看護学テキストNiCE
緩和ケア改訂第2版
尊厳ある生と死,大切な生活をつなぐ技と心
編集 | : 梅田恵/射場典子 |
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ISBN | : 978-4-524-25512-2 |
発行年月 | : 2018年1月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 308 |
在庫
定価2,640円(本体2,400円 + 税)
サポート情報
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2019年02月28日
最新情報に基づく補足
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
看護学生が緩和ケアの概念を理解し、看護実践を提供するための基礎知識習得を目指したテキストの改訂版。緩和ケアを“診断時からすべての病気にわたって行われるケア”として捉え、必須の知識や実践についてわかりやすく解説。今改訂では、平成30年版国家試験出題基準に対応し、心不全、慢性呼吸不全への緩和ケアを追加した。
第I章 緩和ケアとは
1.病い、苦しみ、生と死
2.尊厳ある生と死、大切な生活をつなぐケア
A.全人的苦痛のとらえ方
B.ケアの目標となる概念
C.ケアの土台となる看護師の姿勢
3.緩和ケアの歴史と定義
A.緩和ケアの歴史
B.緩和ケアの定義
C.緩和ケアに類似した用語
4.緩和ケアにおけるチームアプローチ
A.チームアプローチ
B.チームアプローチにおける看護師の役割、特徴
C.緩和ケアに携わるメンバーの役割、特徴
D.チームアプローチにおける障壁
E.緩和ケアにおけるチームアプローチの推進
5.がんと緩和ケア
A.がんについての理解の進歩
B.がん医療における集学的治療
C.侵襲が伴うがん治療
D.個々の志向や自律性の尊重
E.“がん”の診断と死
6.緩和ケアをとりまく今日の状況
A.日本の緩和ケア政策の変遷
B.がん対策基本法と緩和ケア
C.地域包括ケアと緩和ケア
7.さまざまな場における緩和ケア
A.在宅
B.一般病棟(緩和ケアチーム)
C.ホスピス・緩和ケア病棟
第II章 緩和ケアの基盤となる考え方
はじめに−尊厳を支えるケア
1.日常生活を支えるケア
A.日常生活を支えるためのアセスメント項目
B.清潔ケア
C.食事
D.口腔ケア
E.排泄
F.睡眠・休息
G.ポジショニング
H.気分転換
2.意思決定を支えるケア
A.意思決定とは
B.医療における意思決定のタイプ
C.意思決定支援の必要性
D.意思決定支援と倫理
E.意思決定支援における看護師の姿勢
F.意思決定の影響要因と方法
3.家族ケア
A.対象の理解
B.家族ケアの基盤となる概念の理解
4.喪失と悲嘆のケア
A.喪失とは
B.悲嘆とは
C.悲嘆に影響する要因
D.悲嘆のプロセス
E.死別前後の家族支援(グリーフケア)
F.看護師が受ける悲嘆
5.スピリチュアルケア
A.スピリチュアル、スピリチュアリティとは
B.スピリチュアルペインとアセスメント
C.スピリチュアルケア
第III章 緩和ケアの実践方法
1.緩和ケアの実践(看護ケア)の基本的な考え方
2.痛みのマネジメント
A.痛みの理解
B.痛みの生活への影響
C.痛みのアセスメント
D.薬物療法による痛みの緩和
E.化学療法による痛みの緩和
F.手術療法による痛みの緩和
G.放射線療法とIVRによる痛みの緩和
H.神経ブロックによる痛みの緩和
I.補完代替療法による痛みの緩和
3.呼吸困難のマネジメント
A.メカニズム
B.アセスメント
C.症状緩和方法
4.悪心・嘔吐のマネジメント
A.メカニズム
B.アセスメント
C.症状緩和方法
5.腹部膨満感のマネジメント
5-1 消化管閉塞
A.メカニズム
B.アセスメント
C.症状緩和方法
5-2 腹水
A.メカニズム
B.アセスメント
C.症状緩和方法
6.便秘のマネジメント
A.メカニズム
B.アセスメント
C.症状緩和方法
7.倦怠感のマネジメント
A.メカニズム
B.アセスメント
C.症状緩和方法
8.浮腫のマネジメント
A.メカニズム
9.睡眠障害のマネジメント
A.メカニズム
B.アセスメント
C.症状緩和方法
10.不安のマネジメント
A.メカニズム
B.アセスメント
C.症状緩和方法
11.うつのマネジメント
A.メカニズム
B.アセスメント
C.症状緩和方法
12.せん妄のマネジメント
A.メカニズム
B.アセスメント
C.症状緩和方法
第IV章 看取りのケア
1.看取りのケアとは
A.日本における「看取り」とは
B.看取りのケアとは
2.死が近づいた患者へのケア
A.死が近づいたときの身体的変化
B.死が近づいたときの心の変化
C.死が近づいたときの症状マネジメント
D.死が近づいたときのケア
E.死亡後のケア
3.看取りを迎える家族へのケア
A.看取りを迎える家族の特徴
B.家族へのケア
4.死の迎え方の多様性
A.看取りと文化
B.外国人に対する看取り
第V章 がんの事例で学ぶ緩和ケアの実際
1.事例(1)場をつなぐ−肺がん多発骨転移により痛みを抱えて生活する患者への継続看護
A.アセスメント−肺がん、骨転移による痛み、地域との連携
B.看護目標
C.看護の実際
D.評価
E.まとめ
2.事例(2)セルフケアを促す−患者が自分でも症状緩和を図れると感じられるようなかかわり
A.アセスメント−呼吸困難、セルフケア能力
B.看護目標
C.看護の実際
D.評価
E.まとめ
3.事例(3)家族のケア−終末期にある患者の妻の予期悲嘆に対する援助
A.アセスメント−妻の情緒的な緊張状態
B.看護目標
C.看護の実際
D.評価
E.まとめ
4.事例(4)スピリチュアルケア−死を正視することを余儀なくされて苦悩する患者へのかかわり
A.アセスメント−スピリチュアルペイン
B.看護目標
C.看護の実際
D.評価
E.まとめ
5.事例(5)在宅での看取り−痛みの強い終末期がん患者の在宅での看取り
A.アセスメント−終末期状態、がんの痛み
B.看護目標
C.看護の実際
D.評価
E.まとめ
6.事例(6)チームによる緩和ケア−病棟看護チームと緩和ケアチームが協働した壮年期の患者・家族へのかかわり
A.アセスメント−その人らしい過ごし方
B.看護目標
C.看護の実際
D.評価
E.まとめ
7.事例(7)看護師が行うグリーフケア−妻を見送った夫の悲しみへのかかわり
A.アセスメント−夫の悲嘆、健康状態と生活の維持、孤立・孤独感の増強
B.看護目標
C.看護の実際
D.評価
E.まとめ
第VI章 多様な疾患をもつ人への緩和ケア
はじめに
1.認知症を患う人への緩和ケア
A.認知症とは
B.認知症患者への緩和ケア
C.中核症状と周辺症状
D.症状緩和の要素と看護
2.難病を患う人への緩和ケア
A.難病とALS
B.ALS患者への緩和ケアの始まりとその必要性
C.ALS患者が経験する困難の特徴
D.ALS患者への緩和ケアの実践
E.難病患者への緩和ケアの現状と課題
3.エイズを患う人への緩和ケア
A.エイズ患者の特徴
B.エイズ患者の治療の現状
C.エイズ患者の緩和ケアの特徴−事例
4.心不全を患う人への緩和ケア
A.心不全における緩和ケアの考え方
B.症状マネジメント
C.アドバンス・ケア・プランニングの考え方
D.心不全患者の緩和ケアに関する課題
5.慢性呼吸不全を患う人への緩和ケア
A.慢性呼吸不全における緩和ケアの考え方
B.症状マネジメント
C.アドバンス・ケア・プランニングの考え方
D.慢性呼吸不全患者の緩和ケアに関する課題
第VII章 緩和ケアの今後の展望
1.諸外国における緩和ケアの体制
A.米国における緩和ケアの体制
B.英国における緩和ケアの体制
C.オーストラリアにおける緩和ケアの体制
2.日本における緩和ケアの展望と課題
A.コミュニティケアとしての緩和ケア
B.緩和ケアにおける専門家の育成
C.緩和ケアにおける研究課題
索引
はじめに
目覚ましい医療の進歩により日本は長寿社会を迎え、減少を続けていた死亡率が増加に転じ多死社会に突入している。人の死をあまり体験してこなかった人々は、急にいくつもの死に向き合うことになり、苦悩や戸惑いの中で自分らしさや生きる意味の模索を始めている。緩和ケアは、避けられない死や苦悩に向き合う人々が、自分らしい暮らしを続け、穏やかな最期への保証を得るための、ケア実践者に不可欠な技術であり、態度でもある。とくに人の安心や安楽をめざす援助者である看護師にとって、緩和ケアは看護の本質と重なり、緩和ケアにおける看護の役割は大きい。
本書では時代の流れを踏まえ、病院だけでなく在宅などさまざまな場(第I章)や、がん以外の疾患をもつ人々(第VI章)への、緩和ケアの必要性や実践についても網羅している。読者の方々には、マニュアルや手順書のように本書を参照するだけでなく、緩和ケアを必要とする対象の苦悩や思いをより深く理解し、気持ちを寄せ、ケアの可能性を拡大していくことができるよう、創造的に学習を進めていただけることを願っている。
改訂第2版では、看護基礎教育の中で効果的に学びが深まるよう言葉の表現や解説、学習目標や課題を見直し、構成の変更、内容の整理・追加を行った。第I章には看護師が向き合う対象の苦悩や苦痛、そして緩和ケアの歴史から今日の状況について、第II章には尊厳を支える緩和ケアの基盤となる考え方やケアをまとめている。症状のメカニズムや対象の苦痛を理解し緩和するための知識やケアの方法を第III章に、看取りのケアを第IV章にまとめた。これらは実践的な内容となっている。第V章の事例にはチームによる緩和ケアなどを、第VI章には心不全と慢性呼吸不全を追加し充実させた。そして、これからますます需要が高まる緩和ケアについて発展的に学習を進められるよう第VII章に新たな取り組みを紹介した。
最後に、多忙な中執筆にご尽力くださった執筆者の皆さまに、本書の内容がより読者に伝わりやすいようにと文章の校正、イラストや図表の作成など努力を惜しまず取り組んでくださった南江堂の山口慶子氏、菊池安里氏に心から感謝を表したい。緩和ケアにおいて看護が育んできた技と心が、これからますます活用され、緩和ケアを必要とする多くの人々に届けられることを心から願っている。
2017年10月
梅田恵
射場典子