がん薬物療法 現場のルール
一般臨床で役立つポケットマニュアル
総編集 | : 弦間昭彦 |
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編集 | : 久保田馨/宮敏路/勝俣範之 |
ISBN | : 978-4-524-25778-2 |
発行年月 | : 2016年9月 |
判型 | : 新書 |
ページ数 | : 304 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
正誤表
-
2018年09月12日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
一般病院でがん薬物療法を行う際に必要なエッセンスを、「疾患別薬物療法」と「薬剤事典」の2部構成でポケットサイズに凝縮。標準治療のほか、標準治療ができない場合の患者別使い分けを“現場のルール”とし、推奨レジメンや専門医の工夫を箇条書きで解説。がん診療に携わる医師・医療スタッフにおすすめの一冊。
第1章 がん薬物療法の臨床現場
1.がん薬物標準治療と臨床現場の葛藤
2.年齢・PSのがん薬物療法への影響と修飾の考え方
3.合併症のがん薬物療法への影響と修飾の考え方
4.チーム医療で気を付けること
第2章 疾患別がん薬物療法のルール
1.肺がん
1-1.小細胞肺がん
1-2.非小細胞肺がん
2.乳がん
3.食道がん
4.胃がん
5.大腸がん
6.肝臓がん
7.膵臓がん
8.胆道がん
9.膵神経内分泌腫瘍
10.前立腺がん
11.腎がん
12.膀胱がん,尿路上皮がん
13.精巣・後腹膜・縦隔胚細胞腫瘍
14.子宮がん
14-1.子宮頸がん
14-2.子宮体がん
15.卵巣がん
16.血液がん
16-1.白血病
16-2.リンパ腫
16-3.骨髄腫
16-4.骨髄異形成症候群(MDS)
17.脳腫瘍
18.頭頸部がん
19.皮膚がん
20.骨軟部腫瘍
21.内分泌がん(甲状腺がん,副腎皮質がん)
22.原発不明がん
23.HIV関連悪性腫瘍
24.小児がん
24-1.小児造血器腫瘍
24-2.小児固形腫瘍
第3章 がん薬物療法に使用する薬剤事典
1.抗がん薬の分類
2.分子標的治療薬
A HER2阻害薬
トラスツズマブ(ハーセプチン)
ラパチニブトシル酸塩水和物(タイケルブ)
ペルツズマブ(パージェタ)
トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)(カドサイラ)
B EGFR阻害薬
ゲフィチニブ(イレッサ)
エルロチニブ塩酸塩(タルセバ)
セツキシマブ(アービタックス)
パニツムマブ(ベクティビックス)
アファチニブマレイン酸塩(ジオトリフ)
オシメルチニブメシル酸塩(タグリッソ)
C ALK阻害薬
クリゾチニブ(ザーコリ)
アレクチニブ塩酸塩(アレセンサ)
セリチニブ(ジカディア)
D mTOR阻害薬
エベロリムス(アフィニトール)
テムシロリムス(トーリセル)
シロリムス(ラパリムス)
E 抗CD20抗体
リツキシマブ(リツキサン)
イブリツモマブチウキセタン配合(ゼヴァリンイットリウム,ゼヴァリンインジウム)
オファツムマブ(アーゼラ)
F 抗CD33抗体
ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)
G 抗CCR4抗体
モガムリズマブ(ポテリジオ)
H ABL阻害薬
イマチニブメシル酸塩(グリベック)
ニロチニブ塩酸塩水和物(タシグナ)
ダサチニブ水和物(スプリセル)
I プロテアソーム阻害薬
ボルテゾミブ(ベルケイド)
J 血管新生阻害薬
ベバシズマブ(BEV)(アバスチン)
ソラフェニブトシル酸塩(ネクサバール)
スニチニブリンゴ酸塩(スーテント)
サリドマイド(THAL)(サレド)
レナリドミド水和物(LEN)(レブラミド)
アキシチニブ(インライタ)
レゴラフェニブ水和物(スチバーガ)
パゾパニブ塩酸塩(ヴォトリエント)
ラムシルマブ(サイラムザ)
K 免疫チェックポイント阻害薬
ニボルマブ(オプジーボ)
イピリムマブ(ヤーボイ)
L その他の分子標的治療薬
トレチノイン(ATRA)(ベサノイド)
タミバロテン(アムノレイク)
ボリノスタット(ゾリンザ)
ルキソリチニブリン酸塩(ジャカビ)
3.アルキル化薬
シクロホスファミド水和物(CPA,CPM)(エンドキサン)
イホスファミド(IFM)(イホマイド)
ブスルファン(BUS)(マブリン,ブスルフェクス)
メルファラン(L-PAM)(アルケラン)
ベンダムスチン塩酸塩(トレアキシン)
ニムスチン塩酸塩(ACNU)(ニドラン)
ラニムスチン(MCNU)(サイメリン)
カルムスチン(BCNU)(ギリアデル)
ダカルバジン(DTIC)(ダカルバジン)
プロカルバジン塩酸塩(PCZ)(塩酸プロカルバジン)
テモゾロミド(TMZ)(テモダール)
4.代謝拮抗薬
メトトレキサート(MTX)(メソトレキセート)
ペメトレキセドナトリウム水和物(PEM)(アリムタ)
フルオロウラシル(5-FU)(5-FU )
ドキシフルリジン(5'-DFUR)(フルツロン)
カペシタビン(ゼローダ)
テガフール(FT,TGF)(フトラフール)
テガフール・ウラシル配合(UFT)(ユーエフティ,ユーエフティE)
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合(S-1)(ティーエスワン)
シタラビン(Ara-C)(キロサイド,キロサイドN)
シタラビンオクホスファート水和物(SPAC)(スタラシド)
エノシタビン(BH-AC)(サンラビン)
ゲムシタビン塩酸塩(GEM)(ジェムザール)
メルカプトプリン水和物(6-MP)(ロイケリン)
フルダラビンリン酸エステル(フルダラ)
ネララビン(アラノンジー)
ペントスタチン(DCF)(コホリン)
クラドリビン(ロイスタチン)
クロファラビン(エボルトラ)
レボホリナートカルシウム(l-LV)(アイソボリン)
ホリナートカルシウム(LV)(ロイコボリン,ユーゼル)
ヒドロキシカルバミド(HU)(ハイドレア)
L-アスパラギナーゼ(L-ASP)(ロイナーゼ)
アザシチジン(ビダーザ)
5.抗生物質(アントラサイクリン系など)
ドキソルビシン塩酸塩(DXR,ADM,ADR)(アドリアシン,ドキシル)
ダウノルビシン塩酸塩(DNR,DM)(ダウノマイシン)
ピラルビシン(THP)(テラルビシン,ピノルビン)
エピルビシン塩酸塩(EPI)(ファルモルビシン,ファルモルビシンRTU )
イダルビシン塩酸塩(IDR)(イダマイシン)
アクラルビシン塩酸塩(ACR,ACM)(アクラシノン)
アムルビシン塩酸塩(AMR)(カルセド)
ミトキサントロン塩酸塩(MIT)(ノバントロン)
アクチノマイシンD(ACT-D,ACD)(コスメゲン)
ブレオマイシン(BLM)(ブレオ)
ペプロマイシン硫酸塩(PEP)(ペプレオ)
6.微小管阻害薬
ビンクリスチン硫酸塩(VCR)(オンコビン)
ビンブラスチン硫酸塩(VLB)(エクザール)
ビノレルビン酒石酸塩(VNR,NVB)(ナベルビン)
パクリタキセル(PTX,PAC /nab-PTX)(タキソール,アブラキサン)
ドセタキセル水和物(DTX,DOC,TXT)(タキソテール,ワンタキソテール)
エリブリンメシル酸塩(ERI)(ハラヴェン)
カバジタキセルアセトン付加物(ジェブタナ)
ブレンツキシマブベドチン(アドセトリス)
7.白金製剤
シスプラチン(CDDP,DDP)(ランダ,ブリプラチン,アイエーコール)
カルボプラチン(CBDCA)(パラプラチン)
オキサリプラチン(L-OHP,OX)(エルプラット)
ネダプラチン(アクプラ)
ミリプラチン水和物(ミリプラ)
8.トポイソメラーゼ阻害薬
イリノテカン塩酸塩水和物(CPT-11)(トポテシン,カンプト)
ノギテカン塩酸塩(NGT)(ハイカムチン)
エトポシド(VP-16,ETP)(ラステット,ベプシド)
ソブゾキサン(ペラゾリン)
9.DNA機能障害薬
トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合(ロンサーフ)
10.ホルモン
アナストロゾール(アリミデックス)
エキセメスタン(EXE)(アロマシン)
レトロゾール(フェマーラ)
タモキシフェンクエン酸塩(TAM)(ノルバデックス,バイエル)
トレミフェンクエン酸塩(フェアストン)
フルベストラント(フェソロデックス)
フルタミド(オダイン)
ビカルタミド(カソデックス)
クロルマジノン酢酸エステル(プロスタール)
エンザルタミド(イクスタンジ)
メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)(ヒスロンH )
エストラムスチンリン酸エステルナトリウム水和物(EMP)(エストラサイト)
ゴセレリン酢酸塩(ゾラデックス,ゾラデックスLA )
リュープロレリン酢酸塩(リュープリン,リュープリンSR,リュープリンPRO)
デガレリクス酢酸塩(ゴナックス)
アビラテロン酢酸エステル(ザイティガ)
11.サイトカイン
インターフェロンガンマ-1a(イムノマックス-γ)
テセロイキン(イムネース)
セルモロイキン(セロイク)
第4章 支持療法,緩和療法で使用する薬の使い方
1.支持療法薬剤
2.緩和療法における麻薬性鎮痛薬の使い方
付録
1.臨床試験のキホン
2.便利ツール一覧
索引
序文
1.薬物療法技術の進歩を非がん専門病院でも実践する
がんの薬物療法は、分子標的治療薬の開発、対象症例選択技術の目覚ましい発展、支持療法の進歩などにより、治療成績が向上し、外来治療の導入も急速に進んできました。そのため、がん薬物療法を受ける患者数が増加し、がん薬物療法に精通した医療従事者の役割がますます高まっています。
とくに、治療を受ける患者の苦しみの軽減や安全性の向上が得られている状況で、このがん薬物療法のノウハウを熟知し上手に治療を行うために、治療法別に、特徴、治療を選択する基準、副作用の対処、投与のコツなどを整理し、臨床上で日常的に直面する治療の機会に際し、迅速に正確な情報を伝えるマニュアルの要望は高まっています。
しかし、個々の専門領域の薬物療法について解説した書籍はあるものの、がん薬物療法全般に焦点を当てた書籍は少なく、また、それら書籍の執筆者の多くは、がん専門病院所属と恵まれたチーム環境で薬物療法を行っており、わが国の実地臨床の現場からの視点で幅広く捉えたものとはいえません。
2.標準治療の行えない患者が増えている高齢化社会の現場での葛藤と治療修飾の必要性
また、高齢化が進む中で、われわれが治療する患者は、標準治療をそのまま行えない方々が多くを占めるようになりました。その場合、治療の修飾が避けられないものとなります。エビデンスの重要性と現場の葛藤をどう消化するかは大きな問題です。
そこで本書では、
(1)合併症など、標準治療をそのまま行えない症例での考え方
(2)チームががん専門家ばかりではない状況での実際
(3)一般病院で考えられているコツ
などを念頭に置き、がん専門病院ではなく、種々の疾患を扱っている「日本医科大学」で行っている臨床現場のノウハウを中心に、一般病院でがん薬物療法を行う際に必要な知識を整理してコンパクトにまとめました。日本医科大学付属病院は、がん診療拠点病院実績で東京都第3位のがん化学療法実施数の経験を有しています。がん薬物療法に関わる多くの医療スタッフに役立つ、現場で使えるマニュアルを目指した企画です。
例えば第2章では、「標準的ルール」には標準治療が行える場合の薬物療法を、「現場のルール」には患者別の使い分けを、「ポイント、注意事項」には専門医が行う工夫などを大胆に執筆いただきました。その結果、がん診療現場で参考にしていただける内容になったと確信しております。
最後に、医師、薬剤師、看護師など、幅広い医療スタッフの皆様に本書をご活用いただいて、皆様の「薬剤の効果をしっかりと引き出す治療」のお役に立てることを願います。
2016年9月
日本医科大学学長
弦間昭彦
日本医科大学と関連病院のスタッフによって執筆されたポケット版の癌治療マニュアルである。容易に白衣のポケットに入れることができるコンパクトなサイズに仕上がっている。総編集を担当された弦間昭彦学長による序文によれば、「薬物療法技術の進歩を非がん専門病院でも実践する」ことや、「標準治療の行えない患者が増えている高齢化社会の現場での葛藤」をどう消化し、実際に同治療をモディファイするのかに力点がおかれ、現場で役に立つマニュアルたることがめざされている。
1章で標準治療とその患者に合わせた修飾の基本的な考え方について解説された後、2章では五大癌はもとより、泌尿器、婦人科、骨・軟部腫瘍、血液腫瘍、皮膚癌、小児癌まで24種、ほぼすべての悪性腫瘍の薬物治療について要領よくまとめてある。それぞれの疾患のページでは「薬物療法はこう使い分ける!」として治療原則の解説、「標準的なルール」では標準治療の解説、「現場のルール」では高齢者、パフォーマンスステータス(PS)不良患者など患者別の使い分け、「推奨レジメン」では具体的な投与量やスケジュールの解説、「ポイント、注意事項」では専門医の工夫などが記載されている。3章は癌治療の薬剤事典、4章は支持療法、緩和療法の薬の使い方が解説されている。さらに付録として臨床試験のキホン、PSの表、クレアチニンクリアランス計算式、有害事象共通用語規準(CTCAE ver.4.0.日本版)などの便利ツールまで加えてある。臨床現場で本書を片手に処方を行うことを念頭に著された書物であろうが、がん薬物療法専門医などをめざして臨床腫瘍学の横断的な学習を行っている方の知識の整理にも有用であるに違いない。若い医師からベテラン医師まで、さらに癌薬物療法にかかわる薬剤師、看護師の皆さんにも広くすすめたい一冊である。
最近の免疫チェックポイント阻害薬の開発はまさに日進月歩という状況であり、nivolumabはメラノーマ、非小細胞肺癌に続いて2016年8月末には腎細胞癌への効能効果が追加承認された。10月の欧州臨床腫瘍学会では、programmed cell death-1ligand-1(PD-L1)高発現の非小細胞肺癌では従来の標準治療であるプラチナ2剤に対してpembrolizumabが無増悪生存期間、全生存期間をともに上回るという衝撃的なデータが報告された。幸いなことに現在は次々と標準治療が塗り替えられているが、このような最新情報がweb上での追補などで提供されるとさらに素晴らしいと感じた。
胸部外科70巻2号(2017年2月号)より転載
評者●近畿大学呼吸器外科教授 光冨徹哉
本書『がん薬物療法 現場のルール』は、臨床現場でただちに役立つがん薬物療法に必須のノウハウが、わが国有数の総合病院であり、かつ、東京都第3位のがん化学療法実施数の実績をもつ日本医科大学付属病院だからこそともいえる視点でまとめられている。本書は、一般病院においてがん薬物療法に関わる医療スタッフに役立つマニュアルの作成を目指しており、がん薬物療法を行う際に必要な知識が整理されコンパクトにまとめ上げられている。
第1章は「がん薬物療法の臨床現場」として、がん専門施設で開発される薬物療法技術の進歩をいかに非がん専門病院でも実践するかについて示している。標準治療の行えない患者が増えている高齢化社会の現場での葛藤と修飾治療の必要性を、現在のがん治療の問題点にあげつつ解決策を概説している。
第2章は「疾患別がん薬物療法のルール」として、5大がんから希少がんまで網羅的に治療方針が解説されている。標準治療が行える場合での「標準的ルール」、患者別の使い分けについての「現場のルール」、専門医が行う工夫などを「ポイント、注意事項」ごとに示している。臨床現場では、治療方針の選択、とくに合併症により標準治療が行えない場合の治療方針の決定に大きく寄与すると考えられる。また、専門以外のがん腫の標準治療の考え方について理解しやすく解説されており、重複がんの治療方針の決定にも役立つものである。
第3章は「がん薬物療法に使用する薬剤事典」として、がん薬物療法に使用されている薬剤の詳細が作用機序ごとにまとめられている。とくに分子標的治療薬の分野は日進月歩で開発が進められており、肺がん領域においても多くの分子標的治療薬が保険収載され、臨床現場で使用されている。それぞれの分子標的治療薬の注意すべき有害事象、薬物相互作用をすべて覚えておくことは困難であるなかで、重要な情報が簡潔にまとめられている本書はベッドサイドや外来診療時に短時間に注意事項を検索できるため重宝すると考えられる。
第4章は「支持療法、緩和療法で使用する薬の使い方」として、がん薬物療法の有害事象における対処法、強オピオイドの使用法などが概説されている。患者から治療医に求められることは、治療効果を最大限に引き出すことはもちろんであるが、治療に伴う有害事象をできるだけ緩和することも重要である。緩和ケア専門医が不在の一般病院でも、適切な緩和ケアを行う一助になると考えられる。
本書は標準治療、標準治療が行えない患者への臨床現場での対応、がん薬物療法の有害事象に対する支持療法、症状緩和の方法など、がん薬物療法を行ううえでのエッセンスがコンパクトなポケット版としてまとめられており、ベッドサイドや外来診療時に必携の書といえる。
臨床雑誌内科119巻5号(2017年5月号)より転載
評者●奈良県立医科大学内科学第二講座(呼吸器・アレルギー・血液内科)教授 木村弘