見てわかる産婦人科疾患
編集 | : 吉川史隆/梶山広明/岩瀬明/小谷友美 |
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編集協力 | : 加藤省一 |
ISBN | : 978-4-524-25774-4 |
発行年月 | : 2017年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 204 |
在庫
定価9,350円(本体8,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
産科婦人科の専門医を目指す医師が、代表的な疾患の肉眼・画像所見に親しむための画像集。超音波、MRIを中心に、CT、PETや肉眼所見も組み合わせて疾患像と病態との関連を示した。各疾患・病態の画像における目のつけどころと、画像から病態を理解するための「読み方」をコンパクトに解説している。
I.総論:各診断手法における原理と見え方
1.超音波
a 超音波検査の基本原理
b 超音波検査の種類と特徴
c 子宮・卵巣の超音波検査
2.CT
a CTの基本原理
b 画像再構成とCT値
c CT画像の表示:ウインドウ値とウインドウ幅
d 部分容積効果
e CT検査の実際と注意点
f 産婦人科領域におけるCT検査の適応
3.MRI
a MRI検査の実際と注意点
1)磁性体の注意点
2)ガドリニウム造影剤の注意点
3)妊娠中の注意点
b 産婦人科領域におけるMRI検査の適応
c 産婦人科領域におけるMRI撮像法
d MRIの正常像
1)正常子宮のMRI
2)正常卵巣のMRI
4.FDG-PET
a PETの基本原理
b PET検査の実際と注意点
c 産婦人科領域におけるPET検査の適応
d 正常子宮・卵巣のFDG-PET
II.各論:疾患編−A.産科領域
1.異所性妊娠
a 卵管妊娠
b 間質部妊娠
c 頸管妊娠
d 帝王切開瘢痕部妊娠
2.胎児の異常所見
a 胸部の異常
1)先天性横隔膜ヘルニア(CDH)
2)胎児胸水
b 腹部の異常
1)食道閉鎖
2)十二指腸閉鎖
3)空腸閉鎖
4)臍帯ヘルニア(Beckwith-Wiedemann症候群)
c 胎児腫瘍
1)側頭部奇形腫
2)先天性間葉芽腎腫(CMN)
3)大腿部海綿状リンパ管腫
4)胎児縦隔腫瘍(乳幼児筋線維腫症:Infantile myofibromatosis)
d その他の奇形
1)Cornelia de Lange症候群(CdLS)
2)Body stalk anomaly
3)脊髄髄膜瘤
4)18トリソミー
5)口唇裂
6)骨系統疾患:タナトフォリック骨異形成症
7)前腕絞扼輪
8)全前脳胞症
9)総排泄腔外反症
10)結合双胎
3.胎盤・臍帯の異常所見
a 常位胎盤早期剥離
b 前置胎盤
1)全前置胎盤
2)辺縁前置胎盤,臍帯付着部低位
c 癒着胎盤
1)穿通胎盤1
2)穿通胎盤2
d 胎盤ポリープ・遺残胎盤
e 臍帯卵膜付着
f その他特殊な症例
1)間葉性異形成胎盤(PMD)
2)巨大絨毛膜下血腫(Breus’mole)
II.各論:疾患編−B.婦人科領域
1.多嚢胞性卵巣症候群,卵巣過剰刺激症候群
a 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
b 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
2.卵管性不妊症
a 癒着
b 閉塞・卵管水腫
3.子宮奇形・性分化異常
a 双角子宮
b 中隔子宮
c 単角子宮
d Wunderlich症候群
e 完全型アンドロゲン不応症
4.子宮内膜症
a チョコレート嚢胞
b チョコレート嚢胞(類内膜癌合併)
c 深部内膜症
1)Douglas窩〜後腟円蓋〜直腸腟中隔
2)腸内膜症
3)膀胱内膜症
d 腹壁内膜症
5.骨盤内膿瘍
6.腫瘍と類腫瘍
a 子宮筋腫
1)子宮粘膜下筋腫
2)子宮筋腫
b 子宮腺筋症
c 子宮頸癌
1)初期子宮頸癌
2)進行期子宮頸癌
d 子宮内膜癌
1)類内膜腺癌
2)子宮癌肉腫
e 子宮内膜ポリープ
f 子宮内膜異型増殖症
g 絨毛性疾患
1)胞状奇胎・侵入胞状奇胎
2)絨毛癌1
3)絨毛癌2
4)胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT)
h 良性卵巣腫瘍
1)成熟奇形腫
2)線維腫
3)粘液性嚢胞腺腫
i 境界悪性卵巣腫瘍(漿液性境界悪性腫瘍)
j 悪性卵巣腫瘍
1)卵巣癌(粘液性癌)
2)卵巣癌(明細胞癌)
3)卵巣癌(類内膜癌)
4)卵巣癌(漿液性癌)
索引
序文
医師は患者の訴えに耳を傾けながら、自らの経験と医療知識に基づいて、診断に必要な診察と検査を実施する。そして、得られた所見や検査データを解析し、診断を確定もしくは推測して最善の治療を実施する。それは、古来より我々医療者にとっては常識であったが、日進月歩で進化していく医療技術や知見をupdateしていくことは、容易でなくなりつつある。他方、現在、症状から必要とされる検査について、また疾患ごとの最適な治療法についての情報は、ほぼ診療ガイドラインに網羅されているといっても過言ではない。数年先には診療ガイドラインもAI(Artificial Intelligence:人工知能)に取り込まれるであろう。AIの技術革新は目覚ましく、AIが症状や所見、検査データを解析して、次に必要とされる検査を指示し、最終的には診断と最適な治療法を提示する。そんな時代がもうそこまできている。AIは画像認識や解析の分野にも進出してきており、すでに指紋認証や顔認証装置は実用化されている。しかしながら人間の持つ画像や映像認識能力に、AIが達するにはまだ相当の年月がかかるであろう。したがって、しばらくは、画像検査を解析し診断へ結びつける過程は、医療者の能力に委ねられることになるだろう。
その画像検査から診断に導く能力を磨くには、主治医としてさまざまな疾患の患者を実際に診断・治療することに尽きるといえるが、担当できる症例数には限りがある。そこで、本書では、具体的な症例を提示しながら、文字情報は最小限とし、画像的特徴を網羅するべく、視覚情報に紙面を割くこととした。疾患についての知見の詳細は他の教科書を参照していただきたい。本書では、産婦人科医が日常的に実施する超音波検査を中心に、CT、MRI、PET検査など各種画像検査の所見から、それらの肉眼所見、病理検査所見に至るまで網羅しており、各疾患の多角的な視覚情報を統合的に把握できるように努めたつもりである。特に肉眼所見、病理所見と画像検査所見を比較できることを特徴としており、これは疾患の理解をより深め、主治医としての経験に匹敵する効果があると期待している。数ある疾患から症例を吟味し、代表的な画像を掲載させていただいた。
昨今では、CT、MRI、PET検査、病理組織検査などは、放射線科や病理部の専門医が作成した結果報告書を確認するだけにはなっていないだろうか。専門性が高まる時代の流れとはいえ、これらの画像データを総合的に理解して、診断や治療へと最終的に結び付けていくのは、患者を目の前にしている主治医であることを忘れてはならないだろう。若手医師だけでなくシニアの先生方にも、放射線画像やプレパラートなどを自ら評価する際に、本書を役立てていただければ編集者として望外の幸せである。
2017年4月
編集者を代表して
吉川史隆