ICU感染制御を究める
編集 | : 志馬伸朗 |
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ISBN | : 978-4-524-25496-5 |
発行年月 | : 2017年10月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 200 |
在庫
定価6,600円(本体6,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
ICUにおける重要感染症の予防対策〜治療法を、図表を用いて分かりやすく解説。エビデンスに基づいた標準的アプローチだけでなく、有効な予防法や治療法も盛り込んだ。人工呼吸器関連肺炎やカテーテル関連血流感染など代表的な感染症の対策をまとめ、ドレーン管理や飛沫感染病原体、抗菌薬の使い方など、最新知見も記載。見落としがちな臨床に必要なコツもていねいに解説した。
総論 ICUにおける感染制御の重要性
1 はじめに
2 院内感染症の疫学
3 新規抗菌薬の開発に向けた学会提言(2013年6月)
4 感染制御の原則(手洗いの重要性)
5 多剤耐性微生物(MDRO)の伝播の予防
6 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン
7 抗菌薬適正使用プログラム(ASP)
8 日本集中治療医学会における感染制御の取り組み
A 院内感染病態別の管理
1 人工呼吸器関連肺炎(VAP)
1 用語と定義
2 予防策
3 感染症診断
4 治療
看護の視点から1−VAP予防
2 カテーテル関連血流感染症(CRBSI)
1 用語と定義
2 予防策
3 基本的事項
4 CRBSI対策
5 治療
看護の視点から2−中心静脈カテーテル挿入中の患者の看護:感染防止に焦点を置いて
3 尿道留置カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)
1 用語と定義:意外と誤診されやすいCAUTI
2 予防策:その尿道留置カテーテルは必要か?
3 感染症診断:最後に診断すべきCAUTI
4 治療
5 リスク管理:「最後」、「留置しない」
看護の視点から3−CAUTI予防
4 手術部位感染(SSI)
1 用語と定義:術後感染症とSSI
2 予防策
3 感染症診断
4 治療
看護の視点から4−手術部位の感染対策
5 Clostridium difficile感染症(CDI)
1 用語と定義
2 プロバイオティクスとCDIの予防
3 感染症診断
4 治療
5 リスク管理
看護の視点から5−院内感染予防を考える
B トピックス別の管理
1 ドレーンの管理
1 用語と定義
2 予防策
3 感染の診断・治療
看護の視点から6−ドレーンの管理
2 多剤耐性菌感染症
1 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
2 ブドウ糖非発酵菌(緑膿菌・Acinetobacterなど)
3 ESBL産生菌
4 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)
3 空気感染病原体(結核・麻疹・水痘など)
1 用語と定義
2 予防策
3 感染症診断
4 アウトブレイク発生時の対応
5 特殊病態・免疫不全患者における注意点
6 小児における注意点
7 治療
8 リスク管理
9 おわりに
看護の視点から7−ICUにおける感染管理看護師の役割
4 飛沫感染病原体(インフルエンザウイルス・RSウイルス・コロナウイルス)
1 用語と定義
2 予防策
3 感染症診断
4 治療
5 リスク管理
看護の視点から8−飛沫感染対策
5 ICUでの抗菌薬の使い方−集中治療科の視点より
1 はじめに
2 抗菌薬適正使用のための戦略
3 抗菌薬薬物動態の著明な変化
4 薬剤耐性菌
5 ICUで使用する重要な抗菌薬
6 主な感染症別病態(VAP・CRBSI・CAUTI・SSI・CDAD)における標準的治療
6 ICUでの抗菌薬の使い方−感染症科の視点より
1 はじめに:二極化するコンサルテーション
2 ICUにおける感染症診療の8つのステップ
3 抗菌薬を使いこなすのは二流:targeting zero
4 抗菌薬適正使用プログラム(ASP)
5 おわりに:感染症医の視点とは
7 免疫不全患者での注意点
1 基本的事項
2 予防策
3 治療:発熱性好中球減少症について
8 新生児/小児患者での注意点
1 新生児における感染制御
2 小児における感染制御
9 移植術後患者での注意点(小児)
1 用語と定義
2 固形臓器(肝・腎)移植後感染症の予防策
3 造血細胞移植後感染症の予防策
索引
序文
“Do and it will be done;don't do and it will not be done”
デバイスは、救急集中治療診療においてはなくてはならない診療ツールである。しかし一方で、それは患者の防御機構を破綻させ、微生物の定着を促し、疼痛を惹起し、離床を阻害する危険なものでもある。集中治療室(ICU)における感染症の大多数は、このデバイスに関連した感染症である。
ゆえに「デバイスの留置数と期間は最小限にすることが望ましい」と医療従事者は皆心の中では思っている。しかし、上手くいかない。多くのデバイスは、“念のため”留置され続け、時にはその存在すらも忘れられている。これは大きな問題である。そもそも、“念のため”とはどういうことだろうか。「信頼はしているが何かあっては大変なので、万が一に備えて」と辞書には書いてある。でも、“何か”とは何か? “万が一”とはいつのことか? 問うても答えられる人は多くない。
“よかれ”が“余計”になるのがデバイス関連感染症である。このデバイス関連感染症を中心として、院内特にICUで問題となる感染症について、最新のエビデンスを整理しその重要性を再認識するとともに、適切な対策について考え、究めようとしたのが本書である。
一方、集中治療を必要とする重症患者は、さまざまな基礎疾患を有していたり、免疫抑制的治療介入を受けざるをえないために、感染症そのものをきたしやすい。したがって、医療従事者は患者ケアに際して特に厳格な感染予防策を適用する必要があり、一度発症した感染症に対する適切な抗菌療法の適用は、生命予後に直結する重要な問題となる。予防に関しては、個々の患者における予防策に加え、ユニット全体における感染予防にも注意を払う必要がある。
新興・再興感染症や薬剤耐性菌による感染症が問題となりやすいのも、ICUという場である。2009H1N1pdmが日本のICU診療に与えた衝撃的なインパクトは記憶に新しいが、今後必ず発生しうる同様の問題を対処するためには、最新の感染症知識を備え、有事において適切に対応するための準備が必要である。
このように感染制御は、ICUケアにおける最も重要なコア診療分野でありながら、多くの悩みを抱えた分野でもある。よい感染制御を実践するためには、よい手引き書が必要である。これまでに感染制御を取り上げた類似書物やガイドラインは少なからず存在する。しかし、本書ではICUや救命救急センターというクリティカルケアユニットに焦点を置き、現場の視点からより明確かつわかりやすく解説した。本書を通じてICU感染制御への理解がさらに深まり、感染症の適正診療に向けて動き出す仲間が増えることを、とても強く期待している。
2017年初夏
夕凪ぐ瀬戸の海辺にて
志馬伸朗