イラストでみる皮膚病のトリセツ
著 | : 瀧川雅浩 |
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ISBN | : 978-4-524-25847-5 |
発行年月 | : 2020年8月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 164 |
在庫
定価6,600円(本体6,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
皮膚科以外の医師、とくに開業医、総合診療医が皮膚病変をみる機会は多く、非専門医とはいえ的確な診断・患者説明・治療が求められる。本書は、実際の診療の流れに沿って、患者の主訴からまず考える疾患と診断のポイントを挙げたうえで、各疾患の治療や患者指導についてまとめた。項目ごとに治療の難易度を表し診療の目安としたほか、イラストや表を多用し簡潔に要点をつかみやすい構成とした。
第1章 治療のストラテジー
A 外用剤(塗り薬と貼り薬)
1 知っておきたいこと
a 軟膏とクリームはどう違う?
b 薬を塗っても乾燥することがある
c 混合−YES or NO?
d 塗ってもよくならない
e 塗り薬でかぶれる!
f どの程度の量の薬を,どの範囲に塗るか?
g スキンケアとは?
2 治療の基本ストラテジー
a かゆい発疹には−副腎皮質ステロイド(ステロイド)外用剤
b 眼の周りの湿疹には−眼用ステロイド外用剤
c 口の中のアフタには−口腔内用ステロイド外用剤
d 虫刺され,痒疹など表面が乾燥したかゆい発疹には−貼るステロイド含有テープ
e 蕁麻疹のかゆみ抑制には−抗ヒスタミン含有外用剤とクロタミトン含有外用剤
f 乾燥肌,手湿疹などざらざらした病変には−いろいろな保湿剤
g 細菌感染には−抗菌外用剤
h 脱毛・白斑治療には−フロジン®
i 痛み止めの貼り薬−ペンレス®テープ
B 内服薬,注射剤
1 かゆみを止めるためには−抗ヒスタミン薬,抗アレルギー薬
a ヒスタミンH1受容体拮抗薬
b Th2サイトカイン阻害薬
c メディエーター遊離抑制薬
2 広範囲な湿疹には−ステロイド薬
3 細菌感染には−抗菌薬
4 しつこい痛みには−抗疼痛薬
5 皮膚科領域でよく使われる漢方薬
第2章 診断と治療の実際
I 自覚症状
A かゆい!
1 ミミズ腫れができてかゆい−蕁麻疹
2 全身に蕁麻疹が出て,気分が悪い−アナフィラキシーショックへの対応
3 湿疹がなかなかよくならない
4 赤いぶつぶつが急にできてかゆい−湿疹,かぶれ
5 頭皮がかさかさして赤くなりかゆい−脂漏性皮膚炎と乾燥肌
6 まぶたが腫れてきた−血管性浮腫,蕁麻疹,かぶれ(花粉皮膚炎など)
7 耳の中がかゆい−外耳道湿疹と外耳道真菌症
8 アトピー性皮膚炎がなかなかよくならない
9 皮膚が乾燥してかさかさして,かゆい−乾皮症
B 痛い!
1 水疱ができて痛い
a 赤いぶつぶつと小さな水疱がたくさんできて痛い−帯状疱疹と単純疱疹
b 唇/陰部に水疱が繰り返しできる−口唇ヘルペス,陰部ヘルペス
2 腫れて痛い
a 全身症状がある−蜂窩織炎,丹毒
b 全身症状はない−せつ,炎症性粉瘤(アテローム),血栓性静脈炎(下肢)
3 虫に刺されて腫れて痛かゆい−虫刺され
4 口の周り,背中,太ももに赤い小さいぶつぶつ〜膿をもったぶつぶつが多発−毛包炎(毛嚢炎)
5 爪周囲が赤く腫れ痛い−爪囲炎,ひどくなると瘭疽
C 汗が気になる,臭う
1 多汗症
2 腋臭症(わきが)
II 全身の発疹
D 発熱があり,発疹ができた
1 熱が出て,全身に赤い斑点やぶつぶつができた−小児:突発性発疹,風疹,麻疹 成人:薬疹
2 体に赤い斑点ができ,舌が赤く(イチゴ舌)なってきた−猩紅熱,川崎病
3 頬,四肢に赤い斑点やぶつぶつができた−伝染性紅斑,ジアノティ症候群
4 小さい水ぶくれができた−水痘,手足口病
E 青あざ,出血斑ができた
F やけどと日焼け
1 やけどした
2 ひどい日焼け
G 全身性疾患にみられる皮膚症状
1 静脈瘤のある下腿−湿疹から潰瘍へ
2 糖尿病−フットケアが大切
3 透析患者−肌の乾燥とかゆみ
4 慢性肝障害−さまざまな皮膚症状
5 膠原病−診断の決め手となる皮膚症状
6 ベーチェット病−アフタ,静脈炎
III 各パーツの困った状況
H 顔のトラブル
1 ニキビとニキビ様発疹
a ニキビができた
b ニキビのようでニキビでない
2 なんとかしたい顔のしみ
3 痛くもかゆくもない小さなぶつぶつが気になる
a 顔
b 眼の周り
c 首
I 口の周りや口の中の異変
1 唇が荒れてがさがさする−口唇炎
2 口の角がただれて切れて痛い−口角炎
3 口の周りや口の中がおかしい
a ただれて痛い−アフタ性口内炎vs再発性単純ヘルペス
b 何もできていないのに口の中が痛い
c 白いものができ,時にただれて痛い−口腔カンジダ症
d 黒いしみができてきた
e 口の中に膨らんだものができた
4 舌の見た目がおかしい
J 頭髪の一大事
1 円形脱毛症
2 トリコチロマニア
3 壮年性脱毛症
4 更年期以降の女性にみられる薄毛
K 手足のトラブル
1 手が荒れ,ひび割れて痛い−手湿疹(主婦湿疹)
2 手,足に赤いぶつぶつ,水疱や膿疱ができ,かゆい−汗疱,掌蹠膿疱症
3 水虫になった
4 足の裏にいぼができた−疣贅(いぼ),うおのめ
5 黒いしみができてきた−メラノーマ(ほくろの癌)が心配
6 痛くもかゆくもない小さなぶつぶつが気になる
a 腕−毛孔性苔癬
b 脚−皮膚線維腫
c 関節のぷっくりした膨らみ−ガングリオンと粘液嚢腫
L 爪がおかしい
1 白く,厚くなってきた−爪白癬
2 緑に着色した−グリーンネイル(緑膿菌感染)
3 形がおかしい
4 食い込んで痛い
M 陰部,臀部の困った発疹
1 臀部,股が赤くなり,かゆいぶつぶつができた
2 陰部に痛くもかゆくもないぶつぶつができた−尖圭コンジローマ
3 梅毒を疑う発疹
IV 年齢とスキントラブル
N 小児のスキントラブル
1 顔が赤く,かさかさ,ぶつぶつしてきた−湿疹・皮膚炎,ニキビ
2 赤いぶつぶつ,水ぶくれ(水疱)ができて,かゆがる−伝染性膿痂疹(とびひ)
3 水いぼができた−伝染性軟属腫(水いぼ)
4 髪の毛に白いものがついている−頭ジラミとヘアーキャスト
5 あせもができた
6 しもやけができた
7 手のひら,足の裏に小さい赤いぶつぶつができてかゆがる
8 おむつかぶれ
9 おチンチンのあたりが赤く腫れて痛がる
O 高齢者のスキントラブル
1 体にかゆいぶつぶつができた−まず疥癬を疑う
2 褥瘡ができた−褥瘡はどう予防し,どう手当てするか
P 妊娠中のスキントラブル
V 色調の変化
Q 皮膚が白くなってきた
R よくみる「あざ」
1 赤いあざ
2 茶色いあざ
3 黄色いあざ
4 青いあざ
S 「傷跡」の盛り上がり−肥厚性瘢痕とケロイド
索引
はじめに
皮膚科が専門でない先生が日常診療で皮膚病を診ることはしばしばあります。しかし、患者への適切なアドバイス、治療薬の処方、皮膚科専門医へ紹介すべきかどうかなど、その取り扱いに難渋するのではないでしょうか?本書『イラストでみる皮膚病のトリセツ』は、Non-Dermatologistの先生が難なく皮膚病を治療できることを基本的コンセプトとして編集しました。従来の皮膚科教科書の内容と大きく変わる点は以下のとおりです。
1.疾患を患者の訴えに沿って分類した
皮膚病は湿疹・皮膚炎、蕁麻疹、水疱症などと分類されていますが、これは病態、病因に基づいてのものです。本書では、皮膚病を患者の訴えに沿って、自覚症状、全身の発疹、各パーツの困った状況、年齢とスキントラブル、色調の変化に分けました。これにより発疹を診てから診断さらに治療に容易にたどり着くと思います。
2.発疹をイラストにし、わかりやすい用語で表した
皮膚病診療では、発疹を視て診断する、いわゆる視診がもっとも大切です。視診の一助として発疹の写真がしばしば提示されます。しかし、写真では、診断の要となる特徴的な部分とそうでない部分の区別をつけにくいのではないでしょうか。本書では、発疹をすべてイラスト表現として、診断のポイントとなる部分を強調しました。また、発疹の表現は多彩で、皮膚科専門医でないとなかなか理解しにくい用語があります。そこで、発疹の記載を日常でも使われているわかりやすい言葉、たとえば、紅斑を赤い斑点、丘疹・結節・腫瘤をぶつぶつ、などと表現しました。
3.★の数で治療の難易度を表した
皮膚病の取り扱いの目安として、ご自身でチャレンジしていただきたいもの(★)から、皮膚科専門医に治療を任せる疾患(★★★)まで、難易度を3つに分けました。これにより、皮膚病の診療にも弾みがつくのではないかと考えました。
本書のその他の特徴ですが、「ポイント」では、治療にあたってのコツや注意点などを浮き彫りにしました。また、「専門医のTweet」では、教科書には書いていないような経験を呟きました。なにぶん初めての試みですので、筆者の意図するところが本書にうまく反映されているかどうか、自信がありません。しかし、本書を参考にしていただき、患者に寄り添う皮膚病取り扱いに少しでも近づいていただけたら幸甚です。
最後に、白濱茂穂(聖隷三方原病院皮膚科)、戸田憲一(扇町公園皮膚科クリニック)、光井俊人(関西医科大学形成外科)、田中志保(東京女子医科大学皮膚科)、瀧川幸生(たきがわ歯科医院)の各先生には、専門分野からの貴重なご意見をいただきました。また、企画の段階から無理を言い続けた私を支えてくださった南江堂の杉山孝男、杉山由希の両氏なくしては、本書はできなかったと思います。改めて、各氏に深謝いたします。
2020年7月
瀧川雅浩
日常診療で皮膚疾患に悩まされている、皮膚科を専門としていない先生方にとって待望の本が出た。タイトルは「イラストでみる皮膚病のトリセツ」で、名前からして取っつきやすそうである。著者は瀧川雅浩先生。ここで言うまでもなく、皮膚科の臨床経験が非常に豊富な先生である。早速、本書を開いてみよう。紅斑、紫斑、白斑…が出てきた。成書を読み始めると、大体この辺りで嫌になる。用語が複雑なのと、解説が細かすぎて頭に入らないからである。ところがこの本はどうであろう、見開き2ページにあっさりと必要事項だけが書いてある。わかりやすいイラストが併記してあり、頭に入りやすい。さらにめくると、外用薬(軟膏とクリーム)から本文が始まっている。軟膏とクリームというのは皮膚科を専門としていない先生が悩みやすいところであるが、軟膏とクリームの使い分けを簡単な理屈とともに非常に実践的に解説してあり、わかりやすい。皮膚科では抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、外用ステロイド薬をよく使う。これらも多くの種類が市販されているが、どういう場合にどれを使えばよいのかがわかりやすく解説されている。
次は本書のメインパートである疾患と治療の解説である。成書では一般的な、疾患別の記載になっていない。症状別に記載されていて、皮膚疾患に慣れない方にはむしろわかりやすい。かゆい、痛い、臭うなどと非常に直感的に章が分けられている。また、顔、口、頭、手足、爪、外陰部といった特定の場所に生じやすい疾患が部位別に書かれていて、忙しい診療中でも、素早く別室に行ってさっと調べることが可能である。また嬉しいことに、処方例が非常に具体的で、そのうえいつまでその処方を続けるのかまで書いてある。手技的なことについても、みずいぼは「素早く引きちぎる」など、みずいぼの処置を見たことがある人には当たり前のことであるが、見たことのない人にとっては迷ってしまうようなことをさらっと的確に書いてある。
以上のように、まさに、かゆいところに手が届く皮膚疾患の解説本といえる。全体的にイラストが豊富で、長い文章や複雑な図表はなく、記載はシンプルである。寝っころがりながらや、電車の中などでも読めそうなくらい、読みやすい。皮膚科を専門としていない先生方向けに書かれてはいるが、経験の浅い皮膚科医、メディカルスタッフの方にも読みやすく参考になると思う。経験のある皮膚科医が、全体的な知識のリフレッシュのために読むのもよいであろう。皮膚疾患に関わり得る、さまざまな領域の方々にぜひお薦めしたい。
臨床雑誌内科127巻3号(2021年3月号)より転載
評者●日本医科大学付属病院皮膚科 准教授 帆足俊彦