リハセラピストのためのやさしい経営学(マネジメント)
編集 | : 八木麻衣子/岩ア裕子/亀川雅人 |
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ISBN | : 978-4-524-24994-7 |
発行年月 | : 2020年3月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 222 |
在庫
定価2,530円(本体2,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
経営学で人と組織のマネジメントを極め、リハビリテーション医療をもっと面白くしよう!リハセラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)は医療のプロであるだけでなく、誰かの上司・同僚・後輩であり、医師や他部署と連携する「組織の一員」。スタッフのやる気と能力を引き出し「組織としてより良質な医療を提供する」ための、学校や現場だけでは得られない経営学の理論と実践法を教えます。デキるプレイングマネジャーをめざすセラピストは必ず読むべき一冊。
こんな場面に経営学
(1)教えても変わらない後輩
(2)方向性が見えない職場
(3)バラバラな組織
(4)動かない上司
この本の使い方
I.経営理論を使いこなすための準備をしよう
1.経営学を理解する
−「役に立つ」経営理論の使い方とは
2.基礎となる経営理論
−経営理論はニュートラルなマインドで使いこなせ!
3.理論を実践に落とし込む技術
−明確な目標を分かりやすい言葉でしっかり伝えよう
4.理論と実践のサイクルの回し方
−理論を学び,実践して結果を評価していこう
II.医療・介護施設のマネジメントに必要な知識
A.医療・介護産業の特徴:外部環境を理解しよう
1.医療制度の特徴
−医療は社会のインフラストラクチャー
2.介護制度の特徴
−民間活力の活用が進む介護サービスの現場
3.現在進行形の医療・介護政策
−地域完結型の「ご当地医療」と「地域包括ケアシステム」が進みます
B.医療・介護施設の一般的な特徴
1.医療・介護施設をマネジメントするということ
−階層型からネットワーク・提携型へ転換せよ!
2.マネジメントのための資源(リソース)
−医療サービスの特性を理解してリソースを活かせ!
3.医療・介護における価値基準
−リソースを活かして達成すべきは「医療・介護の質」の向上である
III.リハビリテーション部門のマネジメントを考えよう
A.リハビリテーション部門の特徴
1.診療のサイクルとリハビリテーション医療の関係
−診療のサイクルを理解して自分たちの役割を考えよ
2.他職種と多職種で取り組むことの重要性
−職種別の知識・経験を融合して最高の結果を目指せ!
B.リハビリテーション部門におけるマネジメント
1.セラピストのキャリアとマネジメントの関係
−プレイングマネジャーが多い組織は確実に強くなる
2.マネジメントとその段階
−マネジメントの段階とその役割を理解しよう
(1)後輩の教育を任される(スーパーバイザー)
−後輩教育を通じて,自分も成長していこう
(2)1つのチームを任される(イニシャル・ミドルマネジャー)
−個人から集団のマネジメントにステップアップを果たそう!
(3)複数のチームを任される(リアル・ミドルマネジャー)
−運営を助ける組織の要となれ
(4)部門全体を任される(トップマネジャー)
−トップマネジメントは交渉,調整,そして政治である
C.シチュエーション別リハ部門マネジメント
1.後輩の教育を任されたら
(1)教えても変わらない後輩への対応方法
−あなたの臨床能力を活かそう!
(2)言うことを聞かない後輩への対応方法
−共通の目的に向かって一緒に働こう!
(3)他の人を評価するときに気をつけたいこと
−専門職としての評価力を使おう
2.1つのチームを任されたら
(1)ミドルマネジャーとしての心得
−現場でのPDCAサイクルを回す中心的な役割である
(2)チームをまとめられるリーダーシップとは
−自分に合ったリーダーシップを発揮しよう
(3)メンバーをチームプレイヤーにするためには
−優れたチームをデザインしてメンバーを活かそう
(4)メンバーのやる気を引き出すには
−何に動機づけられているかを知ろう!
(5)メンバーの行動を促したいと思ったら
−行動のお手本を用意することで,ステップアップを助けよう
(6)上司に動いてもらうためには
−フォロワーシップを発揮して上司や組織を動かそう
3.複数のチームを任されたら
(1)チームごとの状況を把握したいと思ったら
−多くを見渡す広い視野でチームごとの支援に当たろう
(2)チームのパフォーマンスとしての医療の質
−医療の質は個人ではなくチームのパフォーマンスである
(3)チームのパフォーマンス向上の鍵
−組織における知識のジャイアニズムのススメ
(4)医療の質管理は医療安全の徹底でもある
−医療の質管理と安全管理は表裏一体
(5)自律したスタッフを育成し,チームの成果を上げるには
−学習する組織を作ろう
4.部門全体を任されたら
(1)組織のニーズを部門に反映させるには
−組織を内側と外側から俯瞰してみよう
(2)戦略的な人的資源管理を行うには
−−人的資源管理は,長期的な視点をもって戦略的に行おう
IV.理論から実践へ落とし込もう−ワークショップ・グループディスカッションの作り方
1.ワークショップ・グループディスカッションの意義
−ワクワクする話し合いをしていますか?
2.ワークショップの種類
−ワークショップを組み立ててみよう
3.ワークショップの準備
−事前にしっかり準備をしましょう
4.ワークショップの実施
−三人寄れば文殊の知恵
5.成果の共有
−ワークショップでの成果はみんなの財産である
あとがき
索引
まえがき
はじめまして、こんにちは。
このたびは、本書を手にとっていただき、ありがとうございます。
日々、医療や介護の現場で働いていると、患者さんの診療だけではなく、組織運営の場面でもいろいろな壁を感じます。私たちセラピストには、患者さんの診療に関連したことを勉強できる場は多く用意されていますが、自分が所属している医療機関、介護施設など「組織」をどのように運営すればいいのか、について学ぶ機会はほとんどありません。そのような中、まだまだ臨床に集中したいはずの「30代前半の中堅」あたりの年代が、職場の急激な拡張や、本来ならマネジャーに就く世代の離職などにより、意図せずにマネジメント業務を行わなければならない状況におかれている、という話を多く見聞きします。
本書は、そんな悩ましい日々を過ごしているであろう、経営学にあまりなじみのなかったセラピストの皆さんを対象にしています。そして、臨床の職場でよく耳にする「困ったこと」や「解決すべきこと」を提示した上で、問題解決のための考え方や実践方法について、経営学的な視点で、できるだけ分かりやすく伝えることを大きな目的としています。もちろん、すでにマネジャー業務に勤しんでいる方々にも、これまでの知識や経験を整理してもらい、自分の軸足を確認できるものと考えています。
著者のひとりである私も、日ごと医療機関で臨床・教育・研究を行うかたわら、リハビリテーション部門の管理者として、マネジャー業務をこなしているひとりです。臨床家としては、目の前の患者さんに対して最善な医療を提供することが大切なことになります。一方、マネジャーとして考えた場合、組織の方針や目標に向かい、スタッフ一人ひとりが自律して責任感を持ちながら、それぞれの能力を発揮できる環境を提供できているか、ということに心をくだく毎日であると感じます。経営学を学んだ身として、本書を通し、日頃からどのようなことを考え、そしてどのように実践をしていくか、そのエッセンスを伝えることができれば、との思いで筆を進めました。
組織の運営には明確な正解はありませんし、また誰も答えを教えてはくれません。1対1の個人への働きかけから、全体を俯ふ瞰かん的に見てその時々に何をすべきかを選択することまで、マネジャーが考えなければいけないことはとても広範囲です。そんな中、これまでの先人の知恵を集めた「経営理論」を参考にして、いま抱えている問題点を整理し、改善すべきことやその方法を考えぬき、それをスタッフと共有して実践することで業務の改善に結びつける。そんな理論と実践のサイクルを回すことを多く経験し、成功体験を重ねたセラピストが増えていくことが、私たちの未来の鍵を握っているような気がしてなりません。
この本は、そんな考えを共有してくれた研究会の仲間との、約5年に渡るいろいろな議論から生まれてきたものでもあります。マネジャーに特別な能力は必要ありません。大切なのは、考えぬく姿勢、やりぬく力、そして、ほんの少し人のことを優先して考える利他的な心と勇気です。この本を読んだあと、これからの私たちセラピストの未来を担うであろう、たくさんの若手から中堅世代のセラピストの方々が、組織運営におけるさまざまな壁を越える勇気をもち、そして実践していってくれることを願います。
2020年3月
八木麻衣子