小児・思春期1型糖尿病の診療ガイド
編・著 | : 日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会 |
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ISBN | : 978-4-524-25618-1 |
発行年月 | : 2017年6月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 102 |
在庫
定価1,980円(本体1,800円 + 税)
正誤表
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2017年12月07日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
主に小児糖尿病診療を専門としない実地医家を対象に、小児・思春期における1型糖尿病診療のノウハウを平易にまとめた、日本糖尿病学会・日本小児内分泌学会による書籍。両学会編著による『小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン』の内容をもとに、要点を簡潔な箇条書きとしており、実臨床においてすぐに活用できる。
1 定義と分類
2 診断基準
3 病因と病態
4 疫学
5 コントロール目標
6 治療のプランニング
7 インスリン療法(持続皮下インスリン注入療法(CSII),SAPを含む)
8 血糖自己測定(SMBG)と連続皮下グルコース濃度測定(CGM)
9 食事療法(カーボカウントを含む)
10 糖尿病ケトアシドーシスとその治療
11 低血糖とその治療
12 シックデイ・外科手術への対応
A シックデイ
B 手術時
13 保育施設・幼稚園,学校生活での指導
14 心理指導
15 災害時の対策
16 糖尿病キャンプ
17 就職,結婚への対応
A 就職
B 結婚,妊娠,出産
18 小児医療から成人医療へ
文献
索引
序文
小児・思春期糖尿病の診療は近年めまぐるしい進歩を遂げ、診療内容も多様化したために、その診療において国際的なエビデンスに基づいた診療の必要性が高まってきました。これを受けて、国際小児思春期糖尿病学会(International Society for Pediatric and Adolescent Diabetes:ISPAD)から2006〜2008年に“Clinical Consensus Guideline”が発表され、本邦においては日本糖尿病学会編集の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010」(南江堂)との整合性を保ちつつ、日本における小児・思春期糖尿病の実情に合わせたガイドラインである「小児・思春期糖尿病糖尿病コンセンサス・ガイドライン」(日本糖尿病学会、日本小児内分泌学会編・著、南江堂)が2015年に刊行されました。このガイドラインでは、小児・思春期1型糖尿病のみならず2型糖尿病に関しても、エビデンスレベルと診療上のグレード(推奨の強さ)を明確にしたステートメントを設け、ライフステージに応じた支援を基盤として、各章それぞれ糖尿病診療に関する有用な情報が詳細に述べられています。
今回このガイドラインの中の小児・思春期1型糖尿病の内容をコンパクトにまとめ、また新たに発表された“ISPAD Clinical Consensus Guideline 2014”の内容も取り入れて、実際の臨床現場で診療のエッセンスをわかりやすく理解できるように「小児・思春期1型糖尿病の診療ガイド」(日本糖尿病学会、日本小児内分泌学会編・著、南江堂)を刊行する運びになりました。本書は、小児・思春期1型糖尿病の診療に関する多くの情報の中で重要なエッセンスを取り上げ、非専門医の先生や成人医療に携わっている先生、そして研修医の先生にも十分理解できるように配慮して書かれています。内容としては、小児・思春期1型糖尿病の診断に関する基本事項や各種のインスリンアナログ製剤の使い方、持続皮下インスリン注入療法(CSII)と連続皮下グルコース濃度測定(CGM)、患児とその家族の支援、ケアシステム化に至るまで、最新の医療情報を各項目のエキスパートの先生に実臨床に即して執筆して頂きました。
最後に、本書が小児・思春期1型糖尿病の診療に携わっている先生全ての実臨床のガイドブックとして活用されることを望んでいます。
日本糖尿病学会 小児糖尿病委員会
日本小児内分泌学会 糖代謝委員会
日本糖尿病学会と日本小児内分泌学会の合同編集による『小児・思春期1型糖尿病の診療ガイド』が発刊された。小児期に発症する1型糖尿病患児の診療は、主に糖尿病あるいは内分泌を専門とする小児科医による場合が多いが、本書は小児糖尿病診療を専門としない実地医家に向け、小児糖尿病診療のエキスパートの先生方の経験と臨床エビデンスが凝集した内容である。本書は小児糖尿病診療の礎である『小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン』に準じたもので、これから糖尿病や内分泌を専門領域に選ぼうとする若い小児科医にも役立つものであるとともに、成人期に移行した若年期の糖尿病診療に当たる内科医にとっても多くの示唆を与えてくれる内容である。
とくに本書において、患児の成長および就学、就職、結婚、妊娠といったライフステージに即した治療プランニング、そして患児が通う教育機関との関わりといった小児科ならではの細やかな配慮が重点的に記載されている。また、食事療法においても、成長期にある患児にとって栄養摂取は健常児と同じであり、そのために基礎および応用カーボカウントの活用が重要であることが明記されている。さらに、その具体的な指導方法についても触れられていて、実用に即したものである。
また、医療に関する情報が容易に入手でき、かつ過剰な情報が氾濫する時代にあっても、1型糖尿病患児にとってサマーキャンプがいかに重要であるかを本書は教えてくれる。同じ病気をもつ子供たちが数日であっても集団生活を通じ、友達をつくり、病気を受容し、その克服のための精神的かつ社会的強さを得る場である。これは成人発症1型糖尿病患者にも当てはまり、患者同士がコミュニケーションできる場は、患者の孤立感を取り除くとともに、生活のさまざまなシチュエーションでの創意工夫に基づくインスリン注射のノウハウを共有でき、専門医の治療以上に実効性が高いと考えられる。また、サマーキャンプにおいて内科専門医にも参加する意義があることが明記されている。小児医療から成人医療への移行(トランジッション)が成功する第一歩はここから始まっている。成長の過程において自分なりの都合のよい治療法が身についてしまうと、内科ではなかなか修正が困難であることをよく経験する、患児の未来を考えた内科医と小児科医の相互理解と協働は最も重要な、速やかに取り組むべき喫緊の課題である。
本書を通じ小児1型糖尿病診療のレベルが向上し、多くの患児に質の高い医療が届き、小児と成人のトランジッションがスムーズに進む社会へ近づく一助になることを願う次第である。
臨床雑誌内科121巻4号(2018年4月増大号)より転載
評者●徳島大学先端酵素学研究所糖尿病・臨床研究開発センター長・教授 松久宗英