ESDのための胃癌術前診断
編集 | : 小山恒男 |
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ISBN | : 978-4-524-25096-7 |
発行年月 | : 2010年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 224 |
在庫
定価7,700円(本体7,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 書評
目の前の早期胃癌病変はESDの施行が可能なのか? 深達度は? 側方伸展は? …… ESD指導の第一人者が編集。ESD術ごとに検証されたあらゆる内視鏡像、病理像の中から代表例を見ながら、診断に至るプロセスや考え方を指南。総論で基本を学び、各論ではQ&A形式でページを追いながら、術前診断を身につけられる。佐久総合病院の診断ノウハウがここでわかる!
I章 ESDのための内視鏡診断で知っておきたいこと
A 適応を考える
1.ガイドライン適応内病変とは
2.ガイドライン適応拡大病変とは
3.ガイドライン適応外病変とは
4.治癒切除と非治癒切除
5.ESDの適応拡大に関する問題点
B 所見の読み方の基本
1.胃粘膜の基本構造
2.胃癌の基本構造
3.ヘリコバクターはいるか?
4.通常内視鏡による観察のポイント
C 深達度診断
1.粘膜内癌の表面構造
2.癌が粘膜下層へ浸潤すると
3.0'I型癌の深達度診断
4.0'II型癌の深達度診断
D 側方進展範囲診断
1.側方進展範囲診断
2.インジゴカルミン法
3.AIM法
4.NBI拡大観察法
5.NBI拡大観察法の限界
E 拡大内視鏡による胃癌診断
1.拡大内視鏡で何が見えるか?
2.表面構造
3.血管構造
4.表面構造と血管構造の相関
5.組織型の診断
II章 胃癌ESDの術前診断―典型例を診る
A 0'I型胃癌
B 0'Iia型胃癌−(1)
C 0'Iia型胃癌−(2)
D 0'Iib型胃癌
E 0'Iic型胃癌
F SM1浸潤胃癌
G 潰瘍を伴う胃癌
H 印環細胞癌
I サイズの大きい胃癌
III章 胃癌ESDの術前診断―鑑別診断を身につける
Question1 深達度は?
Question2 側方進展範囲はどこまでか?
Question3 組織型は?
Question4 潰瘍合併胃癌.潰瘍の深さは?
Question5 側方進展範囲はどこまでか?
Question6 癌か? 腺腫か?
Question7 側方進展範囲はどこまでか?
Question8 側方進展範囲はどこまでか?
Question9 側方進展範囲はどこまでか?
Question10 組織型は?
Question11 側方進展範囲はどこまでか?
Question12 組織型は?
Question13 組織型は?
Question14 側方進展範囲はどこまでか?
Question15 側方進展範囲はどこまでか?
Question16 側方進展範囲はどこまでか?
Question17 側方進展範囲はどこまでか?
Question18 組織型は?
Question19 側方進展範囲はどこまでか?
Question20 深達度は?
さすが小山先生と言うしかない。本書はESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を行う内視鏡医がまさしく欲していた内容を、簡潔にまとめ上げた名著である。しっかりと地に足が着いた仕事を続けてこられた小山先生ならではの集大成が、この本でなされている。本書を読むことで、長年の努力で培われてきた知識、技術を比較的容易に習得できるのは、読者にとって幸運である。
本書では「小山塾」で学んだ弟子の先生方が、「内視鏡医は生検標本、切除標本を自ら鏡検し、自身が下した診断と病理組織学的所見を確認するべきである」という教えを踏襲して、ESDのための胃癌術前診断における重要項目を分担執筆されている。
I章ではESDの適応に関してガイドラインに準じる考え方がまず示され、その後所見の読み方の基本から深達度診断、範囲診断、質的診断までわかりやすく解説されている。本書の嬉しいところは最近はやりの拡大内視鏡所見のみではなく、通常内視鏡から色素内視鏡、NBI(狭帯域光観察)拡大と、実践的な所見の読み方を病理学的所見に照らし合わせて理論的に解説してくれているところである。従来から培われてきた通常内視鏡所見による診断学を忘れることなく、それに最新の拡大内視鏡の知見も加えて診断学を体系的に構築しているところがすばらしい。
II章では、I章で学んだ診断学を典型例によって実践的に適用することを練習できるようになっている。いずれの症例も、鮮明な内視鏡写真にESD切除標本、病理所見を対応させて読影の手順、ポイント、思考過程が解説され、最終的にきめ細かい病理診断との対比で所見読影にフィードバックできるようになっている。
III章は実践的応用編である。実際に日常臨床で遭遇する、診断に難渋するような症例も含めて、きめ細かい観察と洞察力によって正しい診断、治療へと導いていく方法が訓練できるようになっている。本書で疑似体験を重ねることが、実臨床におけるESD前胃癌術前診断のレベルアップに役立つことは間違いない。
本書に一貫して言えることは、内視鏡所見読影、病理所見のきめ細かい検討と正確な対比のみならず、それぞれの所見に関してどうしてそのように見えるのかという理論的背景を追求して、納得できる説明がなされているということである。通常観察でなぜ発赤して見えるのか? なぜ褪色して見えるのか? 癌が粘膜下層へ浸潤するとどういう機序でどのような所見が現れるのか? どういう場合に色素が溜まり、どういう表面構造を反映して色素が弾かれるのか? また、拡大内視鏡に関しても血管所見に偏らず、やはり病理所見との対比でvilli様構造、pit様構造がどうしてどのように見えるのかということが解説されているのである。単なる所見のパターン認識ではなく、背景構造との対比、理論があるのでわかりやすく応用が利くのである。
本書によって早期胃癌の内視鏡診断学のみでなく、日常臨床の中で常に診断学の向上を目指して努力されてきた「小山塾」の姿勢も学ぶことができるのではないかと考えている。
早期胃癌のESDを行う内視鏡医に、ぜひとも読んでいただきたいお勧めの指南書である。
評者● 山本博徳
臨床雑誌内科106巻5号(2010年11月号)より転載