グロスマン・ベイム心臓カテーテル検査・造影・治療法原書8版
監訳 | : 絹川弘一郎 |
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ISBN | : 978-4-524-25777-5 |
発行年月 | : 2017年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 1,336 |
在庫
定価33,000円(本体30,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
心臓カテーテル検査、心血管造影、ならびに特殊カテーテル法について理論から実践までをわかりやすい図表や写真を用いて明確かつ簡潔に解説した定本の原書8版。今改訂では、心臓カテーテルに併用する薬物療法、橈骨動脈穿刺法、冠動脈奇形、急性心筋梗塞に対するインターベンション、心臓の細胞治療などを含めた12の章が新設され、図表はフルカラーとなった。心血管インターベンション専門医だけでなく、循環器医や研修医にも頼りになる一冊。
第1部 一般原則
第1章 心臓カテーテル検査の歴史と現在の標準的手法
1 インターベンション心臓病学
2 心臓カテーテル検査の適応
3 心臓カテーテル検査の検査計画
4 心臓カテーテル検査施設
5 標準的トレーニング
6 手技の遂行
第2章 シネアンギオグラフィ,放射線安全性,造影剤
1 基礎X線物理学
2 患者照射量の臨床的測定
3 画像構成
4 患者被曝と画質の最適化
5 シネ蛍光透視装置
6 臨床的プログラムとプログラミング
7 画像検知,加工,記録
8 イメージインテンシファイア
9 フラットパネルX線検知器
10 画像処理と画像表示
11 デジタルイメージングと医療連携(DICOM),および医療用画像管理システム(PACS)
12 血管造影室
13 画像機器の品質保証
14 放射線の生物学的影響
15 血管内造影剤
16 今後の方向性
第3章 心臓カテーテル法と他のモダリティの融合
1 従来の画像診断法の限界
2 心臓カテーテル検査に役立つ画像診断法の進歩
3 新しいモダリティ
4 解剖学的構造と機能の比較検討
5 画像やモダリティの統合
6 モダリティの選択
7 2Dから3Dへ
8 症例
9 新しい方向性
第4章 合併症
1 概略
2 死亡
3 心筋梗塞
4 脳血管合併症
5 局所的血管合併症
6 不整脈や伝導障害
7 心臓ないしは大血管の穿孔
8 感染症および発熱反応
9 アレルギーおよびアナフィラキシー反応
10 造影剤腎症,急性腎障害
11 他の合併症
12 結語
第5章 心臓カテーテルに併用する薬物療法
1 抗血小板薬
2 抗凝固薬
第2部 基本手技
第6章 経皮的カテーテル挿入法,経心房中隔穿刺法,心尖部穿刺法
1 大腿動静脈からのカテーテル法
2 左心カテーテルでの他の穿刺法
第7章 橈骨動脈穿刺法
1 導入
2 解剖学的考察
3 技術的側面
4 カテーテルの選択
5 橈骨動脈からの冠動脈インターベンション
6 橈骨動脈の止血:橈骨動脈閉塞の予防
7 橈骨動脈アクセスと放射線被曝
8 右心カテーテルの上腕静脈アクセス
9 橈骨動脈アクセスと結果
10 経済的側面:PCIでの同日退院
11 結語
第8章 血管切開法:上腕,大腿,腋窩,大動脈,経心尖部
1 適応
2 検査前の評価
3 切開,血管剥離,カテーテル挿入
4 カテーテルの選択
5 右心カテーテル法
6 左心カテーテル法
7 特殊な技術
8 血管の修復と術後処置
9 トラブルの解決
10 大腿,腋窩,大動脈,経心尖部アクセス
第9章 小児,成人先天性心疾患の心臓カテーテル検査
1 先天性心疾患患者のカテーテル検査における一般的原則
2 特殊な状況
3 結語
第3部 血行動態の原則
第10章 血圧測定
1 入力信号としての圧波とは
2 圧測定装置
3 どのような周波数応答が望ましいか
4 周波数応答特性の評価
5 圧波の電気信号への変換と電気的ひずみ計
6 カテーテル室における実用型圧トランスデューサ系
7 圧波形の生理学的特性
8 正常圧波形の概略
9 誤差とアーチファクトの原因
10 微小血圧計
11 結語
第11章 血流量測定:心拍出量および血管抵抗
1 摂取予備能および心拍出量
2 心拍出量測定法
3 血管抵抗の臨床的測定
4 先天性の中枢短絡症例における肺血管障害
5 僧帽弁狭窄症患者における肺血管障害
6 血管拡張薬の評価
第12章 短絡検出と定量化
1 左-右短絡の検出
2 右-左短絡の検出
第13章 狭窄弁口面積の計算
1 Gorlinの公式
2 僧帽弁口面積
3 大動脈弁口面積
4 三尖弁および肺動脈弁口面積
5 Gorlinの公式に代わる簡易式
6 低心拍出量の患者における大動脈弁狭窄の評価
7 弁抵抗
8 謝辞
第14章 血行動態測定におけるピットフォール
1 基本概念
2 弁圧較差
3 カテーテル位置の影響
4 その他の懸念
5 結語
第4部 心血管造影法
第15章 冠動脈造影
1 現在の適応
2 一般事項
3 大腿動脈アプローチ
4 上腕動脈または橈骨動脈アプローチ
5 冠動脈造影の副作用
6 注入手技
7 解剖,造影角度,狭窄の評価法
8 バイプレーンおよび回転冠動脈造影
9 非動脈硬化性冠動脈病変
10 読影時の注意事項
第16章 冠動脈奇形
1 定義
第17章 心室造影
1 心室造影用カテーテル
2 造影剤の注入部位
3 造影剤の注入速度と注入量
4 撮影の方向と方法論
5 右室造影検査
6 心室造影の解析
7 負荷心室造影
8 合併症と危険性
9 左室造影に代わる検査法
第18章 肺血管造影
1 解剖
2 手技に関する考察
3 肺塞栓症
4 肺血管造影の他の適応
第19章 大動脈および末梢動脈造影
1 末梢動脈の画像診断法
2 末梢動脈の断層撮影法
3 X線撮影法
4 血管アクセス
5 X線撮影装置
6 カテーテルとガイドワイヤ
7 造影剤
8 胸部大動脈
9 腹部大動脈
10 鎖骨下動脈と椎骨動脈
11 頸動脈
12 腎動脈
13 骨盤と下肢
第5部 心機能の評価
第20章 心臓カテーテル検査中の負荷試験:運動,ペーシングおよびドブタミン負荷
1 動的(ダイナミック)運動負荷
2 等尺性(アイソメトリック)運動負荷
3 ペーシング頻拍
4 ドブタミン負荷試験
第21章 心室容積,駆出率,重量,壁応力,局所壁運動の計測
1 容積
2 駆出率と逆流率
3 左室容積と駆出率を計算するその他の方法
4 左室心筋重量
5 正常値
6 壁応力
7 圧-容積曲線
8 左室の局所壁運動
第22章 心室,心筋の収縮能および拡張能の評価
1 収縮能評価
2 拡張能
第23章 タンポナーデ,収縮性および拘束性障害
1 呼吸に伴う生理的な血行動態の変化および心膜の役割
2 心タンポナーデの病態
3 収縮性の病態
4 拘束性病態
5 結語
第6部 特殊なカテーテル手技
第24章 心筋および冠血流と代謝の評価
1 心筋血流の制御:心筋酸素供給と需要との関係
2 心筋代謝の測定
3 カテーテル室での冠血流と心筋血流の測定
4 センサ付きガイドワイヤを用いた冠動脈内圧と流速の測定
5 冠血流予備能(CFR)の測定
6 同時測定の圧-流速関係
7 冠血流測定の臨床応用
8 カテーテル室での側副血行路の定量的評価
第25章 血管内造影手技
1 血管内超音波(IVUS)
2 光干渉断層法(OCT)
3 血管内視鏡
4 スペクトロスコピーおよびその他の光学的画像
5 謝辞
第26章 心内膜心筋生検
1 歴史的変遷
2 現在使用されている生検鉗子
3 血管穿刺部位
4 生検の手順
5 合併症
6 術後管理
7 採取した組織の処理
8 心筋症に対する生検
9 今後の展望
第27章 経皮的循環補助:大動脈内バルーンカウンターパルゼーション,Impella,TandemHeart,体内循環
1 大動脈内バルーンカウンターパルゼーション
2 経大動脈弁左室-大動脈ポンプ(Impella)
3 体外式左房-動脈ポンプ(TandemHeart)
4 経皮的体外心肺補助
第7部 治療的カテーテル法の手技
第28章 経皮的バルーン血管形成術と冠動脈インターベンション
1 歴史
2 道具
3 手技
4 術後管理
5 PTCAのメカニズム
6 PTCAの急性期の成績
7 合併症
8 血管形成による傷害の治癒反応と再狭窄
9 現在の適応
10 冠血行再建においてPCIを選択する適切性の基準
11 質や制限の検討
第29章 アテレクトミー,血栓除去,末梢保護デバイス
1 アテレクトミー
2 レーザー焼灼術
3 機械的な血栓摘除術
4 塞栓保護デバイス
第30章 急性心筋梗塞に対するインターベンション
1 歴史的背景
2 治療体制
3 再灌流療法の基本的概念
4 手続き上の側面
5 結語
第31章 冠動脈ステント
1 ベアメタルステント概観
2 冠動脈ステントの適応
3 薬剤溶出ステント概観
4 第1世代薬剤溶出ステント
5 第2世代薬剤溶出ステント
6 薬剤溶出ステントの安全性に関する懸念および薬剤溶出ステントとベアメタルステントの統合比較
7 生体吸収性薬剤溶出ステント
8 薬剤溶出ステントの要約
9 ステント植込みのテクニック
10 冠動脈ステント植込みの合併症
11 特定の患者と病変におけるステントの使用
12 結語:現在の概観と将来の方向
第32章 Structural heart diseaseに対するインターベンション治療の総括
1 Structural heart diseaseに対するインターベンション治療の分類
2 教育や資格認定の基準
3 インフォームドコンセントと未承認適応への承認済みデバイスの使用
4 Structural heart disease インターベンションの役割:包括的プログラムとハートチーム教育や資格認定の基準
第33章 経皮的弁膜疾患治療法
1 経皮的僧帽弁形成術
2 肺動脈弁形成術
3 バルーン大動脈弁形成術
4 経皮的弁置換術と修復術
5 肺動脈弁置換術
6 経皮的大動脈弁置換術
7 経皮的僧帽弁修復術
第34章 末梢血管インターベンション
1 一般的事項
2 頸動脈
3 椎骨動脈,脳底動脈
4 大動脈弓部の血管
5 腎動脈
6 腸間膜動脈
7 下肢
8 大動脈腸骨動脈領域の閉塞性疾患
9 総大腿動脈
10 大腿深動脈
11 浅大腿動脈と膝窩動脈
12 膝窩動脈下動脈
13 下肢バイパスグラフト
14 静脈疾患と血管内治療
15 教育と資格
第35章 小児,成人先天性心疾患のインターベンション
1 先天性心疾患カテーテル室
2 先天性心疾患閉塞性病変
3 左室流出路狭窄
4 大動脈縮窄
5 短絡と関係した先天性病変
6 心筋梗塞後の心室中隔破裂
7 動脈管開存(PDA)
8 他の心外短絡の治療
9 Fontan循環を持つ成人患者における心臓カテーテル検査
10 結語
第36章 心臓の細胞治療:その方法と投与システム
1 幹細胞
2 細胞投与のアプローチとシステム
3 移植に使われる細胞の種類
4 カテーテルの誘導のためのイメージング
5 疾患へのアプローチ
6 経心内膜的幹細胞注射のトレーニング
7 将来の方向性
第37章 大動脈血管内治療
1 治療の適応
2 ステントグラフトのデザイン
3 術前の評価
4 血管内治療の戦略とステントグラフト留置
5 ステントグラフトの展開
6 最終的な画像評価
7 術後の経過観察
8 経過観察中の合併症
9 結語
第38章 心外膜関連の手技:心嚢穿刺,バルーン心膜開窓術,心外膜アプローチ
1 心嚢穿刺
2 経皮的バルーン心膜開窓術
3 心膜腔内インターベンションと心外膜アプローチ
第39章 不整脈のインターベンション治療
1 イントロダクション
2 不整脈の分類と機序
3 概論および周術期に注意すべきこと
4 上室頻拍
5 マクロリエントリー心房頻拍(MRAT)
6 心房細動
7 心室頻拍
8 特発性心室頻拍
9 瘢痕依存性心室頻拍
10 多形性心室頻拍と心室細動
11 結語
第8部 臨床プロフィール
第40章 弁膜症のプロフィール
1 僧帽弁狭窄症
2 僧帽弁閉鎖不全症(逆流)
3 大動脈弁狭窄症
4 大動脈弁閉鎖不全症
5 三尖弁閉鎖不全症
6 三尖弁狭窄症
7 肺動脈弁狭窄と閉鎖不全
8 人工弁の評価
第41章 冠動脈疾患のプロフィール
1 安定冠動脈疾患
2 急性冠症候群,ST 上昇型心筋梗塞
3 非ST上昇型心筋梗塞
4 保護されていない左冠動脈主幹部病変
5 慢性閉塞性病変
6 大伏在静脈グラフト病変
第42章 肺高血圧症および肺塞栓症のプロフィール
1 肺高血圧症(PH)
2 PHの病態
3 肺動脈性肺高血圧症(PAH)の分子生物学的機構
4 病因
5 診断
6 PAHにおける右心カテーテル検査
7 治療
8 肺塞栓症(PE)
第43章 心筋症とうっ血性心不全のプロフィール
1 駆出率の低下した心不全(HFrEF)
2 心臓移植
3 補助人工心臓(VAD)
4 巨細胞性心筋炎
5 駆出率の保たれた心不全(HFpEE)と拘束型心筋症
第44章 心膜疾患のプロフィール
1 心膜炎,心膜液貯留,心タンポナーデ
2 診断的,治療的心膜穿刺
3 心膜生検
4 収縮性心膜炎
5 浸出性収縮性心膜炎
6 拘束型心筋症
7 収縮状態を伴うその他の病態
8 心膜の奇形
第45章 先天性心疾患のプロフィール
1 成人肺動脈狭窄症
2 大動脈縮窄症
3 心房中隔欠損症(ASD)
4 心筋梗塞後の心室中隔破裂性短絡の軽減
5 動脈管開存症(PDA)
6 冠動静脈瘻
7 複雑先天性心疾患における右室流出路不全
第46章 末梢動脈疾患のプロフィール
1 脳卒中に対するインターベンション治療
2 頭蓋内動脈病変に対する待機的血管形成術
3 大動脈弓と頸動脈
4 胸部大動脈に対するインターベンション治療
5 腹腔動脈や腎動脈に対するインターベンション治療
6 下肢の末梢血管疾患
7 穿刺部合併症の経皮的治療
索引
監訳の序
1974年の初版以来、40年の長きにわたり再版を続けてきたGrossman心臓カテーテル教本の翻訳最新版をお届けする。40年間で今回が第8版であり、概ね5年に1回程度の原著の改訂となっている。翻訳版は第2版から始まり、こちらは原著刊行から2〜3年遅れて完成することが常であり、今回も概ね同様である。
40年という時間のなかで原著の編集主幹はDr.GrossmanからDr.Baimへ、さらに今回第8版ではDr.Baimの急逝を受けてDr.Moscucciへと引き継がれている。その経緯とまた第8版での改訂内容はvi .vii ページのDr.Moscucciの序文に詳しいので割愛させていただくが、インターベンション部門、なかでもstructural heart diseaseに対するカテーテル治療の最近の急速な進歩を網羅すべく、ページ数が激増していることにすぐ気づかれるであろう。しかし、今回から始まったフルカラーの図表で大部な内容を明解に説明しているので、読者をして飽きさせないことをお約束する。
さて、第2版から始まった翻訳版であるが、その経緯は日本語訳の中心人物であり続けた芹澤剛先生による第4版への序文に尽くされている。芹澤先生はDr.Grossmanの元に留学されておられたなか、第2版の翻訳をご自身で進めながら、帰国後翻訳版の出版にこぎつけられたということである。その後、芹澤研究室は東京大学第二内科の一大研究室となり、第3版、第4版と多士済々の研究室員を動員して翻訳は続けられた。私が第二内科の研修医となった1988年は、第3版の翻訳版が出版された年であるが、右も左もわからぬまま早速購入して研修医机の本棚に「アクセサリー」として置いていたのを思い出す。当時東大病院内科研修医の間で分厚くて縦置きで自立する(そして大抵理解できない)医学書を並べることが流行していて、今となっては隔世の感がある。ともかくもGrossman教本を持っているということが当時医局長をしておられた芹澤先生のお耳に入ったか、ご縁あって研究室に誘われた。そのとき私の循環器内科人生が始まったわけで、Grossman教本の及ぼした最初の影響は恥ずかしながら書物の内容でないものの、購入したことが人生を左右したことは間違いない。私が初めて分担翻訳を仰せつかったのは第5版からであるが、第6版は東大病院が臓器別再編の荒波で揉まれている最中、残念ながら翻訳をスキップせざるを得なかった。第7版は2006年の出版で、このときすでに私が研究室を主宰する立場になっていたため、橋利之先生や河本修身先生をはじめとした諸先輩方の応援を受けて、松井浩先生とともに編集幹事をさせていただき、2009年には第7版の翻訳版を再び世に出すことができた。
今回南江堂から第8版の翻訳のお話をいただいたとき、Dr.Baim同様、芹澤先生もすでに鬼籍に入られており、私が監訳をさせていただくことになった。このような長い歴史を有した本書の監訳という大役を担うことは私の身にあまる光栄であり、またその任を果たせているか不安であるが、そこは読者の審判を待つ。いささかでも不備があるならば、すべて監訳者がその責を負うものである。気の遠くなる分量の翻訳を激務の合間をぬって仕上げていただいた分担者の先生方、なかでも私の右腕を務めてくれた今村輝彦博士に心より感謝申し上げる。第2版以来常にこの翻訳作業をサポートし続けてくれている南江堂とそのスタッフにも感謝の意を表したい。そして芹澤先生のご冥福をお祈りしつつ、この拙い序文の締めとする。
2017年3月
富山大学医学部第二内科教授
絹川弘一郎