初学者のための小児心身医学テキスト
編集 | : 日本小児心身医学会 |
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ISBN | : 978-4-524-25274-9 |
発行年月 | : 2018年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 358 |
在庫
定価7,480円(本体6,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
日本小児心身医学会による公式テキスト。基本事項をまとめた「総論」と代表的な疾患を解説した「各論」で構成されるが、「各論」では心身症以外にも小児でよくみられる精神疾患や不登校、いわゆる発達障害、いじめなど社会医学的な問題も含めて幅広く解説している。記述は平易だが、初学者だけでなく日常で小児を診療する機会のあるベテラン医師にも参考になる。医師だけでなく子どもをカウンセリングする心理士にとっても必携の書。
総論
1.小児心身医学の基礎
A.小児心身医学の概要と日本小児心身医学会
1 小児心身医学とは
2 日本小児心身医学会について
3 小児心身医学の守備範囲
B.ストレスと身体
C.子どもにおける心身症
1 子どもの心身症の定義
2 心と身体のつながり
D.子どもの心の発達
2.医療における面接
A.初診時の関係の作り方
B.情報収集しておきたいこと
C.初診時の診たてと説明
D.治療継続のしかた
3.検査
A.医学的検査の進め方
B.自律神経機能検査
C.心理学的検査
1 心理検査の進め方
2 発達・知能検査
3 質問紙検査
4 描画検査法などの投影法
4.治療
A.治療の基本
1 支持的カウンセリング
2 生活指導と環境調整
B.薬物療法
1 薬物療法の基礎
2 向精神薬の使い方
3 漢方薬の使い方
C.心理療法
1 心理療法の基礎
2 リラクセーション法・自律訓練法
3 認知行動療法
4 遊戯療法・箱庭療法
D.家族支援
5.連携
A.医師と心理士の協働治療
B.入院治療における病棟チーム
C.教育・福祉・司法との連携
D.移行期
E.他科との連携
6.保険診療について
7.研修制度について
各論
1.子どもに多い心身症
A.起立性調節障害
B.機能性消化管障害(機能性腹痛障害)−FD,IBSを中心に
C.慢性機能性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛など)
D.摂食障害
1 神経性やせ症
2 回避・制限性食物摂取症
E.過換気症候群
F.アレルギー疾患
1 気管支喘息
2 アトピー性皮膚炎
G.睡眠障害
1 不眠・概日リズム睡眠-覚醒障害
2 夜驚症
H.排泄系の問題
1 遺糞症
2 夜尿症・昼間尿失禁(遺尿)症
3 心因性頻尿
I.その他
1 チック症・トゥレット症
2 習癖:指しゃぶり,爪かみ
3 円形脱毛症・抜毛症
4 心因性視覚障害・心因性聴覚障害
5 慢性疼痛
2.子どもに多い精神疾患
A.不安症
1 分離不安症
2 社交不安症
3 選択性緘黙(場面緘黙)
B.強迫症
C.変換症,解離症,身体症状症
1 変換症(転換性障害)
2 解離症(解離性障害)
3 身体症状症
D.心的外傷後ストレス障害
E.ARMS
3.小児心身医学が関わるさまざまな問題
A.不登校
B.神経発達症(発達障害)
C.いじめ
D.行動の問題
1 非行・盗癖・性的問題行動
2 メディア依存
3 自傷行為
E.小児医療におけるさまざまな問題
1 慢性疾患・悪性疾患の心身医学
2 終末医療
3 周産期医療
F.虐待・貧困などの子どもの社会的問題
G.災害時の対応
索引
序文
日本小児心身医学会は2014年、「子どもの心身症」の定義を発表した。それは「子どもの身体症状を示す病態のうち、その発症や経過に心理社会的因子が関与するすべてのものをいう。それには発達・行動上の問題や精神症状を伴うこともある」というものである。子ども時代は心身が未分化で、心理社会的因子の影響が身体症状として出現しやすい。そのため、この定義を日常臨床にあてはめると、多くの疾患が心身症の側面を持つことになる。つまり、小児医療において心身症は日常的な病態であり、小児心身医学の知識と技術は、専門家だけでなく子どもに関わるすべての職種に必要なものである。そのことを前提に、本書は次に挙げるような人たちを読者対象としている。
1)小児科医をはじめとする子どもを診療するすべての医師の方へ
子どもの総合診療医である小児科医は、意識するしないにかかわらず、一般診療において数多く心身症に遭遇している。心身症は、診療する医師が少しの工夫をもって関われば、劇的に改善する場合があり、それを無意識に行っている医師は、地域で「名医」と呼ばれている。心身症の治療には、専門医だけでなく多くのプライマリ・ケア医が関わる必要があり、その知識と技術はすべての医師のためのものであるといえる。
2)日本小児心身医学会の認定医および認定医を目指す方へ
日本小児心身医学会は、2010(平成22)年から学会認定医制度を運用している。認定医は、いわゆる「神の手」を持つ医師を養成するためのものではなく、広く一定基準以上の知識と技術を持った医師の養成・認定のための制度である。認定基準は、研修ガイドラインや各疾患の診療ガイドラインで示されているが、本書もその基準のつとなる。
また、2018(平成30)年現在、専門医制度の改革が行われており、子どもの心に関わる医師のための制度である「子どものこころ専門医」は、サブスペシャリティ専門医として日本専門医機構からの承認を目指している。専門医資格を取得するうえで小児心身医学の知識と技術は必須であり、本書は子どものこころ専門医を目指す専攻医にとっても必携の書となる。
3)心理士をはじめとする子どもの健康な心身の成長のために働く方へ
心理士の国家資格として、公認心理師法が2015(平成27)年に議員立法で成立し、2017(平成29)年に施行された。第1回公認心理師試験は2018年に行われるが、国家資格としての心理士が誕生すれば、医療や教育機関などでの重要性は飛躍的に高まる。子どもに関わる心理士において、小児心身医学の知識は必須である。
同様に、保育・学校関係者など子どもの成長発達に関わる職種の人たちにも、小児心身医学の知識は欠かせないといえる。
以上のように、本書は子どもに関わるすべての方が手に取り、学習することを前提として執筆・編集した。本書が子どもたちの心身の健康に寄与できることを祈念する。
2018年3月
日本小児心身医学会理事長
村上佳津美