むかしの頭で診ていませんか?血液診療をスッキリまとめました
編集 | : 神田善伸 |
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ISBN | : 978-4-524-25615-0 |
発行年月 | : 2017年10月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 210 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
好評を博している「むかしの頭で診ていませんか?」シリーズの血液診療版。(1)従来の考え方から大きく進歩した点、(2)実地医家に関心の高いテーマ、にポイントを絞り簡便にまとめることで、押さえておきたい情報が効率よく得られる。専門性が高いと思われる血液領域も、非専門医・初学者向けに、「必要な情報」を「簡単な言葉」でスッキリまとめて提示する。
1 貧血の鑑別のアプローチは?
2 高齢者と若年女性の貧血の精査はどこまで行う?
3 自己免疫性溶血性貧血って?診断・治療はどうする?
4 健診で赤血球増多を指摘された
5 鉄剤で嘔気,継続できない
6 ビタミンB12欠乏症,内服投与でもよい?
7 大酒家の葉酸欠乏症.葉酸を投与すれば大丈夫?
8 好中球減少症へのアプローチは?
9 急性白血病?
10 好酸球が多い
11 感冒後に血小板減少
12 ヘパリン投与中の血小板減少
13 特発性血小板減少性紫斑病と血栓性血小板減少性紫斑病.名前は似ているけど
14 血小板数は正常なのに出血傾向あり
15 血液疾患の既往のない患者が皮下,筋肉の出血
16 繰り返す静脈血栓症
17 播種性血管内凝固症候群の疑い.凝固データはどう読む?
18 感染症に合併した播種性血管内凝固症候群.抗凝固療法vs抗線溶療法
19 汎血球減少症の診断はどうする?
20 白血球分画の見かた
21 リンパ節腫脹で紹介
22 伝染性単核球症って,ほっといても勝手に治る病気だから大丈夫?
23 リンパ腫の既往歴のある患者には
24 腫瘍崩壊症候群の予防には
25 化学療法後の好中球減少中に発熱.すぐに抗菌薬が必要?
26 発熱性好中球減少症が遷延.β−D−グルカンとアスペルギルス抗原が陰性なら真菌症は否定できる?
27 多発性骨髄腫の診断はどうする?
28 化学療法後にHb 7.3g/dLまで低下.赤血球輸血は必要?
29 白血球(顆粒球)は輸血しても意味がないの?
30 赤血球輸血直後に低酸素血症発症,鑑別はどうする?
索引
序文
2015年7月に刊行され、大ヒット作となった『むかしの頭で診ていませんか? 循環器診療をスッキリまとめました』がシリーズ化され、本書は血液診療をスッキリとまとめる役割を担って企画されました。オリジナルの循環器診療編は帝京大学附属溝口病院の村川裕二教授によって発案されたものです。村川先生といえば、「楽しく読め」て、しかも勉強になる文章をさまざまなメディアを通して発表されています。そして、『むかしの頭で診ていませんか? 循環器診療をスッキリまとめました』も、序文に書かれているとおり、「循環器は専門でない」けれども、「循環器疾患を診る機会がある」先生方を対象として、非専門医にもわかりやすいように、難しい疾患は扱わず、冒頭に結論を置き、内容を凝縮して記述された、「楽しく読める」書籍となっていました。
この名著を果たして血液領域でうまく再現できるだろうか? というのが最初に抱いた疑問でした。「血液は専門でない」先生方が「診る機会がある」血液疾患はさほど多くはないのかもしれません。ややこしい血液疾患など診たくもない、という先生もおられるかもしれません。そこで、本書では、貧血の診断と治療、血液検査データの読み方、リンパ節腫脹の診断などのように、一般内科診療においても必ず一定の頻度で遭遇するクリニカル・クエスチョンに絞り込み、それぞれ比較的若い世代の血液専門医に、専門的な内容に偏らないように執筆していただきました。そして、書籍全体のコンセプトは循環器診療編を踏襲し、冒頭に結論を配置してメッセージを明確にする構成としています。
本書が「血液は専門でない」けれども、「たまーに血液疾患を診る機会があるかも?」という先生方に楽しく読まれること、そして、各地域での血液専門医と非専門医の連携の架け橋となることを期待しています。
2017年9月
編者
本書は好評の既刊書「むかしの頭で診ていませんか? 循環器診療をスッキリまとめました」の血液診療バージョンである。医学のみならずサイエンス各領域での進歩は激しく、新知見に驚かされる毎日である。過去にはその原因がわからなかった疾患も、次々と原因究明がなされている。
かつて筆者が医学生だったころ、消化性潰瘍の原因はわかっていなかった。学生への講義で、消化器専門の講師が以下の説明をした。
講師「消化性潰瘍は、ある日突然発症します」
「なぜ潰瘍になるのだろう?」、「原因は何だろう?」と考えながら筆者は聞いていたものの、質問する機会を逸していた。勇気ある同級生の一人が、その講師に向かって質問した。
学生「どうして突然潰瘍になるんでしょうか?」
講師「突然に発症するのが消化性潰瘍の特徴です」
学生「?」
禅問答のようなやり取りであった。当時は「強酸である胃のなかでは細菌は生えない」と教えられていた。その思い込みから解放され、数年後Marshall教授らによって潰瘍の原因がHelicobacter pyloriと同定された。また、Helicobacter pylori感染症と特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)との関連が指摘されたのも、遠い昔の話ではない。また、後天性血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)の病態も、血中ADAMTS13酵素活性の低下によるとされたのも最近のことである。
専門領域での診療のみを行っている医者にとっては「常識」であっても、その他の医者にとってはあまりなじみのないことは多々存在する。「血液は専門でない」けれども「血液疾患を診る機会があるかも」は、すべての実地医家に当てはまる。本書は鉄欠乏性貧血の診断や治療、リンパ節腫脹の鑑別や「健診で血球異常を指摘された」などのコモンプロブレムへの対処法から、腫瘍崩壊症候群の予防や発熱性好中球減少症が遷延している際の診断法といった、比較的重症症例の対処法を含めて幅広く記載がなされている。
「内容説明」の記載にあるように、(1) 従来の考え方から大きく進歩した点、(2) 実地医家にとって関心の高いテーマ、の観点から30項目にポイントが絞られている。各項目は独立しているためcover to coverで読む必要はない。自分の興味ある、または診療上の必要に迫られている、どの項目から読んでも有益な情報が得られるのは、時間の余裕の少ない臨床家にとってはとてもありがたい。血液診療というと専門性が高いと思われがちだが、非専門医・初学者向けに「必要な情報」が「簡単な言葉」で文字どおりスッキリまとめて提示されている。さらに時間の限られた読者には、各項目の最初にある「結論から先に」はたった数行であるにもかかわらず重要な情報提供があり、楽しく読める工夫が随所になされている。日々臨床に携わる実地医家には、利用価値の高い書籍である。
臨床雑誌内科122巻2号(2018年8月号)より転載
評者●埼玉医科大学病院総合診療内科教授 橋本正良