書籍

新膵臓病学

編集 : 下瀬川徹
ISBN : 978-4-524-25429-3
発行年月 : 2017年2月
判型 : B5
ページ数 : 528

在庫あり

定価16,500円(本体15,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

近年目覚ましい進歩が見られる膵臓領域の基礎研究から診療の実際までを網羅的・体系的にまとめた膵臓学の決定版。解剖学、発生学、生理・生化学、病理学から、各疾患の機序、疫学、臨床症状、検査および診断・治療に至るまで、膵臓・膵疾患のすべてを余すところなく記載。関連ガイドラインの解説も収載し、膵疾患診療に従事する医師にとって必要な内容を凝縮した渾身の一冊。

第I部 基礎編
 1章 膵の解剖
  A 肉眼解剖
  B 膵臓の組織構造
 2章 膵の発生
  A 膵幹細胞
  B 膵の分化制御と機序
  C 膵の分化誘導因子
 3章 膵の生理・生化学
  A 膵液
  B 膵外分泌機能
  C 膵内分泌機能
  D 膵内外分泌相関
 4章 膵疾患の病理
  A 炎症
  B 腫瘍(外分泌)
  C 腫瘍(内分泌)
 5章 膵疾患の実験モデル
  A 炎症モデル
  B 腫瘍モデル
 6章 膵疾患の分子機序
  A 膵炎
  B 膵癌
第II部 臨床編−総論
 7章 膵疾患の疫学
  A 炎症
  B 腫瘍
 8章 膵疾患の臨床症状・所見
  A 炎症
  B 腫瘍
 9章 膵疾患の検査
  A 生化学検査
  B 膵外分泌機能検査
  C 炎症性マーカー
  D 免疫マーカー
  E 膵腫瘍マーカー
  F 遺伝子検査
  G 膵の画像検査
  H 病理検査
 10章 膵疾患の診断(総論)
  A 膵炎の診断
  B 膵腫瘍の診断
 11章 膵疾患の治療(総論)
  A 生活指導,食事指導
  B 薬物療法
  C 内視鏡治療
  D 体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)
  E 放射線治療
  F 外科的治療
  G 移植医療
第III部  臨床編−各論
 12章 膵疾患の臨床
  A 急性炎症
  B 慢性炎症
  C 膵嚢胞(非腫瘍性)
  D 膵外分泌腫瘍
  F 膵内分泌腫瘍
  G 膵先天性異常
  H cystic fibrosis
  I 膵外傷
 13章 特殊な膵炎
  A まれな成因による膵炎
 14章 加齢,多臓器疾患と膵病変
  A 他臓器疾患と膵病変
  B 加齢と膵病変
 15章  膵疾患のガイドライン
  A 膵炎
  B 膵腫瘍
索引

序文

 南江堂から、竹内正先生(当時、東京女子医科大学教授)編集による『膵臓病学』が上梓されたのは1993年8月1日であり、かれこれ23年以上も前のことになる。米国留学から帰国し、本格的に膵臓病領域に飛び込んだ当時の私にとって、名著『膵臓病学』は、常に書棚にあり、膵臓病学のバイブルとして臨床・研究を導いてくれた。しかし、近年の医学の目覚ましい進歩と知識量の増大を考えると、20年を越える歳月の間に、膵臓病学の裾野は途方もなく広がり、内容も著しくその深さを増した。今回、南江堂から出版した『新膵臓病学』は、最近の膵疾患に対する関心の高まりと研究の発展に鑑み、膵臓病学に関する最新の知識を広く深く記述し、膵臓を専門とする臨床医・研究者が知りたい情報を、正確かつ的確に提供できることを目的として編纂された成書である。
 21世紀の消化器病学において、膵臓病学はますますその重要性を増すだろう。国内外を問わず、膵炎や膵腫瘍に罹患する患者数は年々増加しているが、病因や病態への理解はまだ十分とはいえない。満足のいく治療成績が得られ、真の意味で疾患が克服されるのはまだまだ先のことのように思える。膵臓は、食物消化という特殊な機能のゆえに特異な分化と形態を示し、外分泌機能と内分泌機能は神経とホルモンにより複雑かつ精緻に制御されている神秘的な臓器である。疾患を理解し、正しい診療を行うためには、膵臓の基礎を知り、しっかりした基礎知識の上に臨床を実践することが大切である。本書はこのような信念に基づいて、基礎分野にも力を入れ、臨床分野とのバランスに配慮した。
 国際膵臓学会において、日本膵臓学会は米国膵臓学会や欧州膵臓クラブとともに3つの基軸を構成し、世界の膵臓病学をリードする大きな力となっている。日本は、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や自己免疫性膵炎といった新しい疾患概念を世界に発信し、膵臓の基礎・臨床の多くの領域において世界の膵臓病学の発展に寄与してきた。また、日本が誇る膵臓外科手術の技術力の高さや高度な内視鏡手技は世界に広く認められており、日本は膵臓臨床の先進国といってよいだろう。『新膵臓病学』は、このような日本の膵臓病学を支える第一人者を数多く集め、全力を投入して完成した渾身の一冊である。
 本書が、膵臓の基礎や臨床に興味を持ち、専門領域として膵臓を考えている学生や若い医師に読まれ、膵臓病学の魅力を深める一助となるよう願う。また、すでに膵臓の臨床・研究に携わっている方々には、ぜひ手元に置いていただき、診療や研究における知識の確認や、疑問への回答を見出す一助となるよう願っている。本書が多くの方々に愛読され、日本の膵臓病学のさらなる発展に少しでも貢献できると幸いである。

2017年1月
東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野
下瀬川徹

 このたび、東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野教授、下瀬川徹先生編集による『新膵臓病学』が2017年2月に南江堂から出版された。
 本書が刊行されるまでの数年間の下瀬川先生の生活は多忙を極め、学内では、東北大学大学院消化器病学教授として臨床・教育・研究のほか、病院長、医学部長の管理職にあり、学外では日本膵臓学会理事長(2013〜2016)、日本消化器病学会理事長(2015〜)の要職にあった。
 先生が会長をされた学会で、筆者も参加した最近の学会は、次のごとくである。
2013年 第44回日本膵臓学会大会(仙台)会長。
2014年 日本膵臓学会45周年記念大会会長(第45回米国膵臓学会との合同開催)。日本と米国膵臓学会の創立が同年の1969年であり、合同の45周年記念学会が米国のハワイ島のコナにおいて行われた。
2015年 第101回日本消化器病学会総会(仙台)会長。
2016年 第20回国際膵臓学会(仙台)会長。その際、下瀬川先生の主導のもと、長年の夢であった日本膵臓学会と米国膵臓学会の姉妹学会締結の了解覚書き(MOU)に署名するセレモニーが行われた。
 このように多忙な時期の下瀬川先生であったが、これらの学会に参画し、日本の膵臓病研究を支えた第一人者たちに執筆をお願いし、全身全霊をあげて完成したのが『新膵臓病学』である。これは、下瀬川先生のこの数年の至上の日々を記念するもので、同学のよしみとして心から祝福を送りたい。
 ところで、この『新膵臓病学』の下瀬川先生の序文のなかで、1993年に南江堂から出版された(筆者による)『膵臓病学』が常に先生の書棚にあり、「膵臓病学のバイブルとして臨床・研究を導いてくれた」とのこと。誠に光栄である。
 実は、筆者にとっての膵臓病学のバイブルは、下瀬川先生の先輩教授の山形敞一先生による『膵臓病学』であった。1964年、山形先生が仙台で第50回日本消化器病学会総会会長をされ、それを記念して刊行されたものである。当時は、日本では「膵臓病学」という概念、名称自体、また外国でも「pancreatology」という言葉も使われていなかった時代である。
 1993年の『膵臓病学』以降、23年を超えて刊行された今回の『新膵臓病学』には、先ほどの学会で発表されたエッセンスや、日本から世界に発信された自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)や膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)など新しい疾患概念、診断基準、コンセンサスが収載されているほか、厚生省、厚生労働省の難治性膵疾患の研究班での共同研究・各個研究の成果、また「膵疾患のガイドライン」にある基礎から診断と治療など、実に多くの情報に満ちている。
 このようなことから、本書が一人でも多くの膵臓病に興味をもつ学生や医師たちのバイブルになり、さらなる日本の膵臓病研究に貢献することを願ってやまない。

臨床雑誌内科120巻3号(2017年9月増大号)より転載
評者●日本膵臓病研究財団理事長 竹内正

9784524254293