むくみや息切れにもう困らない!利尿薬の上手な使い方
編著 | : 増山理 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-25838-3 |
発行年月 | : 2016年3月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 152 |
在庫
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
正誤表
-
2017年02月21日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
利尿薬の基本的な知識と病態に応じた活用法をやさしく解説。『ケースから学ぶ心不全患者への上手な利尿薬の使い方』の章では、実際の症例をもとに「長期予後を考慮した利尿薬選択」「心不全へのアルドステロン拮抗薬の効果的な使い方」などの具体的な対抗法・考え方が学べる。明日から実践できる“利尿薬の効果的な選び方・使い方の知識”が身につく一冊。
【内容目次】
I 利尿薬の基本知識
A 利尿薬の種類と作用機序
B 利尿薬が必要な疾患とその病態,および利尿薬による副作用
C 各種利尿薬の特徴
D 他剤との相互作用
II 病態を考えた利尿薬使用の実践
A 心不全症状が軽度かない場合
B 呼吸困難感が強い場合
C 浮腫が強い場合
D 高血圧を伴う場合
E 腎機能障害を伴う場合
F 糖尿病を伴う場合
G 肝機能障害を伴う場合
H 左室収縮能の保たれた心不全(HFpEF)の場合
III ケースから学ぶ心不全患者への上手な利尿薬の使い方
A ループ利尿薬によるBNPの改善−ダイアート15mg/日を追加投与し,BNPが改善した症例
B 長期予後を考慮した利尿薬選択−ラシックス20mg/日をダイアート30mg/日に変更し,体重減少,尿回数減少を認めた症例
C ループ利尿薬の浮腫軽減効果−ラシックス40mg/日をダイアート30mg/日に変更し,浮腫消失を認めた症例
D ループ利尿薬の選択が心機能に与える影響−ラシックスをダイアートに変更し,壁運動が改善した症例
E 心不全へのアルドステロン拮抗薬の効果的な使い方−ラシックスとアルドステロン拮抗薬を併用した症例
F ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬併用の利尿増強効果−ラシックスにサイアザイド系利尿薬を追加した症例
G 腸管浮腫合併時の利尿薬選択−ルプラックが効果的であった症例
H 再発を繰り返す慢性心不全に対する効果的な利尿薬の使い方−心不全増悪時に点滴治療なしにサムスカで早期退院できた症例
I 腎機能悪化と利尿薬選択の考え方−ラシックスでは腎機能が悪化したが,サムスカでは維持できた症例
J 治療抵抗性心不全でのサムスカの使い方−入退院を繰り返す心不全患者で再入院が抑制された症例
索引
序文
利尿薬は古くからある薬剤です。利尿薬と一口に言っても、いろんな種類の利尿薬があります。利尿薬は体液貯留を軽減する効果のほかに降圧効果も有していることから、降圧薬としても使われます。心不全をはじめとしていろいろな病態に伴い生じる体液貯留に対しては、多くの場合、ループ利尿薬が第一選択薬として使われます。心不全治療において利尿薬はガイドライン上第一選択薬という位置づけではないのに、実際にはもっとも汎用されています。この事実は日本のデータのみならず、欧米のデータでも確認されています。利尿薬がこれだけ重宝されるのは、効果がすぐに出現し、また目に見えるためではないでしょうか。
心不全、浮腫などに伴う体液貯留の軽減には、通常ループ利尿薬が使われます。ループ利尿薬と一口に言っても、わが国では3種類あり、それらを使い分けることにより、より質の高い診療が可能となります。また、ループ利尿薬を長い間使っていると効果が弱まったり、副作用が出てきたりすることがあります。そういうときの対処法をいくつか知っておくことは、診療の幅を広げることにつながるのではないでしょうか。心不全を専門とする循環器内科医は、利尿薬の使い方についていろいろなノウハウを知っています。本書では心不全専門医、腎臓・肝臓専門医の方々に体液貯留を軽減する目的での利尿薬の使い方をわかり易く記述していただきました。利尿薬を使うことは多くの医師にとって簡単です。利尿薬を投与する、処方する機会はおそらく循環器を専門としない先生方のほうが圧倒的に多いように思います。本書はそういう先生方をおもな対象として、利尿薬をうまく使うノウハウを伝えたいと考え出版しました。できるだけ実臨床に密着するように、処方例を随所に入れ、また薬剤については一般名より商品名を使いました。加えて最後の章では利尿薬の上手な使い方が功を奏した一般的な10症例を呈示しました。読者の先生方の理解に役立てば幸いです。
2016年1月
増山理
急性非代償性心不全の治療に利尿薬投与はほぼ必須と思われるが、その功罪については議論が多く、時とともに変遷しているように思われる。すなわち利尿薬投与例が非投与例に比べて予後が悪いとする報告、総投与量と予後の悪化が相関するという報告があった一方で、最近では積極的かつ十分量の利尿薬を投与して肺うっ血を防ぐことが予後改善につながるという考え方も強調されるようになった。また左室駆出率の低下した慢性心不全治療に対する心臓保護薬の予後改善効果を検証する前向き多施設共同研究においては、100%に近い症例において利尿薬が投薬されているにもかかわらず、利尿薬の予後に与える影響は十分には検討されていない。心不全治療に利尿薬は必要欠くべからざる薬剤であるが、その明確な治療効果のエビデンスに乏しい状況下で、より適切な利尿薬の使用法を教示する書籍が渇望されていた。そのようなときに増山理教授編著による『むくみや息切れにもう困らない!利尿薬の上手な使い方』がタイムリーに刊行された。この著書の優れている点は、(1) まず日常臨床で多くの心不全患者を第一線に立って診療している心不全専門医によって執筆されていることである。加えて、(2) 現在、本邦で使用しうる各利尿薬の作用機序を、腎臓生理学とくに尿細管機能を踏まえて詳しく書かれていること、(3) 各利尿薬の異なった薬理学性質を踏まえ、病態に即したそれぞれの利尿薬の生かし方が明示されていること、(4) 「ケースから学ぶ心不全患者への上手な利尿薬の使い方」に頁が割かれており、実臨床で経験する手強い心不全症例に対する利尿薬の使用戦略が紙上で疑似体験できることなど、いわゆる「かゆいところに手が届く」教科書に仕上がっている。本文128頁を引用する。「心性浮腫の本態の1つがRAAS亢進によるナトリウム貯留であるが、RAAS亢進には目をつぶり、さらにRAASを亢進させるループ利尿薬が投与される。うっ血改善後にループ利尿薬を減量すると、ナトリウム再貯留によりうっ血の再燃を経験する。このリバウンドに対する予防策として利尿薬を減量せず退院させることが多い。それゆえ再入院時に同薬の投与量が増え、結果として腎機能悪化、予後悪化につながる(要約)」。ここに心不全患者に利尿薬を用いる際のジレンマが集約されている。このジレンマの解決方法のいくつかがこの教科書には明記されている。心不全のみならず、その予備軍である高血圧診療に携わる方々に一読をお勧めする。
臨床雑誌内科118巻3号(2016年9月増大号)より転載
評者●名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学教授 大手信之