心臓弁形成手術書[Web動画付]
スペシャリストのコツ,技とキレ
著 | : 磯村正/小宮達彦/國原孝 |
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ISBN | : 978-4-524-25537-5 |
発行年月 | : 2017年9月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 162 |
在庫
定価16,500円(本体15,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
心臓弁形成術のスペシャリスト3名の多くの経験に基づいた技術・方法を、医師が描いた美しい手術シェーマとともに、糸針や運針に至るまで詳細に解説。さらには各項目における手術動画をWeb上で公開し、要点を確実に示したシェーマと動画でビジュアルに学べる一冊。これから弁形成術を目指す外科医のみならず、すでに弁形成術を経験している外科医、メディカルスタッフにも有用。
第I章 僧帽弁形成術
1 僧帽弁形成術に必要な臨床解剖
a.Carpentier分類
b.僧帽弁逆流(閉鎖不全)の重症度分類
2 僧帽弁手術のための体外循環の接続と僧帽弁への到達法と展開
僧帽弁への到達法
3 経心房中隔左房上縁到達法(transseptal-superior approach)
僧帽弁の展開
4 後尖の病変による僧帽弁逆流
a.後尖弁葉三角切除
b.後尖四角切除
5 交連部の病変による僧帽弁逆流
a.sliding plasty
b.後尖切除縫合後にマイナーリークの残っているときの対処法
c.リングのサイズの決定
6 前尖の病変による僧帽弁逆流
乳頭筋の同定の簡易法
7 Barlow病による僧帽弁逆流
8 僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症に対する弁形成術
a.弁口面積のサイジング
b.弁尖側への剥離
9 機能性僧帽弁逆流(functional MR)
a.弁輪拡大に対する弁輪形成
b.弁下部の処置
1)二次腱索離断(second chordal cut)
2)両乳頭筋縫縮術(PM plication)
10 僧帽弁感染性心内膜炎に対する弁形成術
第II章 三尖弁形成術
1 三尖弁形成術に必要な臨床解剖
2 手術の実際
a.リングへの糸掛け
b.三尖弁感染性心内膜炎による逆流に対する三尖弁形成術
第III章 大動脈弁形成術
1 大動脈弁形成術:三尖弁
a.大動脈基部の解剖
b.手術の実際
1)type Ia
2)type Ib
3)type Ic
i)subcommissural annuloplasty(交連下弁輪形成術)
ii)external suture annuloplasty(外側縫合弁輪形成術)
iii)external ring annuloplasty(外側リング弁輪形成術)
4)type Id
5)type II
6)type III
2 大動脈弁形成術:二尖弁
a.弁尖の形態と病態
b.手術の実際
1)complete fusion type
2)incomplete fusion type
3)type 2(一尖弁)
3 自己弁温存基部置換術
a.remodeling法(Yacoub法)
1)大動脈基部の剥離
2)root geometryの測定
3)グラフトのトリミング
4)グラフトと大動脈壁の縫合
5)弁輪固定
6)弁尖の評価
7)冠動脈ならびに遠位大動脈の接合
b.reimplantation法(David法)
1)適応
2)手術の実際:三尖弁の場合
i)体外循環の接続
ii)大動脈弁の評価
iii)弁尖の高さ,辺縁長の測定
iv)大動脈基部の展開
v)大動脈弁の形態の確認
vi)first rowの糸掛け
vii)人工血管のサイズ
viii)Valsalvaグラフトの縫着
ix)second rowの糸掛け
x)弁尖接合状態の確認
xi)冠動脈ボタンの縫着
xii)大動脈弁閉鎖不全の確認
xiii)末梢吻合
xiv)術後:弁尖接合の確認
3)手術の実際:二尖弁の場合
i)rapheの処理
ii)大動脈弁の評価と形成
iii)first rowの糸掛け
iv)rapheの糸掛け
v)弁尖の評価
vi)冠動脈ボタンの縫着
4)急性解離に対するreimplantation法(David法)
付録
索引
【Web動画タイトル一覧】
第I章 僧帽弁形成術
I-1 僧帽弁形成の体外循環接続(retroplegia カテ挿入と右側左房切開,閉鎖),大動脈切開
I-2 僧帽弁輪への糸掛け
I-3 後尖病変の形成(砂時計型切除縫合)
I-4 前尖病変の形成(人工腱索移植)
I-5 Barlow病に対する弁形成術
I-6 僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症に対する弁形成術
I-7 機能性僧帽弁逆流に対する形成術:弁輪,リングへの糸掛け,二次腱索離断,乳頭筋縫合(前壁切開,後壁切開)
I-8 感染性心内膜炎に対する弁形成術(交連部healed IE)
第II章 三尖弁形成術
II-1 三尖弁形成術(septal fixation technique)
II-2 再手術による三尖弁形成術
第III章 大動脈弁形成術
[1]大動脈弁形成術:三尖弁
III-1-1 両冠動脈のテーピング
III-1-2 大動脈-肺動脈線維性連続組織の剥離
III-1-3 external suture annuloplastyの運針と結紮
III-1-4 弁尖中央の穿孔に対する自己心膜を用いたパッチ形成
III-1-5 fenestrationに対する自己心膜を用いたパッチ形成
III-1-6 弁尖逸脱に対するcentral plication
III-1-7 弁尖短縮に対する自己心膜を用いた弁尖延長
[2]大動脈弁形成術:二尖弁()
III-2-1 弁輪部の固いrapheの切除
III-2-2 グラフトのトリミングと基部のnadirへのマーキング
III-2-3 グラフトの基部への縫着
III-2-4 bulging高度例に対する弁腹へのマットレス縫合
III-2-5 硬化部位の三角切除と縫合
III-2-6 incomplete fusion typeの二尖弁に対する自己心膜を用いたtricuspidization法
[3]自己弁温存基部置換術
a remodeling法(Yacoub法)
III-3-a-1 無冠洞(NCS)と左房の間の剥離
III-3-a-2 大動脈-肺動脈線維性連続組織の剥離
III-3-a-3 右冠洞(RCS)の剥離
III-3-a-4 左冠洞(LCS)の剥離
III-3-a-5 GHの計測
III-3-a-6 基部のnadirへのマーキング
III-3-a-7 グラフトのトリミングとtongueの中間点へのマーキング
III-3-a-8 グラフトの基部への縫着
III-3-a-9 external suture annuloplastyの運針と結紮
III-3-a-10 弁尖逸脱に対するcentral plication
III-3-a-11 縫合部からの出血の確認と止血
III-3-a-12 冠動脈口の縫着
b reimplantation法(David法)
III-3-b-1 準備
III-3-b-2 大動脈弁評価
III-3-b-3 基部剥離と切除
III-3-b-4 first rowの糸掛け
III-3-b-5 人工血管
III-3-b-6 交連部固定
III-3-b-7 second rowの糸掛け
III-3-b-8 central plication
III-3-b-9 冠動脈ボタンの縫着
III-3-b-10 末梢吻合
III-3-b-11 二尖弁(その1)
III-3-b-12 二尖弁(その2)
III-3-b-13 急性大動脈解離
序文
心臓弁膜症に対する手術は機械弁、生体弁の発達と改良により弁置換術の安定した早期、中期成績が得られるようになってきた。しかし、長期成績をみると、生体弁の耐久性や機械弁のワルファリン服用による合併症が依然として問題になっている。
一方、Carpentierらにより発展してきた僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する僧帽弁形成術(MVP)は、その長期予後が僧帽弁置換術(MVR)に優ることが解明され、MRに対する早期手術はMVPが確実にできることが条件とされるなどMVPの必要性が高まっている。また、「謎めいた弁病変」とされていた三尖弁閉鎖不全(TR)に対しても、TRの存在が長期予後を不良にする要因となることがわかり、三尖弁形成術(TAP)の同時手術が積極的に施行されるようになってきた。大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対しては、大動脈基部拡大によるARに対するBentall手術が報告され、安定した成績が示されるようになったものの、人工弁による術後の合併症を防ぐために自己弁温存手術であるreimplantation法(David法)、remodeling法(Yacoub法)が報告され、Davidらがreimplantation法の20年の遠隔成績が良好なことを報告し、大動脈基部手術では自己弁温存手術が優れていることが示されるようになった。この基部拡大によるARの病態を含めてARの分類、病態に基づいた大動脈弁形成術(AVP)の術式が見直されるようになり、弁輪拡大のないARに対するAVPも一気に注目されるようになってきた。
しかしながら、弁形成術においてはその完成には多くの経験が必要であり、少数例しか手がけることができない外科医にとっては、弁形成術に習熟するまでには多くの症例が犠牲になることもあり得る。著者自身も20年前にMVPやreimplantation法を始めた頃に、術後早期に逆流が再発し、半年以内に再手術で弁置換術を行う例を経験し、その頃は弁形成術に関する成書はなく、David先生に相談したところ、「弁形成は自分でやってみないとわからないし、外科医は経験を積み重ねなければいけない」と言われたことを記憶している。当時は弁形成術に対する有用な手術書は見当たらず、弁形成術の上達のために実際の心臓の解剖標本や手術ビデオを何度も見直し、術前のシミュレーションをしっかり行いながら弁形成術を続けた。しかし、弁形成術の優位性がわかってきた現在でも、弁形成術の確実な手術法を習得する手術書を見つけることができない。本書は弁形成術における術野の外科的解剖を十分に解説し、著者らの多くの経験に基づき、糸針や運針に至るまで弁形成術を詳細に解説し、各項目における手術ビデオで確認できるようにした。
本書がこれから弁形成術を目指す外科医のみならず、すでに弁形成術を経験している外科医、メディカルスタッフの方々にとっての一助となり、多くの症例の手術予後の改善につながれば、著者らの望外の喜びである。また、弁形成術は外科医としての技量が重要で、確実に行えば長期予後を期待できる術式であるが、本書に示した著者らの経験からの適応、手術法を自身の技量に合わせて遂行し、決して術中に弁形成術から弁置換術へ変更することを躊躇せずに手術を確実に完遂し、心臓外科医として一歩一歩、上達への道を歩んでいただければ幸いである。
なお、手術の挿入図は著者らの経験した手術の模式図をもとに、心臓手術経験のある佐藤了先生(耳納高原病院)に要点を確実に示すように描いていただいた。深く感謝の意を表する。
2017年7月
執筆者を代表して
磯村正
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