条書きでまとめられており、その章で学んだことをチェックし、整理のうえ、再確認することができます。読者が正しく理解し、身につくようにとの著者らの熱意が伝わってくる工夫です。
本書は整形外科医が担当する骨・関節、脊椎脊髄疾患の診断と治療方針を立てるうえで大変有用で役立つものです。整形外科医として本書を通読することにより現在の整形外科領域における放射線画像に関する最新の知見を身につけられます。それぞれの章別に内容がまとまっておりますので必要な知りたい内容の章から読んでいくことも、あるいははじめから全体を読み通すこともよいと思います。特に整形外科専門医を志している若い医師に強く薦めたいと思います。個人で読み通すことや、あるいはグループで分担をして通読することは整形外科医としての診断力アップに確実に役立つものです。また整形外科医以外の先生方、あるいは医療スタッフの方々にとりましても整形外科疾患を理解するうえで有用です。ぜひ、本書を手元に置くことをお薦めします。
本書は本棚に並べておくのではなく、診療の現場でぜひ手元に置いていただき、日々の診療時に疑問に思った折、確認したいと思った折に手軽に開いていただければ、日々の実際の診療に役立つものと思います。十分に活用されてください。
なお一部、日本語の用語が以前と変化してきたものもあり、現在使われている用語を選択しておりますので、前版とは異なる訳語もあることをご了解ください。
2018年4月
遠藤直人
本書の帯には「歴史的名著が14年ぶりに日本語版刊行」とある。本書の第1版(英語版)は1992年に発刊され、今回刊行されたものが原書第6版となる。四半世紀にわたり多くの読者を獲得して版を重ねることができたことが、何といっても名著のしるしであろう。日本語版として出版されるのは、1994年に富田勝郎先生(金沢大学名誉教授)が原書第2版を、2004年に守屋秀繁先生(千葉大学名誉教授)が原書第3版を監訳されて以来になる。今回は1,244頁、4,000以上の画像というたいへんボリュームのある本であり、監訳を担当された遠藤直人先生、および新潟大学整形外科学教室の先生方にまず大きな敬意を表したい。
筆者も1994年に日本語版が出版されたときにすぐに買い求め、この本で整形外科の画像診断について、さまざまなことを学ばせていただいた。今も手元にある日本語版の原書第2版とこのたびの原書第6版を比べてみると、頁数は約500頁増えている。どの部分が増えているか調べてみると、増加頁のほとんどは外傷と骨腫瘍であることはとても興味深い。これは、一つは近年の四肢外傷学の発展を反映するものであり、さまざまな軟部組織損傷も含め、MRI所見、分類などに多くの頁が割かれている。腫瘍もPETなど新しい画像モダリティの写真など、疾患ごとの画像写真が格段に増え、たいへん理解しやすい内容となっている。
あらためて本書の特長を書かせていただくと、何といっても豊富な画像が示されていることである。同一の病巣が単純X像、MRI、3D-CT、超音波など複数の画像を用いて提示してあり、それぞれの画像診断法の特徴が一目瞭然である。また、多くの画像には解剖や病態を示すイラストが添えられており、これも画像が何を表しているかについて、たいへん理解しやすい構成になっている。さらに、X線像の撮影方法もイラストを用いて詳しく書かれている。X線像がどのような肢位でどの方向からX線をあてて撮影されたものか知っておくことは重要であり、不適切なX線像が撮られたときの指示や、自分が撮影してほしい画像を依頼するときなどにも有用である。
本書では、版を重ねてもかわらないポリシーとして、新しい画像モダリティが増えても、決して新しい高価な検査に頼ることなく、X線像など簡便で安価にできる検査でどれだけのことがわかるか、ということを丁寧に解説してある。骨折を例にとれば、骨の所見だけではなく、周囲の軟部組織に現れる間接的な指標までたいへん詳しく記載されている。診断学的な記載も豊富で、病歴や病巣の部位、年齢、そしてX線所見からかなりのことが診断できることを教えてくれる。これは、さまざまな画像診断法がすぐ手元にある現代の整形外科医にとって忘れてはいけない考え方である。本書は、診察室の傍に置いて診療の手助けになるとともに、広く深い知識を与えてくれる、まさに名著である。今後も版を重ねていくであろうし、数十年後に本書がどのような内容になっているかもひそかに楽しみである。
臨床雑誌整形外科69巻13号(2018年12月号)より転載
評者●京都大学整形外科教授 松田秀一