脊椎脊髄外科テキスト
編集 | : 橋和久 |
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ISBN | : 978-4-524-25877-2 |
発行年月 | : 2016年8月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 298 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
脊椎脊髄外科を専門領域とすることを志す医師のためのテキスト。同領域の臨床・研究に高い実績を誇る千葉大学脊椎外科グループの臨床経験・修練内容に即して基礎・診断・治療・周術期管理、および各疾患の病態と実践的知識を解説。脊椎脊髄外科診療の第一線に立つために求められる高水準の知識を網羅している。
I.総論:基本編
A.解剖と機能
1.脊椎の解剖とバイオメカニクス
2.脊髄の解剖と機能・血管支配
B.診断
1.診断総論:脊椎脊髄疾患のみかた
2.神経学的検査(高位・横位診断,神経支配,特徴的症候群)
3.画像検査
4.その他の検査法
C.治療
1.保存療法
2.周術期管理
D.押さえておくべき病態
1.感染症
2.骨粗鬆症
3.関節リウマチ
4.急性痛・慢性痛
II.各論:疾患編
A.外傷性疾患
1.脊椎損傷
2.脊髄損傷
B.脊椎変性疾患
(1)先天異常・変形
1.脊椎・脊髄に関連のある先天性奇形
2.脊柱変形(主に思春期周辺とその他の脊柱変形)
(2)変性疾患
1.変形性頚椎症
2.頚椎症性脊髄症
3.頚椎症性筋萎縮症
4.頚椎部屈曲性脊髄症
5.脳性麻痺に合併した頚髄症
6.頚椎症性神経根症
7.椎間板ヘルニア(頚椎,胸椎,腰椎)
8.靱帯骨化症(頚椎後縦靱帯,胸椎後縦靱帯,黄色靱帯)
9.頚肩腕症候群
10.腰部脊柱管狭窄症
11.腰椎すべり症
12.透析脊椎症
13.骨粗鬆症性椎体骨折
(3).炎症性疾患
1.関節リウマチによる頚椎病変
2.化膿性脊椎炎
3.結核性脊椎炎
C.脊髄疾患・末梢神経疾患・血管疾患
1.脊髄係留症候群
2.脊髄空洞症
3.脊髄ヘルニア
4.胸郭出口症候群
5.脊髄非腫瘍性病変
6.脊髄血管障害
D.腫瘍性疾患
1.脊髄腫瘍
2.脊椎腫瘍
a.原発性腫瘍
b.転移性腫瘍
3.嚢腫性病変
索引
序文
近年、インターネットなどの進歩に伴い、膨大かつ多様な情報が容易に入手可能となった。一方、提供された情報の正否を正確に吟味することは、個人には困難な場合が多い。脊椎脊髄外科領域においても状況は同様であり、進歩を続ける本領域の最新の知識を選択し、整理し、記載することは意義あることと思う。
本書は脊椎脊髄外科を専門領域とする医師のテキストをめざし、近い将来整備が進められる脊椎脊髄外科専門医に必要な知識・技術をまとめることを目的とした。常に進歩を続ける本領域の最新の知識・技術を効率的にまとめるため、それぞれ千葉大学整形外科出身のエクスパートに分担執筆を依頼し、編集過程では成書としての可及的統一を図った。内容は「総論」「各論」に分け、「総論」では解剖・バイオメカニクスなどの臨床に直結した基礎的内容、診断・治療の知識、押さえておくべき病態をまとめた。「各論」は統一的な記載により、疾患概念、診断、治療の実際を中心に解説した。また、写真やシェーマを多く使用し、読者が理解しやすいよう配慮した。
本書は脊椎脊髄外科専門医に求められる基本的知識、病態、診断、治療のポイントをまとめたものではあるが、本領域を専門としない整形外科医や他の診療科の方々にとっても、脊椎脊髄外科の最新の知識・技術の参考図書として必ずや役立つものと考える。医学・医療に関する教育・研究施設、病院、診療所などの医療施設には是非常備していただければ幸いである。
本書の執筆にあたっては、各著者、編者は内容に関して慎重な吟味を行った。しかしながら、脊椎脊髄外科領域の進歩は速やかであり、記載内容が不十分なものもあるかも知れない。読者の皆様には率直なご教示をいただければ幸いである。
平成28年7月
高橋和久
「…提供された情報の正否を正確に吟味することは、個人的には困難な場合が多い。…(中略)…本領域の最新の知識を選択し、…(中略)…本書は脊椎脊髄外科を専門領域とする医師のテキストをめざし…」と編者の高橋和久先生(千葉大学前教授)は序文で記されている。筆者も脊椎脊髄外科医の端くれとして日々診療や研究に従事させていただき学会にも参加しているが、本領域の進歩はめざましく、専門的に取り組んでいない分野では、知識が追いついていないと反省することもしばしばである。
筆者が大学を卒業してからの30年、一番のmajor surgeryである腰椎固定術に着目しても、最初の5年は前方固定術、そこからpedicle screwを用いた後側方固定術(PLF)や後方経路腰椎椎体間固定術(PLIF)、そして経椎間孔的腰椎椎体間固定術(TLIF)が加わり、経皮的スクリューを含め最小侵襲手術(MIS)、そしてこの5年弱は側方経路腰椎椎体間固定術(LIF)と、新しい手技が出現している。また、手術技術の進歩に伴い10年前には大きく扱われることはなかった高齢者脊柱変形が、この4〜5年間で多くの学会のメイントピックとなっている。
このように日進月歩を続けている領域であるからこそ、困難なことはよいテキストを編することであろう。テキストの内容には普遍性とまではいわないが、ある程度のコンセンサスが必要とされ、それが原著・雑誌との相違点ではないかと考える。高橋先生が序文で述べられた「提供された情報の正否の判断」とは、このことを指しているのではないかと考えている。コンセンサスが得られた最新の知識を盛り込んだテキスト、「言うは易く、行うは難し」、新しい知識・診断技術・手術手技の中でどこまでがコンセンサスの得られた正しい内容であり収載するのか、非常に苦心されたこととお察しする。そういった意味においても、本書は高橋先生のもとに千葉大学医学部整形外科の頚椎グループ、腰椎グループ、脊柱変形グループが、個人ではなくグループとして判断した偏ることのない新しい知識を、まさにテキストとしてまとめられたものである。
高橋先生が「本領域を専門としない整形外科医や他の診療科の方々にとっても、脊椎脊髄外科の最新の知識・技術の参考図書として必ずや役立つものと考える」と記されていることからも、本書の内容が十分かつ慎重に吟味されたことが理解できる。たとえばK-lineは、後縦靱帯骨化症(OPLL)をはじめとする圧迫性頚髄症の手術選択の指標となる千葉大グループのすばらしい業績の一つである。最初の報告から10年弱ではあるが、多くの論文で追試され十分なコンセンサスが得られている。本書では、それらに基づいた記載がなされ、いろいろ論文を探し読まずともその内容がよく理解でき、明日からの臨床に役立つであろう。一方、まだ十分に議論されコンセンサスが得られたとはいいがたいLIFなどは名前だけの紹介にとどまっている。高橋先生をはじめとする先生方の深い知識と良識がなせるものであると思われる。
先述のように、脊椎脊髄外科領域は膨大かつ凄まじい勢いで進歩している。「あれ、学会や講演会で聞いたことあったな!」と思うことは、筆者のような中堅クラスでは、診療、学会準備、査読等々で日常茶飯事である。そんなときに本書は、座右の書として相応しいものと考える。これから脊椎脊髄外科を専門としようとされている先生方には、一度は通読することをおすすめする。準備がすすめられている脊椎脊髄外科専門医に求められる基礎から臨床までの知識の習得が効率的に可能である。一方、すでに自分は十分に脊椎脊髄外科医として知識を有しているとお考えのシニアの先生方には、ぜひ「豆知識」と「図表」だけでもお目通しいただきたい。豆知識には若い先生に教えたくなる蘊蓄が、図表には意外と忘れていた情報が、散りばめられ楽しくなること請け合いである。
読みやすく理解しやすい、脊椎脊髄外科領域の最新の教科書、それが本書である。すばらしい書を編集された高橋先生に心からのお祝いと敬意を表したい。また、先生のご指導のもとに執筆された千葉大学脊椎脊髄グループの先生方のご努力に感謝を申し上げたい。
臨床雑誌整形外科67巻13号(2016年12月号)より転載
評者●東海大学整形外科教授 渡辺雅彦