患者に説明できる調剤報酬
共著 | : 福島紀子/上村直樹/岸本桂子/澁谷弘治 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-25898-7 |
発行年月 | : 2016年10月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 196 |
在庫
定価2,640円(本体2,400円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
近年患者さんからの質問が増えた調剤報酬をやさしく解説。若手薬剤師リサが患者さんからの疑問に答える「実務編」では、調剤報酬の“理論”に基づいた回答例を詳しく掲載。そのほか、調剤報酬がつくられた経緯をまとめた「総論編」、調剤報酬を体系的にまとめた「資料編」の三部構成で、“深く・広い”知識が身につく。実務実習に臨む薬学生・若手薬剤師にとくにおすすめ。
I 総論編
医療保険制度と調剤報酬の変遷
II 実務編
1.調剤技術料
(1)調剤基本料
Question1 ほかの薬局ではもっと安かった気がするけど,負担額が違うのはなぜですか?
Question2 調剤薬のなかに後発医薬品がないのに,なぜ後発医薬品調剤体制加算が取られているのですか?
(2)調剤料
Question3 調剤明細書に記載されている「調剤基本料」「調剤料」は,どういう内容ですか?
Question4 薬の数が減ったのに,負担額が上がったのはなぜですか?
Question5 飲み方を変えただけなのに,料金が変わるのはなぜですか?
(3)嚥下困難者用製剤加算
Question6 薬局で薬を潰してくれるサービスがあるのですか?
(4)一包化加算
Question7 1回分を1包にまとめると,お金がかかりますか?
(5)無菌製剤処理加算
Question8 お宅の薬局では注射薬の混合調剤はできますか?
(6)麻薬・向精神薬・覚せい剤原料・毒薬加算
Question9 毒薬加算とは何ですか?
(7)自家製剤加算
Question10 今まで服用していた薬を薬局で半分に割るだけで,負担額が上がるのはなぜですか?
(8)計量混合調剤加算
Question11 処方せんには2本のシロップ剤と書いてあるのに,なぜ1本しかないのですか?
Question12 前回と同じ薬なのに,負担額が下がったのはなぜですか?
(9)時間外等の加算/夜間・休日等加算
Question13午後8時過ぎに薬をもらいに行ったら,いつもより値段が高いのはなぜですか?
Question14 年末に薬をもらいました.前回と同じ薬なのに,負担額が違うのはなぜですか?
Question15 2週間前に来たとき(土曜午後)と同じ薬なのに,負担額が違うのはなぜですか?
(10)在宅患者調剤加算
Question16 在宅患者調剤加算15点とは何ですか?
2.薬学管理料
(1)薬剤服用歴管理指導料
Question17 私がいつもかかっている薬局に比べ,こちらの薬局は薬剤服用歴管理指導料の値段が高いのですか?
Question18 薬の説明は必要ないので,薬学管理料を外してもらえませんか?
Question19 お薬手帳の料金は領収証のどこに記載されているのですか?
Question20 お薬手帳を持参しないと,負担額が高くなるのですか?
Question21 薬を減らしてもらったのに,負担額が上がったのはなぜですか?
(2)かかりつけ薬剤師指導料
Question22 特定の薬剤師を選択・指名できる制度ができたと言われても,どんなことしてくれるのか,もう少し詳しく説明してよ!
(3)かかりつけ薬剤師包括管理料
Question23 今回は薬代のほかには,かかりつけ薬剤師包括管理料しかないわよ.これでいいの?
(4)服薬情報等提供料
Question24 飲み忘れが多いことを先生に報告しなければなりませんか?
(5)外来服薬支援料
Question25 主人が薬をきちんと飲めません.何かいい方法はありませんか?
(6)在宅患者訪問薬剤管理指導料
Question26 薬剤師さんが薬の配達をしてくれるのですか?
(7)在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
Question27 在宅患者訪問薬剤管理指導料と在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の違いを説明できますか?
(8)在宅患者緊急時等共同指導料
Question28 いつもの訪問管理料と料金が違うようですが,間違いではありませんか?
(9)在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
Question29 お医者さんが処方した薬に問題があったのですか?
(10)退院時共同指導料
Question30 入院時の費用は病院に支払ったのに,なぜ薬局から請求があるのですか?
3.薬剤料
Question31薬剤料はどのように計算するのですか?
4.特定保険医療材料料
Question32薬局では針の料金まで請求するのですか?
5.その他
公費負担医療制度とその適用範囲
Question33公費を持っているのに,この薬には公費を使えないのですか?
III 資料編
1.保険調剤の流れ
2.保険調剤の実務
A 保険処方せん
B 処方せんの確認事項
C 公費負担医療制度
D 新たな難病医療費助成制度
E 高額療養費制度
F 領収証および明細書の発行
3.調剤報酬の算定
4.調剤報酬.調剤技術料
(1)調剤基本料
(2)調剤料
(3)嚥下困難者用製剤加算
(4)一包化加算
(5)無菌製剤処理加算
(6)麻薬・向精神薬・覚せい剤原料・毒薬加算
(7)自家製剤加算
(8)計量混合調剤加算
(9)時間外等の加算/夜間・休日等加算
(10)在宅患者調剤加算
5.調剤報酬.薬学管理料
(1)薬剤服用歴管理指導料
(2)かかりつけ薬剤師指導料
(3)かかりつけ薬剤師包括管理料
(4)服薬情報等提供料
(5)外来服薬支援料
(6)在宅患者訪問薬剤管理指導料
(7)在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
(8)在宅患者緊急時等共同指導料
(9)在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
(10)退院時共同指導料
6.調剤報酬.薬剤料
7.調剤報酬.特定保険医療材料料
8.参考資料
平成28年厚生労働省告示第52号別表第
付録 到達度一覧表
索引
序文
わが国の医療保険制度は、日本人の平均寿命を延伸することに大きく貢献してきた。しかし、近年の少子高齢社会の中で、医療費の高騰が止まらず、制度そのものの存続が危ぶまれている。医療保険制度は、医療法、薬剤師法などに代表される医療を提供する体制と、健康保険法に代表される医療を受ける側の体制からなる。両者の間で、医療費の適正化を推進していく活動が必要であり、薬剤師もその役割を担っていることを忘れてはならない。
保険薬局の薬剤師が行う調剤業務も医療費の一部であるが、薬剤師に求められる機能の変化は、1983(昭和58)年の投薬特別指導料の調剤報酬点数表への規定から始まる。医療費の社会負担を抑制するためにも、患者が正しい服薬をすることで、健康を回復するガイド役としての薬局薬剤師の機能が求められ、保険点数として評価されることになる。その後も薬歴管理や長期投与、重複投薬や相互作用の防止などの「服薬に対する安心・安全を高める支援」や「いわゆる『薬漬け』の防止」のガイド機能が追加され評価されている。1994年から10年以上をかけて、高齢化社会と日本の医療制度の対応のかかわりの変化とともに、薬剤師の在宅医療へのかかわりが保険点数として評価されてきた。2016年には患者が選ぶ「かかりつけ薬剤師」という形で、正しい服薬のガイド役を果たせる質の高い薬剤師が、患者の健康を通して日本の超高齢社会における保険医療制度を薬の側面から機能して担うことが求められている。
このように時代とともに薬剤師に求められる業務も変化し、その薬剤師の業務に対して点数が付いているという意味をよく理解しておく必要がある。業務に対して報酬が細かく点数化され、さらに点数が上がるということは、薬剤師の仕事の重要性が明らかにされ推進してほしいということを意味している。言い換えれば、薬剤師がその役割をきちんと果たさなければ、点数はなくなることを頭に入れておく必要がある。患者側から見れば、支払った分だけのメリットが得られなければ薬剤師に費用など払いたくないということになる。調剤後の会計の際の費用に対する疑問に対しても、自信を持って説明できるように、その点数が付いている意味を理解しておくことが大切である。
本書は、慶應義塾大学(旧共立薬科大学)で1996年から作成してきた社会薬学テキストの中で触れていた内容であるが、2009年から「保険調剤の実務−調剤報酬の算定−」として独立させ、医療系実習のテキストとして使用していたものを基に作成したものである。今回は調剤報酬の算定の仕方というよりは、個々の調剤報酬の算定の意味と、その報酬についての疑問点について、実際の事例から学ぶように作成したものである。専門家の先生方に加わっていただき、できるだけわかりやすく解説することに努めた。
薬剤師を巡る大きな変革の中で、地域住民に対して適切な医薬品の提供、薬物治療に対する薬学的管理・指導に加え、調剤報酬についても説明できる薬剤師として、地域住民から信頼され活躍されることを期待する。
2016年10月
著者を代表して
福島紀子