書籍

専門医必携 眼科鑑別診断実力アップQ&A

編集 : 山田昌和/平塚義宗
ISBN : 978-4-524-24961-9
発行年月 : 2021年2月
判型 : B5
ページ数 : 288

在庫あり

定価9,350円(本体8,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

確定診断までに頭を悩ませる107症例を厳選。全症例をQ&A形式で解説し、鑑別診断の“勘どころ”が実践的に学べ、日常診療における疑問・迷いがなくなる。エキスパートが臨床現場で問診結果(年齢・性別・主訴・病歴など)や臨床所見、検査所見からどのように鑑別をすすめているのかがよくわかり、実力アップに直結する一冊。

第1章 涙器,涙道,眼瞼
 1.新生児期から続く片眼の眼脂と流涙
 2.小児の眼瞼下垂
 3.高齢者の片眼の繰り返す結膜炎
 4.抗癌薬で化学療法中の患者の流涙
 5.両眼の無痛性の上眼瞼腫脹
 6.高齢者の再発性の眼瞼腫瘤
 7.中高年者の両眼性の眼瞼下垂
 8.中高年者の開瞼困難,羞明
第2章 角結膜
 1.新生児の角膜混濁
 2.アトピー性皮膚炎のある若年者の羞明,眼脂
 3.コンタクトレンズ装用者でレンズが曇る,ずれる
 4.若年者の進行性の近視と不正乱視
 5.若年女性の繰り返す角膜炎
 6.片眼の急性の充血,眼瞼腫脹,多量の眼脂
 7.角膜上皮下に多発する斑状の混濁
 8.繰り返す片眼の急激な眼痛
 9.羞明と異物感のある帯状の角膜混濁
 10.関節リウマチのある中年女性の眼乾燥感,異物感
 11.強い眼乾燥感を訴える端末表示装置業務の多い男性
 12.中年女性の慢性の異物感
 13.緑内障治療中の患者における両眼の異物感
 14.ソフトコンタクトレンズ装用者の急性の眼痛,視力低下
 15.ソフトコンタクトレンズ装用者の治らない角膜炎
 16.高齢者の感染性角膜炎
 17.片眼の再発性の樹枝状角膜炎
 18.片眼の再発性の円板状角膜炎
 19.コインリージョンを伴う角膜浮腫と虹彩炎
 20.白内障術前に発見された角膜内皮異常
 21.片眼の霧視を認め,瞳孔変形や虹彩異常を伴う症例
 22.膠原病患者の痛みと視力低下
 23.閉瞼不全による角膜上皮障害
 24.両眼の慢性の眼瞼結膜充血
 25.片眼の角膜周辺部の浸潤病変
 26.高齢者に生じた瞼球癒着を伴う慢性結膜炎
 27.目元が赤く,乱視で見えにくい
 28.球結膜の無痛性の隆起性病変
 29.結膜円蓋部に生じた隆起性病変
 30.輪部付近に生じた隆起性病変
第3章 水晶体
 1.散瞳後に水晶体の偏位を確認
 2.若年者の白内障手術における注意点
 3.白内障手術後の眼内レンズ混濁
 4.多焦点レンズ挿入後のハロー・グレアー
 5.白内障術後長期経過後に視力低下
 6.屈折値の急で大きな変化
 7.白内障術後眼内炎
第4章 網膜・脈絡膜
 1.高齢男性片眼の中心暗点,変視(1)
 2.高齢男性片眼の中心暗点,変視(2)
 3.強度近視患者の視力低下・中心暗点
 4.網膜下耳側の網膜隆起
 5.原因不明の片眼性硝子体出血
 6.剥離の形状と穴の位置
 7.進行する両眼の視力低下,中心視野異常,羞明
 8.寄生虫によるぶどう膜炎
 9.フルオレセイン蛍光眼底造影で多数の漏出点
 10.OCTで脈絡膜の肥厚を認める
 11.OCTで脈絡膜の菲薄化を認める
 12.OCTでEZの異常を認める
 13.OCTで網膜の菲薄化を認める
 14.原因不明のぶどう膜炎
 15.40歳男性,片眼の黄斑部近くに硬性白斑と黄斑浮腫
 16.眼底検査で網膜の部分的な色調の異常
 17.OCTで黄斑部に硝子体の牽引
 18.乳頭周囲の萎縮に黄斑部出血を併発
 19.若年期より夜盲を自覚,著明な視野狭窄
 20.若年男児,以前から夜盲を自覚しているが網膜に異常を認めない
 21.30歳,黄斑を含んだ漿液性の網膜剥離
 22.滲出性の網膜剥離
 23.網膜剥離術後,眼底透見不能もB-modeで隆起性病変
 24.眼底に広範な白色顆粒状病変
 25.若年女性片眼の突然の視力低下,眼底に白点病変
 26.若年女性片眼の突然の視力低下,眼底に白点病変なし
 27.両眼性の網脈絡膜の白色円形病変,硝子体混濁
 28.加齢黄斑変性に対する抗VEGF治療
 29.静脈炎を伴う慢性肉芽腫性汎ぶどう膜炎
 30.両眼の視神経乳頭浮腫
 31.前房蓄膿を伴う虹彩毛様体炎
 32.全身疾患に伴う突然の視力低下
 33.眼底検査で脈絡膜襞
 34.小児の白色瞳孔
 35.眼底写真でRoth斑
 36.糖尿病患者の黄斑浮腫
 37.周辺部網膜血管の閉塞
 38.眼底周辺部に帯状の変性巣
第5章 緑内障
 1.原発閉塞隅角緑内障の機序
 2.浅前房を伴う急激,高度な眼圧上昇
 3.隅角色素沈着
 4.視神経乳頭の変化
 5.視神経乳頭の近視性変化
 6.片眼の急激な眼圧上昇
 7.虹彩ルベオーシス
 8.静脈圧亢進による続発緑内障
第6章 眼窩
 1.若年男性の外傷後の複視,眼球運動障害
 2.亜急性の眼瞼腫脹と眼球突出
第7章 斜視・弱視
 1.内斜視の疑いで受診した生後4ヵ月の乳児
 2.調節性内斜視で眼鏡処方をしたが,斜位にならない幼児
 3.頭部傾斜が気になる幼児
 4.テレビを横目で見る幼児
 5.3歳児健診で片眼の視力不良を指摘された幼児
 6.矯正視力が出ない小学校3年生
 7.遠見で増悪する成人の内斜視
 8.高度近視に生じた著明な内斜視
第8章 神経眼科
 1.急性の片眼の眼瞼下垂と複視
 2.歩行困難を伴う急性の複視
 3.徐々に生じた成人の複視
 4.下を見ると二重に見える
 5.相対的瞳孔求心路障害がポイントとなる片眼の視力低下
 6.ステロイドパルス治療無効の視神経炎
索引

はじめに

 外来診療の多くはcommon diseaseで成り立っている。しかし、なかには非典型的な症例や、病態がわかりにくい症例もあり、経験を積んだ眼科医であっても診断に迷うことがある。その一方でまれな疾患であっても特徴的な所見に気づけばすぐに診断できる例や、あるはずの所見を欠いていることで除外診断ができる例もある。
 患者さんは「自分は○○(病名)です」とは教えてくれない。問診や基本的な眼科検査を行った段階でどれだけ多くの疾患を想起できるかは、臨床医の最も重要な実力の1つである。考えうる疾患を頻度や重要度、緊急度から頭の中で素早くソートし、次に必要な検査を判断して、鑑別診断を的確に進める実力が求められる。
 本書は実際の眼科診療を想定し、診断に迷うときの鑑別ポイントは何か、どのような所見をもって鑑別していくかを、臨床所見や検査所見から読み取るための実践書として企画された。Q&A形式になっており、「QUESTION」の頁には年齢・性別・主訴・現病歴・臨床所見・検査所見が、キーとなる臨床写真や検査所見と共に記載されている。「ANSWER」の頁には診断と疾患の解説、鑑別のポイントが示されており、似て非なる疾患、間違えやすい疾患についてもポイントが述べられている。症例は日常診療でよくみられる疾患を中心に据え、まれではあるが出合った際には診断に苦慮するような知っておくべき特徴のある疾患も取り上げた。一人で外来診療を始めたばかりの若手眼科医には転ばぬ先の杖となり、ベテランの眼科医にとっては臨床のピットフォールを再確認できるような症例を選んだつもりである。
 系統だった教科書ではないのでどこから読んでも構わないし、診療の合間などちょっとした時間での学習にも適している。読者が1つ1つの症例呈示で診断を考えながら読むことで、鑑別に重要なポイント、見落としやすい箇所を学んだり、再確認したりできる書籍をめざした。各項目の執筆は第一人者や新進気鋭の先生方にお願いしており、どれを読んでも勉強になり、新しい発見があるはずである。このような書籍を二人で編集して上梓できることを幸いに思う。また、本書を作り上げてくださった南江堂の関田啓佑氏に深謝の意を表したい。

令和2年12月
杏林大学医学部眼科学教室 山田昌和
順天堂大学医学部眼科学講座 平塚義宗

9784524249619