超・入門 臨床血液内科アトラス
病理組織診断の苦手意識を克服する!
編集 | : 金倉譲/森井英一 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-25883-3 |
発行年月 | : 2015年10月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 170 |
在庫
定価6,380円(本体5,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
初学者にも“楽しく読めて・わかりやすく・すぐに役立つ”をコンセプトにまとめた入門アトラス。大阪大学血液・腫瘍内科学にある膨大な画像からわかりやすいものを厳選して掲載。細胞・組織の写真や病歴、検査値から疾患を当てるクイズを「I章 症例編」に用意し、「II章 技術編」では標本のつくり方、見方をやさしく解説。「V章 疾患各論」では、各疾患の血液細胞・病理組織像に加えて、疾患の概要と診断に役立つ検査所見の要点をまとめた。
I章 症例編:チャレンジ!どんな疾患か?−実際の症例から学ぶ−
1.どんな疾患か?(1)
2.どんな疾患か?(2)
3.どんな疾患か?(3)
4.どんな疾患か?(4)
5.どんな疾患か?(5)
6.どんな疾患か?(6)
7.どんな疾患か?(7)
8.どんな疾患か?(8)
9.どんな疾患か?(9)
10.どんな疾患か?(10)
II章 技術編:血液細胞・病理組織がつくれる・わかる
1.塗抹標本の作製と染色
2.骨髄生検像の作製と染色
3.リンパ節生検像の作製と染色
4.末梢血塗抹標本の見方
5.リンパ節生検像の見方
III章 正常血球・造血組織:正常造血がわかる
1.リンパ造血細胞の分化
2.正常血液細胞
3.正常骨髄組織
4.正常リンパ節組織
IV章 異常血球:血液細胞の異常から考える
1.赤血球の異常
2.白血球の異常
3.血小板の異常
V章 疾患各論:血液疾患がみえる・わかる
A.赤血球系疾患がみえる・わかる
1.鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia:IDA)
2.巨赤芽球性貧血(megaloblastic anemia)
3.先天性溶血性貧血(congenital hemolytic anemia)
4.再生不良性貧血(aplastic anemia:AA)
5.骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)
B.白血球系疾患がみえる・わかる
6.急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)
7.急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)
8.急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia:ALL)
9.骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms:MPN)
10.慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)
11.慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)
12.悪性リンパ腫(総論)(malignant lymphoma:ML)
1)濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma:FL)
2)MALTリンパ腫(extranodal marginal zone lymphoma of mucosaassociated lymphoid tissue)
3)マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma:MCL)
4)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)
5)血管内大細胞型B細胞リンパ腫(intravascular large B-cell lymphoma:IVLBCL)
6)前縦隔(胸腺)原発大細胞型B細胞リンパ腫[primary mediastinal(thymic)large B-cell lymphoma:PMBL]
7)Burkittリンパ腫(Burkitt lymphoma:BL)
8)リンパ芽球性白血病/リンパ腫(lymphoblastic leukemia/lymphoma:LBL)
9)ヘアリー細胞白血病(hairy cell leukemia:HCL)
10)未分化大細胞型リンパ腫(anaplastic large cell lymphoma:ALCL)
11)血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(angioimmunoblastic T-cell lymphoma:AITL)
12)末梢性T細胞リンパ腫,非特異群(peripheral T-cell lymphoma,not otherwise specified:PTCL,NOS)
13)成人T細胞白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma:ATLL)
14)節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型(extranodal NK/T-cell lymphoma,nasal type:ENKL)
15)Hodgkin リンパ腫(Hodgkin lymphoma:HL)
13.マクログロブリン血症(Waldenstrom macroglobulinemia:WM)
14.多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM),形質細胞腫(plasmacytoma)
15.伝染性単核球症(infectious mononucleosis:IM)
16.血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome:HPS)
C.血栓・止血疾患がみえる・わかる
17.特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)
18.血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)
19.偽性血小板減少症(pseudothrombocytopenia)
D.造血幹細胞移植がわかる
20.GVHD,TAM,移植に伴う感染症
E.その他
21.免疫不全関連リンパ増殖性疾患(immunodeficiency-associated lymphoproliferative disorders)
22.真菌感染症(fungal infection)
VI章 鑑別:リンパ節腫大
1.リンパ節腫脹の鑑別チャート
2.癌のリンパ節転移
3.自己免疫性疾患
4.結核性リンパ節炎
5.サルコイドーシス
6.Castleman病
7.壊死性リンパ節炎
8.IgG4関連リンパ増殖性疾患
索引
序文
造血器疾患の診断は、細胞や組織を顕微鏡にて観察することからはじまる。形態学的特徴に加えて、染色体・遺伝子・細胞表面抗原・画像検査などを組み合わせることで、造血器疾患の診断・予後予測・微小残存病変評価が行われている。近年、ゲノム解析技術などの新しい技術が導入され、白血病や悪性リンパ腫の診断は日々飛躍的に進歩している。しかし、形態観察は、現在でも血液疾患診療における基盤をなすものであり、その重要性は普遍である。形態観察による診断には、経験を積み重ねる必要があり、「個人差が大きく、自分の診断に自信がない」などと若い医師からネガティブな印象をよく聞く。また、基本的な形態観察を簡単に素通りして他の診断技術に頼ろうとする傾向があるのも事実である。苦手意識の克服のため、また、血液診療の最初で躓かないためにも、わかりやすく、すぐに役立つ「アトラス入門本」が切望されていた。
本書は、血液学に関心をもつ若手医師や学生および検査技師の方々を対象とした。そのため、わかりやすく、興味をもってもらえるようなアトラス本に仕上げた。希少疾患は専門書に譲ることで、日常診療で出会うであろう必須の疾患に絞り込んだ。また、標本を観察する際に注意すべき点を「ここがポイント」として示したうえで、各疾患の特徴を概説するとともに、病態をよく表す典型的な写真を厳選して使用した。日常診療における参考書として利用してもらえればと考え、携帯しやすい大きさにも心がけた。
本書は、大阪大学医学部附属病院の血液・腫瘍内科と病態病理学、臨床検査部に所属する医師や技師が協力して、過去に経験した膨大な症例のなかから最適な標本を選び出し、一つ一つに説明を加えた。執筆いただいた方々の献身的な協力に感謝する。血液形態学の基本は専門家だけでなく幅広い医療従事者が身につける必要がある。本書により形態を見る目が豊かになり、日々の診療の改善につながる端緒として役立つことを一同願っている。
2015年10月
大阪大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学 金倉譲
大阪大学大学院医学系研究科病態病理学 森井英一
血液内科は、担当医が患者の病的検体をみることによって診断をつけることが多い、内科のなかでは特殊な分野である。私自身、血液内科の特徴を学生に説明するときに、血液内科の日常業務には病理医の仕事がかなり含まれているので、「病理診断に興味がある人には血液内科が向いている」と宣伝することがある。ただ、これは主に血球の形態観察の話であって、骨髄生検やリンパ節生検の病理になると、自分が担当している患者であっても、病理医任せにしている血液内科医が多いのではないかと思う。若い教室員や研修医には、病理組織をみることによって、担当している患者の病態が初めてわかることがあるので、血液病理を勉強したうえで、担当患者の標本を自分でみるようにと、自戒の意味を込めて指導しているが、現場の患者ケアに忙しい医師にはなかなか実行できないようである。
大阪大学血液・腫瘍内科の金倉 譲氏と同病態病理学の森井英一氏らによる「超・入門 臨床血液内科アトラス」は、病理を含めて血液疾患をトータルに理解したいと思っている若手医師にとって打ってつけの好著である。アトラスと銘打ってはいるが、単純な画像集ではない。まずは、臨床・検査所見と病理所見から診断を考える診断クイズから始まり、続いて、臨床医の学習がおろそかになりがちな病理検体のつくり方が、図をふんだんに使って初学者にもわかりやすく説明されている。このあたりには、症例をベースとして病理から疾患を学ぶことにより、若い医師にしっかりとした血液内科医に育ってほしいという著者らの熱意が感じられる。続いて血球・リンパ節の正常・異常所見が紹介され、各論に移っていく。各論では豊富な病理画像に加えて、「診断に役立つ検査所見」が診療のコツのような形で簡潔に記載されている。また、最終章では、診断に苦慮することが多いリンパ節腫大の鑑別診断が、血液疾患以外の疾患の病理所見とともにわかりやすく紹介されている。このため、血液疾患をあまりみたことがない医師であっても、該当する症状や身体所見に相当する本書の項目をみれば、それだけで正しい診断にたどり着くことができる。
血液疾患アトラスに類した書籍はこれまでにも数多く出版されているが、血液内科医と病理医が一体となって、症例ベースに血液疾患をトータルに把握できるように工夫した血液疾患の入門書はこれまでになかったのではないだろうか? 「血液標本をみるのは得意だが病理標本はちょっと……」というベテランの血液内科医にとっても常に傍らに置いておきたい一冊である。
臨床雑誌内科117巻6号(2016年6月号)より転載
評者●金沢大学医薬保健研究域医学系血液・呼吸器内科教授 中尾眞二