書籍

聞きたかった!心房細動の抗凝固療法

ズバリ知りたいNOAC使用のホンネ

: 池田隆徳
ISBN : 978-4-524-25747-8
発行年月 : 2015年4月
判型 : A5
ページ数 : 188

在庫僅少

定価3,300円(本体3,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

心房細動の抗凝固療法、とくにNOACの選び方・使い方をQ&A形式でやさしく理解できる一冊。心房細動診療のエキスパートである著者が、「脳塞栓症の予防効果が最も高いNOACはどれですか?」「NOAC投与中に胃痛が出現した場合の対処は?」…など、診療上の疑問をひろく取り上げ、難しい知識や理論は避けて明快に解説!見開きで知りたい情報から読めるため、実臨床ですぐに役立つ。高齢化社会を迎え、心房細動患者が増加している今だからこそ、すべての実地医家におすすめしたい。

抗凝固薬一覧(剤形一覧)
I.知っておきたい!心房細動という不整脈
 Q1 そもそも心房細動とはどのような病気ですか?
 Q2 心房細動はどのような人に起こるのですか?
 Q3 心房細動はどれくらいの人がもっていますか?
 Q4 心房細動があるとなぜ脳塞栓症をきたすのですか?
 Q5 発作性と持続性の心房細動で脳塞栓症の発現に差はありますか?
 Q6 脳卒中の原因として脳塞栓症が増えているというのは本当ですか?
 Q7 心房細動による脳塞栓症は重症化しやすいというのは本当ですか?
II.知っておきたい!心房細動の治療方針
 Q1 心房細動の治療法にはどのようなものがありますか?
 Q2 心房細動の管理で最も大切なことは何ですか?
 Q3 脳塞栓症のリスクを探るスコアにはどのようなものがありますか?
 Q4 抗凝固療法を行うべき心房細動患者は?(欧州のガイドラインの方針)
 Q5 抗凝固療法を行うべき心房細動患者は?(日本のガイドラインの方針)
 Q6 現在の抗凝固療法の実施状況はどうなっていますか?
 Q7 危険スコアが1点の患者でも塞栓予防をすべきですか?
III.抗血栓薬の違いについて理解しよう!
 Q1 抗凝固薬と抗血小板薬は同じような薬物ですか?
 Q2 ワルファリンとアスピリンの効果の差はどのくらいですか?
 Q3 抗血小板薬を2剤併用すると抗凝固薬に勝てますか?
 Q4 抗血小板薬は本当に脳塞栓症を予防することができないのですか?
 Q5 抗凝固薬と抗血小板薬を同時に処方するとどうなりますか?
 Q6 経口抗凝固薬にはどのような種類がありますか?
 Q7 抗凝固薬を出せば心房細動治療はOKですか?
IV.ワルファリンについて復習してみよう!
 Q1 ワルファリン(ワーファリンR)はどのような薬ですか?
 Q2 ワルファリンでなければならないのはどのような患者ですか?
 Q3 ワルファリン投与中のPT−INRの目標値はどのくらいですか?
 Q4 ワルファリン服用時のTTRとはどのような指標ですか?
 Q5 ワルファリンに影響する食べ物には何がありますか?
 Q6 ワルファリンの注意点(副作用や併用注意など)は?
 Q7 ワルファリンをわざわざNOACに変える必要はありますか?
 Q8 ワルファリンからNOACへの切り替えはどうすべきですか?
V.NOACについて詳しく調べてみよう!
 Q1 NOACとはどのような薬ですか?
 Q2 ダビガトラン(プラザキサR)はどのような薬ですか?
 Q3 ダビガトランを使用したRE−LY試験の結果は?
 Q4 リバーロキサバン(イグザレルトR)はどのような薬ですか?
 Q5 リバーロキサバンを使用したROCKET AF試験の結果は?
 Q6 日本人のみを対象にしたJ−ROCKET AF試験の結果は?
 Q7 アピキサバン(エリキュースR)はどのような薬ですか?
 Q8 アピキサバンを使用したARISTOTLE試験の結果は?
 Q9 エドキサバン(リクシアナR)はどのような薬ですか?
 Q10 エドキサバンを使用したENGAGE AF−TIMI 48試験の結果は?
VI.NOACの特徴と考え方について知ろう!
 Q1 NOACはどのような薬物動態を示す薬ですか?
 Q2 NOACは本当に検査が不要なのですか?
 Q3 NOACでは血液凝固系のモニタリング指標はありますか?
 Q4 NOACはどのような薬剤とも併用できますか?
 Q5 NOACは価格が高いと聞いていますがどうですか?
 Q6 NOACを安全に使うためのポイントは何ですか?
 Q7 NOACは本当に頭蓋内出血の合併を抑えてくれますか?
 Q8 NOACによる頭蓋内出血の合併は軽いというのは本当ですか?
 Q9 NOACの副作用は何を知っておけばよいですか?
 Q10 NOACはすでにある心房内血栓を溶かす作用はあるのですか?
 Q11 NOACは飲み忘れると/飲み過ぎるとどうなりますか?
 Q12 NOACとワルファリンではどちらを使用すべきですか?
 Q13 NOACを元のワルファリンに戻すときはどうしたらよいですか?
 Q14 NOACを処方してはいけないのはどのような患者ですか?
VII.聞きたかった!NOACの選び方・使い分け
 Q1 脳塞栓症の予防効果が最も高いNOACはどれですか?
 Q2 大出血の合併が最も低いNOACはどれですか?
 Q3 1日1回と2回のNOACではどちらがよいですか?
 Q4 高齢者/若年者に適したNOACはどれですか?
 Q5 腎機能が低下している患者に使用できるNOACはありますか?
 Q6 脳出血の既往のある患者に適したNOACはありますか?
 Q7 胃腸疾患の既往のある患者に適したNOACはありますか?
 Q8 剤形などからみて一番飲みやすいNOACはどれですか?
 Q9 重症の高血圧を有する患者に適したNOACはありますか?
 Q10 弁膜症と人工弁の患者にNOACを処方してはいけないのですか?
 Q11 1日1回NOACを服用する場合は朝と夜のどちらがよいですか?
 Q12 抗不整脈薬と併用してはいけないNOACはありますか?
 Q13 ガイドラインを遵守したNOACの選び方は?
 Q14 結局のところどのNOACを使用したらよいのですか?
VIII.聞きたかった!こんなときの対処の仕方
 Q1 症状が強い患者では急性期にはどう対処したらよいですか?
 Q2 心房細動をすぐに止めると危険だというのは本当ですか?
 Q3 外来で心房細動を止める裏技とそのときのリスク回避法は?
 Q4 NOAC投与中に出血した場合の中和薬はありますか?
 Q5 NOAC投与中の脳梗塞に対して血栓溶解薬は投与できますか?
 Q6 アテローム血栓性脳梗塞の既往のある患者での抗凝固療法は?
 Q7 NOAC投与中に胃痛が出現した場合の対処は?
 Q8 冠動脈に薬剤溶出性ステントが留置された患者での抗凝固療法は?
 Q9 抜歯や眼科処置が必要な患者での対処は?
 Q10 消化管内視鏡生検や手術を控えている患者での対処は?
 Q11 抗凝固薬と抗血小板薬を中止するときはいつから?
 Q12 認知障害がある患者での抗凝固療法は?
 Q13 妊婦に適した抗凝固療法は?
 Q14 カテーテルアブレーション後の抗凝固療法はどうすべきですか?
 Q15 電気ショック時の抗凝固療法はどうすべきですか?
 Q16 この領域の医療訴訟(裁判)はどうなっていますか?
 Q17 医療裁判に負けないためにはどうしたらよいですか?
文献
索引

はじめに

 マスメディアなどで心房細動という疾患がよく取り上げられるようになりました。有名人が心房細動を原因とする脳卒中で倒れ、社会的に大きなダメージをきたしたためと思います。心房細動は脳卒中の中でも脳塞栓症をきたす疾患であり、場合によっては死に至ることもよく知られています。日本での患者数は150万人にも及ぶとされており、内科医のみならず他の領域の医師においても、心房細動患者をみる機会は多いと思います。ありふれた疾患ですから、門外漢だからといって専門医に紹介する時代ではなくなりました。ご自身での管理が求められるようになりました。医師に限らず医療に携わる方も、心房細動という病気は何が大事で、どのようにすれば不幸な末路をたどらなくてすむかをある程度知っておかなければなりません。
 心房細動による脳塞栓症を予防するには、抗凝固療法をしっかり行わなくてはなりません。2011年頃までは、経口薬としてはワルファリンのみが推奨されていました。しかし、塞栓症予防においてワルファリンはすばらしい薬ですが、使用においていくつかの問題点がありました。それを解消しようと開発されたのが、NOACと称される新しいタイプの経口抗凝固薬です。ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンが1年ごとに発売され、2014年9月で4種類のすべてのNOACが出そろいました。煩雑だと思われていた心房細動患者の管理が、NOACを使用することでやさしくなりました。その一方で、NOACと従来のワルファリンの違いは何か、また4種類あるNOACを選択する場合、どのように使い分けたらよいかを、専門医だけでなく一般臨床医も考えるようになりました。多くの医師が、心房細動の管理を積極的に行うようになった証だと思われます。
 このような現状に鑑み、不整脈診療を専門とする著者が、現在話題のNOACに焦点をあて、抗凝固薬の選び方・使い分けについての診療上の疑問をQ &A形式でわかりやすく解説し、実地診療にすぐに役立つ書籍の発行を企画いたしました。難しい知識や理論は抜きで、著者の考え方でわかりやすく解説しました。サブタイトルで「ズバリ知りたいNOAC使用のホンネ」と書いたように、NOACの強みだけでなく弱みについても記載しています。記載においてエビデンスが必要な場合は、図表で示しました。これまで心房細動の管理に背を向けてきた医師にも受け入れられると自負しております。是非、診療の傍らに本書を置いて、疑問が生じた場合には本書を一読していただき、少しでも心房細動患者の脳塞栓症予防に貢献していただければ幸いです。

2015年3月
池田隆徳

 高齢化社会が進むなか心房細動の抗凝固療法が注目されている。多くの循環器関連学会でのシンポジウム、企業主催の講演会などが開催されてきたが、実際に臨床現場で想定される疑問に対し、十分な情報を提供できたかというと、必ずしも満足できるものではないと思われる。その理由は、質疑応答に際しても、多くの場合一般論を解説するに過ぎず、専門医の本音を引き出すことは容易ではないからである。そのような疑問に答えるため、Q &A方式により明解な指針を示した著作が出版された。本書の特徴は、簡潔にまとめられた「解説」が理解を深めるのに役立つ情報を提供していることである。この様な時流に沿った書籍は他にもあるが、本書には抗凝固療法に関わる医療訴訟の話題まで解説が及び、池田隆徳教授のセンスのよさが伺えるバランスのよい仕上がりとなっている。心房細動の抗凝固療法といえば、つい4年前まではワルファリンを使用することを意味していた。これまでの約50年は、ワルファリンが唯一の経口投与可能な抗凝固薬であったこともあり、禁忌を避け必要の有無を判断すればよかった時代でもある。しかし、わが国の医療事情は、安全性重視を優先する国民性?を反映してか、ワルファリンは必ずしも適正に使用されてはいない実態が浮き彫りにされてきた。そこへ新規経口抗凝固薬(non-vitamin-K antagonist oral anticoagulant:NOAC)が登場した。世の中では期待が先行し、警鐘が鳴らされる場面も見られた。抗凝固療法でもっとも重要なことは、血栓形成を防止し、出血事象を増加させないことである。この原則が正しいとするならば、これまでに示されてきた臨床試験の成績から、ワルファリンと同等(ここでのワルファリン療法とはよく管理されたとの意味が付加される)ないしそれ以上の塞栓症抑制効果を示し、出血事象が少ないとされるNOACを優先すべきと判断出来る。しかし、市場に登場して間もないNOACへの信頼性は、まだ十分とは言い難いこともあり、なじみのあるワルファリンもこれまでと同様に有用な選択肢として残されている。NOACの登場を受け、ワルファリン療法について、さらなる検証がなされ、注意すべき点も明かにされてきた。“薬は使い方しだいである”とすればワルファリンがもっとも当てはまる薬剤かもしれない。一方、NOACは使用開始時の適否の判断、そして用量設定を間違わなければワルファリンより期待できる薬剤となりうるものと考えられる。本書は、これまでに集積されてきた知見を平易かつコンパクトにまとめ上げ、不整脈薬物治療に造詣の深い著者による解説が、幅広い読者層に複雑な抗凝固療法への理解を高める一助になるものと期待される。

臨床雑誌内科116巻3号(2015年9月号)より転載
評者●日本医科大学多摩永山病院長 新博次

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