抗血小板療法 エキスパートの“勘どころ”
編集 | : 中村正人 |
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ISBN | : 978-4-524-25428-6 |
発行年月 | : 2016年12月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 224 |
在庫
定価3,960円(本体3,600円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
循環器疾患において抗血小板療法を行う際の判断、対応、用量調節等に必要な“勘どころ”をエキスパートが解説。前半では現在のコンセンサス・エビデンスをおさらいし、後半ではコンセンサスが得られていない臨床的疑問やケースに対して実践的な“勘どころ”を紹介。抗凝固療法に関するQ&A、おもな抗血栓薬一覧も掲載。
I なぜ抗血小板療法には“勘”が必要なのか
1 なぜ抗血小板療法には“勘”が必要なのか
II 抗血小板療法のおさらい−イマのコンセンサスとエビデンス
1 抗血小板薬の種類と作用機序
2 循環器疾患における抗血小板療法−コンセンサスとエビデンス
A.冠動脈疾患
1 一次予防における抗血小板療法の立ち位置
2 急性冠症候群(ACS)
a)ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)
b)非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)・不安定狭心症(UA)
3 ステント(DES)留置後
4 ステント(BMS)留置後
5 その他の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)治療
6 二次予防における抗血小板療法
7 心臓血管外科手術後
B.下肢動脈疾患
1 ステント留置後
2 バルーン拡張術後と鼠径靱帯バイパス術後
3 アテローム血栓症における薬物療法
C.脳血管障害
1 脳出血における薬物療法
2 脳梗塞急性期
3 脳梗塞慢性期
4 ラクナ梗塞
5 アテローム血栓性脳梗塞
6 頸動脈ステントや脳動脈瘤のコイル塞栓術後
3 抗血小板療法の副作用とその対策
A.出血
B.消化性潰瘍
C.薬剤抵抗性
D.非心臓手術時の対応
III エキスパートの抗血小板療法の“勘どころ”
Q1 高齢のPCI後患者へのDAPTの使い方は?
Q2 PCI後(DES留置)の心房細動患者へのDAPTおよびDOACの使い方は?
Q3 心不全患者に対して血栓症予防のために抗血小板療法を行うべき?
Q4 抗血小板薬にPPIの併用は必須?
Q5 アスピリン抵抗性は評価すべき?
Q6 血小板機能検査は行うべき?
Q7 遺伝子多型を検査すべき?
Q8 抗血小板薬投与中,出血イベントを起こしたときの対応は?
Q9 ステント血栓症を合併したときの対応は?
Q10 P2Y12受容体阻害薬単剤使用は有効?
Q11 第二世代DESではDAPT期間は短くてよい?
Q12 PCI時における出血イベントを回避する手段は?
Q13 抗血小板薬内服中の患者がACSで搬送されてきたら?
Q14 経過観察中に癌が見つかったときの対応は?
Q15 抗血小板薬についての海外のエビデンスは日本で代用可能?
Q16 現在進行中の臨床試験で何がわかるのか?
Q17 loadingはカテーテル検査後では遅い?
Q18 糖尿病患者ではなぜ血小板抑制作用がばらつくのか?
Q19 慢性腎臓病(CKD)患者の血小板機能は?
Q20 カテーテル治療で血小板凝集能は亢進する?
Q21 抗血小板薬を再開するときにはloadingすべき?
Q22 抗血小板薬の新薬の動向は?薬剤選択への影響は?
付録(1) 念のため抗凝固療法もおさらい
Q1 抗凝固薬の種類とその作用機序は?
Q2 抗凝固薬の用量調節は?
Q3 抗凝固療法中の周術期の管理は?
Q4 出血イベントを合併したときの対応は?
Q5 心房細動に対するカテーテルアブレーション後の抗凝固療法は?
Q6 除細動を行うときの薬物治療は?
Q7 抗凝固薬についての海外のエビデンスは日本で代用可能?
Q8 PT-INRの値がふらつく要因は?どう対応すればよい?
付録(2) おもな抗血栓薬一覧
索引
序文
近年、これまでになく抗血栓療法に対する関心が高くなっていますが、それにはいくつか理由が考えられます。多くの新しい薬剤が登場し、研究会や講演会などを通じて抗血小板薬、抗凝固薬に関する知識・情報を収集する機会が自然と増えたこと。また、多くのエビデンスが集積してきており、最新の知識を得る必要性に迫られていることなどです。わが国は超高齢社会を迎え実臨床における対象症例は増加していますが、高齢者は多くのリスクを保有するため、さまざまな治療選択肢を考慮しなくてはなりません。結論が得られていない領域であるため、考え方を共有したいと思う人が少なくないといったことなどが背景になっていると思われます。
一般的に脂質異常症治療薬や降圧薬など多くの薬剤は、作用が強力であればあるほど良く、有効性が高いと判断されます。しかし、抗血栓薬は少し様相が異なり、有効性と安全性のバランスが問われます。そのうえ、そのバランスは一律ではなく、患者背景、治療手技、病態などで違ってきます。また、継続ではなく途中で中断するといった治療選択肢があることは、他の薬剤と大きく異なっています。そうなると、比較検討試験の結果をそのまま鵜呑みにはできないことになります。どのように解釈すべきか、どのように臨床に応用すべきであるか、十分に考えなくてはなりません。実施された臨床試験の対象患者層はどこか、その統計学的な信頼性は十分なのか、頭の中で整理整頓が必要になります。しかし、それは容易なことではありません。
そこで、今回の企画『抗血小板療法エキスパートの“勘どころ”』の登場です。日常臨床で直面する難問に対して、各領域のエキスパートの“勘”を満載にしたのがこの本です。しかも、この勘はいわゆる山勘ではありません。知識と経験に裏打ちされたエキスパートならではの勘です。収載された抗血栓薬にまつわる情報は心血管のみでなく、脳血管障害、消化管出血など多岐にわたります。この贅沢な本で整理整頓されたエッセンスは、明日からすぐに臨床の現場で役立つこと間違いありません。短く簡潔に記載されたこの本はどの項目から読んでいただいても結構です。さて、どこから読もうかな?
2016年11月
中村正人