百戦錬磨のインターベンション医が教える国際学会発表・英語論文作成 成功の秘訣
編集 | : 村松俊哉 |
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ISBN | : 978-4-524-25743-0 |
発行年月 | : 2015年7月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 236 |
在庫
定価3,190円(本体2,900円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
国際経験豊富な執筆陣が、研修医・若手医師・医療スタッフ向けに、学会発表・論文作成のノウハウを惜しみなく伝授。自身の経験に基づいた「成功のポイント」「失敗談」もふくめた解説が具体的でわかりやすい。留学経験者による海外施設の学会発表や論文作成に関する実際の取り組みの紹介を通してグローバルな視点も深まる。国際的にも評価される論文作成の秘訣を“百戦錬磨の医師”から学ぶ。
第1章 国際学会で発表する
A.国際学会発表の意義
B.研究作成方法
a.海外で採択されやすい研究テーマを考える
b.過去の報告を調べる
c.目的,エンドポイント設定
d.研究デザイン構築
e.サンプルサイズ決定
f.データ収集
g.統計解析
h.考察(discussion)
C.国際学会発表の準備
a.英語力を高めるには?
b.海外学会を知る
c.応募から採用通知まで
d.疫学研究と倫理指針
D.国際学会発表に臨んで
a.受付,スライド確認まで
b.COI(conflict of interest,利害の抵触)とは?
c.上手なスライド作成法
d.効果的なプレゼン法
e.質疑応答のコツ
f.発表後,論文にどうつなげるか?
第2章 英語論文を書く
A.英語論文を書く意義
B.英語論文に適したテーマ選択
C.論文作成の過程
a.どの雑誌を選ぶか?Instruction for author
b.インパクトファクター(IF)とは?
c.Copyrightとは?
d.カバーレター作成法
e.インターベンションで投稿しやすい英文誌は?
D.“私流”英語論文作成法
a.どうやって英語論文を作る?
b.英語論文化の過程
E.英語論文作成の実際
a.キーワード(medical subject heading):タイトルと
キーワードは論文の中心的役割を担う
b.共著(authorship)
c.抄録(abstract)
d.序文(introduction)
e.方法(methods)
f.結果(results)
g.図表(table,figure)
h.考察(discussion),結語(conclusion)
i.引用文献(reference)
j.謝辞(acknowledgement)
F.投稿後の流れ
a.査読への対応
b.論文掲載後の対応
第3章 海外での研究,論文作成の実情
A.Cardiovascular Research Foundation(CRF)
B.Thoraxcenter
C.CVPath Institute,Inc.
D.Academic Medical Center(AMC)
E.Segeberger Kliniken
F.Institut Cardiovasculaire Paris Sud(ICPS)
G.San Raffaele Scientific Institute/EMO GVM Centro Cuore Columbus
H.Asan Medical Center(AMC)
I.National University Heart Centre,Singapore(NUHCS)
J.Stanford University
緒言
初めて学会発表をしたのは30年ほど前の御茶ノ水の小さな講堂で開催された内科地方会であった。あまりの緊張に、帰りがけに足を踏み外して檀上から転がり落ち、座長の先生に助けられた。1993年にAHAに初めて参加し、本に出てくるような偉い先生が実在することを知り、いつかこの舞台で自分も発表できたらなどと夢想した。初めて商業医学誌に症例報告が掲載されたときには、小さな自分の論文が光り輝いて見えた。思えば学会発表、論文作成のたびにいろいろな刺激を受けてきた。
時々、自分は臨床だけやればいいという若い先生を見かける。忙しい臨床に加えて、面倒で消耗する学術活動など確かに割に合わない気もする。それでも、やっぱり学問をするのは医師の仕事であろうと思う。いろいろな疑問を感じ、アイデアを出しそれを解き明かすプランを考え、実臨床からのデータを収集し一つの結論を導き出す作業は医師という自然科学者にとって重要な仕事である。
学会で発表することで、臨床結果を客観的に評価できるし、ひいては自分を客観視することにもつながる。また、他人からの質問を通して批評や苦言(たまには賛辞も)を得ることで、自らの発信力を鍛えることもできる。さらには、大手を振ってあちこち旅行もできる(これのほうが楽しいかも?)。学術論文を作成することは学会発表よりもさらにハードルの高い作業になる。当初はまったく筆が進まず気が滅入ることもあろう。査読者からの厳しい問いかけに、しんどい気持ちにもなるだろう。しかし、批評に耐え真摯に問いかけに答えていく姿勢は、科学者としても人間としても、極めて論理的で、高邁な人格を形成する。学術活動を通じて外なる世界との知的交流を行うことで、自身の知的、文化的レベルを向上させ、視野を広げることに繋がっていく。そのような姿勢を受諾し消化できるのは、まさに若い年代にこそ必要なのである。一つの発表をし、論文が完成したときには高い頂きを克服した者にしか得られない、言いようのない達成感と満足感を得ることができる。本書では、学術活動に励み経験に富んだインターベンション領域の熟練医師に、臨床研究のポイントとコツを紹介してもらっている。研究活動をどう進めていいかわからない諸君にもわかりやすく説明してある。後半には、世界の名だたる研究施設にて活動した留学生医師の経験談も掲載した。
本書を取って眺めている若手諸君、だまされたと思って明日から学術活動を開始してみてほしい。君の将来が180度変わって見えてくることと思う。さあ始めよう!
2015年6月
村松俊哉
若手研究者のための国際学会発表や英語論文作成のハウツー本は多く、とくに医学領域のものが多い。それだけ医学領域では海外へ出かけての学会発表、さらには英文論文を作成する機会が多いということであろう。本著は正にそのような臨床医学研究に関する国際学会発表、英語論文作成の最新のハウツー本である。ではなぜインターベンション医が登場したのであろうか。
医学領域でも海外への進出が多いのが、循環器のカテーテル治療を中心としたインターベンション領域である。わが国では、国民皆保険の恩恵もあり、全国で先進的なインターベンション治療が普及しており、臨床研究を行いやすい環境がある。また、日本人の手先の器用さのためか、そのインターベンション技術のレベルはきわめて高く、多くのインターベンション医が海外でのライブデモンストレーションに出演したり、講演に招かれたりしている。それゆえ、そのような百戦錬磨のインターベンション医は、英語での発表や論文作成の経験が豊富であり、その経験から学んだ秘訣は広く臨床医学研究に共通するものであり、「百戦錬磨のインターベンション医が教える成功の秘訣」としてまとめられた訳である。
その内容は、国際学会での発表、英語論文の作成のノウハウに加えて、欧米の有名な研究施設での生々しい研究生活経験も記載されており、どれも刺激的である。最初の「国際学会で発表する」の章では、研究テーマの選択に始まり、研究デザインの構築、データ収集、統計解析から発表の準備、発表に臨んでの心構え、プレゼン法などが具体的、事例的にまとめられている。続く「英語論文を書く」の章では、雑誌の選択から論文作成法の実際についての詳細な手順、まとめ方、さらには査読への対応まで細かくまとめられている。最後の章「海外での研究、論文作成の実情」では、欧米の代表的な10の研究施設での臨床研究生活が経験者や現在の在籍者から熱く語られている。循環器医のみならず、広く若手医師の留学意欲がかき立てられるものであり、指導医の立場にいる医師にとっても教訓的である。全体が「です・ます」調で書かれているのも本著の特徴で、百戦錬磨の臨床医が体得した秘訣をみずから語るニュアンスによく合っている。
循環器のインターベンション領域での日本人医師の世界での活躍は目覚ましく、その成果の一端が本著であろう。しかし、新しい治療法の開発に目を転ずると、機器開発においても、臨床治験においても、わが国の貢献度はあまり高くはない。本著により研究意欲を触発された若手医師が、新しい治療法開発に先導的役割を担う日が近いことを期待したい。
臨床雑誌内科117巻4号(2016年4月増大号)より転載
評者●虎の門病院顧問 山口徹