看護学テキストNiCE
薬理学
編集 | : 荻田喜代一/首藤誠 |
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ISBN | : 978-4-524-25291-6 |
発行年月 | : 2020年11月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 296 |
在庫
定価2,860円(本体2,600円 + 税)
正誤表
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2023年12月26日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
看護師が必要とする薬物治療学の視点を取り入れた薬理学の教科書。「人」をイメージできるよう、疾患の病態、薬物療法の方針、薬理作用の解説という流れで構成。「副作用」「禁忌」については、薬理作用と結びつけて記載し、なぜ起こるのかが理解できる。また、患者観察や看護のポイントを盛り込み、臨床とのつながりを意識した学習が可能。薬剤の特徴をまとめた一覧表を網羅。
第1章 総論
A 薬物療法における看護業務に必要な知識
1 薬と薬物療法
2 薬物療法における看護師の役割
3 処方箋
4 添付文書
B 薬が効くしくみ
1 薬理作用の基礎
2 薬物の作用点
C 薬の投与方法と生体内運命
1 薬の投与経路と剤形
2 薬物の吸収
3 薬物の分布
4 薬物の代謝
5 薬物の排泄
6 薬物血中濃度モニタリングおよび全身クリアランス
D 薬の効果に影響を与える因子
1 年齢
2 妊産婦・授乳婦
3 遺伝子
4 臓器障害
E 薬の連用・併用で起こる薬理作用の変化
1 薬物耐性・薬物依存
2 薬物アレルギー
3 薬物相互作用
F 医薬品の管理と保存
1 劇薬と毒薬
2 麻薬・向精神薬・覚醒剤
第2章 自律神経系に作用する薬
A 神経系の構成
B 自律神経系
1 自律神経の解剖学的特徴
2 自律神経系の生理学的意義
3 自律神経系における神経伝達物質と受容体
C 交感神経に作用する薬
1 カテコールアミン
2 非カテコールアミン
3 交感神経遮断薬(抗アドレナリン薬)
D 副交感神経系に作用する薬
1 直接型コリン作動薬
2 間接型コリン作動薬(コリンエステラーゼ阻害薬)
3 副交感神経遮断薬(抗コリン薬)
第3章 心臓・血管系疾患治療薬
A 心臓・血管の構造とはたらき
1 心臓の構造
2 血管系の構造とはたらき
B 高血圧と治療薬
1 血圧調節のしくみ
2 高血圧
3 治療と薬物療法の方針
C 虚血性心疾患と治療薬
1 狭心症・心筋梗塞
2 薬物療法の方針
3 狭心症治療薬
4 血栓溶解薬
5 心筋梗塞の再発予防に用いられる薬
D 心不全と治療薬
1 心不全
2 薬物療法の方針
3 心不全治療薬
E 不整脈と治療薬
1 不整脈
2 薬物療法の方針
3 抗不整脈薬
第4章 血液・造血器系疾患治療薬
A 血液と造血器系
1 血液成分
2 造血器
B 貧血と治療薬
1 貧血の種類
2 貧血治療薬
C 抗血栓薬と止血薬
1 血管内皮と血小板のはたらき
2 血液凝固と線溶のしくみ
3 血栓性疾患と抗血栓薬
4 出血性疾患と止血薬
D 血液製剤
第5章 消化器系疾患治療薬
A 消化性潰瘍と治療薬
1 胃酸分泌のしくみ
2 薬物療法の方針
3 消化性潰瘍治療薬
B 食欲不振・消化不良と治療薬
1 消化管の運動調節
2 食欲・消化用薬
C 嘔吐と治療薬
1 嘔吐のしくみ
2 制吐薬
D 下痢・便秘と治療薬
1 下痢・便秘のしくみ
2 止瀉薬
3 下剤
E 腸疾患と治療薬
1 腸疾患
2 炎症性腸疾患・過敏性腸症候群の治療薬
F 肝臓・膵臓疾患と治療薬
1 肝炎と治療薬
2 膵炎と治療薬
第6章 呼吸器系疾患治療薬
A 呼吸器系のしくみ
B 気管支喘息と治療薬
1 気管支喘息
2 薬物療法の方針
3 気管支喘息治療薬
C 鎮咳薬
1 咳のしくみ
2 鎮咳薬
D 去痰薬
1 去痰障害のしくみ
2 去痰薬
E 呼吸抑制と呼吸刺激薬
1 呼吸抑制のしくみ
2 呼吸刺激薬
第7章 腎臓・尿路・生殖器系疾患治療薬
A 腎臓の構造とはたらき
1 体液調節
2 尿の生成
B 電解質平衡異常と治療薬
1 電解質平衡異常
2 電解質平衡異常の治療薬
C 利尿薬
1 利尿薬の薬物療法への適応
2 薬物療法の方針
3 利尿薬の分類と作用機序
D 神経因性膀胱と治療薬
1 蓄尿と排尿のしくみ
2 神経因性膀胱
3 蓄尿障害治療薬(過活動膀胱治療薬)
4 排尿障害治療薬(低活動性膀胱治療薬)
E 前立腺肥大症と治療薬
1 前立腺肥大症
2 前立腺肥大症治療薬
F その他の泌尿器系疾患と治療薬
1 尿路結石治療薬
2 勃起不全治療薬
第8章 ホルモン関連薬
A 内分泌系
B 視床下部-下垂体系と関連薬
1 視床下部ホルモン関連薬
2 下垂体ホルモン関連薬
C 甲状腺ホルモンと関連薬
1 甲状腺ホルモンの分泌調節と生理作用
2 甲状腺疾患と治療薬
D 副腎皮質ホルモンと関連薬
1 副腎皮質ホルモンの分泌調節と生理作用
2 副腎皮質ホルモン分泌異常症と治療
3 糖質コルチコイド関連薬(副腎皮質ステロイド薬)
4 副腎皮質ホルモン合成阻害薬と抗アルドステロン薬
E 性ホルモンと関連薬
1 女性ホルモンと関連薬
2 男性ホルモンと関連薬
F 副甲状腺ホルモンとカルシトニン
第9章 代謝系疾患治療薬
A 糖尿病と治療薬
1 糖尿病
2 薬物療法の方針
3 糖尿病治療薬
B 脂質異常症と治療薬
1 脂質代謝と関連病態
2 脂質異常症
3 薬物療法の方針
4 脂質異常症治療薬
C 高尿酸血症・痛風と治療薬
1 高尿酸血症・痛風
2 薬物療法の方針
3 高尿酸血症・痛風治療薬
第10章 抗炎症薬,鎮痛薬
A 抗炎症薬
1 炎症のしくみ
2 抗炎症薬
B 鎮痛薬
1 痛みのしくみ
2 鎮痛薬
3 麻薬拮抗薬
C 疼痛治療の考え方
1 オピオイド鎮痛薬による疼痛緩和
2 がん性疼痛の治療
3 神経障害性疼痛の治療
第11章 免疫・アレルギー系疾患治療薬
A 免疫のしくみと異常
1 自然免疫と獲得免疫
2 サイトカイン
3 アレルギー反応
4 アレルギー症状を引き起こすケミカルメディエーター
B 免疫異常による疾患の治療薬
1 抗アレルギー薬
2 免疫抑制薬
第12章 骨・関節系疾患治療薬
A 骨・カルシウム代謝
1 骨のリモデリング
2 カルシウム代謝
B 骨粗鬆症と治療薬
1 骨粗鬆症
2 骨粗鬆症治療薬
C 関節リウマチと治療薬
1 関節リウマチ
2 薬物療法の方針
3 抗リウマチ薬
第13章 抗感染症薬
A 感染症と病原微生物
1 感染症
2 病原微生物
B 感染症と抗菌薬治療
1 薬物療法の方針
2 抗菌薬
3 耐性菌と耐性獲得のしくみ
C 抗結核薬
1 薬物療法の方針
2 抗結核薬
D 抗真菌薬
E 抗ウイルス薬
1 抗HIV薬
2 抗インフルエンザウイルス薬
3 抗ヘルペスウイルス薬
F 駆虫薬
G 消毒薬
H 予防接種
第14章 抗がん薬
A がんの基礎知識と治療
1 がん
2 がんの治療
B 抗がん薬
1 抗がん薬の作用と分類
2 殺細胞性抗がん薬
3 分子標的薬
4 抗腫瘍ホルモン薬
5 免疫増強薬
6 その他の抗がん薬
第15章 中枢神経系疾患治療薬
A 中枢神経系の構造とはたらき
1 中枢神経系の構造
2 中枢神経系の機能と神経伝達物質
B 不眠症と治療薬
1 睡眠のしくみと不眠症
2 ベンゾジアゼピン系薬
3 睡眠薬
C 不安障害と治療薬
1 不安障害
2 抗不安薬
D 統合失調症と治療薬
1 統合失調症
2 脳内ドパミン作動性神経経路
3 薬物療法の方針
4 抗精神病薬
E 気分障害と治療薬
1 気分障害
2 薬物療法の方針
3 気分障害の治療薬
F てんかんと治療薬
1 てんかん
2 薬物療法の方針
3 抗てんかん薬
G パーキンソン病と治療薬
1 パーキンソン病
2 薬物療法の方針
3 パーキンソン病治療薬
H 認知症と治療薬
1 認知症
2 薬物療法の方針
3 アルツハイマー型認知症治療薬
I 脳血管障害と治療薬
1 脳血管の構造
2 脳梗塞と治療薬
3 脳出血・くも膜下出血と治療薬
4 片頭痛と治療薬
第16章 感覚器・皮膚系疾患治療薬
A 皮膚疾患と治療薬
1 皮膚の構造とはたらき
2 皮膚疾患治療薬
B 眼疾患と治療薬
1 眼の構造とはたらき
2 点眼剤
3 緑内障治療薬
4 白内障治療薬
C 耳疾患と治療薬
1 耳の構造とはたらき
2 めまい治療薬
3 その他の耳疾患治療薬
第17章 外科手術で用いられる薬物
A 全身麻酔薬
1 全身麻酔薬の作用とその特徴
2 全身麻酔薬の種類
B 局所麻酔薬
1 局所麻酔薬の作用機序
2 局所麻酔薬の作用とその特徴
3 局所麻酔薬の種類
C 筋弛緩薬
1 末梢性筋弛緩薬
2 中枢性筋弛緩薬
D 造影剤および放射性医薬品
1 造影剤
2 放射性医薬品
第18章 救急の際に用いられる薬物
1 蘇生
2 昏睡
3 けいれん
4 呼吸障害
5 鎮痛・鎮静
6 高カリウム血症・アシドーシス
第19章 中毒と解毒薬
A 中毒
1 中毒と応急処置
2 薬毒物の吸収抑制,遅延,排泄促進
B 解毒
1 医薬品中毒
2 農薬中毒
3 化学用品・工業用品による中毒
第20章 漢方薬
1 漢方の基本概念
2 漢方薬の使用上の注意
3 漢方薬の使用上の注意
第21章 薬物療法における看護のポイント
1 看護師が行う服薬指導時の留意点
2 与薬時に共通するインシデント事例
索引
はじめに
−看護師・薬剤師・薬理学者が編集した看護のための薬理学書−
薬理学は治療に欠かせない「くすり」のからだへの作用を追究する学問であり、薬物療法のために薬理学を学ぶことは医療人にとってきわめて重要です。中でも、看護における薬理学は、看護職の専門化・多様化・高度化に伴って、看護基礎教育、大学院教育、現場の看護師の継続教育で重要視されています。看護学教育モデル・コア・カリキュラムにおける薬理学教育は、「C-5-4)(-1)薬物及び薬物投与による人間の反応」に記載され、そのねらいとして「的確な薬物療法を行うために必要な基本的な考え方(薬理作用、有害事象、与薬時の注意事項)と看護援助を学ぶ」とあります。看護師は与薬の実践者であり、患者にもっとも近いところで「くすり」の作用や副作用(有害事象)を観察することで薬物療法の重要な情報を入手することができます。その情報をより的確に観察するためには「くすり」の作用のみならず、その作用のしくみ、「くすり」の生体内動態(吸収、分解、排泄)などの知識が必要です。看護教育では、このような患者志向性の薬理学(Patient-oriented Pharmacology)を修得し、医師・薬剤師と協働して薬物療法に貢献できる看護師の養成が期待されています。
本書は、「医療の最前線の看護を経験した看護学部教員」、「医療の最前線の薬剤師を経験した薬学部教員」、「薬理学研究に従事している薬理学の専門家」を編集者・執筆者とした看護基礎教育、大学院教育、現場の看護師教育の本格的な薬理学の学びの書です。
本書はコンパクトながら、看護師の学びにとって十分な情報を盛り込んでいます。特長として、薬理作用の理解のために、(1)前提となる解剖生理や病態の知識、(2)作用機序の理解を助ける効果的な図表、(3)代表的な薬物の特徴をまとめた一覧表を盛り込みました。また、患者のもっとも近くにいる看護師にとって重要な情報となる、(4)与薬後に注意すべき特徴的・重篤な副作用はできるだけ記述し、(5)臨床で役に立つ薬物療法における「看護のポイント」、(6)看護師と医師・薬剤師のチーム医療を意識した記述などがあります。
また、本書は、看護教育にとどまらず、看護師が医療の現場で協働する薬剤師の教育におけるPatient-oriented Pharmacologyの教科書としての活用も推奨します。本書を通して看護学生と薬学生が共に学ぶことで薬物療法に貢献する医療人チームとなることを期待します。
2020年10月
編集者を代表して
荻田喜代一