実際に手を動かしている医師・ナース・技師による必携!血管外科診療ハンドブック
編著 | : 末田泰二郎 |
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ISBN | : 978-4-524-25573-3 |
発行年月 | : 2017年5月 |
判型 | : 新書 |
ページ数 | : 202 |
在庫
定価3,850円(本体3,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
血管外科領域は、胸部大動脈瘤・腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療など、血管内治療との併用により最も進歩が著しい外科分野の一つである。定型的な血管外科手術の基本手技やコツ、手術前後の管理、さらに高周波やステントグラフトなど、血管外科の最新治療をコンパクトにまとめた。専門医を目指す若手医師だけでなく、バスキュラーナース、血管診療技師のスキルアップにも役立つ。
Chapter1 血管外科手術患者の術前ルーチンワーク
A 下肢静脈瘤患者のルーチンワーク
B 末梢動脈疾患患者のルーチンワーク
C 腹部大動脈瘤患者のルーチンワーク
D 胸部大動脈瘤患者のルーチンワーク
Chapter2 手術前後の検査(無侵襲検査)
A 頸動脈エコー
B 腹部大動脈エコー
C 下肢動脈エコー
D 下肢静脈エコー
E 上肢動静脈エコー
Chapter3 バスキュラーナースと血管外科
A バスキュラーナースとは
B Ratschow Test(下肢挙上・下垂テスト)
C 四肢の血圧測定(ABI測定)
D 弾性ストッキング指導
E フットケア
F QOLの評価
G メディカルアロマトリートメント
Chapter4 下肢静脈瘤手術とコツ
A 下肢静脈の解剖
B 術前エコーとマーキング
C 麻酔
D ストリッピング手術
E 高周波焼灼術(高周波またはレーザー)
F 瘤切除
G 硬化療法
H 術後合併症対策
Chapter5 末梢動脈疾患手術とコツ
A 術前診断(造影CT,血管エコー)
B 急性動脈閉塞治療
C ステント治療
D 人工血管バイパス治療
E 自己静脈バイパス治療
F 透析バスキュラーアクセス(内シャント)
G 術後合併症対策
Chapter6 腹部大動脈瘤手術とコツ
A 腹部大動脈瘤とは
B 診断と手術適応
C 人工血管置換術(中枢側吻合のコツ)
D 内腸骨動脈瘤合併時
E 急性期合併症と予防
F 慢性期合併症と予防
G 感染性腹部大動脈瘤手術
Chapter7 腹部ステントグラフト治療(EVAR)とコツ
A ステントグラフト(EVAR)セットアップ
B EVAR術前計測
C EVAR デバイスの種類と使い分け
D EVAR ランディングのコツ
F EVAR対側レッグ挿入のコツ
E EVAR急性期合併症と対処法
F EVAR術後エンドリークの種類
G EVAR エンドリークの対処法
H EVAR遠隔期合併症
Chapter8 胸部大動脈瘤手術とコツ
A 術前診断
B 大動脈基部置換術
C 上行大動脈置換術
D 急性大動脈解離手術
E 弓部全置換術
F 下行大動脈置換術
G 胸腹部大動脈置換術
H 胸腹部大動脈瘤手術の脊髄保護
Chapter9 胸部ステントグラフト治療(TEVAR)とコツ
A TEVARとは
B TEVAR用ステントグラフトの種類と使い分け
C TEVARの適応
D TEVARのzone分類
E TEVARのグラフトサイジング
F TEVAR手技とコツ
G 弓部瘤へのdebranching TEVARのコツ
H 胸腹部大動脈瘤へのdebranching TEVARのコツ
I TEVAR時の脊髄保護
J 急性期合併症
K エンドリーク
L TEVAR感染
Chapter10 血管外傷治療とコツ
A 患者到着時から検査まで
B 救急処置と管理
C 検査
D 病態別治療方針
使用薬剤一覧
参考文献
索引
序
血管外科は外科分野で進歩が一番著しい領域である。下肢静脈瘤では従来のストリッピング、硬化療法に加えて、レーザー治療、高周波焼灼治療といった血管内治療が普及して、日帰り手術が可能になった。末梢動脈手術では高性能の静脈弁カッターが出てin-situ vein graftingの吻合が容易になり、開存成績が改善しdistal bypassも行えるようになった。末梢動脈用血管ステントも進歩して膝窩動脈領域にも使用可能になった。腹部大動脈瘤は従来の人工血管置換術に加えてステントグラフト治療が普及して、手術症例の半数以上がステントグラフト症例となっている。胸部大動脈瘤も下行大動脈瘤は大多数がステントグラフトで治療でき、弓部大動脈瘤まで適応を広げている。弓部大動脈瘤には弓部分枝動脈をdebranchしてステントグラフトを挿入するか、chimney法や開窓法で分枝動脈を保護してステントグラフトを挿入できるようになった。B型大動脈解離も急性期にはステントグラフトで治療でき、慢性期症例も適応となっている。このように血管外科の領域では血管内治療とopen手術の併用がなければ成り立たなくなっている。
本書では、これまでの定型的な血管外科手術のコツと手術前後の管理、さらに静脈瘤の高周波治療、末梢動脈ステント治療、腹部大動脈瘤のステントグラフト治療、胸部大動脈瘤のステントグラフト治療など血管外科の最新治療の基本手技とコツ、さらに血管エコーによる無侵襲診断、バスキュラーナースの血管診療への関わりなど、血管外科領域の専門医を目指す若い先生方のお役に立てることを目的に執筆した。出版の労をお取りいただいた南江堂出版部の皆様に改めて感謝します。
2017年3月
末田泰二郎
編者は40年近く血管外科診療をアクティブに行っている。そして、本書は血管外科専門医をめざす若い外科医を読者としてイメージして、下肢静脈瘤、末梢動脈疾患、腹部大動脈瘤から大動脈解離を含む胸部大動脈瘤といった高頻度の疾患に焦点をあて、“実際の診療の場で、どのように準備し、手を動かせばよいか?”について、編者の永年の経験と幾多の洞察からそのエッセンスを凝縮し、“手術のコツ”と“周術期管理”、現代の“血管外科診療チームの担い手として必要な知識”を適切な画像と挿絵、まとめの表を用いてわかりやすく解説している。
血管疾患は近年の高齢化社会において多様に複雑化しているが、この10年間で血管外科治療は医工連携によるテクノロジーの進歩により、大いに変容・進化・拡大してきた。本書では、下肢静脈瘤血管内焼灼術や大動脈瘤ステントグラフト治療などの血管内治療と最新のopen surgeryが併記され、両者を組み合わせたハイブリッド治療についても学べるようになっている。胸部ステントグラフト治療(TEVAR)を選択した場合のequipment selectionを含めた手術計画と準備、そして具体的な手術手順とコツ、問題点についても実用的に整理されている。本邦ではそれらの大部分を血管外科医がチームリーダーとして施行し、すばらしい成績をあげているが、本書の胸部大動脈瘤の項だけを読んでも、open surgeryのコツとTEVARのコツ、それぞれの役割分担や連携によるハイブリッド手術を学ぶことによって、さらなる治療成績の向上や生活の質(QOL)の改善を得ることができるであろう。特に、編者らが開発してきたエントリーが弓部や下行大動脈にある場合の弓部全置換術+オープンステント術や、胸腹部大動脈瘤手術における対麻痺対策としてのspinal cord plegiaと運動誘発脊髄電位(MEP)モニタリング、胸部大動脈瘤の項でのone point techniqueも含めて楽しく読みすすめられる。
本書は、血管外科専攻医はいうに及ばず、血管診療技師やバスキュラーナースなどの実際に手を動かしている血管外科チーム一人一人に必携のhow to入門/専門書として有用であろう。また、血管外科診療の周術期にかかわる超音波検査室、血管撮影室、CT室、病棟のナースステーションや集中治療室においてテキストとして活用していただければ、さらに治療成績の向上が期待できる。
胸部外科70巻12号(2017年11月号)より転載
評者●徳島大学心臓血管外科教授 北川哲也