分子標的治療・テクノロジー新時代のあたらしい肺癌現場診断学
編集 | : 弦間昭彦 |
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ISBN | : 978-4-524-25583-2 |
発行年月 | : 2018年6月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 254 |
在庫
定価10,780円(本体9,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
これまでの存在診断・病期診断に留まらず、スクリーニングから確定診断、治療方針決定、治療効果測定までを解説した、現在の肺癌診療を学ぶ上で必要な新しい観点の肺癌診断学の書籍。構成は「I章 肺癌診断概論」、「II章 肺癌を見つける・見極めるための診断法」、「III章 肺癌治療に活きる診断法・ストラテジー」からなり、II・III章の最後には、診断力の問われるケースを掲載。また、知識が実臨床でどのように活かされるかわかるよう、「refer」でケースと本文をつなげる工夫も施した。明日からの肺癌の診断と治療に自信が持てるようになる一冊。
I 肺癌診断概論
1.肺癌の分類−複数の分類法を重層的に使う
2.肺癌診断の全体像・フローチャート
II 肺癌を見つける・見極めるための診断法
A.スクリーニング:小さな陰影を見逃さない
1.肺癌を疑う(発見動機)
2.胸部単純X線写真で見逃さない−判読のコツ
3.CTの活用
4.肺がん検診の位置付けと実際
B.確定診断:肺癌の存在を確認し,性格を把握する
1.病理診断−肺癌と確定する病変と方法のポイント
2.喀痰細胞診による診断の割合と役割
3.生検による肺癌の確定−適応と「私の隠し技」
a.気管支鏡検査・生検
b.経皮針生検
c.外科的肺生検
d.胸腔鏡検査・胸膜生検
e.新技術開発
4.各種検査のための試料作製−効率的な検査実施のために
a.遺伝子検査
b.網羅的遺伝子検査の進歩と保存しておくべき試料
c.リキッドバイオプシー
d.感染症検査
e.鑑別・有害事象診断のためのびまん性肺疾患検査
C.病期診断:肺癌の進行度を把握する
1.病期診断−治療方針決定のための第一歩
2.肺癌の大きさ・拡がり・転移を見極める各種検査
a.CT
b.脳MRI
c.骨シンチグラフィー
d.FDG-PETの位置付け阿部光一郎
D.ケースで鍛える!肺癌現場診断力
Case1 この陰影をどう見逃さない?
Case2 症状はあるのに画像は一見正常…?
Case3 間質性肺炎の治療中に注意していても
Case4 増大するすりガラス陰影
Case5 増大かつFDG-PET/CTで集積を認める結節性病変
Case6 インフルエンザ+肺炎かと思ったら…?
Case7 すべての病変を肺癌としてよいか?
Case8 経過観察中のリンパ節腫大
Case9 CT所見は気管支壁肥厚のみだが…?
Case10 診断の難しいHIV陽性の多発結節影は…?
III 肺癌治療に活きる診断法・ストラテジー
A.肺癌の基本的治療戦略
1.非小細胞肺癌に対する基本的治療戦略
B.治療方針を決める診断
1.初期治療方針決定のための診断
2.コンパニオン診断薬とその問題点
3.ALK融合遺伝子同定における検査モダリティの不一致
4.治療後,どの検査をいつ行うか?
5.再発・転移診断のポイント−次の一手はどうするか?
6.新遺伝子診断法−治療に活かす考え方
7.血液検査(腫瘍マーカー)の役立つ場面
8.治療に影響する既存疾患診断
9.注意すべき治療関連有害事象の診断
a.肺障害
b.免疫チェックポイント阻害薬による特異的重篤有害事象
C.ケースで鍛える!分子標的治療に活かす肺癌現場診断力
Case11 EGFR検索で希少変異が!
Case12 高齢の進行NSCLC患者,念頭に置くべきことは
Case13 TKI耐性,さてどうする?
Case14 変異検査で血漿と組織の検査結果が一致しない!?
Case15 PD-L1陽性,さてどうする?
Case16 急速に進行する腫瘍
Case17 薬剤性肺障害か再発か?
Case18 「腫瘍増大=悪化」か?
索引
序
分子標的治療とテクノロジー新時代
近年、癌診療は、分子標的治療の進展により大きく変化してきました。個別化治療の標準化により、診断は、疾病の確定診断や形態的分類診断の域を越え、遺伝子診断を中心とする分子診断まで求められる時代となっています。
また、この数年のあいだに、ビッグデータ活用、人工知能、仮想現実、拡張現実などの新しいテクノロジーが加速度的に進歩しており、診断技術は大きく変貌しようとしています。
■肺癌診断の新たな変化−進歩により精密な診断が可能に
上記の進歩の過程を通じ、肺癌診断にも新たな変化が生まれてきました。まず、分子診断は、コンパニオン診断により分子診断レベルが担保され、網羅的診断への発展、効率化などの動きが進んでいます。診断機器も加速度的に進歩し、正確かつ詳細な情報が取得されるようになり、質的診断も多様化しているなど、一昔前と比較して格段に情報量が増加しつつあります。
その結果、今まではたどり着けなかった詳細な診断・治療が可能になってきました。そこで肺癌診療に携わる医師はまず、これらの現状を把握し、対応できることが求められています。
■難解・複雑化する診断・治療への対応が求められている
この診断・治療における進歩は、臨床現場に種々の新たな問題を生じさせています。早期かつ正確な診断による治療成績の向上が再認識され、たとえば以前より発見されるようになった微小陰影や細かな異常への対応力や、質的情報が得られるようになったことによる結果に対する解釈の力も必要になってきました。さらには合併症など詳細病態の正確な診断、遺伝子診断における希少症例の対応、詳細診断法による不一致例の対応、免疫修飾による変化とそれに伴う臨床判断など、求められるようになってきた事項は枚挙にいとまがありません。
つまり、これまでの診断知識だけでなく、詳細な情報をどう解釈し、治療に活かすかという「職人芸を磨く」時代になったと考えられます。
本書では、このような状況にフォーカスを当て、いままでにない新たな、そして現場で役立つ肺癌診断学を学べる一冊としてまとめました。
特に「II章肺癌を見つける・見極めるための診断法」では、スクリーニングから進行度把握の考え方まで、「III章肺癌治療に活きる診断法・ストラテジー」では、治療方針決定への活用法を解説し、進歩の現状把握ができるようにしました。さらに執筆者の皆様には自身の隠し技も紹介していただきました。
また、II章、III章の後半には「ケースで鍛える!」を設け、前半で学んだ知識をどう実臨床に活かすか、ケーススタディでトレーニングができます。さらに本文中では知識を実際のケースにどう活用するかがわかるよう「Refer」でケースと本文をつなげる工夫もしました。「ここが落とし穴!」「解決のコツ」「鍛えよう!診断のポイント」という欄では専門家の職人芸やコツを整理しました。
最後に、今回の出版に際しまして、最新の情報や豊富な経験を織り込んでご執筆いただきました執筆者の皆様には、この場を借りて、御礼申し上げます。
その結果、肺癌診療の現場で大いに参考にしていただける内容の一冊になったと確信しております。幅広い読者の皆様にご活用いただいて、少しでも、「職人芸を磨く」お役に立てることを願います。
2018年4月
弦間昭彦